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カランコローン、いらっしゃいませ。 喫茶クロスロードへようこそ。
いよいよ週の後半。 ちょっと疲れたなぁ。
今週もなんだかバタバタしていたなぁ。 そんな気持ちが膨らんでくる頃ではないでしょうか。
そんな時こそ、一休み。 ここでのんびりしていきませんか。
喫茶クロスロードでは、毎週木曜日、 月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。
今月のテーマは、冬。
今日は、お正月に欠かせないスポーツを綴った カオリくんのエッセイを、私、生がお届けします。
それでは、どうぞ。 つなぐ
カオリくん、白息が白くなってくると、 週末には全国各地でマラソン大会や
駅伝大会が開催される。 世界の主要なマラソン大会と肩を並べる
東京マラソンともなると、参加を申し込んでも 抽選で外れてしまうなんてことはザラで、その倍率は10倍を超える。
小学生の時に学校のマラソン大会に出たくなくて、 ダダをこねた私からすれば、
42.195キロも走りたい人が大勢いることが不思議でならない。 そんな私だが、マラソンや駅伝を見るのは大好きだ。
テレビ離れと言われて久しいこのご時世に、箱根駅伝は 20%後半の視聴率を毎年叩き出している。
私のように朝から昼過ぎまで テレビの前から離れない人は少数派だと思うが、
それでも日本人は箱根駅伝が大好きだという証拠になるだろう。 駅伝は日本発祥で、
海外では同じような競技を行う国がほとんどない。 それどころか長い距離を走る選手をテレビの前で喜んで応援
するのは日本人くらいだと言われている。 確かに選手が走っているテレビ画面は変わり映えしないし、
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抜きつ抜かれつの攻防はあれど対戦競技のような派手さはなく、 競技のように応援して盛り上がれるわけでもない。
それでも日本人が駅伝に心惹かれるのは、 淡々と走る選手が紡ぐ助きをつなぐ物語を駅伝に見ているからなのだ、
と思っている。 箱根駅伝は東京大手松から神奈川の箱根足の子までの往復217キロ余りを
10人の大学生で走り切る。 各区間の距離が20キロ前後ある上、
箱根の山は天下の剣と歌われるほどの険しい山道も走破しなくてはならない。
最もハードな五区は標高差864メートル。 登山客でにぎわう標高599メートルの高尾山よりも高いところまで一人で駆け上がる。
その過酷さゆえアクシデントが起こることは決して珍しくない。 怪我が悪化し極端に走るペースが落ちてしまう選手もいる。
低体温や脱水症状が原因でフラフラになってしまう選手もいる。
それでも彼らは歩みを止めようとしない。 自分が走る道の先に仲間が待っているからだ。
チームメイトと自分をつなぐタスキが 中継所へ迎えと背中を押し
半分無意識に足を動かしている。 正直なところ体調不良や怪我をしてまで走ることが正しいとは思えない。
しかし駅伝では危険という選択肢は何よりもつらい。 自分がタスキを渡さなければ後の区間を走る選手はレースに参加することすら許されなくなってしまう。
自分の選択がチームメイトの走る機会を奪い これまでの努力を無に帰してしまうのではないか。
大きな恐怖が選手を襲う。 タスキは背中を押す存在でもあり、同時に走るという選択肢しか与えない呪いをかける存在でもあるのかもしれない。
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仲間、期待、歴史、誇り。 極限まで体を絞った選手の肩にかかるタスキは
あまりにも重い。 タスキは古代においては新地の装飾品であったらしい。
巫女をかたどった埴輪が タスキをかけた姿をしていたり
古事記にも アメの渦巻がタスキをかけて踊ったとする記述がある。
これらはタスキをかけるものの汚れを除く 物意味の意味があったとする説がある。
中世以降も聖なる行事の装飾品として用いるなど タスキを身につけることで汚れを除くという考え方は連綿と受け継がれてきた。
埴輪競技はタスキの受け渡しをする と陸上連盟のルールで決められているが
なぜ埴輪でタスキを使用し始めたのか はっきりとした理由はわかっていない。
けれど日本初の埴輪が京都から東京までを走りつなぐ 尋常ならざるウエスだったことを踏まえると
神事を起源とするタスキに 怪我などの災厄を払う願いを込めたと考えることもできる。
タスキは戦士たちに祝福を授ける存在なのかもしれない。 今年も戦士たちが箱根寺を駆け抜けた。
どれだけの創者がタスキの重みに縛られることなく タスキに込められた思いを追い風に走ることができたのだろうか
私もスポーツ文化のタスキをつなぐ一人となるべく 東京マラソンのボランティアに申し込んでいる。
しかし参加を申し込んでも抽選で外れてしまうなんてことはざららしい。 当選しない限りタスキをつなぐ役目はお預けとなってしまうのだ。
箱根駅伝を目指すすべての選手とその関係者に そして私にも
どうか祝福がありますように いかがでしたか
さて名残惜しいですが閉店のお時間です 今後も喫茶クロスロードは
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あなたがほっこりした時間を過ごせるよう 毎週月曜日と木曜日
夜21時よりゆるゆる営業していきます それでは
本日はお越しいただきありがとうございました またお待ちしております