待ったなし 防災対策!
2026-10-09 18:56

待ったなし 防災対策!

元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎と毎日新聞出版代表取締役社長・山本修司、2人のジャーナリストによるラジオコラム。毎月第四金曜日には、元作詞家志望だったという経歴も生かして、潟永秀一郎がヒット曲の歌詞を読み解く「この歌詞がすごい」をお送りします。

※RKBラジオで毎週金曜日に放送している『立川生志金サイト』内のコーナーです。

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サマリー

各地で災害が頻発する中、政府が発足させる防災庁について、その必要性と課題を説明する。現在の防災体制は内閣府が消防・警察・防衛省などを調整する仕組みだが、平時の備えに人員を割けず、出向者中心で知識も蓄積しにくい。防災庁は事前防災から発災時の調整、復旧・復興までを一貫して担い、法的な勧告権で縦割りを越えた対策を進めることが期待されている。アメリカのFEMAと比べると職員数や予算は小規模だが、避難所の環境改善、防災DX、物資中継基地などが計画されている。イタリアの市民保護局やTKB48、登録ボランティアへの公的補償を例に、日本の避難所と災害ボランティア制度の遅れも指摘する。

防災庁が必要な理由
さて、今年はというべきか、今年もというべきか、各地に大きな災害が発生をしております。
国は来月にもですね、政府の災害対応の司令塔となります防災庁を発足させるということなんですが、
これ、高市総理は総裁選の時、これね石場さんが言ってたことで、高市さんはちょっと設立に否定的だったんですけども、今は総理大臣になってますから、
高市総理のもとで防災庁を発足ということですが、この辺りいろいろ課題もあるようなので、
本さんで毎日編集長、がたなか修一郎さんにお話を伺いたいと思います。がたなかさん、おはようございます。
はい、おはようございます。
よく覚えてらっしゃるなと。確かに防災庁構想ってね、石場さんの長年の持論で、
高市さんはすでにある復興庁の役割強化でいいんじゃないかっておっしゃってましたが、
まあいいんです。どなたがやろうが、国に組織的な司令塔が必要なのは事実なので、
もう来月2日できるらしいですけども、実現すれば一歩前進には違いありません。
ということでまずは、なぜ防災庁が必要なのかからご説明します。
今の国の防災体制は専門の省庁を置くのではなくて、
消防や警察公署、防衛省などが専門分野ごとに対応を分担して、
内閣府の防災担当というところが横の連携を調整しています。
1959年の伊勢湾台風の後にこの仕組み、ベースができたので、
もう70年近く前の仕組みでして、もはやこんだけ大規模化、広域化して、
しかもゲリラ的に頻発する近年の状況には対応しきれないという弱点も浮かび上がっているんですね。
弱点は大きく分けて2つありまして、
1つは平時、何でもないときの対応ですね。
内閣府の防災担当はおよそ220人体制と規模が小さくて、
これだけ災害が多いとその対応とか後始末に追われてですね、
同じくらい大切な平時の備え、つまり事前の防災とか減災対策に十分なリソースが割けません。
もう1つの弱点は人材の蓄積でして、
職員の多くは他の省庁とか自治体からの出向者、内閣府の防災担当は、
2年もすると元の職場に戻るので、知識や経験が組織に蓄積されにくいという構造的問題があるんですね。
そもそも日本の災害対策基本法というのは、避難所の開設や物資の備蓄の第一責任者は国ではなくて地区町村と定めているので、
国は総合調整や財政支援にとどまっているんですね。
そこで、ノトとか熊本のように相次ぐ大地震やゲリラ的に急増する水害、
何より近い将来起こり得るとされている南海トラフや首都直下とかですね、
国南級の巨大災害に備えて、被害を最小限に抑える徹底した事前防災、
例えば建物の耐震化とか避難環境、避難ルートの整備なんかを平時から専門的一元的に進める司令塔の必要性が高まっています。
防災庁はこの要請に応えるため、平時の備え、それから災害発生時の調整、復旧復興までを一貫して取り仕切る体制を目指しているんですね。
FEMAとの規模・権限の違い
これ実は見本がありまして、アメリカのフィーマと呼ばれる連邦緊急事態管理庁というのがあるんですが、
ここ役割が4つありまして、一つは事前準備。
これ平時からの自治体の住民の教育訓練のほか、支援物資の備蓄も行ってます。
2つ目は被害の軽減で、将来の災害に備えて建物やインフラの補強とか、ハザードマップに基づいた土地利用の規制なんかも指導してるんですね。
3つ目が救助救援です。
大統領が緊急事態を宣言すると、軍や政府機関の役割を調整して、物資や救助部隊を被災地へ送ります。
最後に4つ目が復旧で、被災者が生活再建するための補助や融資、それからインフラの再建を財政面から支えるという、
このアメリカのフィーマというのはこういう大きな役割になっているんですね。
防災庁は基本的にこの考え方を踏襲してるんですが、規模にはかなりの差があります。
防災庁、やっと発足するんですが、職員数はおよそ350人だそうです。
フィーマは常勤の正規職員だけでおよそ5000人で、これに災害時に数年単位で投入される有機職員などを入れると、総勢およそ2万人体制だと。
そもそも国の大きさの広さの違いもありますけれども、
フィーマは地震やハリケーンなどの自然災害だけじゃなくて、
ベロとかコロナみたいなパンデミックを含めたいろんな緊急事態に対応するので、規模も違って当然ではあるんですけれども、
自然災害についても日常的に計画を更新して、どういうふうに対処するかという計画を更新して、
公的機関だけじゃなくて、民間の企業やボランティア団体なども含む大規模訓練をやったり、
全米各地にある支援物資配送センターの管理などまでになっているんですね。
職員数も違うんですけど、もう一つ予算も随分違いまして、
災害が発生したとき、フィーマも防災庁も直接他の省庁や軍を動かしたりする権限はなくて、調整役ではあるんですが、
フィーマは動かすときに自分の予算でその費用を提供するんですね。
これに対して日本は基本的に各省庁の予算です。
平時の防災事業についても、フィーマは年間数兆円という予算を使って対策を主導するのに対して、
防災庁は各地の防災上の弱点なんかを洗い出して、耐震化やインフラ整備などの予算を優先的にここに配ってというような、
他の省庁に求める司令塔型なんですね。
ただ、内閣府の一部門の時と違って防災庁には法的な勧告権が与えられて、勧告を受けた省庁にはそれを尊重する義務が課されるんです。
これによって、これまで川は国土交通省、山林は農水省、市街地の排水は自治体といった縦割りの弊害を背して、
流域全体で考えましょうよといった防災対策が進むと期待されています。
でも予算数兆円ですからね。
規模が全然違いますね。
避難所改善と防災DX
とりわけ期待されているのが、避難所をはじめとする被災者支援の改善でして、
まだ概算要求段階ですが、来年度予算で防災庁関連は今のおよそ3倍となる650億円が計上されていて、
この中で最も重視されているのが被災者支援だからです。
例えば避難所の改善で言うと、
熱中症対策でエアコン付きの大型テントから移動式のクーラーなどの備蓄を大幅に増やすとか、
支援物資が被災地で目詰まりを起こして避難所まで届かないといった問題を解決するため、
全国に新たな中継基地を設けます。
それから自治体の避難所運営に充てる交付金を4倍に増やして、
プライバシーが守れてあったかい食事が提供できるといった避難所の質の改善を図るほか、
あらかじめ地域の宿泊施設を身なし避難所として確保する協定、この推進なんかも進めると言っています。
またデジタル庁と連携する防災DX、デジタル改革も重点施策の一つでして、
例えば避難所に来た住民がスマホやマイナンバーカードをそこでかざすだけで登録されて、
誰がどの避難所にいるかをリアルタイムで把握できるようにするとか、
その人のマイナ保険証情報から、この人にはこういう医療支援が必要だとか、
この薬を届けなきゃいけないとかですね、
リサイ証明書の発行も含めてデジタル技術を使って迅速化するといったことが考えられています。
ちょっとでも良くなることを期待してるんですが、
ただ率直に言って、日本は災害大国でありながらこうした対応が遅れて、
ようやく先進国並みになるのかなというのが現実です。
イタリアの市民保護とTKB48
日本になる国をご紹介しますね。
これは代表格は日本と同じ地震火山大国のイタリアです。
ご存知だと思いますけれども、
イタリアでは現場の指揮系統の乱れで救助や物資輸送が混乱した過去の大地震の教訓などから、
1982年、日本よりずいぶん前に、
政府に市民保護局っていう専門組織が設置されたんですね。
避難所に関して言うと、大災害が起きたら、被災した自治体じゃなくてですね、
被災した自治体の職員が、中には自らも被災者なのに出勤して、不眠不休で。
おかしいです。
不眠不休で働く日本の職員の方々。
政府が最寄りの巨大な物資備蓄基地から、国の基準で標準化されたコンテナとか大型テントを被災地に送って、
かつ専門のボランティアチームなどが設営をするんですね。
防災庁が取り組むのもこの標準化でして、
国際的には既にスフィア基準っていう最低基準があるんですね。
これ、1990年代にルアンダの虐殺で大量の難民が発生した際に、
不衛生なキャンプでたくさんの人が命を落とした反省から生まれまして、
避難所だから我慢して当然じゃなくて、
被災者も尊厳を持って生きる権利があるっていう考え方に基づくんです。
ところが東日本大震災の際、プライバシーのない体育館での雑魚寝とか、
トイレが足りないといった状況が、海外から最低基準も下回ってるっていうふうに指摘をされて、
内閣府は2016年にようやく先ほど言ったスフィア基準に基づく避難所運営ガイドラインを設けたんです。
ただ、それでも避難所の環境整備は自治体に委ねられているので、
財政力の差で質や量に格差が生まれて、
後の大規模災害でも災害関連支援が相次いでいるのは皆さんご存知の通り。
そこで提唱されているのがTKB48です。
これAKBじゃないんですよ。
TKBのTはトイレ。
イタリアでは清潔なトイレだけじゃなくて、
シャワーや洗濯乾燥機まで避難所に設置してですね。
Kはキッチン。
大型のキッチンカーが料理人と共に派遣されて、
コース料理まで出るんですね。
これはね、被災した人こそつらいんだから、
温かくおいしいものを食べるのが当たり前じゃないかという考え方なんですけども。
Bはベッド。
簡易ベッド付きで冷暖房完備のファミリーテントとかコンテナハウスが広場に設置されます。
しかもトイレは数時間以内。
その他も48時間以内になんですね。
だからTKB48。
イタリアのGDP、国内総生産は日本のおよそ6割。
人口は半分ほどなんですが、
こうした物資の購入や維持管理、
100万人規模の登録ボランティアの訓練や賃金補償などに、
年間およそ3000億円費やしているんです。
このボランティア制度を見習うべき課題で、
イタリアでは登録ボランティアが被災地に出動すると、
仕事を有給扱いで休む権利が法律で定められています。
しかも企業が支払ったその間の給与は、
後で国が会社に払い戻して、
自営業やフリーランスの方でも減収分を補償するか、
税額を控除するかします。
もちろん交通費も支給されて、
活動時の事故に備える保険も国が払います。
訓練で仕事を休む場合も同じで、
さらに登録されたボランティア団体には、
日常の維持活動費まで助成されるんです。
災害ボランティア制度の課題
一方、日本も東日本大震災の教訓から、
2016年に全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、
JVOADという全国組織が発足して、
日本赤十字社など多くのNPOや団体が、
いろんな支援活動の調整をしています。
防災庁はこのJVOADと連携して、
災害時にはリアルタイムで情報共有しながら、
被災者支援を今までよりさらに充実強化する方針ですが、
ただイタリアと決定的に違うのは、
消防団の皆さんの活動を除いて、
休業補償など公的な支援がないことです。
企業として有給のボランティア休暇を認めるところもあるのですが、
その数はまだ全体のおよそ1割にとどまっていて、
欧米だと高いところは8割ぐらいというところに比べると、
まだ数分の1の水準なんです。
背景にはボランティアは個人の善意で行うものだという意識が強いことと、
それから専門性の問題もあって、
イタリアのボランティアは電気や水道工事、
調理、医療などの職能ごとのプロが、
国が主催する訓練を受けて登録されるんです。
だから日本にはまだここまでの制度はなくて、
JVOADの会員など実績のある支援組織を事前に登録して、
国が出動費用を補助して、
民間の募金などから活動費用を助成してもらうという仕組みに
まだとどまっているんですね。
防災庁への期待と税金の使い方
ということで、新たに発足する防災庁の役割と目指すべき姿などは、
ご理解いただけましたでしょうか。
はっきり言って今の日本の防災行政は、
まだ先進国レベルとは言えないんですけれども、
災害対策国でありながらですけれども、
防災庁にはその改善を期待しながら、
我々もどこに税金使ってくれっていうのか、
そういうことも含めて改めて考えたいと思います。
これこそ命に関わることだからですね。
まさに税金の使い方ですよね。
これやっぱりちゃんと肝に銘じて。
いつ自分が被災者になるかわからないということだから。
国会議員も官僚も、
税金自分たちのもんだと思わないように。
自分の権限で何か支配できると思わないように。
国民のために、国のために使ってもらいたいということです。
今日は防災庁のいろいろこれからの課題、そして期待について、
元サンデー毎日編集長方中周一郎さんでした。
どうもありがとうございました。
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