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こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマは、こち」ら。『誤解される・されやすい人、偏見と思い込みとの関係』。今回は、「誤解される・されやすい人、偏見と思い込みとの関係のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。その見方・活かし方をご紹介します。今回は、「誤解される・されやすい人、偏見と思い込みとの関係」について。
どうも誤解される・誤解されやすいと思っているとき、何が起きているのか、自分の、或いは相手の、偏見と思い込みのポイントを知ることで、解決策につながる選択肢を増やすことができます。第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども」ともリンクするお話です。
社会人になりたて、新入社員として入社した会社で2、3ヶ月経った頃、こんなことがありました。正確な言葉は忘れてしまったんですけれども、それほど親しくもなかった、職種としては同じ別の部署の課長から、「どうせ親のすねをかじって、社会人になってもいまだに面倒見てもらっているんだろう。のんきなもんだな。」
確か、こういう趣旨の言葉を伝えられ、当時、とても驚いた覚えがあります。それぞれの家庭の経済状況や考え方によって、大きく違いが出てくると思いますが、我が家の場合は、といえば、長女の私の後にはまだ下が控えていたということもありまして、大学に行かせてもらえてラッキー、あとは自力でという意識だったからです。
20歳になった頃から、もう大人なんだから、というメッセージを、言葉や態度で親から伝えられていた影響が大きかったんじゃないかと思います。
大人として意見を聞いてもらえるようになったな、なんていうふうに感じる場面も増えまして、それが嬉しかった記憶もあるので、少しずつ準備をさせてもらえたのではないかと。
そんなわけで、社会人になったら、自分の給与で生活するのが当たり前。実際のところ、最初の月について、なんですけれども、「あっ、まだ給与が支給されないんだな。
働いた結果の給与。そりゃ、そうか。うわぁ、まずい。」と、大学時代に人と話す中で気づきまして、その間の生活費など、あらかじめアルバイトを増やして貯金して、準備もしていましたので、社会人になった4月1日から、本人としては自活スタートしています。
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そして地方から東京に出てきて、少なくとも経済的には文字通り独立していた。これが事実だったかと。この例ですと、私が誤解された人、別の部署の課長が、偏見と思い込みで誤解した人、ということになります。
ちょっと長々とお伝えしたわけなんですが、「どうせ親のスネをかじって、社会人になっても、いまだに面倒を見てもらってるんだろう。のんきなもんだな。」と言われる事実はなし。そもそもプライベートなお話をしたことは、一切ありませんでした。
それなのに、この決めつけた言われようで、万が一事実だった場合でも、この言い方はどうなのかな、とは思うんですが、それは一旦置いておくことにします。事実ではないことへの決めつけ、そこでは何が起きているのでしょうか。
今回、第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども」でお伝えした、心の中の「親・成人・子ども」、この考え方から考えてみます。
「親」は、親や親的な役割の人から取り入れた「行動・思考・感情」が入っている部分。「成人」は、<今、ここ>にふさわしい「行動・思考・感情」の部分。「子ども」は、子どもの時の経験や決断が入っている「行動・思考・感情」部分。「親」と「子ども」は、過去のデータになります。
通常、上から円を3つ描きまして、縦に並べます。円が3つ、縦に並んだ状態、上から「親・成人・子ども」です。その際、円はぴったりとくっつけて描くんですけれども、この3つの状態というのは、一人の心の中にあり、私たちは自由にそれらの状態の中を移動して、状況や場面、相手に応じて臨機応変に活用しています。
ただ、これらの円が重なってしまい、問題が起きることがある。それが「汚染」と呼ばれる状態です。一番上の「親」の下の方と、真ん中の「成人」の上の方の円が一部重なる状態。「親」からの「成人」の汚染、偏見と言われます。
「親」が信じ込んでいることを、「成人」が現実だと誤解している状態、事実として受け入れられている心情といったようなものになります。図解としては、数学のベン図と呼ばれるものと同じ表現になりまして、それを縦に並んだ円で描くわけなんですが、意味合いはベン図と違いますので、ご注意ください。
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ここでの重なりは、混ざってしまった、ごちゃ混ぜになった、と、そんな状態という意味合いです。先ほど登場した課長は、女子大生は、社会人になっても親のすねをかじっているものだ。そんな「親」からの「成人」の汚染、それを事実として信じ込んだ偏見状態だったのではないでしょうか。
「どうせ」の後ろには、「今時の若者は」というような、隠された言葉があったように思います。
真ん中の「成人」の円、こちらの円の下の方と一番下の「子ども」の円、この円の上の方とが一部重なる状態、これは「子ども」からの「成人」の汚染、「思い込み」と言われる状態です。
大人としての考えが、子ども時代からの思い込みで汚染されてしまっている状態。「成人」が現実だと誤解し、事実として受け入れられている状態です。
先ほど登場した課長は、もしかしたら子ども時代に、私と似ていると思えるタイプの人間、或いは、年下だったり、何か共通するものを感じる人に対して面白くない気持ち、「のんきなもんだな」に表されるような思いがあって、刺激されたのかもしれません。
それが、先ほど言いました、「親」からの「成人」の「汚染」とつながり、「偏見」と「思い込み」の結果として、ほとんど会話をしたことのない新入社員、当時の新入社員の私に向けられたのかと思います。
なお、「親」からの「成人」の「汚染」と、「子ども」からの「成人」の「汚染」、これが両方ともある状態、これは「複合汚染」と呼ばれる状態になります。
「複合汚染」は、「成人」を両側から「汚染」しています。
ということは、本来<今、ここ>にふさわしい「行動・思考・感情」状態であるはずの「成人」が「汚染」されてしまい、事実を事実として捉えられない状態、過去のデータである「親」と「子ども」の影響を強く受けてしまっています。
さらには、それらの偏見や思い込みを正当化できる情報だけを「成人」が集めるようになったりもしますので、「偏見」や「思い込み」が現実として、事実として、より強化されてしまう、そんなような状態になるわけです。
対処の仕方としては、事実に気づいてもらうこと。
一例としてですが、ひとまず先ほどの私の例では、「え~、そんなぁ、それテレビか何かでご覧になったんですか。いろんな人がいると思いますけど。
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ちなみに、私は社会人になってから自活してますし、最初の月の生活費も貯めて、地方から東京に出てきました。」
そう申し上げたところ、「あ、そう。」と目が泳ぎつつ、ひとまずは受け入れていただけたかと思います。
このほか、直接言うよりも間接的なほうが良いこともありますので、その方が素直に話を聞ける方にさりげなくご相談して、やはり事実を伝えてもらう方法や、違う場面や状況を待って、時間差でお伝えする方法が有効な場合もあるかと思います。
選択肢が多ければ多いほど、それだけ解決策につながる可能性が高まりますので、ひとつでも多く選択肢を増やすことをお勧めいたします。
ただ、「偏見」や「思い込み」がもう揺るぎがたいほど強固で、どうにもしようがない、という方も中にはいらっしゃいます。
その場合には、「逃げる」ということも、ひとつの大切な選択肢となります。
また、誤解される、されやすい人という点では、もし自分自身に向けられる偏見や思い込みのポイントがわかるなら、その後どうするかは、それ自体、ご自身の選択。
見た目や格好で誤解される、されやすいということがもしあるなら、そして変えても良いなら、その環境で受け入れられやすい見た目や格好にする、そういったセルフプロデュースをすることも一案です。
そもそも、誤解される、されやすいということを逆手にとって、かえって有利になる、そんな考え方をとることも一案です。
私の体験した例でいきますと、まだ女性営業が珍しかった時期のお話ですが、普通に仕事をしていても、どうせ大してできないんだろう、というふうに、低く見られるといったことが一定の割合でありました。
ただですね、そういう方であればあるほど、普通に仕事をし「て、着々と対応するだけで、ある時かえって、すごいね」と、高評価に反転するということが、本当によくあったわけなんです。
これは「偏見」と「思い込み」で低く見ていたからこそなので、正直失礼な話だなぁとは思っておりましたが、ラッキー、と考えるようにしていました。
そしてこの「汚染」、これは他人だけではなく自分にも向けられるものです。
ただですね、やはり自分のことになりますと、なかなか気がつくのは難しいかと思いますので、ご興味のある方は、お時間のある時に、こんなことをぜひしてみてください。
自分はどんな人か、何が得意で何が不得意なのか、1、2分ほど思いつく限り書き出してみてください。
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そしてしばらくたって、お茶でも飲んで、一息ついて、リラックスしてですね、落ち着ける環境で姿勢をまっすぐ、自分の中の「成人」の状態を刺激した上で、その書き出した自分について、それが現実かどうか、「汚染」ではないかというのを検証してみていただければと思います。
その上でそこに「汚染」があるなら、ぜひ書き直してみてください。
例えば、「私はパソコンが苦手」だったとしたら、「私はパソコンの入力ができる。新しいソフトについて使い方を知り、慣れれば、うまく使える」というような具合です。
「汚染」のない、本来の「成人」で検証することが鍵になります。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「誤解される、されやすい人。偏見と思い込みとの関係」。まずは気づくこと、そしていつもと違う変化を味わってみませんか?
ここまで聞いていただき、ありがとうございます。
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お相手は、遠藤美保でした。
ありがとうございました。