心の基本ポジションについて
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。
あなたのためは誰のため?心の基本ポジション。
今回は、あなたのためは誰のため?心の基本ポジションのお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも自然とつながっています。
その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、あなたのためは誰のため?について。
あなたのため、よくそう言われる方、言っている方、言わないまでも心の中で思っている方、そんな方々が身近にいる方などなど、その言葉の意味を知ることで、関わり方を考え直すきっかけにつながるかもしれません。
第1回目「承認欲求は、誰もが持っている原点」。
第3回目「子どもの自分が書き、今も従っている人生脚本」。
第11回目「自己肯定感と、心の基本ポジション」ともリンクするお話です。
あなたのためなんだから。それがお前のため。変形版ではあなたが心配だから聞いてるんだよ。
こういった言葉、皆様はどう感じますか。
いつの頃からか、私はこういった言葉が少し苦手になりました。どうも、あやしい・・・。
皆様の中には、心配してくれる相手の思いやりなんだから、素直に受け取っておけばいいのに、そう感じられる方もいらっしゃるかと思います。
ただ、「あなたのためなんだから」、「心配」。
あまりに繰り返し言われる言葉や、そこに象徴される態度に違和感や強引さ、強い負担を感じておられるなら、一旦立ち止まって整理してみることをお勧めします。
というのも、「あなたのため」、「心配」、相手を思いやる優しさに見えるからこそ、見逃されやすかったり、咎めにくかったり、そうこうしているうちに、どんどんエスカレートしてきたり。決してこちらのためではない、そんな可能性もあると思うからです。
このあたりで、私がこの、「あなたのため」というような趣旨の流れに、少し警戒心を抱くようになった、初期の頃の思い出などを少し話してみたいと思います。
小学生の頃、確か3年生以上だったと思うんですが、私、国語と美術と体育が好きというか、多少得意な子どもだったもので、その頃、読書感想文だったか、お絵かきだったか、目標としてコンクールか何かに出すということで、クラス全体が作品を仕上げていた時期がありました。
その際、厳しい先生からあれこれご指摘、ご指導を受けまして、都度修正をして、結構食らいついていく子どもだったので、一通り先生から熱心にご指導を受けた後に出品をしたわけなんです。
そして、無事、何の賞だったか全く覚えてないんですけれども、とりあえず、子どもが「やった~ぁ」って喜ぶような賞をいただきまして、喜んでいました。
その際なんですけれども、先生の虫の居所が悪かったのか、あるいは先生同士の何か力学が何かあったのか、あるいは私に気を許していたのか、子どもだからわからないと思ったのか、それはちょっと何とも言えないんですけれども、その先生からこんな趣旨のことを言われました。
「人気のある先生が、良い先生じゃないから。嫌われても厳しく指導できるのが良い先生なんだ」っていうことをまず言い始めまして、私、何だろう?「先生、なんで急にそんなこと言い始めたんだろう?」って思いながら「ふんふん」っていう感じで聞いてたんですけれども、その後にですね、
「あなたが賞を取れたのも、私があなたのためを思って指導したからなんだ」っていうことを、何か言われ始めまして、そうするとですね私、「え~、何それ。」ってちょっと、その、子ども心にすごく思いました。
「賞を取ったのは、先生の力なんだ、ってことを言いたいの?」って思ってですね、「私、別にズルなんかしたくないし、そんな賞なんて、そこまで言われるんだったらどうでもいいし、それぐらいだったら本当にそのまま出したかった。」
もう何かこうそんな風にその時はまあ、子どもだったってこともありまして、先生を思いやるよりも何よりも、まず、「うわぁ。もうなんだか、本当にちょっとがっかりしちゃった」って思いがすごく残った。そんな出来事がありました。
まあこれだけってことではないんですけれども、なんだかですね、その辺りぐらいから、何かしてもらうと、あるいは、あなたのためって言いながら何かこう恩を着せられるというか、それぐらいだったら本当に自力で何とかして、すっきりしたい、っていうんでしょうか。
そんな思いがまあ、ちょっとね、出るようになったかな、というふうに思います。
その場合、その方ご自身の脚本ですから、この繰り返し何度も何度もですね、この、「あなたのため」、あるいは「心配」っていうような、こういうセリフに象徴されるような、「私、この役でいきますので」という宣言。そんな情報の一つにも見えてくるかと思います。
もちろん承認要求は、誰もが持つ原点ですから、それを満たそうとするのは、とても自然なことだと思います。
また小さな子どもの頃であったなら、育てている親や親的な役割の人が、代わりに判断する必要というのは当然ありますし、成長してからというのも、あんまりにもこの、破滅的な言動を取ったりとか、あるいはですね、大きなダメージを被ったり、他の人に被らせたりするようなことについては、「あなたのため」あるいは「誰かのため」ということも必要になるかと思います。
ただこういったですね、承認要求と人生脚本があるとはいえ、それも程度の問題、限度があるはず。です。
承認要求と人生脚本
もっと身近な例としては、親心と親の言うことを聞かない子ども、こういった関係性が皆様にとっても、ちょっと周りに、かもしれませんが、あるかと思います。
本当にですね、一人の人間を育て上げるというのは大変な労力ですし、また生まれたての子どもはもちろん何も知らないですし、経験もしていませんから、一歩ずつ進むどころか、進んだと思っては後ずさり、後ずさりしたかと思ったらまたぐぐっと進んだり、そんなことの果てしない繰り返しをしながら、苦労してですね、育て上げられていくのだと思います。
特にですね、そんな時は「危ない!」というような、そんな危険からは守ってあげたい。そういう気持ちから、「これをしちゃいけない」、「あれをしちゃいけない」、「それをするとこんなデメリットがある」、「大丈夫なの?」というように、転ばぬ先の杖、としての役割を取られる方も多いように思います。
何か起こして大変な目に遭うということよりも、安心・安全に、という、そういう親心としては、それが自然なことじゃないかなと思うんです。
ただ、守るべき存在だった子どもも、もちろん成長していきますし、心の中に私たちが持っている、「親・成人・子ども」というのも、実際にですね、子ども自身一人前に揃って、調ってきます。
そうなると、親離れ・子離れの時期、というのが来るかと思います。この一通りのデータが入ったら、それをどう使うかというのはもちろん本人次第で、だからこそ一人前ということになってくるのかなと思うんですが、
とはいえ、今までですね、しっかり守り育てて、危険を排除しながらということで、代わりに判断してきたわけなので、この、親離れ・子離れの時期、そんな時期はどうしたらいいんだろう、ということかと思います。
親離れ子離れの時期、一通りのデータが入ったら、それをどう使うかは本人次第。とはいえ、この場合、一人前になるまでの間にたっぷりとお互いの過去の記憶やデータが蓄積されています。
その分、「あなたのため」という言葉も、実際のご恩やら何やらと絡み合いまして、重みや深みでなかなか取り扱いが難しく、身動きが取れなくなる、そんなこともあるかと思います。
ここで第11回目「自己肯定感と、心の基本ポジション」でご紹介しました、「心の基本ポジション」から考えてみる、というのはいかがでしょうか。
改めて、「心の基本ポジション」について。I=私、You=あなた、OK、Not OK、これは肯定か否定かということになるかと思いますが、プラスとマイナスで言い換えたりもします。
この4つの言葉の組み合わせによって表す「4つの基本ポジション」のことになります。
基本的にはどれか1つか2つがベースになってまして、場合によって状況によって動いていきます。I'm OK, You're OK。I+U+、私もあなたもOK。これは「一緒にやって行く」という行動や考え方が出やすいポジション。I'm OK, You're not OK。私はOK、あなたはOKじゃない。
I+U-、「排除する」という考え方や行動が出やすいポジション。I'm not OK, You're OK。I-U+、私はOKじゃない、あなたはOK。
「逃げる」という行動や考え方が出やすいポジションです。
そして最後に、I'm Not OK、You're Not OK、I-U-、私もあなたもOKじゃない、「引きこもる」、「行き止まり」というような行動や考え方が出やすいポジションになります。
心の基本ポジションの活用
そもそもアドバイスや情報提供された側が言うことを聞きもしないで、単に反対の選択肢だからっていうだけで選んでいる。
もしそうであれば、そこには相手を値引くマイナス要素が潜んでいるかなというふうに思います。
どちらも自分の脚本かあるいは過去の経験や記憶、そういった過去のデータに引きずられているかもしれません。
あなたのためと言っている側は、相手の能力や判断を値引きして、U-ということですね。
そして言われている側は、相手が自分の言うことを聞かないんだ、聞いてくれないんだ、というふうに値引きしている。
そんな見方もできるんじゃないかと思います。
I+U-同士でお互いを排除しているのか、どちらかが I+U-、I-U+で「排除する」、「逃げる」というこの、シーソーのような関係なのか。
あるいは話にもならない、I-U-で引きこもってしまっているのか。
これですね、やはり I+U+というポジションを意識することで、あなたのためというものが、本当にですね、相手のためになる建設的な結果になるんじゃないかな、というふうに思います。
「あなたのため」、あるいは「心配」というような言葉や態度に表されるものに、どうしてもですね、気を遣ってしまうような部分がある方、その方にとっては、やはりですね、この心の基本ポジションの考え方をぜひ活かしてみていただけたらなと思います。
お互いの間でこのやりとりをする中、起きていること、これは I+U+なのか。
こんなに強く違和感や負担を感じるというのは、I+U-、I-U+なんじゃないのか。
あるいは I-U-同士なのか。
このように「心の基本ポジション」を使って少し整理をし、冷静になってみるというのは、とても有効な手段なんじゃないかと思います。
では、今回覚えていただきたいポイントは、
「あなたのためは、誰のため?心の基本ポジション」、心の中の「4つの基本ポジション」を活用してみる。
まずは気づくこと、そしていつもと違う変化を味わってみませんか。
ここまで聞いていただきありがとうございます。
また番組への疑問・質問・感想を直接お寄せいただいている方、本当にありがとうございます。
どのような形でお答えをしたらいいのか、今検討しているところでございまして、もう少々お待ちいただければと思います。
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お相手は遠藤美保でした。ありがとうございました。