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2024-05-27 26:01

【INTERVIEW#243】日本人が世界で勝負するために絶対に必要なこと│鈴木健次郎さん(テーラー)

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【日本人が世界で勝負するために絶対に必要なこと】
テーラーとして20年以上にわたり活躍している健次郎さんに、パーソナリティに迫りつつ、服作りに対するこだわりをお話しいただきました。パリでトップテーラーの地位を掴み取った彼のクリエイティブの源泉に迫ります。
全4回にわたってお届けしてきた鈴木健次郎さんへのインタビュー最終回です。最後までお楽しみください。
(2024年4月取材)

【鈴木健次郎】すずき・けんじろう(テーラー/タイユール)
1976年東京生まれ。メンズファッション専門学校を卒業後、某デザイナーの下でモデリスト、クチュリエとして勤務。

▼▼▼
2003年:渡仏。ドイツとの国境の街、Strasbourgにてフランス語習得の後、パリのモデリスト養成学校 Académie Internationale de Coupe de Parisを首席で卒業。
2004年:フランス政府認定モデリスト技術者レベル4を取得。
2004年:パリの名店ARNYS,ブリュッセルNo.1テーラー Pierre DEGANG , LANVIN PARISでの研修を経て、 パリの老舗タイユールCAMPS De Luca にて仕立て職人として研鑽を積む。
2007年:フランスNo.1 タイユール Francesco SMALTO にて技術責任者であるカッターとして招聘。
2009年:Francesco SMALTO にてチーフカッターに就任。日本人でチーフカッターに就任したのは鈴木健次郎が初めてのこと。
2012年:フランスで自身の法人を立ち上げる。
2013年:パリ8区に自身のテーラーショップをオープン。
2019年:パリ8区、フランス大統領府から徒歩数分の場所に2店舗目をオープン。日本人がパリでタイユールとして独立するのは過去に例がない。
2023年:20年住んだパリを離れ日本に帰国。東京都内にパリの空気を感じる、プライベートサロンをスタートさせる。
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お客様と真摯に向き合い、決して手を抜く事なく、最上のスーツを仕立てることを指針にしている。
東京を拠点にしながら年数回フランスに行き、審美眼の高いパリジャンの要求に応え続けている。ミリ単位で顧客の身体に合わせていく手法は、テーラーの枠を超えオートクチュールの服作りと言える。

・関連情報
2013年NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』出演。
2013年『夢を叶えるパリのタイユール鈴木健次郎』(著:長谷川喜美、写真武田正彦/万来舎)

・Web媒体:
Instagram
KENJIRO SUZUKI’S EC SHOP
Web Site
STAND FM

第一回 欧州でトップテーラーになるということ
第二回 フランスのリアル
第三回 ものを創るうえで一番大切なこと
第四回 日本人が世界で勝負するために絶対に必要なこと
再生リスト

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▼【聞き手・早川洋平プロフィール】
はやかわ・ようへい/1980年横浜生まれ。新聞記者等を経て2008年キクタス株式会社設立。羽生結弦、コシノジュンコ、髙田賢三など世界で活躍する著名人、経営者、スポーツ選手等ジャンルを超えて対談。13年からは「世界を生きる人」に現地インタビューするオーディオマガジン『コスモポリタン』を創刊。 海外での取材を本格化するいっぽうで、戦争体験者の肉声を世界へ発信するプロジェクト『戦争の記憶』にも取り組む。 公共機関・企業・作家などのパーソナルメディアのプロデュースも手がけ、キクタス配信全番組のダウンロード数は毎月約200万回。累計は3億回を超える。『We are Netflix Podcast@Tokyo』『横浜美術館「ラジオ美術館」』『石田衣良「大人の放課後ラジオ」』などプロデュース多数。近年はユニクロやネスレ、P&GなどのCMのインタビュアーとしても活躍。 外国人から見た日本を聞く番組『What does Japan mean to you?』で英語での発信もしている。

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▼関連キーワード
#鈴木健次郎#テーラー#タイユール

▼目次
子供達に伝えているオリジンの価値
今一番怖いもの
この3年で最もアップデートされたこと
物作りとお金
テーラーとして20年以上立ち続けられている理由
時代や環境に左右されずに生きるために必要なこと
審美眼を高めるには
鈴木健次郎さんのバケットリスト
メンバーシップ随時募集中

サマリー

鈴木健次郎さんはフランスで生活しながら苦労してフランス語を身につけています。自分のオリジンを忘れずに子供に一番大事なことを教えることを心がけています。服作りにおいてもクオリティを追求し、お客様の満足度を高めるために試行錯誤しています。日本人が世界で勝負するために絶対に必要なことは、人間力と言語力です。人間性や感性の豊かさ、そしてコミュニケーション能力の高さが、グローバルなビジネスや生活において重要な要素となります。自分が学んできたり培ってきたもののこの文化を伝えていきたいという意味では、鈴木ケンジロウさんはスタンドFMなども活用し、もっと積極的に情報発信されるかもしれないと考えています。

00:01
インタビュー
オリジンの大切さ
なんか今日は本誌じゃないんで、そんなに詳しく伺うつもりはないんですけど、健次郎さんがお子さんに対して、あえて教育というかね、放てる上でご夫婦でかもしれないですけど、これだけは伝えてるとか、心がけてることってあります?
鈴木健次郎さん──自分のオリジンはフランスだってことを絶対忘れちゃいけないって言ってますね。オリジンなんですよね。そのオリジンっていうのはやっぱり起源みたいなものなんですけど、それは日本人なんですけど、当然。
ただ、上の子はもう中1なんで、そういう話よくするんですけど、どこで生まれて、自分がどれくらい苦労してフランス語を彼らも身につけていったってことが、今後彼の生きていく中で全部背骨になっていくはずなんですよ。
それを忘れちゃいけないし、ただ今同級生と話してても、フランス語喋れるって言っても誰も評価しないし、誰もわかんない。学校の先生ですらフランス語誰も喋れない。
そういった中で、パパそんなこと言ったら誰も評価しないよって彼らは思うし言うんですけど、そうじゃなくて、やっぱりそれがね、ヨーロッパで生まれたってことの、君が今まで苦労して身につけてきたことの証だし、文化がそこで体の中に入ってるってことが大事なんだと。
そういうことをですね、強く言ってますかね、何度も。
そこがね、失ってしまうともったいなさすぎますよね。
もったいないし、なんかね、パリで暮らしてるとみんなオリジンを持ってるんですよ。で、そのオリジンがもうかなり重要だっていうの、自分のベースなんですよね。
例えばそれは移民問題とかにもつながっていきますけど、うちの子供たちのベビーシッターさんはモロコ人なんですけど、モロコ人ってパリで住んでた方はみなさん知ってる通りとんでもない数がいるんですよね。
フランスとモロコの関係性から。ベビーシッターさんの多くはモロコ人なんですけど、そういった人たちと生まれた3ヶ月の時から預けてみんな働くんですよね。
そういった密な関係をしてて、話を聞いてると、お父さんお母さんがモロコ人で、生まれた子供はフランス人なんですよ。フランスで生まれてるから。でも見た目はどう見てもモロコなんですよ。
で、その人たちが夏のバカンスでモロコに親と一緒に帰る。いとこたちはモロコにいるんですね。話す。でもモロコ子は喋れるけどそんなに流暢じゃない。
ってなると、見た目は一緒でも自分たちはこの場所で生まれてないってことは意識せざるを得ないんですよ。パリに戻ってくると友達もいるし、モロコ子よりもはるかにフランス語喋れる。ここは自分の居場所なんだと思う。
だけど、じゃあいざそれが学業をどんどん進めていって就職するって段階になると、今残念ながらやっぱり国が受け入れ化してるってこともあって、モハメントとか名前がアラブってだけで差別される。就職ができない。アパートが借りられないってことになる。
それが移民問題の根底にあるんですよ。だからフランスっていうかヨーロッパの移民問題ってものすごい根が深いんですけど、それで彼らは自分のオリジンはどこだって考えるんですよ。
見た目はモロコ人じゃないか。でもモロコに行っても自分の居場所はない。自分はだからフランスで生まれたからフランス人じゃないか。見た目はモロコ人でも。じゃあフランスで居場所があるのかって言うとそんなにない。これがオリジンなんですよ。
だからそれをうちの子供たちも絶対感じるわけです。日本人の見た目で日本人の国籍も持ってる。日本語は母国語。でもフランスで生まれて友達はフランスにいっぱいいる。
それがベースになっていくから、それを今言った移民問題の話はちょっと残念な話なんですけど、もっとポジティブに自分で消化させていくっていう時に、僕のオリジンはフランスなんだってことを忘れないで、どんどんそれをプラスにやっていくってことが大事なんだってことを子供に教えるっていう話なんですよね。
じゃあそういう意味では当然的に今の話でいけば、ケンジロウさんとお子さんは親子ですけど、オリジンは違うってことですかね。
そうですね。ただ自分たち、私も妻もすごい苦労して20年間生活しながらですね、苦労してフランス語をどんどんよくしていたってこともあるんで、そういった意味ではやっぱり共通項目があるんですよね。
やはり日本に帰ってこられてね、かなり人生がまた変わったのかなと思うんですけど、そんなケンジロウさんが今一番怖いものをあげるとしたら何でしょう。
怖いものですか。特にないですよね。
フランスの時は怖いものありました?
やっぱり従業員にお給料払えなくなるとかね、そういったお金の運転資金、キャッシュフローってのはやっぱり怖いですよね。人を雇ってる以上その責任が大きいから、今はそういうのはないかな、思いつかないですね。
素晴らしいですね。そういう意味で今の質問から少しポジティブに転じますけど、特にこの3年間でケンジロウさんの中で最もアップデートされたこと、日本に戻ってきたこと以外で何かありますか。
服作りのスタイル
服作りをしていく中でようやく自分の作り方っていうかスタイルっていうか、それが確立されたかなっていう感じかな。
それはもうちょっとだけ言語化するとどういうスタイル?
一般的にテイラーさんって仮縫いの回数が1回から2回なんです。それ以上やると時間がかかるし、やってはバラして、戻るわけですね。
やってはバラして、だから儲けが減る。なので、うちはもう2回しかやらない、できませんっていうところは多いし、ほとんどがそうなんです。
でも私は何回でもやるんですよ。5回でも6回でもやる。例えばやってる間に生地がもう足りないとか、切り直さないとダメってこともあるんです。
それも厭わないで全部やる。自分の儲けが減るじゃないかって、いいんですっていうことですかね。
それがやっぱりベースは変なものを作りたくない。お客様に満足してほしい、感謝っていう気持ちもある。
だけど、それと同時になんですけど、僕の中では、例えば年間60着作るとしたら、60分の1着で終わるんですよ、納品したら。
だから儲けとかを考えたら、これ難しかったね、そんなにうまくいかなかった、80%ぐらいの出来だってなっても、
でも次また頑張ろうよみたいな感じでいっちゃうこともできるんですけど、それを絶対やらないっていうことが今のポリシーみたいなもんで。
昔からそうなんですけど、ただそれがさらに強くなったって感じですかね。お客様にとっては60分の1じゃなくて1着じゃないですか。
もう下手したら一生に一度かもしれないですね。
だからそれを気持ちをやっぱり大事にしないといけない。その1着が逆に僕が2回で仮に収まるところを5回やることで、記事を再注文し直すってことで儲けがほとんどなくなるとするじゃないですか。
それもいいかなと思ってるっていうか。それよりも切りごとで言うことは簡単なんですけど、切りごとじゃなくて、やっぱり感動してほしいんですよね。
自分の服作りを最初に師匠があんまりいなかったってこともつながるんですけど、師匠がいるとですね、服作りは学んできてですね、これはこれぐらいでいいんだってことをやっぱり教わるんですよ。
これぐらいで収めたほうがいい。なぜなら服作りってバランスなんですよね。完璧にやるってことよりも、ある程度のバランスを見て終わりにするってことが結構大事な部分が型紙を作る上とかいっぱいあるんですけど。
私そういう性格じゃないんですよ。とにかくとことんまでやり続けるんですよ。だからバランスとかをある種無視してお客様の体型にどこまでも合わせて彫刻みたいに作っていくと、バランス理論みたいなのが完全に外れるんですよね。
やりすぎると破綻するんですよ。失敗作になる。これは最後までやるとダメなんだってことがわかるから、もう一回作り直しをしようって言って作り直しをする。
そうすることで自分でさらに細かい部分でクオリティがものすごい高い服作りに到達する。そういう作り方ってのが今までもあったんですけど、日本に帰国してからの方がはるかに強いんですよ。
それやっていくと何ができるかっていうととんでもない綺麗なものが出来上がるんです。そこなんですよ。こだわるこだわんないとか別にどうでもよくて、聞いて大して重要じゃないですよね。
僕が仮のように2回とか4回5回やるとかも大して重要じゃないです。上手かったら1回で納めた方がいいに決まってるんです。でもその技術はないから4回5回必要なわけなんですけど、そういうことを1回全部置いといて、お客さんが感動する服、もっと言うなら自分も感動できる服っていうのを作りたいわけですよね。
それがたまに打つフォームランとかじゃなくて、毎回出るコンスタントに出るようにしてるんですよね。そのために記事をもう1回再注文してもうんぬんとかそういうことをやっててもやるってことを今どんどんやってるって感じですかね。
そのクオリティをどんだけ高くするんだってことを前よりももっと深くいけてるっていう感じかなと思いますね。
金銭との向き合い方
でも今ね、そのものづくりって純粋なところとある意味相反するようなキーワードかもしれないですけど、そのお金っていうところで、パリにいるときはお金っていうところと向き合ったときに、ものづくりとしてのお金の向き合い方。
今の話でいけば、その仮縫いをすればするほど、やればやるほどその儲けとしては減るけど、そこは問題じゃないってきっぱりおっしゃったじゃないですか。
逆にそのフランスの法律的なこととか、いろんなところでその税とかでもう本当に儲けがなくなるっていうところは、やっぱりそれは経営者としてはね、消せないところがあったと思うんですけど。そういう意味では今そのお金との向き合い方っていう意味でも、賢者さんの中では健全な向き合い方っていう感じなんですかね。
社会保険料を一つとっても、日本とフランスだとフランスは3.5倍くらい高い。とんでもなく高いんですけど、そういったことから国に払うとか、税金だとか、いろんな諸々の社会保険料とかもストレスは減ったのは事実ですよね。
あとはもう一個は、こういう言い方をすると下品なんですけど、金額が高いんですよ。日本で一番高いと思います。だからこそ、僕は本当の意味でのラグジュアリーをやりたいんですよ。それなんですよね。だから、仮にどこまでもやるんです。ラグジュアリーだからこそ、お客様の満足度を本当に高いものにこだわれるんです。
日本のテーラーさんと話すと、みんな口癖のように言うのが、「儲かんないですよね。儲かんないですよね。」ってみんな言う。で、「うちは従業員いるけど、こんなに支払いが悪いんだ。」っていう支払いを対してしてないこと。いわゆる時給が低いことを自慢のように言うんです。みんな言うんですよ。でも、それが何かおかしなことだとか、かっこ悪いことだとかは、たぶん感じていなくて。
価格が安すぎて、儲けが出なくて、生活が苦しい、豊かじゃないなら、あげたらいいんですよ。あげたらって言うと、あげる勇気ないんですよ。何でかというと、お客さんいなくなるからって思うんです。だから、それって怖いことなんですよ。私だって価格高いことは恐怖でもあるわけです。多少はね。
それもう20年やってるから別にいいんですけど。ただ、それ以上のものがあるんですよ。高いからこそできるお客様との向き合い方もあるし。だからこそ、自分ができる範囲でどこまででもフランス語を使ったアテンドだったり、今でも今度パリに行くってお客様がいたら、それを事前に全部自分がアテンドの準備をしといたりとか。
ワイナリーとかそういうところに自分が電話してとか出向いたりとかしてですね、行ってお世話する準備をしとくだとか。国が離れたとしてもできることっていうのは多くて、そういったことをやれる。これ全部、金額が高いからこそできるんです。だから、なんか安くてですね、そこそこのものを作るっていうことは、私はですけど、全然興味がなくて。
こんなに高いからこそ、最高のものづくりをチャレンジします。できるように本当に自分の全力でやる。そういったやっぱりことですよね、自分がやっていくことが。
高いものを売りたいというより、最高のものを作りたいから、ある意味そのために高くなってる。
昔ですね、私が日本にいたときの最初の師匠が言ってたのは、その時私22とか3くらいのときで、いわゆるマーケットドナルドだとか吉野家だとか、いろいろ安いご飯のものを当然学生だったし、食べたりしてた。
でも、そういうこと言うとね、マックとかの人に怒られちゃいますけど。ただ、それが定食でも何でもいいんですけど、美しいものをあなたは作りたいんでしょうって。そういう人が化学調味料とかにね、あふれたもので食べてて作れないって。
高いものを作りたいんだったら、自分自身もそういう精神状態にいろって言われる。そういうことなんですよね。だから、いいものを作りたいんだったら、やっぱりある程度作り手の方も見てるものだとか、触れるものだとか、生活レベルっていうのは上げていかないとダメなんですよ。そうじゃないと、表面的なことだけで言葉でアートだなんだかんだ言ってもね、作れないんですよ。
やっぱり、服作りってテクニックが大半。みんなが思ってるんです。90%がテクニックでしょ。当たり前なんです。だけど、問題は残りの10%、それから20%か10%かわからないですけど、実は技術がどんどんどんどん上がっていくと、そこで優越の差が出るっていうのは、最後の10%とかなんですよ。完成なんですよ。美しいものをその作り手がどう感じてきて、どういうふうに今まで生きてきて、教養があって、どういうことを信じようとして生きてきた、そこが全部出るんですよ。
技術がある人が良い服作れるわけがないんですよ。良い服作れる人は当然技術はあるんですよ。裏返しとして当然なんですよ。だけど、技術屋が人が感動する服なんか作れっこないんです。そんな単純なものじゃないんですよ。人の感性っていうのはものすごい敏感だから、着た時に理系の人をバカにするわけじゃないけど、理系の頭で機械的に作ったものが、誰かの心を揺さぶるような服は作れないんですよ。
それは全て今言ってることに関係してくるんですけど、やっぱり自分の感性も豊かにしていかなきゃいけない。神秘感を持たなきゃいけない。どういうことでお客さんと向き合うことを。それ全部感情的な部分でもあるわけですよね。感覚的な部分とか。テクニックじゃないんですよ。お客様が喜ぶ度にフランスに行った時に自分がアテンドするとか、それも全部そうなんです。儲けと関係ないんですよ。でも、そういうふわふわした、よくわからないものが大事なんですよ。
そこなんですよ。そこが、やっぱりヨーロッパでやってきた自分の強さであり、日本の他のテーラーさんとの一番の差別化であり、出来上がる服のクオリティーの、クオリティー自分が高いとかね、周りが低いとかそういうことじゃないんですけど、種類の違いだと思いますね。
最初から立つところが違うというかね、腹積もりがやっぱり違うっていうところがあるんですよね。
まあ、そうなのかもしれないですね。
今、ケンジロウさんがタイユール、テーラーとして始めて何年ですか?
30くらいですか。
30年?
大体、はい。そうですね。
市販席過ぎてですけど、海外でやってこられたものも含めて、途中で辞めちゃう方も中には、というかね、もう同然いると思うんですけど、なぜここまで、しかも一線でやってき続けられたと思いますか?
運が良かったんじゃないですかね。
うん。
人に助けられたっていうのが大きいかなと。
なかなかご自身じゃ難しいと思いますけど、即答で運っておっしゃいましたけど、やっぱりその運が良い人と悪い人の境目というかってあると思うんですよ。
その辺ってケンジロウさんどこにあったんですかね。
もっと言うなら、多分場所が合ってたんじゃないかな。
つまりフランスに行ったことが、自分の運を良くしたんじゃないかなと。
日本にいた時、僕はすごいやっぱり鬱憤が溜まってて、ストレスがすごく多かったんですよね。
居場所がないなっていうことを常に感じてた。
だから海外に漠然と出て勉強したいな、働きたいなっていうのがあったんですけど、でも実際突出して行ってみたら、ほとんど苦労しかないんですよ。
大変なことしかなくて、最初にパリに着いた日、妻と一緒に東駅ってところの危ない地域ですね。
そこの安座所のホテルに泊まって、夜ご飯で歩いてたら、路上で生活してるSDFって言うんですけど、不老者にアルコールのなんか酒投げかけて、イエロー帰れみたいなことを。
フランス語ですごい罵られたりして、そこから苦労っていうのはずっと続いたんですけど、ただ苦労はしたけど、自分の運はフランスに行ったことで全部変えられたかなと思いますね。
だからそれが良かったんじゃないかな。楽じゃなかったですけどね。
10年前と同じ質問をさせていただきたいんですけど、どんなジャンルであれ、時代や環境に左右されずに生きるために必要なことって何だと思いますか?
人間力と言語力の重要性
特に10年前より本当にもう怒涛の時代になったと思うんですけど、一瞬にしてね、既存のお仕事とかいろんな価値観が崩れてる今この世界でですね。
やっぱりそれでもそういう時代とか環境に左右されずに生き続けてる人っていると思うんですよ。
そういう人、ケンジロウさん自身も僕からするとそうですし、たくさんのそういういわゆる人たちを見てきて、なんか共通するなって思うことをあげるとしたら何でしょうね。
人間力じゃないですかね。
人間力。
だから日本人ってやっぱりそこがすごい弱いんですよね。言葉がね、語学力が低いですよね。
フランスだとそうですね、なんか4カ国語、5カ国語喋れるって人はゴロゴロいるんですよ。
フランス人だと、例えば親がスペイン人だとかベルギー人だとか、そういうのの根結で生まれた場所がフランスだからフランス人。
それだけで喋れる母国語、まずフランス語、親のスペイン語、ベルギーなんでフラマンですか、フラマン語、プラス英語、これ4つですよね。
もう1個頑張れば5個なんですよ。こういう人はゴロゴロいる。だから言語に対する、エテフエテで言うと彼らはすごい得意な方なんですよ。
ベースがフランスもラテンなんで、コミュニケーションがすごい強い、得意。
それに対して、やっぱり日本人って手先は比較的器用だと思うんですけど、言語のそういう語学力があんまり強い国民じゃないから、海外に出て、いろんな人たちとコミュニケーションを通じて、
自分の知見とかを深めていくっていうことが苦手ですよね。だからやっぱり人間力がすごい大事なんじゃないですかね。
そういう意味では今、人間力イコール語学力って一瞬僕もハテナって思ったんですけど、逆に言うとその日本人の方も当然ですけど、みんなね、素晴らしいある意味人間性、人間力持ってたとしても、それが時代環境が変わる。
つまり単的に言うと海外に行った時に言語ができないと、そもそも自分がどういう人間で何をしてるか何をしたいかっていうのは表現ができない。
つまりその自分がどういう人間かっていうのを言えないっていうところがやっぱり最大の一つのネックなので、イコール人間力がその出てった時に弱いという認識でそんなずれてないですか。
そうですね、はい、そういうことだと思いますね。やっぱり言葉なんかね、別に語学なんて翻訳ツールとかもあるしとか言う人多いじゃないですか。
そういう人たちに限って英語喋れないんですよね。でも実際海外に行ってビジネスやってみたらいいじゃないですかってことなんですよ。
例えばフランスでも英語はみんな喋れますし、いいんですけど裁判官英語喋ってくれますかって絶対喋れないですね。
さっきの話もね。
だしコンサルタント英語でやってくれますかって喋れるんですよ。だけどタイムラグがないリアルなビジネスをやる上ではできないと思いますね。
彼らが大きな会社に勤めているフランス人でその会議として英語で毎日ビジネスをしているっていうのはもちろんあるんですけど、
でももっと深い部分で彼らと付き合っていってフランス文化にどっぷりと使っていって、何を食べて、どういうものをやって、何を見て感動してたりするんだ、日々どういうふうに過ごしてるんだってことを知るにはフランス語を知らなかったらそこに入っていけないんですよね。
あくまで外部の人っていう扱いでやっぱりコミュニケーションになっていくと思うんですよ。だから語学っていうのはすごい重要っていうかそれができないと何も始まらない。
今の時代であっても実際そうだと思いますよ。
ある意味みんなね、チャットGPとかいろんなディープランニングがありますけど、今おっしゃってる本質は絶対解決できないから、ある意味より増してるかもしれないですね。
そういう意味でやっぱり語学っていうのは技術一つ持ってるのと同じくらい深いツールなんじゃないかなと思いますね。
言葉が全てなんですよ、実は。日本人ってそういうことをあんまりわかってる人いる人も多いかもしれないけど、そうじゃない人も多いと思うのは、言葉があるから思考があるじゃないですか。
思考があって何を今日食べるかも決めるし、どこに住むか、何を着るか、誰と会うか、何を話すか、全部これ言葉がベースなわけですよね。
だからそんなに重要なもので自分の思考のベースとなるものなのに、別に英語喋れなくてもさ、別にビジネスできるよって平気で言うじゃないですか。おかしいですよね、ありえないですよね。
まずコミュニケーションできてその上でビジネスだから、ビジネスにはむしろ話にならない。
それはあくまでお客様としてのビジネス相手っていうか、話し相手だけであって、深く対等にそれを何か戦っていくってことはできないと思いますよ。
それこそ母国語ですら当たり前の話ですけど、ビジネスって簡単なわけじゃないわけだから。
だからやっぱり日本の強さっていうのは、この2000年以上続く時刻の文化っていうのの深さっていうのは素晴らしいところだと思うんですけど、
同時にやっぱり不得意な部分っていうのは、そういった言語の部分だったり、あとはやっぱり何回もさっきから話が出ますけど、美しいものっていうのの目がもっと高める教育をした方がいいんじゃないですかね。
日本人の美や文化の再評価
それ、けんじろうさんが日本の総理大臣になるわけじゃないと思いますけど、もしなってそういうことを何か教育できるとしたらどんなことできますかね。
単純にそのアートに触れるっていうこととか、古いものから学ぶってことが大きい部分もあると思うんで、わかんないですね。そういう教育の部分が大きいんじゃないですかね。
あとはでも日本人自分たちが持ってないものっていうと、あんまりそういう美みたいなものは第二次大戦以降ずいぶん失われたんじゃないですか。
それまでやっぱり深く生活に根付いてたと思うし、あったと思いますね、すごくね。それがだいぶ変容したっていうのは大きなところなんじゃないかなと思いますね。
けんじろうさん、これからもね、まだ当然人生は続き、テイラーとしても続くわけで、今この人生で叶いたいことリストっていうのがあるとしたら、そのトップにあるものは何ですか。
生活をもっと精神的に豊かにしたいですね。ストレスをもっと減らして、いいものづくりして、そうですね、自分の時間をもう少しとって、仕事だけっていうのはやっぱり良くないんで、仕事以外の部分でもっと豊かにしていきたいっていう感じですかね。
ちょっと相反するかもしれませんけど、やっぱりね、テイラーという鈴木けんじろうとして、この仕事として、中期的でも長期的でもいいんですけど、逆に目標というか、こういうものをやりたいとか、どんなことでもいいですか。ありますか、今。
仕事のふくづくりとしては、自分が学んできたっていうか培ってきたもののこの文化を伝えていきたいっていうのはありますね。
伝えていきたい。
例えば、今お話しているアートとかのこともそうだし、フランス人の文化ってことは実際はこうなんだよってこともそうだし、パリのテイラー事情っていうののリアルなことを伝えていくことだったり、そういうのも含めて何かしらの媒体で伝えていくってことをやりたい。
そういう意味では、ご自身でやっているスタンドFMとかもそうでしょうし、こうやって今日もこういう機会をいただいたり、ひょっとしたらご自身でまさに何かもうちょっと積極的に発信されるのか、当然講演とかトークもね、これほど喋れる方はなかなかいないと思うので、その辺はもう少しやる可能性はあると。
オファーがあればぜひやりたいですね。伝えるってことはやっぱりずいぶん自分の中でやりたいなぁとは思ってますね。
今まではね、いつもこの最後の締めくりで、ケンジロウさんにお願い、スーツをしたい方はっていうところで、日本に何回帰ってきてみたいな話があったと思うんですけど、逆に日本にいらっしゃるので、ここはね、ちょっと隠れ家的な感じなんで、あれですけど、これ見た方、聞いた方、どうすればケンジロウさんにアクセスできるんでしょう?
鈴木ケンジロウへのアクセス手段
アクセスはインスタグラムの方から、メッセージとか、今作り上げてるホームページも結局自分で作ってるんですけど、それももうすぐ完成して公開するってなったら、そっちの方からコンタクトを取っていただくとか、そういった形で来ていただければと思います。
ということでですね、今日はテイラーの鈴木ケンジロウさんのこのお店にお邪魔してお話を伺いました。ケンジロウさんありがとうございました。
ケンジロウ ありがとうございます。いつもインタビューをご視聴いただいてありがとうございます。この度スタートしたメンバーシップでは、各界のトップランナーから戦争体験者に至るまで2000人以上にインタビューしてきた僕が、国内外の取材、そして旅の中で見つけた人生をアップデートするコンテンツをお届けしていきたいと思います。
ここでしか聞けない特別インタビューや基礎トークにもアクセスしていただけます。随時、これは面白い、これはいいんじゃないかというコンテンツもアップデートしていきますので、そちらも含めてどうか今後の展開を楽しみにしていただけたらと思います。
なお、いただいた皆様からのメンバーシップのこの会費はですね、インタビューシリーズの制作費だったり、国内外のインタビューに伴う交通費、宿泊費、その他取材の諸々の活動経費に使わせていただきたいと思っています。
最後に、なぜ僕が無料でインタビューを配信し続けるのか、少しだけお話しさせてください。この一番の理由はですね、僕自身が人の話によって、うつや幾度の困難から救われてきたからです。
そして何より、国内外のたくさんの視聴者の方から、これまで人生が変わりました、毎日進む勇気をもらいました、救われましたという声をいただき続けてきたからには他になりません。
この声は、世界がコロナ禍に見舞われた2020年頃から一層増えたように思います。
これは本当にありがたいことです。ただ、同時にそれだけ心身共に疲弊したり、不安を抱えたりしている方が増えていることに関わらない、その裏返しであると僕は強く感じています。
正直に言えば、かけぼく自身も15年以上前に起業して以来、最大のピンチといっても過言ではない劇をこの数年送り続けてきました。
でも、こんな時だからこそ森に入ることなく、インスピレーションと学びにあふれる、まだ見ぬインタビューを送り続けることがインタビュアーとしての自分の使命なのではないかと強く感じています。
世界がますます混迷を極め、先の見えない時代だからこそ、僕はインタビューの力を信じています。
これまでのようにトップランナーや戦争体験者の方への取材はもちろん、今後は僕たちと同じ姿勢の人、普通の人の声に耳を傾けたり、
ややもすると打ち抜きになってしまう、今こそ海外でのインタビューに力を入れていきたいと思っています。
そして彼らの一つ一つの声を音声や映像だけでなく、本としてもしっかりと残していきたい、そう考えています。
そんな思いを共感してくださる方がメンバーシップの一員になってくださったら、これほど心強く、そして嬉しいことはありません。
ぜひメンバーシップの方でも皆様とお耳にかかれるのを楽しみにしています。
以上、早貝大平でした。
26:01

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