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思い出の記 後編
2026-02-07 15:28

思い出の記 後編

0172 260208 小泉節子 思い出の記 後編 朗読:冨士原圭希
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おしゃべり本棚。 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
思い出の記 後編
小泉節子 階段は大層好きでありまして
階段の書物は私の宝ですと言っていました 私は古本屋をそれからそれへとだいぶ探して
しました 寂しそうな夜ランプの心を下げて階段をいたしました
ヘルンは私に物を聞くにもその時にはことに声を低くして息を殺して恐ろしそうにして 私の話を聞いているのです
その聞いている風がまたいかにも恐ろしくてならぬ様子ですから 自然と私の話にも力がこもるのです
その頃は私の家は化物屋敷のようでした 私は折々恐ろしい夢を見てうなされ始めました
このことを話しますと それでは当分休みましょうと言って休みました
気に入った話があるとその喜びはひとかたではございませんでした 私が昔話をヘルンにいたします時にはいつも始めにその話の筋をだいたい申します
面白いとなるとその筋を書いておきます それから詳しく話せと申しますそれから幾度となく話させます
私が本を見ながら話しますと 本を見るいけません
ただあなたの話 あなたの言葉あなたの考えでなければいけません
と申しますゆえ 自分のものにしてしまっていなければなりませんから
夢にまで見るようになってまいりました 話が面白いとなるといつも非常に真面目に改まるのでございます
顔の色が変わりまして目が鋭く恐ろしくなります その様子の変わり方がなかなかひどいのです
例えばあの骨董の始めにある幽霊滝のおかつさんの話の時なども 私はいつものように話してまいりますうちに顔の色が青くなって目を据えているのでございます
03:10
いつもこんなですけれども私はこの時にふと恐ろしくなりました 私の話が済みますと初めてほっと息をつきまして
大変面白いと申します あら血が
あれを何度も何度も繰り返させました どんな風をしていったでしょう
その声はどんなでしょう 吐き物の音は何とあなたに響きますか
その夜はどんなでしたろう私はこう思います あなたはどうですなどと本に全くないことまでいろいろと相談いたします
階段の始めにある方一の話は大僧ヘルンの気に入った話でございます なかなか苦心いたしまして元は短いものであったのをあんなにいたしました
門を開けと武士が呼ぶところでも門を開けでは強みがないというのでいろいろ考えて 開門といたしました
この耳なし方一を書いています時のことでした 日が暮れてもランプをつけていません
私は襖を開けないで次の間から小さい声で 保一保一と読んでみましたはい私は女が不自由です
あなたはどなたでございますか と家から言ってそれで黙っているのでございます
いつもこんな調子で何か書いている時にはそのことばかりに夢中になっていました またこの自分私は外出したお土産に美話を断じている博多人形を買って帰りまして
そっと知らぬ顔で机の上に置きますとヘルンはそれを見るとすぐ いや保一と言って待っている人にでもあったというふうで大喜びでございました
それから書斎の滝山で夜笹の外れがさらさらといたしますと あれ兵権が滅びていきますとか風の音を聞いて
断の裏の波の音ですと真面目に耳をすましていました 書斎で一人で体操を喜んでいますから何かと思ってまいります
あなた喜び下され私今大変良きです と子供のように飛び上がって喜んでいるのでございます
06:00
何か良い思いつきとか考えが浮かんだ時でございます こんな時には私もつい引き込まれて一緒になってなんということなしに嬉しくてならなかったので
ございました あの話あなた書きましたか
と以前話しました話のことを尋ねました時に あの話兄弟ありません
もう少し時待てです良き兄弟参りましょう 私の引き出しに七年齢さえも良き者参りました
なると申していましたが一つのことを書きますにも長い間かかったものもあるよう でございました
骨董のうちのある女の日記の主人はただヘルンと私が知っているだけでございます 二人で秘密を守ると約束しました
それからこの人の墓に花や香を持って二人で参見いたしました 天の川の話でもヘルンは泣きました
私も泣いて話し泣いて聞いて書いたのでした 深刻日本では大層骨を折りました
この書物は私を殺しますと申しました こんなに早くこんな大きな書物を書こうとは良いではありません
手伝う人もなしにこれだけのことをするのは自分ながら恐ろしいことです などと申しました
これは大学を辞めてからの仕事でした ヘルンは大学を辞められたのを非常に不快に思っていました
非常に霊偶されたと思っていました 普通の人に何でもないことでもヘルンは深く思い込む人ですから感じたのでございます
大学には長くいたいという考えはもちろんございませんでした あれだけの時間出ていては書く時間がないので困るといつも申していましたから
大学を辞められたということではなく辞められる時の仕打ちがひどいというのでございました ただ一遍の通知だけで解約をしたのがひどいと申すのでございました
原稿がすっかり出来上がりますと大喜びで固く包みまして 表紙を綺麗に書きましてそれを配達証明の書き留めで送らせました
校正を見て電報でよろしいと返事をしてから 2、3日の後亡くなりました
09:01
この書物の出版はよほど待ちかねて死ぬ少し前に 今の深刻日本の活字を組む音がカチカチと聞こえます
と言って出来上がるのを楽しみにしていましたがそれを見ずに亡くなりましたのは 返す返す残念でございます
ペンを取って書いています時は目を紙につけて偉い勢いでございます こんな時には読んでもわかりませんし何があっても少しも他には動きませんでした
あのような神経の鋭い人でありながら全く無頓着で感じない時があるのです ある夜11時頃に階段の扉を開けると酷い油煙の匂いが致します
驚いて襖を開けますとランプの芯が多く出ていてポッポッと黒煙が立ち上がって 室内が煙で暗くなっています
息ができぬようですのに知らないで一生懸命に書いているのです 私は急いで障子を上げ放って空気を入れなどして
パパさんあなたランプに火が入っているのを知らないで危ないでしたね と注意しますと
ああ私なんぼバカでしたね と申しました
それで常には鼻の神経は鋭い人でした あのように考え込んだり階段好きであることから冗談など申さぬだろうと思われるようですけれども
折々上品な骨形を申しました いつも先生に会うと何か一つ冗談のでないことはない
と申された方がございました 面白い時には世界中が面白く
悲しい時には世界中が悲しいというふうでございました 階段の時でも何の時でもそうでしたがもうその世界に入りその人物になってしまうのでございました
話を聞いて感じると顔色から目の色まで変わるのでした 自分でもよく何々の世界とよく世界という言葉を申しました
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