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おしゃべり本棚。 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
寂しき魚。 無朗再生
後編 魚は
時には激しい日光を背中に受けながら 沼の岸の方に体をすり寄せ
そしてはボロボロと落ちる土クレオまで 懐かしそうに食べ尽くすのである
俺の まだ見ないところがある
この岸さえよじ登って行けば それがはっきりわかってくるのだ
俺は毎日この岸辺に来て空の方を眺めている 岸続きの珍しい山川や
夜になると明るくなってくる都会が この岸続きの果てにあるのだ
俺はそれを考えると たまらなくなる
彼はそう思いながら じとじとになった岸の土をパッと飲み込んでは苦しそうに吐いていた
泥にごりした水が乱れた汚い水脈を作っては流れた この土の味わいさえも
今は俺を苦しめるばかりだ 俺は
一日も早く 明るい地上に出て行きたいのだ
不思議な地上 まだ見たことのないものが数限りなくある地上
魚は考え沈みながら ぼんやりと今度は疲れ切って浮いていました
それはまるで日光にすいた沼水の中に いつの間にか鱗の色さえ衰えかけていたが
それでも できるだけの努力と我慢とを続けて
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しつこくその岸辺を離れようとはしなかったのでした 他のいろいろな魚族は
みんな暗く涼しい底の方に沈んで 安らかに昼間は眠りふけているのでした
誰一匹として古いこの魚が 水の上にいつも動かないでいるとは気がつかなかったし
そんなことは 若いピチピチした魚族にとっては
なんでもないことでした ただ
彼らは時々底の方から水の上にぼんやり浮いている大きな古い魚の姿を
まるでそれは描いたような姿でいることを不思議そうに眺めていました 中には
あれは やはり魚族の家だろうかな
ああいう大きな奴がこの沼にいたかな
そう船のようなものが言うと トグロを巻いていた長い魚はこう答えました
いやー あれは魚族ではあるまい
いつもあそこにいるから まだ俺は
あいつの動いたのを見たことがない ところが
また一匹の鯉のような逆しげな尾とヒレを持った魚が あれは
この沼中で一番大きな魚だ あいつは何年前からか知らないが
あそこにじっとして不思議に何かを考えているのだ あれは何も食わないらしい
水ばかりを飲んだり吐いたりしているらしいのだ あれのそばへ寄ると
なんだか 嫌な匂いがする
そう言って気味悪そうにその影を静かに眺めました だが
あいつは一体 何を考えているのだろうか
船のようなものが水垢をかきながらあくびをしいし言いました さあな
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何を考えているのかな と
長い奴が答えると ものうげにくるくるとトグロを巻いて休んでしまいました
その時 水の上の影は日光の塩梅でかげろうのようにゆらゆらしながら
それがまた沼底の方まで輪郭を描きながら 大きなうっすりした陰影を落としているのでした
薄濁りした水底の影があまり大きかったので かえって小さい魚族は誰一匹として知るものがなかったのでした
古い魚は やはり毎日のように浮き上がっていました
悲しそうに 時々ぽっかりと空気を一口吸うと
ぱっと吐いて さて
寂しそうに長い吐息をつくのでした その泡はすぐ消えてしまいます
と また
あとは死んだも同様の動かない姿が いつまでも
そこに長く止まっているのでした 俺は
こうしているうちに 妙に
気が遠くなる日が続いていくのは どうしたものであろう
頭が痺れるようになって つい
知らず知らずうっとうっとしてしまうのだ まるで
夢を見ているような気がする と
彼は ようようと足の根に体を支えながら
非常に弱くなった体をつくづく眺めるようにつぶやきました 実際
彼はいつか見た時と比べると 体中が痩せてしまって
それに鱗の艶がほとんどなくなり どこか
ヨロヨロと尾ひれの力も自由にならないようなところが見えました その目はトロンとして
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何を見つめるということなく 弱々しく
頼りなくなって見えるのでした 俺は
自分でも 次第に体が重くなるような気がする
ともすると じっとしていられなくなって
何者かが俺を引いているような気がする そのため
俺は妙にヨロヨロするのだ そう考えながらもやはり
この地質月に 何かがある
俺にはわからないが 何かが行われている
俺たちの世界にないものがそこにはあるのだ と考えてまたヨロヨロしました
俺の 体の上に何者かが乗っているような気がする
そのため俺は 重くて自由に泳げないのかもしれない
ウオは こう考えたときに
一人でに くるりと裏返しになって
白い腹をあらわしたのでした そのさらされたような白い腹は
浅ましい汗た色をしていました だが
こうして俺は もう起き上がる力さえ
なくなったが しかし
なんという良い気持ちがするのだろう うっとりした何ともいいようのない気持ちだ
ひょっとすると 俺はこのまま起き上がれないで
息が絶えてしまうかもしれない それにしても
俺はなんというやすやすしたいい気持ちになったことであろう 彼がそう考えているうちに
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白い腹が少しも脈を打たなくなり出したのです それは
あまりに長く生きすぎた牢屋としての どっしりした姿が水ぼりにされたまま
しんとした水の上に 今は全きまでに浮き上がったのでした
けれども 彼はいく年間の間考え通した地の上のものを
何一つとして探ることができなかったのでした ただ
安らかな死が 彼のところに来ただけなのでした
バッテン少女隊の春野キーナと青江リノアです RKBラジオでお送りしているガールズパンチ
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