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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
楠山雅雄作 ジャックと豆の木
前編 昔々イギリスの大昔
ロンドンの都から遠く離れた田舎の小屋に 一人のお母さんが
小さい息子のジャックと寂しく暮らしていました。
かけがえのない一人息子ですし、母親はそれこそ目の中にでも入れてしまいたいくらいに可愛がって、
何にも仕事はさせず、ただ遊ばせておきました。 息子を抱えた上に、この母親はどういうものか運が悪くて、
年々物が足りなくなるばかり。 ある年の冬にはとうとう、家の中でどうにかお金になるものは、
たった一匹残った目牛だけになってしまいました。 そこである日、母親はジャックを呼んで、
市場まで牛を連れて行って、なるだけ高く売ってきておくれ、 と言いました。
そこでジャックは牛を引っ張って出かけました。 しばらく歩いていくと、向こうから肉屋の親方がやってきました。
「これこれ坊や、目牛なんか引っ張ってどこへ行くんだい?」
「売りに行くんだよ。」
「ふーん。」 と親方は言いながら、片手に持った帽子を振って見せました。
ガサガサ音がするので、ジャックが帽子の中をふと覗いてみますと、 奇妙な形をした豆が袋の中からちらちら見えました。
「いやあ、きれいな豆だなあ。」 そうジャックは思って、なんだかむやみとそれが欲しくなりました。
その様子を相手の男はすぐと見つけてしまいました。
「坊や、これが欲しいんだろう。こりゃあ不思議な魔法の豆さ。 ただではあげられない。」
「どうだ、その目牛と取りかえっこしようかね。」
ジャックはその男の言うなりに、目牛と豆の袋と取りかえっこしました。
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そしてお互い、これはとんだ儲物をしたと思って、ほくほくしながら別れました。
ジャックは豆の袋を抱えて家まで飛んで帰りました。
「お母さん、今日はほんとにうまくいったよ。」
と大得意で牛と豆の取りかえっこした話をしました。
ところが、
「まあ、なんという馬鹿なことをしてくれたんだね。 こんなつまらない遠藤豆の袋なんかにつられて、
大事な目牛一匹なくしてしまうなんて。」
母親はぷんぷん怒って、いまいましそうに窓の外へ、
袋の中の豆を残らず投げ捨ててしまいました。
そしてつくづく情けなさそうに、しくんしくん泣き出しました。
生まれて初めて、お母さんのこんなに怒った顔を見たので、
ジャックはびっくりして、自分も悲しくなりました。
そして、なんにも食べるものがないので、おなかのすいたまま、
その晩は早くからころんと寝てしまいました。
あくる朝、ジャックは目をさまして、
もう夜が明けたのになんだか暗いなあと思って、ふと窓の外を見ました。
するとどうでしょう。
きのう庭に投げ捨てた豆から目が生えて、
一晩のうちに太い丈夫そうな豆の大木が見上げるほど高く伸びて、
それこそ庭いっぱいうっそーと茂っているではありませんか。
びっくりして飛び起きてすぐ庭へ降りてみますと、
豆の木は空の上までも伸びていました。
すると鳩が絡み合って空の中をどーんと突き抜けて、
まるで豆の木のはしごのようにしっかりと立っていました。
あれを伝わっててっぺんまで登って行ったら、どこまで行けるかしら。
そう思って、ジャックはすぐ登り始めました。
だんだん登って行くうち、
ジャックの家はずんずんずんずん目の下で小さくなって、
いつの間にか見えなくなってしまいました。
それでもまだてっぺんには来ていませんでした。
ジャックは一体どこまで行くのかと思って、少し気味が悪くなりました。
それでも一生懸命しがみついて登って行きました。
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あんまり高く登って、目はくらむし、
手も足もくたびれ切って、もうしびれてふらふらになりかけたころ、
やっとてっぺんに登りつきました。
そこは不思議な国で、青々と茂った静かな森がありました。
美しい花の咲いている草原もありました。
水晶のようにきれいな水の流れている川もありました。
こんな高い空の上にこんなきれいな国があろうとは思ってもいませんでしたから、
ジャックはあっけにとられて、ただきょとんとしていました。
いつの間にか赤い角頭巾をかぶった、
妙な顔のおばあさんがふと目の前にあらわれました。
私はおまえさんたち一家をまもってあげている魔法使いなのだけれど、
この五六年の間というもの、悪い魔物に魔法でしばられていて、
おまえさんたちをたすけてあげることができなかったのさ。
だがやっと魔法がとけたから、これからは思いのままにたすけてあげられるだろうよ。
だしぬけにこんなことを言われて、ジャックはあっけにとられてしまいました。
そのぽかんとした顔を、魔法使いはおもしろそうにながめながら話し出しました。
ここからそう遠くはないところに、
恐ろしい鬼の大男が住処にしているお城のような家がある。
実はその鬼が、むかしそのお城に住んでいたおまえのお父さんをころして、
城といっしょにもっていたおたからのこらずとってしまったものだから、
おまえの家はすっかりびんぼうになって下界におちぶれて、
なさけないくらしをするようになったのだよ。
だから、もういちどそのたからをとりかえして、
わるいその鬼をひどいめにあわしてやるのが、おまえのやくめなのだよ。
こういうふうにいいきかされると、ジャックは知らないお父さんのことがなつかしくなって、
どうしてもこの鬼をころしめて、かすめとられたたからをとりかえさなくてはならないと思いました。
そこでさっそく鬼の住んでいるお城にむかっていそいでいきました。
やがておひさまがにしにしずむころ、ジャックはお城のように大きな家のまえにきました。
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まずとんとんともんをたたくと、なかから鬼のおかみさんがでてきました。
鬼のおかみさんはジャックのひもじそうなようすをみてかわいそうにおもいました。
きのどくだけれどとめてあげることはできないよ。
ここはひとくい鬼のうちだから。
みつかるとばんごはんのかわりにすぐたべられてしまうからね。
どうかおばさん、しれないようにしてとめてくださいよ。
でも、ぼくもくたびれてあるけないんです。
しかたのないこだね。
じゃあ、こんやだけとめてあげるから、あさになったらすぐおかえりよ。
こういっているさいちゅう、にわかにずしんずしんじひびきするほど大きなあしおとがきこえてきました。
しゅじんのひとくい鬼がそとからかえってきたのです。
鬼のおかみさんはおおあわてにあわてて、ジャックをだんろのなかにかくしてしまいました。
鬼はへやのなかにはいるといきなり、
ふーんとはなをならしながらびっくりしてふるえあがるようなおおごえで、
ふーん、ふーん、ふーん、いんぎりすじんのかおりがするぞ。
いきていようがしんでいようが、ほねごとひいてぱんにしようぞといいました。
するとおかみさんが、
いいえ、それはあなたがつかまえてつちのろうにいれてあるひとたちのにおいでしょうといいました。
けれど鬼のおおおとこはまだきょろきょろそこらをみまわしてはなをくんくんやっていました。
でもどうしてもジャックをみつけることができませんでした。
とうとうあきらめて鬼はいすのうえにこしをおろしました。
そしてがつがつがぶがぶたべたりのんだりしはじめました。
さてたらふくたべてのんだあげくおかみさんに、
おい、にわどりをつれてこいといいつけました。
それはふしぎなめんどりでした。
テーブルにのせて鬼が、
うめえ!
といいますとすぐきんのたまごをひとつうみました。
鬼がまた、
うめえ!
といいますとまたひとつきんのたまごをうみました。
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いやあ、ずいぶんとくなにわどりだなあ。
お父さんのおたからというのはきっとこれにちがいない。
とそっとながめながらジャックはおもいました。
聞きたいラジオ番組なんにもない。
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