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茶話 ススキダ吸菌 結婚
文学者の永田秀夫、三木彦司氏のお母さんに妙な病気がある。 妙な病気というのは、
養殖を食うときっと責理になるというのだ。 こういうと村女そこらの養殖屋はムキになって怒り出すかもしれないが、
実際のことだから仕方がない。 もっとも永田氏のお母さんはそんな体だから、
めったに養殖なぞ食べない。 これまでギリに迫られて、サンドばかしフォークを手に取ったことがあるが、
サンドがサンドとも責理になった。 第一回は麹町の藤見県。
第二回は上野の西洋圏。 第三回は日本橋の東洋圏で食べたのだが、
その後ではいつでも決まったように病気になった。 偉人の食べるお料理はどうも性に合わないもんと見える。
永田氏のお母さんはこんな考えで、今では養殖屋の前を通るときは、袖で鼻を押さえて小走りにあたふた駆け抜けることにしている。
ところが、このごろ長男の秀吉の結婚団が持ち上がっているので、お母さんはその疲労の宴会をどこにしたものかと、今から頭痛に病んでいる。
高月、松本楼、伊勢寺、魚住、
どこに決めたもんかな。 とお母さんは知っている限りの料理屋を記憶から呼び出して見積もりを立ててみるが、
時間と狩猟の制限から言うと、やはり西洋料理屋を選ぶに越したことはなかった。
やっぱり養殖屋にするかな。 と思うと、お母さんはもう下っ腹がチクチク痛み出してくる。
お母さんに教える。 時間も費用もかからねば、お腹も痛まず、おまけに息子さんの秀吉も喜ぶという妙法が一つある。
それは、 日本料理屋でも養殖屋でもない。
当分、 結婚を延ばすということだ。