誤認の面白さ
似たひと、宮本由里子。お茶を淹れている私のそばで、ある友人が栗の皮を剥きながら、「あなた、染物屋の横にあるお風呂へよく行くの?」と聞いた。
「行かないわ。」
「ほんと?じゃあ、どうしたんだろう? 終始あそこで見かけるって言っていた人があってよ。」
吹き出しながら私は、
「お気の毒だわ、間違えられたひと。」
と言った。
こんな朝露着のようなの、やっぱりあるのかしら。
それから、ほどもないある夕方。
がらりと格子を開けて、紙包みを抱えた妹が入ってきた。
立ったまま、
「今日、お姉さまに上野の広小路と山下の間で会った。」
と、はぁはぁ笑った。
「いやよ、何言ってるのさ。だって、バスに乗っているすぐ隣の男の人が、ほら、あれって言ってるんだもの。」
「見たの?」
「ううん。混んでいて、そっちは見えなかった。」
私があんまり丸っちいので、いくらか丸い、あるいは相当丸い人が、
みんなそのひとつの概念に当てはめて間違われるのは、なかなか愉快だと思う。