00:04
はちとくま 村山籌子
一匹の小熊が森の中から のこのこと日当たりのいい野原に出てきて
倒れていた丸太の上に腰をおろして 嬉しそうにふふんと笑いました。
小熊は懐から蜂蜜を入れた壺を取り出して 指でしゃくって
ちびちび舐め始めました。 いつ食べてもうまいのは蜂蜜だ
蜂蜜に限る 甘くって
美味しくって
と独り言を言いながら せっせと舐めておりました。
するとそこへ 一匹の蜜蜂が
ブーンと飛んできて 小熊の帽子の周りをぐるぐる舞いながら言いました。
小熊さん 僕は本当に腹が立ってたまらないよ
何が腹が立つんだ 僕は何も君に悪いことなんかした覚えはないよ
と小熊はやっぱり 蜜を食べながら答えました。
すると蜜蜂は だって君
考えてみたまえ 君は僕たちが長い間苦労をしてためた蜜を
それこそベロベロと 見ているうちに舐めちまうんだもの
これくらい腹の立つことはないよ と羽を震わせて言いました。
小熊は こう言われてみると
なんだか蜂に気の毒なような気持ちになりました。 そこで
蜂くん そんなに怒らないでくれ
その代わりに僕は君をいいところへ連れてってあげよう と言って
03:02
小熊は蜂よ 花のいっぱい咲いている
誰も知らない谷間へ連れて行ってやりました。
