雨から曇りへと移ろった暮れ方、橋を渡って花の部会へと向かう。こうした会の前には決まって憂鬱が訪れる。裁判にかけられるわけでも、検察に詰められるわけでもないのに——それでも歩を進めるのは、この部会に身を置くこと自体が、自分は敵ではない、ここにいる、という地域への小さな表明だからだ。
橋の上から屋根が見える。平成末に建てられた自宅と、それより古い昭和築の隣家。錆びはじめた自分のトタンを眺めながら、家の年輪を読む数分間。
午後までの一日は土と向き合っていた。母の日に活躍したアストランティア・ローマの株分けと植え付け、Y圃場の八分の一ほどまでの定植、ハウスへのアマランサスの播種。そして作業の途中、枝変わりかこぼれ種か、大ぶりの白花に緑の縁を持つアストランティアが数株。「グリーンヘイロー」という仮の名を与えて掘り上げる。緑の縁と、太陽のコロナのように滲む光輪。三株出たならば固定種かもしれない——名づけは観察の始まりであって、結論ではない。
昼に手繰ったののやの蕎麦は、舞茸天のひとつがこしあぶらに替わっていた。一皿のなかで、山の季節が静かに差し替わっていく。
カジカガエル(河鹿蛙)の美しいコーラス 背景で「コロコロコロ…」と優しく響く細かな振動音。正体は、清流を好むカジカガエルたちの歌声です。5月に繁殖の最盛期を迎える彼らは、川の流れる音にかき消されないよう、通りの良い高周波の美声で鳴き交わします。
夕暮れの鳥たちの気配 川の音を突き抜けるように時折聞こえる「ピピッ」「チッチッ」という短い声。橋脚や河川敷を縄張りにするセキレイ類やツバメたちが、巣に戻る前に交わす一瞬のコミュニケーションかもしれません。
川の轟音という自然のノイズの中で、かき消されまいと独自の周波数で声を届かせようとする生き物たちの「音の住み分け(ニッチ)」。
初夏の心地よい夜風と、移り変わる山の季節を、耳から感じてみてください。
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サマリー
語り手は、地域の会合に向かう道すがら、自宅の屋根の老朽化や、母の日に妻と行ったアストランティアの株分け・植え付け作業について語る。特に、緑の縁を持つ珍しいアストランティア「グリーンヘイロー」を発見し、その可能性に期待を寄せる。また、蕎麦屋での食事で山の恵みを感じ、カジカガエルの鳴き声や鳥の気配といった自然の音に耳を澄ませる。