八重洲のミッドタウン
中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル、仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャットです。
田中 愼一
コミュニケーションの修羅場を人生のチャンスと思い込んでいる田中愼一です。
高木 恵子
SEから転職しPRを始めて早四半世紀、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住の中川浩孝です。
田中 愼一
先週の土曜日に実は八重洲に行ったんですよ、八重洲にね。
八重洲って言うとね、案外行かなくて、新幹線乗って京都からどっか行くって言う時には八重洲駅口に出るけども、だから最近の八重洲ってあんまり知らなかったんですよね。
中川 浩孝
そうですよね、あんまり変わり映えしない感じでしたもんね、昔はね。
田中 愼一
昔はね。それがね、突然ね、東京駅も変わったけど、どでかいね、ミッドタウン八重洲を中核にですね、周りにいろんな建物がゴンゴンゴンゴン建ってて、
で、いずれにしてもね、えーっていう風に驚いたわけですよ。
で、なんで八重洲に行ったかっていうと、いわゆるスーツを買いにね、テーラーメイドでね、結構お安くあったんで行ったわけですよ。
ところが、店自身は良くて、実際に着ね、お願いしたんだけども、でもね、八重洲の凄さに圧倒されちゃって、
で、すげーなと、東京どこまで変わるんだと。で、このまま行くとどんどんどんどん、これ例えば10年後どうなっちゃうのか、20年後どうなるのかなんて、いろいろ考え始めたのに、いずれにしてもね、危機に迫る感じで来るわけですよ、八重洲の風景が。
で、ただ一方でですね、一抹の不安を覚えるわけですね。
で、なんで一抹の不安を覚えたかっていうと、その世の中がどんどんどんどん変わってくるっていうものに対して、自分自身がですね、追いついてないんじゃないかという不安もある。
で、しかもね、最近物価高ってことでいろいろ値上げしてますよね。で、まあ会商分所得がね、なかなか日本人は増えないっていう中で、八重洲のミッドタウンを見ると、まあお高いものがたくさんあってですね。
中川 浩孝
いやでもなんか、こないだ私もほら4月日本に行ってたじゃないですか。なんか日本って本当にこれは不景気なのかなっていうくらい、なんかみんなお買い物もちゃんとしているし、なんか物も高い。まあ今物価が全世界で高いってのもありますけれども物も高いし、なんかすごいですよね。なんか景気いい感じがありますよね、確かに。
田中 愼一
いや景気いいでしょ。で、しかもね本当にね最近、コロナであんまり会食っていうか接待も含めて会食してなかったのが、ここ最近また復活し始めたんだけど、高いこと高いこと。多分ね、下手すると3割から4割ぐらい高いですね。
高木 恵子
すごいですね。
田中 愼一
ありえない話で、だからなんかね、そういう周りの景色っていうのがですね、こう迫ってくるっていう感覚を覚えたんですよ、八重洲に。
で、少なからずその心がね、なんていうの、穏やかじゃないなと。ちょっとこれはなんか、こういうものばっかり見ているとね、だんだん苦しくなってくるのかなと。
なんかこう、これはちょっと苦しいなっていうふうになってくるのかなっていう、なんか癒やす感っていうかそういうものを感じたんですよ。
高木 恵子
でも、新しいものに変わったことは、いいことじゃないですかね。
田中 愼一
いいことなんだけども、あまりにもその、なんていうのかな、物事のスピードが速すぎると、多分人口の気持ちの方が追いついていかなくなって、それが逆に不安というかね、そういうものを作り出してしまうっていうことだと思うんですよ。
で、実際、その不安を抱えながらスーツ屋行ったわけですね。
で、スーツ2着着て作って、で、テーラーメイドですごくいいんです。本当に細かくやってくれるわけですよ。
着るとね、さすがにテーラーメイドだから、なるほど、きちっと作り込むんだなと。
で、まぁできるまで1ヶ月かかるって言うんだけども、いずれにしても測ってる間にですね、新しいスーツを着て、こうやってるうちにですね、だんだん、だんだんね、あのね、不安ね。
そのミッドタウンに入った時の不安がですね、だんだん軽減されていくわけですよ。
高木 恵子
へー。
見える世界と見えない世界
田中 愼一
で、なんでだろうってこう思ってたら、実はスーツを作るというそのプロセスの中にですね、何が起こったかというと、鏡を前に来たり後ろ見たりこうやったりやるわけですよ。
でね、測ってるスタイリストの人は、いや足長いですねなんて言われたりね。
いやそうなんですよっていうね、こういう会話をしながら、だんだんこっちが明るくなってくるわけですよね。
ああ肩幅広いですね、これ結構ガッチリいいですね、ああそうですか、とかね。
そんな話をしてると、だんだんだんだんですね、なんだろう、あのね、イマジネーションっていうのが働いてるんですね。
高木 恵子
ほー。
田中 愼一
で、そのスーツを今作ってるっていう、それがですね、いろいろなこうなんていうのかな、イマジネーションというか妄想というかそういうのが出てくるわけですよ。
で、もともとなんでスーツなんかと思って、もう最近ね、コロナ以降なかなかスーツ着る機会っていうのは少なかったんだけども。
だと言うと、今、僕の仕事の集中してるところっていうのは、トップマネージメントの人たちの発信力をどう強めるかっていう一種の仕事をしてるわけですよね。
で、コロナが解禁になったということもありですね。
いわゆるもうかなりの頻度でその仕事が入ってきてて。
で、そこでこうね、お偉いさんというかトップマネージメントの方々と会うっていうのは、やっぱりスーツ着なきゃダメでしょ、やっぱり。
高木 恵子
そうですね。
田中 愼一
でも本当にスーツってね、買わなかったんですよ。
だからこれはって言ったんですけど、でも着てるうちにね、測ってるうちに徐々に徐々に、これはある意味ね、新しいトップマネージメントの発信力を高める一つのビジネス分野をこれから開拓していく。
そのまさにスーツを着ることによってね、いざ鎌倉って感じのね、イマジネーションが湧いてくるわけですよ。
何が起こったかというとね、元気になるんですね。
元気になってね、今週は何回、今週ひどいんですよ。
大体ね、1週5日のうち4日間はトレーニングなんだけど、トップマネージメントとの発信力強化週間なんだけども。
もうそれがね、めんどくさいなと思ってたのが、俺はこれから頑張るぜって話になって。
でもうね、計画、水曜日はこうこうこうって、どんどん緻密になって。
どんどんどんどん自分の心がですね、八重洲のミッドタウンの入り口にいて、だんだん心が暗くなっていくと同時に、それが今度逆に明るくなってくる。
実はよく考えてみると、八重洲のミッドタウンに行った時に、僕に迫ってきたものっていうのは、今の表現で言うと表現なんですね。
つまり、目に見えるものっていうのは全部表現なんだ。
車は車を表現してるし、人間は人間の個性を表現。
全て見えるものっていうのは表現なんですね。
その表現をワーッと一気に受ける中で、その表現の中から多分この自分の不安とか、心配症的なものっていうのが発生してるっていう。
だから見えるものに心が影響されたってことなんですよね。
ところが、それがスーツを着てスタイリストが測ってるうちに、だんだん自分の鏡でその姿を見てることによって、実は今見えてる以外の見えないものを、実はイメージしてるんですね。
まあ言い方変えると見えないものを見てるんですよ。
多分これ人間とってすごく重要なことで、見えるものだけで多分喜怒哀楽が決まってくるっていう世界は実は結構苦しくて。
目に見えない、見えるものだけで喜怒哀楽が左右されるっていう中では、そこで何か非常にネガティブなことを受け取ったときに、そのネガティブを解消する唯一の方法が実は見えない世界を見る。
見えている世界以外に見えない世界も見ることによって、その今見えてる世界で来た心の不安とかそういうものっていうのが実はもう一つ見えない世界を見ることによって解消されるっていう、逆に言うともっと積極的に元気になる。
スーツを実際にテーラーメイドでスタイリストの人が作ってるこの自分の姿を鏡で見てる中で、徐々に徐々にかっこいいじゃんかとかね、いいね、こういうところでトップマネジメントとこの姿であって、いろいろ発信力どう強めるかっていうのを相手とやり合うっていうのがイメージされてくると、今それは目の前には見えない世界ですよね。
トップマネジメントの人たちとこうだこうだってやってるようなセッションなんていうのは今見えてないんですよ。でもそれをイマジネーションによって見ることが一つの元気を与える。だから多分人間っていうのは見えないものを見ることによって元気になるっていうのは言えると思うんですね。
中川 浩孝
おもしろいですよね。でも私あんまり普段、ネガティブな気分になることってあんまりないんですよ。
田中 愼一
いいじゃないですか。だるまさんからね。
中川 浩孝
安定してるんですけど、逆に想像するとマイナスなことを想像してしまうことの方が逆に、むしろ普通の生活は楽しくしてるんだけれども、いろんな将来のことを考えると不安が襲ってくるというか、こういう風になったら嫌だなとか、そういうのを逆に考えちゃうのであんまり先のことを考えないようにする。
逆に私の場合は、もしかしたら、田中さんとはもしかしたら、むしろ逆なのかなと思います。
田中 愼一
でも結局、実は落ち込む時ってあるじゃないですか、人間。
中川 浩孝
もちろんありますね。
田中 愼一
落ち込む時っていうのは、実は見えない世界を見ちゃってるんですよ。
中川 浩孝
そう、そうなんですよ。
田中 愼一
それももちろんあるんですよ。だからそうなると、実はどっちにも行くんですよ。
中川 浩孝
そう、どっちにも行っちゃうんですよね。だからね。
田中 愼一
本当は何が必要かというと、その両方のギアチェンジが即できるようにしておかないといけないんですよ。つまり見えない世界と見える世界のギアチェンジ。
見える世界と見えない世界
田中 愼一
で、見える世界で元気になれるんだったら、それはそれでいいじゃないかと。あとは重要なのは、見えない世界を見る時に気をつけろと。
中川 浩孝
そうですね。
田中 愼一
で、逆に見える世界がネガだったら、いかに見えない世界でポジに変えていくか。
中川 浩孝
うん。
田中 愼一
だから見える世界と見えない世界っていうね。だからまあ表現という見える世界と、そうじゃない、イマジネーションという見えない世界。
この2つをいかに交互に、こうギアチェンジしながら、やっぱり話をしていくというか、そういうふうに、まあ僕の言葉で言うとコミュニケーションという受信をし、そっから発想し、そっから自分の表現を作っていくという発信になる。
これが多分一つ重要なカラクリなんでしょうね。
中川 浩孝
うん、確かにそうですね。
田中 愼一
だからコミュニケーションやってると、やっぱりその見えない世界を見るっていうのは、どこに一番効くかって受信なんですよ。
高木 恵子
うーん。
田中 愼一
目の前で起こっていることをどう受け取るか。
目の前で表現されている見える世界をどう受け取るかっていうのは、確実に見えない世界をある程度見てないと、意味づけられないはずなんです。
高木 恵子
うーん。
田中 愼一
で、人間は意味づけの動物ですから、だから見える世界から何が意味づけられるか。
見えない世界から何が意味づけられるかっていうのが、実は人間の受信の部分の感度っていうか。
だからそこの意味づけ力っていうのが人間にとって僕すごく重要だと思うんですね。
目の前で起こっているものを自分にとってどういう意味があるのかっていうふうに意味づける力っていうのは僕はやっぱりコミュニケーションの力の一つだと思うんですよね。
受信力。
中川 浩孝
まあそうですよね。普段からそれはなんか訓練していないとでもできない能力ですよね、だから。
田中 愼一
そうですね。
中川 浩孝
訓練というか慣れなんですかね。
田中 愼一
あの多分ね、受信、発想、発信っていう、僕の場合はコミュニケーションその3つのプロセスっていうふうに定義してるんですけども。
そこをどれだけ意識的にしっかりやっていくか、無意識のうちにやってるか、この差は大きいことは間違いないでしょうね。
コミュニケーションの力と意味づけ
中川 浩孝
うーん。
田中 愼一
だから、まあ我々結構コミュニケーションの世界にね、この3人とも関わってるんですけども、やっぱり日々自分のそのコミュニケーションというのは意識してきたんでしょうね。
で、多分その意識の仕方っていうのをもう少し分析すると受信発想発信っていうそのサイクル、このぐるぐる回すものを日々意識しながら回していくうちに徐々に見える世界をどう見つけるか、さらには見えない世界をどう見つけるかっていう。
だから多分表現とイマジネーションっていうのかな、なんかこの2つがなんか関係してるなって気がしますけども、まあそういうのがよりそのものの感じ方をね、より高度にしてるっていうか意味あるものにしてるんじゃないかなって気がします。
だから人間の呼吸とか、あのあるいは食をね、連鎖ね、あの人間を支えているその連鎖っていうのは、まあ食の連鎖もあれば呼吸っていうのもあるけども、このコミュニケーションっていうのはやっぱり一つの連鎖ですよね。
人間が行っている受信発想発信。だからここはね、やっぱりコミュニケーションというのは面白いなと思いますよね。
高木 恵子
私多分以前、あの田中さんにお伝えしたと思うんですけど、まさにすごくいい今の体験を自分はしたことがあって、あのまあちょうどコロナの時に母が亡くなってしまって、まあコロナではなかったんですけど、その仕事もずっと家で一人でやってて、
ずっと一緒に住んでた母も亡くなってっていうその何とも言えない空虚感的なもので、しばらく本当になんかあの家にずっといたみたいな感じだったのが、何かのきっかけで、
それこそ鬼滅の刃を全巻ずっと読み出したんですよ。で、そのなんか鬼滅の刃ですごい気が、気づかされることがあって、なんかそのやっぱりあのまあ別にここでネタバラシをしてもそんなに大きな影響はないと思いますけど、
鬼滅の刃ってあの炭治郎たちの親とか兄弟がやっぱり鬼に殺されちゃって、炭治郎と根塚が鬼退治を始めて頑張っていくみたいなストーリーじゃないですか。で、こんな子どもたちが親や家族をなくして頑張ってるんだっていう単純なそれに、なんか私勇気をもらえたんですよ。
で、なんかその現実、今母親がいなくなったっていうその現実をやっぱり見たことでの、そのなんかいろんなそのネガティブな感情を、そのまあ鬼滅の刃っていう事実じゃないところの話なんだけれども、そこを自分でなんか、たぶん私の場合はそれを自分ごとに置き換えて、なんかこう勇気をもらって、
現実の生活に自分でなんか落とし込んだみたいな。なんかそこからすごくなんか、えっと、すごいなんかのほんとターニングポイントみたいにパッとこう、まあ完全に気分が晴れたわけではないんですけど、なんか前向きになりましたよね。
あ、そうか、こんなとこで止まってないで、なんかもっとやることがあるなとか、当然みんながこう経験する親の死とか大切な人の死っていつかは迎えるものっていうのが、今私が来ただけで、じゃあそこからどうするかっていうのを何か自分でこう前に進むことをやっぱり考えた方がいいんだなっていう、なんか流れにすごい持ってかれましたね。
田中 愼一
それはあれですよね。やっぱり今、目に見えているものっていうものに囚われないってことですよね。
高木 恵子
うん、そうですよね。
田中 愼一
囚われない、囚われなくなったから先が見えるようになってきたわけですよね。
高木 恵子
うんうんうんうん。
田中 愼一
なんかイメージ、だからそれは見えない世界ですよね。これから自分のこうやって生きていこうっていう先が見えてくる。だから炭治郎の場合もそうですよね。目の前で起こっていることは悲惨なもう見えるものしかないわけで。
その中であれだけ炭治郎が頑張ってね、やっていくっていうのは、見えないものをしっかりと彼は見てるわけですよね。
高木 恵子
そうなんですよね。あとその後世にやっぱり残す、自分たちが戦って仮に亡くなっても、この鬼をこの世から抹殺するっていう思いはずっと継承されるっていう。
田中 愼一
そうですね。
イマジネーションの重要性
高木 恵子
その何かこう考え方っていうか、その継承する、自分がいなくなってもできなくてもこの思いだけは消えない一生ちゃんと継承されるっていう、なんかそこにすごいなんかもうズドンってくるものがきましたね。
田中 愼一
見えないものっていうのがその思いであるとか、継承するって目の前で別に思いは見えないし、実際に継承するって言ってもそれはやっぱりイマジネーションの世界ですから。
だからやっぱり僕はイマジネーションがすごく重要かなと思いますね。だからそれが人間に勇気を与えるとか元気を与える。
高木 恵子
そうですね。
田中 愼一
それは間違いないなと思います。
高木 恵子
だからすごく今コミュニケーションを四半世紀以上仕事にしてますけど、この仕事で救われてることもいっぱいあるだろうし、仕事が面白いっていうこともあるので。
だからこのコミュニケーションの良さをやっぱり広くもっと伝えたいっていう気持ちが強いっていうのもあるし、それがねこのポドキャストの一つでもありますよね。
田中 愼一
やっぱりね、見えないものを見るっていうことができるようになってくると、人間ものすごく幸せになりますよ。
高木 恵子
そうですね。
田中 愼一
やっぱり見えるものだけで、あるいは見えない世界を間違ってみるがために、今の生活を苦しむっていうか今苦しんでいる。
そうじゃなくて、やっぱり見えるものから何を意味を取って、さらにはその背後に見えない世界を描くことがやっぱり自分が元気になっていくっていうのは間違いないと思いますね。
僕もコミュニケーションの本当の始めの始めっていうのは、僕が本田にいたときに海外営業部にいたときに突然部長から呼ばれて、おい田中、お前、来月じゃないな。
3ヶ月後にワシントンD.C.駐在だって言われて、えーって言われて、何しに行くんですかって言ったら、PRをやりに行くんだって話になって。
PRって何ですかって言ったら、パブリックレーションだって。パブリックレーションって何ですかって聞いたら、怒り出してね、部長が。
てめえうるさい、と。そんなのお前、向こうへ行って習えばいいだろっていうね、いい加減な部長だなと思ったんだけど。
その後彼が言い訳がましく怒ったことを恥ずかしく思ったんですよね。まあなって田中と落ち着けと。部長も落ち着かなきゃいけないのに。落ち着けと言ってね。
本田っていうのはですね、目に見えるものにはものすごい強みを発揮する。ところが目に見えないものは、からっきし弱い。
お前はこれから目に見えないことをやりに行くんだと。
高木 恵子
なんかすごい部長さんですね。そんな言葉を。
田中 愼一
本田の中でもフロンティア最前線にいるんだぞって言って、何を言ってんだこの部長とね。
なんかわけがわかんない、見える見えない話でごまかすつもりかっていう話で僕はその時は思って、アメリカに行ったんですよ。
中川 浩孝
でも田中さんを選んだのは、おしらはの矢を立てたのは何か理由があったというか、そこに田中さんに何かを見たんでしょうね。
田中 愼一
英語ができたってだけの話。
たぶんアメリカからは英語ができるやつを送り込めって言われてた。
ただあの当時の本田って英語どこじゃなくて、僕なんか英語しかできなかったんだけど、周りは海外営業部のときはポル語とスペイン語みんなできるんですよ。
本田って中途が多いから、あの当時。ほとんど中途採用が多かったんで、だからみんなすごものがたくさん集まってて。
その中でいくら英語ができるかって言って、俺がなんで選ばれたのかってのはよくわからないんですが、僕としてはがっかりで、営業の道を越えて外れるのかって言うんだよね。
とにかく出世するためには英語があるなんて勝手な思い込みを持ってた。
だからそれでアメリカ行ってPRに接したときに、見えないものと見えるものっていうのが、少なくともその時点である程度腹落ちしたんだよね。
人の意識の見えない世界
田中 愼一
やっぱり人の意識ってわかんないんですよ。見えないんですよ。行動とか表現は見えるんですよ。
表現は見えるんだけど、その背後にある意識とか思いとか偏見とか怒りとか、そういうものっていうのが見えないんですね。
中川 浩孝
なんかでもそれは前回の話みたいな、ジンバブエで体験した人種差別の話とか、やっぱりそういう他の人が持っていない経験を持っているっていうのは何かあったんじゃないですか、田中さんの中に。
田中 愼一
もしかしたらあった。ある意味確かに共通項というのは、当時のローデシアでは、自分がどうやって周りの役に立つか。
同じ学級の中で、変な黄色い点だったのが、こいつなんて野郎だと思われてたのが、いわゆるホンダのおかげで、いわゆるホンダに乗っていたチャンピオンがローディッシャ人で、
そこと握手したり写真持ったり、それを学校に持って見せびらかしたり、あげたりなんかして、相手の役に立つことによってリスペクトを勝ち得たってこと。
似たような状況が実はホンダで起こってたんですね。
中川 浩孝
面白いですね。
田中 愼一
それは当時いったときは日米通商摩擦でも、日本メーカーが、自動車メーカーがもう悪っていうふうに色塗られて、
世論が反日世論になっていて、とにかく日本メーカーは悪い企業。
いろんな事件が起こるわけですよ。
例えば日本車が燃やされてあっちこっちで、中国系アメリカ人が日本人に間違えられて失業した労働者にバットで殴り殺されたとか、そういう時代だった。
そうなった時に多分共通してたのは、ホンダがいかにアメリカに役に立つ会社なんだっていうことをいかに訴えることが逆にホンダに対するリスペクト。
だから実際はアメリカで7年やったんですけども、やってきたことってのはアメリカの世論をどうホンダの味方につけるか。
それにはやっぱりアメリカにアコードやシビックだけ見せてもしょうがないんですよ。
やっぱり見えない世界、ホンダっていうもので自動車、アコードシビックは見えるんですね。
でもその背後にある見えない世界をどうアメリカ国民に見せるかっていうのがやってきた7年間の仕事だった。
あくまでも僕を配属した海外営業の部長は立派な人なんだけど、確かに意味のあることを、
本人がそれを意識して使ったかどうかは別として、見えるもの見えないものっていうのはそこから始まったんですね、僕の頭の中に。
20何歳だ、6歳ぐらいのときかな。
多分そこあたりの発想っていうのがまだ僕の中にもあって、見えるものと見えないものっていうのを結構分けて考える。
結構みんな一緒になってるんですよ。
見えてる部分と見えない部分がごっちゃになって、喜怒哀楽が決まってる感じじゃないですかね。
それをあえて分けることによって、意識して見えるものっていうものを見、そこからどういう意味を感じるか。
さらには見えないところをどうやってイマジネーションで見ていくか。
見える世界と見えない世界の使い分け
田中 愼一
こういうのがやっぱり人にとっては結構役に立つんじゃないかなと思うんですよね。
このポッドキャスティングの目的もそうだけども、なるべく多くの人たちにコミュニケーションの本質っていうと、
難しくなっちゃうかもしれないけど、今言ったように見える世界をどう受け取り、見えない世界をどう見るのかっていうね。
ここあたりの能力が少しでもできると、僕人間非常に幸せになると思うんですよね。
とにかく僕が前に言ってるように、99.9999%の人間の悩みって全てコミュニケーションに絡んでる。
中川 浩孝
それは実際にどういうことをしていけばそういう能力が高まるのかみたいな、もっとプラクティカルな話も。
田中 愼一
そうですね、プラクティカルな話したいですね。