00:06
みなさま、こんにちは。いちずや安子でございます。
本日も三角マークをポチッと押していただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、のような落語の回での第10席目を務めさせていただきます。
お題は【ねずみ】です。
実はこの演目、私が初めてのような落語をさせていただく側になった去年の夏の終わりでしょうか。
いろいろなお師匠の落語を聞かせていただいた中で、心にずしーんと響いた作品でございました。
勇気もいただきました。
世の中本当に変わっていく、いつの時代も言われておりますが、
そしてままならない悩みの種もきっと移り変わっていくんでしょうけども、
ちょっとGPTが出てきたとしても、私たち人間が持つ心根というやつは消えることはないんじゃないかなと、そんなふうにも思います。
さて本日は私め、勇気をもって偉大な桂宇多丸師匠の【ねずみ】で勉強させていただいたものを、大胆にもご披露させていただくことにいたします。
もしご縁をいただけましたら、どうぞ最後まで聞いてやってくださいませ。
世の中には後世に名を残した方が数多くいらっしゃるようですが、その中でも大工さんの【ひだりじんごろう】。
この方は日光東商軍の眠り猫や、泣き流で日本一と言われた大彫刻家、堀物師でございました。
そしてこの方、体操旅もお好きなようで、この旅もとある宿場町においででした。
おじさん、おじさん。
何だい坊や。
おじさんは旅の人ですか。
坊や、そうだよ。おじさんのこのなりをごらん。
こんばんは仙台お泊りですか。
そのつもりでいるよ。
じゃあできたら、あたいの家に泊まってくれませんか。
坊やは客引きさんかい。
そうじゃないんですけど、おじさんが家に泊まってくれると、あたいもお父さんもたいそう助かるんです。
そうかい。
まあどこへ泊まるのも同じだ。よし、じゃあこんばん一晩、坊やのところに厄介になろうか。
ありがとうございます。
ただおじさん、あたいの家は汚いですよ。
ああ、うちなんか汚くたってかまわないよ。
部屋も狭いんです。
おお、狭くたってかまわない。
03:03
えっと、それからおじさん、おじさんは夜寝るとき布団使いますか。
ん?あ、坊や時々面白いこと言うな。
まあ人間寝るとき布団ひいたりかけたりするな。
ああ、じゃあすいませんけど、先に二十文だけくれませんか。
二十文?前払いかい。
ああ、そうじゃないんです。布団屋さんには借りがあって。
だからわしを持ってかないと布団が借りられないんです。
ああ、坊やは正直者だ。
二十文でいいのか。
よし、じゃあちょっと待ってな。
じゃあおじさんが坊やにこの二十文渡すから。
これで布団屋さんに行ってきておくれ。
頼んだよ。
ああ、どうもすいません。
それからおじさん、これからおじさんはお家に案内して、
それから布団屋さんに行くと遅くなりまして。
遅くなると布団が、いいのが借りられないので、
すいませんけどおじさん一足先に行っててくれませんか。
あ、あの、すぐにわかります。
この街道をまっすぐ行きますと宿場に入ります。
宿場に入ったら右側をずっと見ててください。
宿の中ほどの右側にトラ屋っていう大きな旗子があるんです。
宿の中ほどのトラ屋さんかいね。
そこが坊やの家かい?
ううん。
あたりの家はその端向かいなんです。
ネズミ屋って言うんです。
あの、気をつけて見てても小さいから見落としちゃう家なんです。
だからそのトラ屋さん目安に行ってください。
あ、トラ屋さんの端向かいでネズミ屋さん。
よし、わかった。
じゃあおじさん一足先に行ってるから布団屋さんの方を頼んだよ。
はい。
さすが伊達様62番国の小女王からだ。
なあ、大層ご繁盛だな。
えーと、宿の中ほどで右側。
ああ、これかい、トラ屋さんってのは。
おお、立派な建物だ。
誰が建てたかは知らないけど、腕のいい大工がいるんだなあ。
ああ、江戸へ持ってっても決して引きは取らない。
ああ、立派なもんだ。
えーと、ここの端向かいと言ったな。
えーと、ん?これかい。
おお、なるほど。
縄対笑わせてうまいこと言ったもんだな。
ああ、小さな家だ。
ああ、まあネズミはネズミでも20ネズミだな、こりゃ。
ああ、ごめんなさいよ。
あ、おいでなさいまし。お客様でいらっしゃいますか。
ようこそおいでをいただきまして。
すぐにおすすぎの支度なんぞしなくてはならないのですが、
06:01
あいにく手前腰が抜けてて立てませんでして。
ああ、なんで。話の分かる大人は腰が抜けてんのか。
恐れ言いますが、裏に小さな川が流れております。
そこで一つお土産などを洗っていただきと存じます。
あの、そこに手置きも履き替えの下駄も揃えてございますんで。
ああ、お父さん、この履き替えの下駄っつうのはこれかい?
片っぽ鼻を切れてんね。
あ、あ、でしたら片っぽでぴょんぴょん飛んでいただきまして。
ああ、なんだよ。
まあまあそれじゃ。
ああ、いい心持ちだった。
ああ、湯だか水だか分かんないようだな。
そういうんで足を洗ったり手を洗ったりするよりも、
ああいう冷たい綺麗な水で洗ったほうが、
まあその日の疲れスーッと抜けていくようなそんな気がするよ。
ああ、綺麗な川だね。
はい、広瀬川に落ち込んでおりまして。
朝夕の間爪時には山目の影が走る川でございます。
ああ、そうかい。どおりで綺麗だと思った。
ああいうところがほうが洗うのに気持ちいいね。
おじさんついてますね。
あ、坊やかい。
太屋さん行ってきてくれたかい?ご苦労様。
ええと、それからおじさん。
これから夕飯の支度をすると遅くなりますんで、
お寿司でも茹でてきましょうか。
おお、お寿司か。
たまにはいいだろう。頼もうか。
5人前も茹でてきますか。
ああ、おじさん一人でそんなには食べないな。
まあ1人前というのもなんだから、2人前と言ってきてもらおうか。
ああ、あたいもお父さんもお寿司は大好きなんです。
坊や、じゃあおじさん、坊やに紙入れ事を渡そう。
これを持ってって坊やの好きなだけお寿司を買ってきな。
それからね、他に坊やの好きなものがあったら買ってきても構わないから。
ああ、それでね、帰りに酒屋さんによって酒を2瓶買ってきておくれ。
あたいもお父さんも酒は飲まないんです。
いや、お前たちに飲ませるんじゃないよ。
おじさんが飲むんだ。
頼んだよ。
じゃあ気をつけて行ってきてくんな。
お父さん、せがれさんかい。
はい。
いくつにおななさる?
はい。
11になりましてございまする。
ああ。
まあ旅のフライ棒がこんなこと言うのは失礼かもしれないけども。
お父さんがそのからだ。
あとを取るせがれさんが11。
09:00
どうだろう、女中の一人もいたほうが商売がしやすいんじゃないのか。
おっしゃる通りでございますが、これには深いわけがございまして。
初めてのお客様にこのようなことは何ではございますが、
よかったら支度ができるまで年寄りの愚痴一人事だと思って、
お耳だけでもお返し寝ごうと存じます。
何を隠しましょう手前。
はい。
元は前の寅屋の主でございました。
おお寅屋さんの。
早くに女房に死に分かりまして、
のちぞえ持ったらどうだとお勧めてくださる方もいらっしゃいまして、
あちらこちらと当たりましたが、
帯に短しタスキン流し、
なかなかいい方にお目にかかることができませんでした。
そんな時手前どもの女中頭をしておりました。
お根というものがおりまして。
これを縁あってのちぞえに直しました。
それで手前は一安心しておったんですね。
あれは3年前の七夕の晩でございました。
失礼ですがお客様は仙台の七夕をご存知でいらっしゃいますか。
もう大変な逃げ合いでございまして、
棚畑を挟んで前と後ろは旅のお客様、
土地の方でもどこもかしこも大入り満員でございます。
手前どもも朝から上へ下へと大作業をしておりましたが、
夜になりまして、
二階のお客様同士がお席の席から、
お酒の席から喧嘩を始めまして、
どちらにもお怪我があってはいけませんので私止めに入りました。
一生懸命止めておりました。
そんな時、どなたに疲れたのかわからないんですが、
ダーンと胸を疲れまして、
二階から下までもおんどり打って落ちまして、
腰をしたたかにどまに打ちつけて、
すぐに帳簿の脇に布団敷いて、
手当てをしてもらったのでございますが、
良くなりませんでした。
まあそれでもお金が一生懸命やってくれてるからと、
手前それからはあっちの医者、こっちの薬、
しまいには火事起きとうと致しておりましたけども、
結局治りませんでした。
手前の家から四五軒先に、
イコマヤという家がございます。
ここの主と手前は子供の家から喧嘩友達でございまして、
ある日のこと、
イコマヤが手前共に血相会で飛び込んでまいりました。
おいウヘ!
12:00
あ、失礼いたしました。
手前ウヘウヘと申します。
ウヘ!
お前が二階から落ちて腰を打って立たなくなったのは知ってっけど、
目ん玉でふぬけになったのか、
自分の可愛せがれの体も一遍でも見てやったことがあるのか、
このバカ野郎と。
手前を怒鳴りつけて外へ飛び出しまして、
はてな、妙なこと言うな。
まあ気になるなと思っておりますところへ、
背がれが手長いから戻ってまいりましたんで。
背がれに。
お父さんの前で着物脱いでみろと言いますと、
もじもじしておりまして、
何をぐずぐずしてんだ早く脱がないかと強く責めますと、
この肌を見て驚きました。
一面の生傷でございます。
どうしたんだと聞きますと、
近所の子供と喧嘩をしてできた傷だと。
バカを言いなさんな。
子供同士の喧嘩でそんな傷ができるわけないと正直に言わないかと、
責めたところ、背がれが裸のまんまうわーって、
泣きながら私の首玉にかじりついてこう言ったんです。
お父さん、お母さんはなぜ死んだんだ。
そう言われました時に手前やっと目が覚めましてございます。
えらいことをした。
自分のことばかり考えて、
可愛い背がれのことを考えてやらなかったと。
それですぐに番頭の牛像というものを呼びまして、
我々親子は前の物置へ身を拭くから。
その当時ここ物置でございました。
そう申しますと番頭が連日礼やお客様が多いり満員と、
たとえ一部屋でも多く使いたいところだということで。
旦那がその気だったらここをわずかばかり手を入れて、
手前と背がれはこの一部屋にということでこっちへ身を引きました。
その後三度三度のものは前の虎屋から運ばしておりましたが、
三度のものが二度に、
二度のものが一度になり姉妹には一度も届かなくなりました。
で、背がれを取りにやりますと、
客が立て込んで忙しい最中に病人の面倒などは見ていられるかと、
背がれの頭をぶったとか殴ったとか、
腹が立ちましたが腰が立ちません。
我慢をしておりまして、
そうしましたらいこま屋はこれを聞いたのでございましょう。
15:00
我々親子の面倒を見てくれました。
そんなある日またいこま屋が手前どもへ飛び込んできまして、
「やい、ウフェ。お前はいつのまに虎屋を番頭の牛像に譲ったんだと言いますから。」
いやそんな馬鹿なことをした親はないと言いますと。
そうじゃない。俺はあいつのやり口があんまりひどすぎるんで、
と鳴り込んでいったところ、
いこま屋さん。
手前どもと前の虎屋の主とはもう何の関わり合いもございません。
どうぞこれをご覧くださいと見せられたのが譲り渡しの証文だ。
そこには引き換えの判が押してあって、
お前判どうしたんだ。
おお、しまった。お金に預けっぱなしだったと。
ふぅ、気がつきましたときには後の祭りでございました。
その後、
「ウヘェよ。世の中は悪いことばかりがあるんじゃないと。
必ずいいことはあるから、短期な真似はするなよと。
お前たちの面倒で見るからって。」
いこま屋が恩情にすがっておりました。
まあ、せがれを申しますには、
おとつさん、ただこうして食べ物をもらっているだけでは犬猫同然だと。
狭くて汚いとこだけど、上に二間、下に二間の部屋がある。
たとえ一人でも二人でもお客さんが泊まってくれれば、
あたいとおとつさんの食うには困らないからと、
そんな風に言いまして。
それから、せがれが宿外れに出まして、
お客様にご迷惑をおかけしていると。
まあ、こういったような具合でございます。
世の中には、ひどいやつがいればいるもんだね。
うーん。
ところで、おとつさん、このネズミ屋っていう家号は、
どこからお付けなさった?
あ、はい。前のトラ屋は、
バントの牛像に乗っ取られました。
ここは物置でございましたんで、ネズミがたくさん住んでおりました。
手前とせがれがそのネズミからここを乗っ取ったような、
そんな具合になりましたので、
ネズミに義理を立てまして、ネズミ屋という名前に。
ほー、これは面白いな。
どうだい?
私がたとえ一人でも二人でも多くのお客様が泊まるように、
店の名前にちなんでネズミを一匹掘ろうじゃないか。
お客様は掘り物なさる。
ほー、この仙台にも有名な掘り物の先生がいらっしゃいますが、
18:04
あ、一人でしゃべっておりましたね。
えっと、お役所がやかましいもんでございます。
あの、著弁つけさせていただきたいので、
どうぞご祝告とお名前だけでも。
はい、いい、お手前がつけます。
腰は立ちませんが筆は立ちますんで、大丈夫でございます。
ご祝告とお名前だけお聞かせいただけますか。
生まれは日田ですよ。
おー、日田からこの星へ。
あ、いや、そうじゃない。
もうだいぶ前に江戸に出ましてね。
えー、ですからそこには、
江戸は日本橋立花町。
在久正五郎、内陣五郎とお付けお願いたい。
それではございますか。
江戸は、
あの、間違えましたらお許しのほど、
日田の陣五郎というと、あの、有名な陣五郎先生で。
いやいやいや、先生じゃない。
普通の人間だ。ほっぽ解いて。
えー、それからお父さん、お前のところに板切れあるかい。
あのー、板切れ、柱の切れ橋でいいんだ。
あ、それでございましたら、
元が物置でございましたんで、江戸下にいくらでもございます。
あ、そうかい。
じゃあ、それ借りて、
二階、
行きますよ。
あくる日の朝までに、小さなネズミを一匹掘り上げました。
ぼうや、できたよ。
あー、何か入れ物あるかな。
あ、なんでも構わないよ。
あ、あ、そこにたらいがあるね。
これ使ってんのかい?
あ、使ってない。
あー、だったらそのたらい、ちょっとこっちへ持ってきな。
そうそうそう、もっともっとこっちへ。
掘ったネズミをこのたらいの中に入れまして、
上に竹の網をかぶしました。
お父さん、世話になったね。
ご縁があったらまた会いましょう。
あー、ありがとう存じます。
どうぞ土地をお気を付けてお出かけくださいませ。
モジェーモンよ、モジェーモン。
ちょっくらネズミ屋さんの上見ろ。
なんか張り紙がしてあんな。
なんだめだ。
あれ、あー、張り紙がしてあんな。
売りにでも出たんだべかな。
あー、なんだめだ。
あ、なんかここに書いてあるぞ。
21:00
ん?
ズンゴロウサクフクネズミ。
ズンゴロウって、あの有名な左、ズンゴロウ先生だべか。
はーん、ここのうちと関わりがあんのかな。
ちょっくら聞いてみっか。
ごめんなせいよ。
あ、ごせが出ますな。
お入りください。お茶でも入れましょう。
あー、そうもしてらんないんだ。
わらたちまだ野良仕事が残ってるだろな。
表にズンゴロウサクフクネズミって書いたんだが、なんだあれや。
ん?
うんうんうん、ズンゴロウ先生がお泊まりになって、
ヤゴウにちなんで掘ってくれた。
あの名人がっけ。
そりゃてーしたもんだ。おめえがうちの宝だそりゃ。
ちょっくら見せてもらうわけにはいかねーだんべかな。
あー、どうぞどうぞごらんください。そこのたらに入ってますから。
そっか、じゃあちょっくら。
見せてもらうべよー、目の保養だーなー。
名人が掘ったなんざはいるだよ。
木で掘ったネズミだからなー、ネズミ色ってわけにはいかないけんども、
ちっけーネズミがたらいの真ん中にちょこっと座ってるだよー。
うーん、かわいらしいなー。
ん?あ、あれ?
お、おい、このネズミ、動くだぞ。
ばっかだなおめえはー、木で掘ったもんが動くわけなかんべー。
おめえ人間すそっかしいんだ、ちょっくらどいてみろ。ほらどいてみろって。
どれ、木で掘ったネズミが動くわけ。
お、お、お、なんだこれ、ん?あ、ここにもなんか書いてある。
このネズミをご覧になった方は、旅の人、土地の人を問わず、
このネズミ屋にお泊まりを願えて、ずんごろ。
おー、おらたち二人こんばんここへ泊まらねばだめだ。
ばか言うなー。
泊まらねばだめだとだって、おれたちうちはここから山頂とも離れてねーんだぞ。
山頂だって御頂だってだめだよ。
名人が見たら泊まれって書いてあるんだから。
だもんで、お父さん、こんばん二人で厄介になるから。
ああ、ありがとうございます。どうぞゆっくりお過ごしのほど。
この噂がパーッと広がりまして。
なんだってね、仙台のネズミ屋って旗子に行くって言うとね、
じんごろうの掘ったネズミがあるって言うんだよ。
これがちょろちょろ動くってんだい。
今度そっちの方行ったらネズミ屋って旗子に泊まろうじゃないか。
24:03
こうしてお客様がワンサワンサと押しかけるようになりました。
ごめんくださいよ。
はい、いらっしゃいまし。
悪い件でもこんばんは三人泊めてもらいたいんだ。
はい、ありがとうございます。
ご存じます。お泊めしたいのは山々なんでございますが、
上が二間、下が二間、今そこへ四十七人お泊まりでございまして。
ああ、じゃあ一晩ぐらいだったら便所の中でもいいから。
便所の中には今八人お休みでございます。
あとはもう天井からぶら下がっていただくしか手がなくて。
ああ、それじゃあコウモリだろう。
繁盛いたすたびに浦の空き地にどんどん建増をいたしまして、
日一日とネズミ屋は立派になるばかり。
また悪い噂というのも広がるものでして、
あの牛像という奴はそんなにひどい奴だったのかと、
それまで常宿にしていたお客様もどんどんどんどん足が遠のきまして、
しまいにはピタッと一人のお客様も寅屋には泊まらなくなりました。
大きな店を構えていて奉公にが三十人からいて客が一人もいないというのは宝の持ち腐れでございます。
奉公にも五人やめ、十人やめ、今ではお金と牛像とたった二人っきりになってしまいました。
さあ今度は牛像が起こり出しました。
実はこのお金と牛像というのは前々からできていた中でして、
主が見て見ぬふりをしてくれるだろうという錯覚でございます。
後沿いにちょろっと右兵にさらわれてしまったゆえに、
何か好きがあったら仕返しをしてやろうと腰たんたんと狙っております三年前の七夕の晩に、
主が二階から落ちてしまって腰を打って立てなくなったのを幸いに、
お金さーんと再び田元を引き寄せました。
それまででございますと何をするんですか。
今は昔の私じゃないんですよ。今は寅屋の主ですからと言ってた人間が
ぽっとやけぼっくりに火がつきまして、
頼りが戻ったわけでございます。
その当時仙台港の岡海で飯田探偵という掘り物師がいたそうでございます。
この方も体操腕のいい方だったそうでして、
三大将軍家光公の前で飯田探偵とこの神戸郎が腕比べをいたしまして、
三階末に鷹を掘ったそうでして、
神戸郎の方に軍配が上がったという曰く因縁のある、
そんな人間のところに牛像が何か頼みにやっていきました。
27:04
金に射止めはつけませんので、先生のお手で手前どもの矢口にちなんで
鷹を一匹掘っていただきたいと。
腕をこまねえてじっと聞いておりました探偵が。
ああ、神戸郎だったら相手にとって不足はない。掘ろうと。
出来上がりました鷹を、
寅屋の二階の手すりのところにでーっと備え付けました。
これは寅屋の寅が、
二階から下のねずみ屋のねずみをじろっとねめてるような具合でして、
それまでちょろちょろっと動いていたねずみが、
この日を境にピタッと動かなくなりました。
お父さん、大変だ。ねずみ動かなくなっちゃったよ。
何?ねずみが動かなくなった?どういうわけなんだ。
ああ、あの牛像が。
おのれーって言った途端にすっと腰が伸びたんです。
これね、腰を立てたから、
あ、違いますね。腹を立てたから腰が伸びたんじゃない。
もうだいぶ前から治ったんですよねきっとね。
でも本人は立てないと思ってたから立たなかったわけで立てなかった。
ん?立てないと思って立たなかったから立てなかった。
合ってますよねこれね。はいはい。
そして江戸におります神五郎の元に右兵衛が手紙をしたと読ました。
私の腰は立ちました。
ねずみの腰が抜けました。
ってまあ変な手紙があったもんですよね。
江戸でこれを読みまして神五郎が。
二代目の正五郎を連れまして再び仙台へ乗り込んできました。
お父さんたびたびお手紙をいただいて大層な御反情嬉しく思ってますよ。
いやあ驚いたのは今宿外れでおじさんと声かけられた。
顔見たけどわかんなかった。
坊やだよね。いい仙人になったなあ。
まあ行き先が楽しみだ。
まあまあつもる話は後にしよう。
飯田さんがお堀になった虎ってのは。
そうかい。見せてもらうよ。
政坊。政坊。
お前あの虎をどう見る。
うーん。
おじさん。足はデークだよ。
腰開いてみろったってあれは真似できない。
できないけんどうも見る目は持ってるつもりだ。
30:03
話に聞くって言うと虎ってのは獣の中で一番強いってことになってる。
第一年年をとってきてだんだんだんだん貫禄ついてくると
この額、頭のここんところに王という島模様ができるってことを聞いてるよ。
豪闘の虎とか言ってねえ。
あの虎にはそれだけの貫禄もねえし、王という島模様も出てねえ。
大丈夫さんねえ。
足気に食わねえのはあの虎の目つきだよ。
なんとなく人に恨みを持ってるような目つきで。
へっ。
でした。いい出来じゃねえからなあ。
そう思ってますがね。
そうか。
政坊もそう思うか。
失礼だが私もそう思ってあれを見ていたよ。
おいネズミ。ネズミ。
私はお前を掘るときは自分の心を無にしてお前に心を打ち込んで掘ったつもりだ。
そのお前がなんであんな虎が怖ええんだ。
そう人ごろがいましたら
ネズミがん?と首を持ち上げて
え?あれ、虎でしたか。
私は猫だと思った。
あ、お後はよろしいようで。