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気になるあの本の遺説を朗読でお届けする、学芸出版社クイックライブラリー。
今回は、慶應義塾大学大学院制作メディア研究科特任助教の高木コスモさんによる
SDGs×自治体実践ガイドブック現場で活かせる知識と手法から、
SDGsと自治体
序章SDGsと自治体の一部をお届けします。
国連広報センターのウェブサイトで公開されているSDGsのアイコンをご覧いただきながらお聴きください。
SDGs×自治体実践ガイドブック現場で活かせる知識と手法
高木コスモ著
序章SDGsと自治体
SDGsが目指すもの
2015年以降、本市はSDGsを推進しています。
我が県はSDGsの理念を反映した県政を進めていきますというように、
全国各地の自治体が次々に宣言し、SDGsが行政の新たなキーワードになりつつある。
SDGs Sustainable Development Goalsとは、
2015年に国連で採択された世界共通の目標であり、
日本語では持続可能な開発目標と翻訳される。
SDGsの目標は17あり、達成期限は2030年。
その達成に向けたプロセスには都道府県や市町村が参加することも求められている。
SDGsと言われても横文字のなんだか複雑なものと捉えられてしまうかもしれないが、
実際には行政の日常業務や自分たちが暮らしている地域と深くつながっていることなので、
肩の力を抜いて読み進めてほしい。
SDGsは、いわば自分たちが暮らす地域を将来にわたって持続可能にするための目標なのだ。
SDGsの目標と意義
はじめにお伝えしておくと、このSDGsは、
いわゆるスーパー公務員と周りから呼ばれる職員が一点に担うものではなく、
自治体で働く全ての職員の協力が必要である。
そう、この本を手に取ってくれたあなたの力が必要なのだ。
本書を手にした皆さんは、この絵画のようなものを身にしたことはあるだろうか。
知ってるよ。SDGsのアイコンでしょ。と心の中で呟いたあなた。
それでは、このSDGsのアイコンが何を表現しているか考えたことはあるだろうか。
もし考えたことがなければ、じーっと見つめて、
英語の文章を一つ一つ日本語に直訳しながら、
正方形のアイコンに描かれたイラストが何を表現しているか考えてほしい。
クオリティエデュケーションは質の高い教育が提供されている状態というふうに、
全てのアイコンに書かれていることを未来の状態として捉える。
それが、このアイコンが17個集まったロゴマークの意味を紐解くコツだ。
試しに、1から8までのアイコンを使って未来計画図を文章にしてみると、
2030年12月31日、全ての人が貧困や飢餓に苦しむことなく、
安全な水や環境負荷の小さい電力を使いながら健康に暮らし、
性別に左右されることなく、教育や働きがいのある仕事を得る機会がある。
そして、という世界の状態。
これがSDGsのアイコンが表現している未来である。
こうした視点で、自分が暮らす街を念頭に置きながら、改めてSDGsのアイコンを眺めてほしい。
あと10年足らずで、この未来予想図にある街を実現できるか、
その距離感を掴むことが始まりの合図である。
世界中が共通して取り組む目標である。
SDGsは17のゴールから構成されており、その達成期限は2030年に設定されている。
図表にある17のアイコンが示しているように、
ゴールの中には、地球温暖化や海面上昇といった気候変動への対策、ゴール13や、
ジェンダー平等、ゴール5など、
かねてから日本国内で早急な解決を要すると考えられてきた分野も含まれており、
私たちの身近な課題もSDGsには反映されている。
例えるなら、日本を含め、世界中に散在している膨大な課題を、
17の切り口から捉えられるように整理した収納ツールのような存在がSDGsである。
とはいえ、多くの自治体は、既に基本構想、基本計画、実施計画から構成される総合計画を独自に策定し、
目指すべき姿を設定している。
そのため、SDGsが設定する17の目標に自治体の既存の目標を合わせていくのか、
それとも自治体の目標に沿うSDGsの目標だけを恣意的に取り出して対応させるのかという議論も起こっている。
だが、このような議論は本質的ではない。
指標と評価の重要性
SDGsは、そもそも2030年に世界中のすべての地域が大気汚染によって健康が害されている場合、
自分の家族が暮らす街の状況を解決しないという選択肢を選ぶだろうか。
SDGsが目指していることは、一見すると当たり前に感じるものも多い。
しかし、本当に自分たちの日常が将来まで続く当たり前か、改めて考えるきっかけになるだろう。
達成期限は2030年である。
SDGsは2016年から2030年までの15年間を対象としている。
公術するMDGs、ミレニアム開発目標というSDGsの前身にあたる開発目標が、
2001年から2015年の15年間を対象としており、SDGsも同様に15年間を対象期間としている。
SDGsは2015年9月に開催された国連サミットで、
国連加盟国の全開一で採択された2030年の世界を変える目標である。
17のゴール、169のターゲット、232の指標から構成されている。
SDGsは17のゴールと169のターゲット、そして232、重複を除く、の指標から構成されている。
ターゲットにはゴールの達成に向けて焦点を当てる分野や、その方向性が示されているものの、
あくまで世界共通の包括的な要素に留まる。
実際にSDGsを運用していくためには、ステークホルダーが対象地域の状況を勘案しながら、
ゴールの達成に何が必要か自分たちで考え、行動することが必要だ。
例えるなら、新たに整備された広大な土地の中で、ゴールとなる場所にたどり着くまでの地図を描きながら、
ゴールに至るまでの手段や作戦を自分たちで考える作業は、自分たちでやらねばならないのだ。
SDGsのゴール自体は、貧困、ゴール1、や、飢餓、ゴール2、気候変動への対策、ゴール13、
世界が直面する様々な問題を解決しなければならない課題に落とし込み、17種類に分類したものである。
つまり、この17ある課題を達成することが、持続可能な世界を実現するために最低限必要な要素であるということだ。
ゴールまでの土壌で達成すべき中間目標となる段階や焦点を当てる分野、その方向性が具体的に記述されている。
そして、このターゲットの達成に向けたアクションを含む制作の効果や進捗を把握するために役立つデータとして、それぞれのターゲットに指標が設定されている。
例えば、SDGsの貧困がない状態、ゴール1というゴールについて言えば、
2030年までに現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせるターゲット1.1など7つのターゲットが設定されている。
このターゲットの達成に向けた制作を改善していくために役立つデータとして、国際的な貧困ラインを下回って生活している人口の割合、性別、年齢、雇用形態、地理的ロケーション、都市地方別、指標1.1.1のような指標が採用されている。
これはすなわち、1日1.25ドル未満で生活する人々について、性別や年齢、雇用形態、地理的要因などに応じて詳細に整理することで、
貧困の原因が性別によるものなのか、男女の賃金格差、年齢によるものなのか、児童労働等、雇用形態によるものなのか、産業構造、生活する地域によるものなのか、地域の賃金格差、分析することができる。
要因が明らかになれば、課題の解決に向けた方策も実効性が高まり、より質の高い制作を導き出すことができる。
SDGsの指標は、進捗や達成度を図るモニタリング、指標に従って導き出された数値と本来の目標数値の差分、ギャップなどから得た情報を作戦の改善に役立てる評価、エヴァリュエーションという2つの役割を兼ね備えている。
国連のような国際機関で一般化しつつある、モニタリングと評価、モニタリング&エヴァリュエーションという考えに基づいたものだ。
一方、日本国内では、評価という言葉の意味が、内容が正しいか確認する監査と行動されてしまうことも多い。
そのため、自治体職員が、この指標に基づいて設定された数値を、単に進捗確認のための目標数値と解釈してしまうと、本来は現状を正確に把握し、政策や施策を改善するために必要な手段であらわずの、指標として設定された数値を調べること自体が目的化してしまう。
結果として、職員が、何のために数値を計測しているか、意味を見出せない、といった、いわゆる評価疲れに陥ってしまうことが予期されるので、注意を払いたい。
このように、属性や特徴に基づいて細分化されたデータの重要性は、国連本部で行われるSDGsに関連した会議でも、頻繁に耳にするキーワードの一つになっている。
本章の朗読はここまでとなります。
続きはぜひ書籍をご覧ください。