令和8年度診療報酬改定では、「医療資源の少ない地域」の対象地域が見直されます。この見直しは、令和5年医療施設静態調査等の最新データに基づき、医療資源の少ない地域に配慮した評価を適切に行う目的で実施されるものです。対象地域の変更は、施設基準の緩和措置を受けられるかどうかに直結するため、該当地域の医療機関は確認が必要です。
今回の見直しにより、対象地域は令和6年度改定時の37医療圏から39医療圏へ拡大されます。具体的には、北海道富良野や埼玉県秩父など7医療圏が新たに追加される一方、北海道南檜山や長野県木曽など5医療圏が除外されます。対象地域から除外された医療圏で、すでに届出を行っている医療機関に対しては、経過措置が従来の2年間から約6年間へ延長されます。
見直しの背景と選定基準
今回の見直しの背景には、人口減少地域における医療提供体制の変化があります。人口規模が小さい二次医療圏では、2012年から2022年にかけて診療所数が減少傾向にあり、従事する医師の高齢化も進んでいます。こうした状況を最新の統計で正確に把握し、対象地域を適切に設定し直す必要が生じました。
「医療資源の少ない地域」の選定には、2つの基準が用いられます。1つ目は、医療従事者の確保が困難な地域であることです。具体的には、「人口当たり医師数が下位1/2」かつ「人口当たり看護師数が下位1/2」の要件を満たす必要があります。2つ目は、医療機関が少ない地域であることです。こちらは、「病院密度が下位15%」または「病床密度が下位15%」のいずれかを満たす必要があります。この2つの基準を両方満たす二次医療圏が、対象地域として指定されます。
これらの基準に加え、離島振興法等の特別法で指定された離島地域も対象に含まれます。具体的には、離島振興対策実施地域、奄美群島、小笠原諸島、沖縄の離島が該当します。
対象地域の変更内容:新規追加7医療圏と除外5医療圏
令和8年度改定では、令和6年度の37医療圏のうち32医療圏が引き続き該当し、7医療圏が新たに追加され、5医療圏が除外されます。その結果、対象地域は合計39医療圏となります。
新たに追加される7医療圏は、以下のとおりです。北海道からは、富良野(富良野市、上富良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村)と紋別(紋別市、佐呂間町、遠軽町、湧別町、滝上町、興部町、西興部村、雄武町)の2圏が追加されます。東北からは、岩手県二戸(二戸市、軽米町、九戸村、一戸町)が追加されます。関東からは、埼玉県秩父(秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町)が追加されます。中部・近畿からは、三重県の東紀州(尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町)が追加されます。中国からは、島根県大田(大田市、川本町、美郷町、邑南町)と岡山県真庭(真庭市、新庄村)の2圏が追加されます。
一方、除外される5医療圏は、以下のとおりです。北海道南檜山(江差町、上ノ国町、厚沢部町、乙部町、奥尻町)、岩手県宮古(宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村)、長野県木曽(木曽郡)、長野県大北(大町市、北安曇野郡)、滋賀県湖北(長浜市、米原市)の5圏です。これらの地域は、直近の統計で選定基準を満たさなくなったため除外されます。
対象地域に指定されることで受けられる施設基準の緩和
医療資源の少ない地域に指定された医療機関は、通常とは異なる緩和された施設基準で届出を行うことができます。この仕組みは、医療従事者の確保が困難な地域でも必要な医療を提供できるように設けられたものです。
緩和の内容は、大きく2つに分かれます。1つ目は、施設基準における人員配置要件の緩和です。たとえば、入退院支援加算では、常勤の看護師・社会福祉士に代えて、非常勤の複数人配置でも要件を満たすことができます。2つ目は、病棟機能の混合を認める措置です。医療機関が少なく機能分化が困難な地域では、1つの病棟で複数の機能を担うことが認められています。
経過措置の延長:除外地域の医療機関への配慮
対象地域から除外された医療機関に対しては、経過措置が設けられます。従来、この経過措置の期間は2年間でしたが、今回の改定では大幅に延長されます。延長の目的は、医療資源の少ない地域に配慮した施設基準等による届出を行っている医療機関の運営の安定性を担保することです。
経過措置の具体的な内容は、改定の時期に応じて2つに分かれます。1つ目は、令和6年3月31日時点で、令和6年度改定前の対象地域に存在し、医療資源の少ない地域の評価に係る届出を行っていた医療機関です。この医療機関は、令和12年5月31日まで従前の届出が有効となります。2つ目は、令和8年3月31日時点で、令和8年度改定前の対象地域に存在し、同様の届出を行っていた医療機関です。この医療機関は、令和14年5月31日まで従前の届出が有効となります。いずれも、従来の2年間から約6年間へと大幅に延長されたことになります。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、医療資源の少ない地域の対象地域が37医療圏から39医療圏へ拡大されます。北海道富良野・紋別、埼玉県秩父など7医療圏が新たに追加される一方、北海道南檜山、長野県木曽・大北など5医療圏が除外されます。除外地域で既に届出を行っている医療機関に対しては、運営の安定性を担保するため、経過措置が従来の2年間から約6年間に延長されます。該当する地域の医療機関は、自院が対象地域に含まれるかを確認し、届出の見直しを検討してください。
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サマリー
令和8年度の診療報酬改定では、「医療資源の少ない地域」の対象が37から39医療圏に拡大され、その選定基準と医療機関が受けられる緩和措置が解説されています。人口減少が進む中で、医師や看護師の不足、病院・病床密度の低下といった厳しいデータに基づき、埼玉の秩父など新たな地域が追加される一方、除外された地域には約6年間の経過措置が設けられます。これは、地域の医療提供体制を維持するための苦肉の策であり、未来の病院のあり方について問いかける内容となっています。
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