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2025-10-18 07:10

日本の医療が抱える「トリレンマ」とは?全日病会長が解説する医療の未来

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全日本病院協会会長の神野正博氏がYouTube動画シリーズ「医療のトリセツ」第1回を公開しました。この動画では、日本の医療システムが直面する「トリレンマ」について解説しています。日本の医療は現在、医療従事者や病院の犠牲の上に「アクセス」「コスト」「質」という3つの要素を何とか満たしています。しかし、働き方改革や物価上昇により、この仕組みは限界を迎えつつあります。

日本の医療は、世界の常識である「オレゴンルール」を無視した形で3つの要素を満たしていますが、今後は2つを選択する必要に迫られています。オレゴンルールによれば、医療における3つの要素(アクセス、コスト、質)を同時に満たすことは不可能です。日本の医療システムは現在、医療従事者と病院の犠牲によって3つを何とか維持しています。しかし、働き方改革と物価上昇により、国民はどの2つを優先するかの選択を迫られています。

オレゴンルールが示す医療の本質

医療システムを構成する3つの要素は、同時に満たすことができないという原則があります。この原則は、アメリカのオレゴン州で確立された考え方で、「オレゴンルール」と呼ばれています。このルールは、医療における3つの要素、すなわち「アクセス(医療にかかりやすさ)」「コスト(費用)」「質」を同時に全て満たすことは不可能であるため、国民は2つを選ぶしかないという考え方です。

この原則は、世界の医療システムにおける常識とされています。医療資源は有限であるため、3つの要素すべてを高い水準で維持することは現実的ではありません。そのため、各国は自国の事情や国民の価値観に応じて、3つのうち2つを優先する選択をしています。この選択が、各国の医療システムの特徴を決定づけています。

世界各国の医療システムにおける選択

世界の主要国は、オレゴンルールに従って異なる選択をしています。それぞれの選択には、明確な利点と引き換えに犠牲にする要素があります。

「すぐに診てもらえて安い」という選択は、患者にとって魅力的に見えます。この組み合わせでは、医療へのアクセスが良好で、費用負担も軽くなります。しかし、資源が有限である以上、医療の質を犠牲にせざるを得ません。多くの患者を短時間で診察することになるため、一人ひとりへの丁寧な対応や高度な医療の提供が難しくなります。

「安くて質が高い」という選択は、費用を抑えながら良質な医療を提供します。イギリスの医療システムがこの典型例です。イギリスでは、国民は比較的安い費用で質の高い医療を受けられます。しかし、その代償として、手術や専門医の診察まで長期間待たされることがあります。医療へのアクセスが制限されることで、コストと質のバランスを保っているのです。

「すぐに診てもらえて質が高い」という選択は、最高水準の医療を提供します。アメリカの医療システムがこの例に該当します。アメリカでは、患者は迅速に専門医の診察や高度な治療を受けられます。ただし、この利便性と質の高さには高額な費用が伴います。高い保険料や自己負担を覚悟する必要があります。

日本の医療システムの現状と持続可能性の課題

日本の医療システムは、世界的に見て特異な状況にあります。日本では現在、「すぐに診てもらえて、費用もそこそこで、質も高い」という3つの要素が何とか成り立っています。これは、オレゴンルールを無視している状態です。

この一見理想的な状況は、医療従事者と病院の犠牲の上に成り立っています。医療従事者は長時間労働を強いられ、病院は厳しい経営環境の中で診療報酬の範囲内で質の高い医療を提供し続けています。この仕組みによって、国民は世界的に見ても恵まれた医療環境を享受してきました。

しかし、この仕組みは持続可能性の限界に達しつつあります。働き方改革により、これまでの長時間労働を前提とした医療提供体制を維持することが困難になっています。同時に、物価上昇や賃金上昇により、病院経営はさらに厳しさを増しています。

これらの変化により、日本国民は重要な選択を迫られています。医療の3つの要素のうち、どの2つを優先するのか。この選択は、今後の日本の医療システムの方向性を決定づける重大な決断となります。

まとめ

日本の医療システムは、医療従事者と病院の犠牲によって、世界的に稀な「3つの要素を満たす医療」を実現してきました。しかし、働き方改革と経済環境の変化により、この仕組みの維持は困難になっています。神野会長が提起した「トリレンマ」は、今後の日本の医療を考える上で避けて通れない課題です。国民一人ひとりが、医療の未来について真剣に考え、議論する時期に来ています。



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サマリー

日本の医療が抱えるトリレンマは、アクセス、コスト、質の3つの要素が同時に最高レベルで満たせないという問題です。全日本病院協会会長の上野雅宏氏はこの現状を解説し、医療システムの持続可能性が問われる時代に入っていることを示唆しています。

トリレンマの概念
さて、今回はですね、日本の医療が直面しているトリレンマという、非常に大事な問題について深く見ていきたいと思います。
はい。 全日本病院協会会長の上野雅宏さんのYouTube動画、医療の取説の第1回、これを元に考えていきましょう。
ええ、これは重要な資料ですね。 日本の医療って、なんとなく一でも見てもらえて、費用もまあまあで、質も高いみたいな、そういうイメージありますよね。
そうですね。一般的にはそう思われているかもしれませんね。
でも、実はその裏側で、かなり大きな課題が進んでいると。なぜ今までそれがある意味に成り立ってきたのか。そして、今なぜそれがこう限界を迎えつつあるのか。これはもう、聞いているあなたの医療体験にも直接関わる話だと思います。
まさに、この資料は世界的な原則と、日本のちょっと特殊な状況、そしてこれから迫られるであろう選択を理解する上で、非常に役に立つと思います。
はい。では、確信の部分から見ていきましょうか。
お願いします。
まずそのトリレンマですね。上野会長が指摘されている点。
はい。
医療におけるアクセス、つまりかかりやすさ。それからコスト、費用ですね。そして質。この3つを同時に最高レベルで満たすっていうのは、実は不可能だという原則。こういうことですね。
その通りです。これは、オレゴンルールなんて呼ばれたりもしますね。
ほう、オレゴンルール。
世界の医療システムでは常識とされている考え方です。やっぱり使える資源、お金とか人とか、そういうのは限られてますから。
うーん、確かに。
ですから、どの国も意識的にか無意識にか、この3つの要素のうち2つを優先して、残りの1つはある程度諦める、というか妥協するという選択をしているわけなんですね。
なるほど、なるほど。何かを選べば、何かは少し我慢すると。
そういうことです。
世界では、具体的にはどんな選択例があるんでしょうか。
えーと、資料で挙げられている例ですと、例えばイギリス。
イギリス、はい。
イギリスなんかは、安さと質を重視する傾向があると。その代わりアクセス、つまり診察とか手術を受けるまでの待ち時間ですね。これが長くなることがある。
あー、待ち時間ですか。なるほど。
ええ。一方でアメリカなんかだとどうでしょう。
アメリカ。
アメリカはどちらかというとアクセス、つまり早く見てもらうことと質を優先する。
ふむふむ。
その結果、ご存知の方も多いと思いますが、コスト、医療費がものすごく高くなってしまう。
あー、確かに。保険とかも複雑で高いイメージがありますね。
そうですね。じゃあ、安くて早いっていうのはどうなんだと。
ええ。
それも選択肢としては考えられますが、その場合はおそらく医療の質ですね。
例えば、丁寧な診察とか高度な医療へのアクセスとか、そういった部分が犠牲になる可能性が高いんじゃないかと指摘されていますね。
うーん、なるほど。どれか二つなんですね、やっぱり。
ええ。トレードオフの関係にあるということです。
そこで日本です。資料によると、日本はこれまでこのオレゴンルールにある意味反するように、すぐ見てもらえて費用もそこそこで質も高いと。
日本の医療と未来の選択
この3拍子を実現してきたというふうに書かれていますが、これはやっぱりすごいことなんじゃないですか。
そうですね。表面上は世界でもかなり稀な成功例のように見えますよね。
ええ。
ただ、上野会長が非常に鋭く指摘されているのは、そのいわば奇跡の代償なんです。
代償ですか。
はい。つまり私たちがこれまで当たり前のように享受してきた、このすぐ見てもらえて安くて質も良いという利便性。
これは実は、医療現場で働く方々の長時間労働であるとか、自己犠牲、それから病院経営の本当にギリギリの努力、そういったちょっと見えにくいコストによって過労死で支えられてきたんだと、そういう厳しい現実があるわけですね。
なるほど。奇跡というよりはむしろ、すごく脆いバランスの上に成り立っていたということですか。
そういう見方ができると思います。非常に得意なバランスだったと。
そのこれまで見えないコストで支えてきたものが、今限界に来ていると、その理由は何なんでしょうか。
大きな要因は主に二つですね。
はい。
まず一つは、働き方改革です。
ああ、やっぱり。
ええ。これまでのある種の献身に頼ってきたような働き方が、もう制度的に難しくなってきている。
労働時間の上限とかですね。
そうです。そしてもう一つは、物価や人件費の高騰ですね。これがもう病院経営を直接圧迫しているわけです。
なるほど。コスト面も厳しくなっている。
ええ。つまり、以前のようなある意味での無理がもう効かなくなってきている。システムとして維持できなくなっているということなんです。
その支えていた土台自体がこう揺らいできているということですね。
まさに。
ということは、日本もいよいよこのトリレンマあるいはオレゴンルールと本格的に向き合わなければならない。つまり、三つのうちどの二つを優先するのかという、そういう現実に直面せざるを得なくなっている。
まさにその通りだと思います。どの価値を社会として最も大切にするのか。そしてどの価値についてはある程度の低下というか変化を受け入れざるを得ないのか。
これを国民全体で本当に真剣に議論して、そして選択していかなければならない。そういう段階に来ているんだと思います。
これはもう本当に他人事ではなくてですね、あなた自身のこれからの医療へのアクセス、あるいは自己負担、そして受けられる医療サービスの質、これに直接関わってくる選択なんですよ。
いやー思い通りですね。今回は上野会長の医療の取説をもとに、日本の医療が抱えるトリレンマという問題、その構造を見てきました。
はい。
アクセス、コスト、質、このいわば味方良しを維持してきた日本のちょっと特殊な状況がですね、働き方改革であるとか経済状況の変化によって、今大きな転換点、キロに立たされているということがよくわかりました。
これまでの現場の頑張りみたいな、ある種の見えないコストに依存してきたシステムというのは、やはりもう持続可能ではないということですね。
うん。
どの2つを我々社会として選び取るのか、これは本当に非常に重い問いですけれども、もう避けては通れない段階に来ているということです。
はい。そこで最後に、これを聞いているあなたに1つ問いを投げかけてみたいと思います。
ええ。
もし将来ですね、日本の医療がアクセス、かかりやすさ、コスト、安さ、質、高さ、この3味のうちどれか1つを今よりも少し抑えなければならないとしたら、あなたはどれを選びますか?そしてそれはなぜでしょうか?すぐに答えが出るものではないかもしれませんが、この機会に少し考えてみるのはいかがでしょうか?
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