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2025-11-27 06:27

【2025年福祉制度改革】第31回福祉部会が示す5つの論点と検討の方向性

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令和7年11月17日、第31回社会保障審議会福祉部会が開催されました。本部会では、地域共生社会の在り方検討会議や2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会の議論を踏まえ、福祉制度改革の具体的な方向性が示されました。本稿では、これまでのご意見を踏まえた論点に関する議論の状況について解説します。

福祉部会で示された論点は5つの柱で構成されています。第1に、地域共生社会の更なる展開として、包括的な支援体制整備の推進と過疎地域向けの新たな仕組みの創設が検討されています。第2に、身寄りのない高齢者等への対応として、日常生活自立支援事業を拡充・発展させた新たな第二種社会福祉事業の創設が提案されています。第3に、社会福祉連携推進法人制度の見直しとして、一定の要件下での社会福祉事業の実施が可能となる方向性が示されました。第4に、災害福祉支援体制の強化として、DWAT(災害派遣福祉チーム)の法制化が検討されています。第5に、共同募金事業について、寄附募集禁止規定の撤廃と準備金使途の拡大が提案されています。

地域共生社会の更なる展開について

地域共生社会の実現に向けた取組として、包括的な支援体制整備の推進と過疎地域等における新たな仕組みの創設が検討されています。2040年に向けて人口減少と単身世帯の増加が進む中、地域で支え合う社会の実現がより一層重要となっています。

包括的な支援体制整備については、重層的支援体制整備事業の質の向上が課題となっています。現状では、事業実施に向けた検討プロセスや事業評価が十分に行われていない状況が見られます。検討の方向性として、事業実施にあたって地域資源の把握や関係者との対話等の検討プロセスを経ることを要件とすべきとされています。重層的支援体制整備事業実施計画についても、必須記載事項として目標・評価等に関する事項を追加し、計画の定期的な見直しを行うことが求められています。

市町村における体制整備の推進も重要な論点です。重層的支援体制整備事業を実施していない市町村においても支援会議の活用を可能とする等により、体制整備を促進すべきとされています。地域住民等と支援関係機関の連携・協働を図るため、市町村が協力団体を委嘱できる仕組みの創設等も検討されています。

過疎地域等における新たな仕組みについては、介護・障害・こども・生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化する方向性が示されています。過疎地域等では担い手不足が深刻化しており、現行の重層的支援体制整備事業の実施が困難な状況にあります。新たな仕組みでは、分野横断的な配置基準を設け、一次相談対応と専門的相談対応を構造化することで、小規模自治体でも実施可能な体制を構築することが目指されています。

身寄りのない高齢者等への対応・成年後見制度の見直しへの対応について

身寄りのない高齢者等が地域で安心して自立した生活を続けられるよう、新たな第二種社会福祉事業の創設が検討されています。頼れる身寄りがいないことにより、入院・入所の手続等支援や死後事務支援などが必要とされる高齢者等への対応が課題となっています。

新たな事業の概要として、日常生活自立支援事業を拡充・発展させた事業が提案されています。判断能力が不十分な人や頼れる身寄りがいない高齢者等に対して、日常生活支援、円滑な入院・入所の手続支援、死後事務支援などを提供することが想定されています。この事業は、資力が十分でなくても利用できるよう、利用者のうち一定割合以上が無料又は低額の料金で利用できる事業とする方向性が示されています。

自治体の役割についても明確化が検討されています。身寄りのない高齢者等への支援は社会福祉法第106条の3に基づく「地域生活課題」に含まれることを明確化し、大臣指針や市町村地域福祉計画の計画策定ガイドラインにおいて、支援に係る事項を明記する方向性が示されています。事業者に対するチェック体制として、運営適正化委員会による助言・勧告の実施や、適正な事業運営の確保策を盛り込んだガイドライン等の策定も検討されています。

社会福祉法人制度・社会福祉連携推進法人制度の在り方について

社会福祉連携推進法人制度の活用を一層促進するため、制度の見直しが検討されています。人口減少が進む過疎地域等では、法人単独では事業を実施することが困難な状況にあり、複数の法人間での連携・協働による経営基盤の強化が求められています。

社会福祉連携推進法人による社会福祉事業の実施について、一定の要件を満たす場合には可能とする方向性が示されています。現行制度では社会福祉連携推進法人は社会福祉事業を行うことができませんが、地域住民に必要不可欠な事業を維持し、利用者を保護する観点から、第二種社会福祉事業及び社会福祉事業以外の社会福祉を目的とする福祉サービスの実施を可能とすることが検討されています。その際、当該地域において福祉ニーズを充足できていないこと、他のサービス事業主体の参入が期待できないこと、連携推進業務を行う体制が確保されていることが要件として示されています。

既存施設の土地・建物の有効活用についても検討が進められています。社会福祉連携推進法人が社員法人間の土地・建物の貸付に関する支援業務を行うことや、社会福祉法人の解散時における残余財産の帰属先の拡大が議論されています。解散した社会福祉法人の土地・建物について、社会福祉事業を現に行っていない地方公共団体であっても、地域に不可欠な事業の維持のために有効活用する場合には帰属を受けることができるようにする方向性が示されています。

災害に備えた福祉的支援体制について

令和6年能登半島地震の教訓を踏まえ、平時からの災害福祉支援体制の整備とDWATの法制化が検討されています。災害救助法の改正により災害時の福祉支援は法定化されましたが、平時からの体制整備については未だ法制化されていない状況にあります。

平時からの連携体制の構築について、包括的な支援体制の整備において「防災」との連携を加えることが提案されています。地域福祉計画の記載事項に災害福祉に関する事項を追加し、市町村地域福祉計画においては防災関連施策や災害ボランティア活動との連携・協力内容、福祉サービス提供体制の維持方策等を記載することが求められる方向性が示されています。都道府県地域福祉支援計画においては、DWATの整備状況や災害時における役割・実施内容について記載することが検討されています。

DWATの法制化については、災害時における福祉従事者の確保を可能とするため、登録制度の整備と研修・訓練の実施に関する規定を設けることが提案されています。国が登録名簿の管理や研修を実施するとともに、都道府県においても研修・訓練の機会提供等を行うよう努めることとする方向性が示されています。DWATチーム員の派遣元使用者に対する配慮義務や、チーム員への秘密保持義務についても規定を設けることが検討されています。

共同募金事業の在り方について

共同募金事業が地域福祉を支える役割を果たし続けられるよう、寄附募集禁止規定の撤廃と準備金使途の拡大が検討されています。共同募金事業は戦後間もなく開始されて以降、地域福祉の推進に大きな役割を果たしてきましたが、時代の変化に対応した見直しが求められています。

寄附募集禁止規定については、共同募金の配分を受けた者に対する制限を撤廃する方向性が示されています。現行では配分を受けた者への寄附募集が制限されていますが、共同募金の配分の有無によって公平性を考慮する必要性が薄れつつあることに加え、この制限が民間支援に逆行し時代にそぐわなくなってきているとの認識が示されています。撤廃にあたっては、共同募金事業が引き続き包括指定寄附金の対象となることを前提に検討を行うべきとされています。

準備金の使途についても拡大が検討されています。現行では災害時に限定されている準備金の積立について、公的制度だけでは対応困難な社会課題への取組や地域のモデル的な取組など、一定規模の継続事業に対しても取崩ができるようにすることが提案されています。その際、使途の透明性の確保や準備金不足とならないよう一定の取崩上限の目安を設定することが求められています。

まとめ

第31回福祉部会では、2040年に向けた福祉制度改革の具体的な方向性が示されました。地域共生社会の更なる展開として、包括的な支援体制整備の推進と過疎地域向けの新たな仕組みの創設が検討されています。身寄りのない高齢者等への対応として、新たな第二種社会福祉事業の創設が提案され、社会福祉連携推進法人制度については社会福祉事業の実施を可能とする見直しが進められています。災害福祉支援体制の強化としてDWATの法制化が検討され、共同募金事業については規制緩和による活性化が目指されています。これらの論点について、今後さらに具体的な検討が進められる見込みです。



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サマリー

2025年の福祉制度改革において、地域共生社会の実現が求められています。制度の革新によって、福祉サービスの提供体制や災害時の支援体制が見直されており、地域全体での支え合いの重要性が強調されています。

地域共生社会の実現
さて、今日は2025年に向けた福祉制度改革について、社会保障審議会の資料を基に、少し深く掘り下げていきたいと思います。
これは私たちの暮らし、特に地域の在り方に直結する非常に重要な話ですね。 そうなんですよね。
なんかこう、制度の話って聞くと難しく感じますけど、例えば地方の街に一人で暮らすおばあちゃんがいるとします。
頼れる家族もいなくて、最近近所の介護事業所も閉鎖してしまった。
うーん、よく聞く話です。
そういう方を、これからの社会がどう支えていけるのか、今日の話はまさにその設計図というわけですよね。
2040年という少し先の未来を見据えた大きな設計図です。
では、早速その5つの大きな柱を見ていきましょうか。
まず最初の柱が、まさにその地域でどう支えるかという話です。
地域共生社会の実現ですね。
地域共生社会。人口が減っていく中で、もう今までのやり方じゃ支えきれないということですよね。
具体的にはどう変わるんでしょう?
ポイントは大きく2つあります。
1つは、既存の重層的支援体制整備事業というものの強化です。
重層的ですか?ちょっと難しい言葉ですが。
要は、これまで高齢者、障害者、子どもって相談窓口がバラバラだったじゃないですか。
そうですね。縦割りって言われる。
それを、いわばチームを組んで一人の人を支えようという仕組みです。
この計画に何をいつまでにやるかという目標設定を義務付ける。
なるほど。なんとなく頑張るじゃなくて、結果を出す体制に変えると。
そういうことです。
そしてもう一つが、特に担い手不足が深刻な過疎地域向けの新しい仕組みです。
介護とか障害、子育て、生活の困窮、そういった相談支援の分野を全部一本化するんです。
一本化ですか。
専門家が揃わない小さな町でも、まず一人の相談員が何でも受け止めると。
専門性も大事ですが、それよりもそこに誰かがいてくれるというアクセスしやすさを優先する。
これは非常に現実的な一途だと思います。
地域全体で支える網をまず広く張ろうということですね。
でもその網の目からこぼれてしまう、本当に一人きりの方はどうなるんでしょう。
例えば入院するときの保証人とか、万が一のときの手続きとか。
そこがまさに二つ目の柱で非常に重要な点です。
身寄りのない方々のための第一種社会福祉事業という新しい枠組みが提案されています。
新しい事業ですか。
はい。これは自治体やNPOが生前の身元保証から入院のつき添い、亡くなった後の事務手続きまで、ある意味で家族の代わりに代行するサービスですね。
それはすごく心強いですね。でもやっぱりお金がかかる話ですよね。
おっしゃる通りです。だからこそ、この制度の革新は視力が十分でない人でも使えるように、無料または定額で提供されるという点にあるんです。
なるほど。最後のセーフティーネットとしての役割なんですね。
そういうことです。ただもちろん、その財源をどうするのか、担い手をどう育てるのかという課題はこれから詰めていく必要がありますが。
災害時の支援体制
平時だけじゃなくて、災害時というのも大きな課題ですよね。
まさに。令和6年の野党半島地震の教訓も大きいです。それが3つ目の柱、災害派遣福祉チーム、通称DWATの法制化です。
DWAT。これまでも活動はされてましたよね。
はい。ただどちらかというとボランティアベースに近かった。これをきちんと法律に位置づけるんです。
国が研修や登録制度を整えて、派遣元の法人にも協力を義務付ける。
いざというときに、訓練されたプロがもっと迅速に動ける体制を国全体で作ろうとしています。
一方で、そういう専門チームを公式にすると、かえって手続きが複雑になって動きが遅くなるなんて心配はありませんか?
それは鋭いご指摘です。まさにその柔軟性と規律のバランスが問われますね。
法制化で安定した派遣ができるというメリットと、現場の判断を尊重する柔軟な運用、この両立が今後の大きなテーマになるでしょう。
なるほど。ここまで支援の中身の話でしたが、今度はそれを支える組織の側にも変化があるんですよね。
4つ目の柱、法人制度の見直しです。例えば、過疎地で復讐の小さなNPOが連携して作る社会福祉連携推進法人というものがあります。
地域のサービスを維持するための、まあ、連合チームみたいなものですね。
その通りです。この法人がもっと柔軟に介護サービスなんかを直接運営できるように規制を緩めることが検討されています。
ほうほう。
それからもう一つ、共同募金についても動きがあります。
赤い羽の?
はい。これまで共同募金からお金をもらった団体は、自分で寄付を集めちゃいけないという制限がかかるケースがあったんです。
あ、そうなんですか。
ええ。この規制が撤廃される方向です。
例えば、子ども食堂が共同募金の助成を受けつつ、自分たちでもクリスマスの募金活動ができるようになる。団体の資金集めの自由度を上げて活動を活発にしようという狙いですね。
ありがとうございます。こうして見ていくと、地域の支え合い、孤立させない仕組み、災害への備え、そしてそれを支える組織の柔軟化と全てがつながっているのがよくわかります。
ええ。これらの改革が示しているのは、ある種の大きな哲学の転換だと思うんです。これまでは、国や行政がサービスを提供する、いわば自動販売機みたいな存在だったのが。
ほう。
これからは、地域が自ら支え合うのを手伝う庭師のような役割に変わろうとしている。2040年に向けて、社会の在り方そのものが問われていると言えるでしょうね。
エードという土壌を整えて、そこにどんな花を咲かせるかは地域次第だと。
なるほど。さて、これらの改革は、行政や団体だけでなく、私たち一人一人が自分のコミュニティでどう関わっていくかを考える、いいきっかけにもなりそうです。
あなたならどんな役割を果たせると思いますか?
06:27

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