救急医療の現場では、高次の救急医療機関に患者が集中し、その負担が増しています。そのため、救急患者を適切な医療機関へ転院搬送し、搬送先で確実に受け入れる体制の強化が課題となっています。本稿では、この課題に対応する令和8年度診療報酬改定の「救急患者連携搬送料の見直し」を解説します。
今回の見直しは、3つの柱で構成されます。第一に、患者を転院搬送する側の評価を引き上げ、救急自動車以外による搬送も評価の対象とします。第二に、搬送先の医療機関が患者を受け入れて入院させる場合の評価を新設します。第三に、30分を超える長時間の搬送に対する加算を新設します。
救急患者連携搬送料とは何か
救急患者連携搬送料は、高次の救急医療機関が救急患者を他の医療機関へ転院搬送した場合に算定する診療報酬です。この搬送料は、救急外来での初期診療後、連携する他の医療機関で入院医療を提供することが適当と判断された患者を対象とします。対象となる患者を、搬送側の医療機関が自院の医師・看護師・救急救命士の同乗のもとで搬送したときに算定できます。
この搬送料のねらいは、高次救急医療機関の受入余力の確保です。救急外来を受診した患者のうち、より専門的でない入院医療で対応できる患者を早期に他院へ搬送すれば、高次救急医療機関は重症患者の受入に注力できます。今回の改定は、このねらいをさらに進めるために、搬送側・受入側の双方と搬送の実態に応じた評価を整えるものです。
見直し1:搬送する側の評価引き上げと対象拡大
1つ目の見直しは、救急患者を転院搬送する側の評価です。この評価は「救急患者連携搬送料1」として再編され、医師等が同乗する場合の点数引き上げと、救急自動車以外による搬送の評価対象化という2つの変更が加えられました。
医師等が同乗する場合の評価は、入院前に搬送する患者について引き上げられました。具体的には、入院中の患者以外の患者を搬送する場合の点数が、現行の1,800点から2,400点へと600点引き上げられます。この引き上げにより、入院前の早期の転院搬送がより手厚く評価されます。
医師等が同乗する場合(1のイ)の点数は、現行から改定後へ次のように変わります。
* 入院中の患者以外の場合:1,800点 → 2,400点(600点の引き上げ)
* 入院初日の患者の場合:1,200点(変更なし)
* 入院2日目の患者の場合:800点(変更なし)
* 入院3日目の患者の場合:600点(変更なし)
救急自動車以外による搬送も、新たに評価の対象となりました。この評価は「救急患者連携搬送料1のロ(その他の場合)」として新設され、医師等が同乗しない搬送を対象とします。この場合、搬送側の医療機関は患者の搬送手段について調整を行った上で搬送する必要があります。点数は、医師等が同乗する場合の半分以下の水準に設定されています。
その他の場合(1のロ)の点数は、次のとおり新設されます。
* 入院中の患者以外の場合:1,000点
* 入院初日の患者の場合:500点
* 入院2日目の患者の場合:350点
* 入院3日目の患者の場合:200点
見直し2:搬送先の受入評価の新設
2つ目の見直しは、搬送先の医療機関が患者を受け入れる場合の評価の新設です。この評価は「救急患者連携搬送料2」として設けられ、搬送側だけでなく受入側にも評価を及ぼす点が特徴です。
救急患者連携搬送料2は、受入時の対応に応じて2つの区分に分かれます。1つ目の区分(2のイ)は、搬送側で「連携搬送料1のロ」を算定した患者を、受入側が自院の医師等を同乗させて自院へ搬送し入院させた場合で、800点を算定します。2つ目の区分(2のロ)は、搬送側で「連携搬送料1のイ又はロ」を算定した患者を受入側が入院させた場合で、200点を算定します。いずれの区分も、入院初日に限り算定できます。
2つの区分の点数は、次のとおりです。
* 2のイ(受入側の医師等が同乗して自院へ搬送し入院させた場合):800点
* 2のロ(搬送された患者を入院させた場合):200点
見直し3:長時間搬送の加算新設
3つ目の見直しは、長時間の搬送に対する加算の新設です。この加算は、搬送先までの搬送時間が長くなる場合でも円滑な転院搬送を進めるために設けられました。
長時間加算は、搬送に要した時間が30分を超えた場合に700点を加算します。この加算の対象は、医師・看護師・救急救命士が同乗する搬送に限られます。具体的には、搬送側の「連携搬送料1のイ」または受入側の「連携搬送料2のイ」を算定する場合が対象です。
施設基準のポイント
これらの評価には、それぞれ施設基準が定められています。施設基準は、搬送側の連携搬送料1と受入側の連携搬送料2で内容が異なります。
搬送側(連携搬送料1)の施設基準は、救急搬送の実績と連携体制の確保を求めます。具体的には、救急搬送について相当の実績を有すること、連携先とあらかじめ転院体制を協議していること、搬送先から診療情報の提供を受けられる体制を整えていること、搬送後の病状急変に備えた緊急診療提供体制を確保していることが要件です。
受入側(連携搬送料2)の施設基準は、対象となる医療機関の範囲を絞り込んでいます。具体的には、特定機能病院、救命救急センターを有する医療機関、急性期総合体制加算を届け出た医療機関のいずれにも該当しない医療機関であることが要件です。加えて、連携先とあらかじめ転院体制を協議していることが求められます。この基準により、高次救急を担うこれらの医療機関に該当しない医療機関が、患者の受入側として評価の対象となります。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、救急患者連携搬送料が3つの柱で見直されました。搬送する側については評価を引き上げ、救急自動車以外による搬送も評価の対象としました。搬送先については、患者を受け入れて入院させる場合の評価を新設しました。さらに、30分を超える長時間の搬送に対する加算を新設しました。これらの見直しは、高次救急医療機関と他の医療機関との連携を強化し、救急患者の適切な転院搬送と受入を推進することをねらいとしています。
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