こんにちは、ザ・ディープダイブへようこそ。 今回は、鹿児島大学の坂井弁一淳教授による非常に興味深い取り組みを掘り下げていこうと思います。
特別なプログラミング知識がない中で、AIを活用して、教育現場のDX、つまりデジタルトランスフォーメーションを進めて、
同時に、その消滅の危機にある地域の方言を守ろうとしているというお話なんです。 手元にはですね、この活動に関するレポートとか記事がいくつか集まっています。
今回特に注目したいのは、そのプログラミングが専門じゃない、いわゆる文系の先生がですね、身近な課題、教育とか文化の課題に対して
AIっていうツールをどう使いこなしたのか、そこにどんな意味を見出したのかっていう点ですよね。
資料を読むと、学生さんとか、あと高齢者の方のAIに対する反応も、なんかちょっと面白いというか予想外なところがありそうですね。
坂井 そうなんですよ。まずちょっと驚くのが、いただいた資料にあるデータなんですけど、大学1年生の半数以上がAIを使ったことがないと。
エルゼ へー、半数以上ですか。 坂井 えー、生成AIこれだけ話題なのにです。この数字あなたはどう思われますか。ちょっとここから話を始めてみましょうか。
エルゼ 半数以上が未使用ですか。うーん、それもまあ少し意外な感じもしますね。
技術へのアクセス自体は広がっているはずなんですけど、実際に使うっていう段階にはまだ至ってないというか、
あるいはその使う必要性を感じてない学生さんが多いということなのかもしれませんね。
あと教員側にも、なんていうか、どう授業に取り入れたらいいのかなっていう戸惑いとか、なんか漠然とした警戒心みたいなものがあるっていう可能性も考えられますよね。
坂井 まさに坂井淳教授ご自身も、高度は大学1年生と同じレベルの知識しかない完全な文系人間だってこうおっしゃっていて。
エルゼ ああ、そうなんですね。
坂井 多くの教員がAIに対して使わずに警戒してるっていう状況をなんとか変えたいと考えたのが出発点だったそうなんです。
そこで目をつけたのが、専門知識がなくてもAIアプリケーションを開発できるノーコードAIプラットフォームのミーボーだったと。
エルゼ ノーコードツール、これは単に技術のハードルを下げるっていう、それだけじゃないんですよね。
重要なのは、やっぱり現場の課題を一番よく知ってる人が、その自分ら自ら解決策を作り出せるようになるっていう点だと思うんです。
坂井 坂井先生のように多忙な教育現場だと、外部の専門家にお願いする時間とか、複雑なシステムを学ぶ余裕ってなかなかないことが多いじゃないですか。
だからミーボーみたいなツールっていうのは、そういう現場主導の地に足のついたイノベーションを可能にする力があるということですよね。
エルゼ そうですね。単にツールを導入したっていう話で終わらないのが、この事例の面白いところなんです。
坂井 隼教授は、具体的な教育課題の解決に、このミーボーを直結させてるんですね。
例えば、多くの学生がちょっと苦手とする、問いを立てるっていうスキル、これを伸ばすために、論理力向上クイズボットっていうのを開発されたそうです。
エルゼ クイズボットですか。それはどういった仕組みなんでしょう。
坂井 AIと対話しながら、三段論法みたいな論理的な思考を、ゲーム感覚で練習できるっていうものらしいです。
エルゼ なるほど、ゲーム感覚で。
坂井 これが学生たちには結構好評で、AIに褒めてもらえると嬉しいとか、ゲームみたいで続けやすいみたいな声が寄せられて、学習意欲の向上につながったということなんです。
エルゼ なるほどね。ゲーミフィケーション、ゲームの要素と、AIからの即時的でポジティブなヒードバック、これをうまく組み合わせてるわけですね。
学習の成果がすぐ分かって、しかも肯定的な言葉で励まされるっていうのは、やっぱりモチベーション維持には効果的ですよね。
エルゼ 特に正解か不正解かだけじゃなくて、そのプロセス自解を褒めるような、そういう対話設計がもしできていれば、より深い学びにもつながりそうですね。
坂井 さらに、ちょっと教育的な工夫として面白いなと思ったのが、AIが会話の途中であらかじめ設定された特定のキーワード。
エルゼ キーワード?
坂井 例えば、花子とかもちまるみたいな、ちょっと文脈とは外れたユニークな言葉を発するようにしたそうなんです。
エルゼ キーワードですか。その意図は何なんでしょうね。気になりますね。
坂井 これ、どうやら学生が本当にAIbotとちゃんと対話して課題に取り組んだかを確認するための仕掛けみたいなんです。
エルゼ なるほど。
坂井 課題レポートにその出てきたキーワードを書かせることで、単に他の学生の答えを移したりとか、まあ適当に終わらせたりするのを防ぐ、そういう狙いがあるようです。
エルゼ うーん、それは確かに巧妙な仕掛けではありますよね。学習プロセスを担保しようという意図はすごくよくわかります。
ただ、もしかすると学生さんによっては、そのキーワードを見つけること自体が目的になっちゃって。
坂井 ああ、なるほど。
エルゼ ええ、本来のAIとの対話とか思考練習っていうのが、ちょっとおろそかになっちゃうっていう懸念もまあ少し感じますかね。
このあたりは、運用しながら調整していくっていうのが必要かもしれないですね。
坂井 なるほど、確かにそういう側面もあるかもしれませんね。そしてもう一つ、教員にとってこれ非常に大きな負担となっていたのが、レポートの添削業務です。
エルゼ ああ、これは大変ですよね。
坂井 ええ、坂井準教授の場合、1クラス30人を3クラス、つまり約100人分。
エルゼ 100人。
坂井 ええ、これを毎週チェックする必要があったそうです。これは本当に大変な作業量ですよね。
エルゼ ええ、もう一人一人に質の高いフィードバックをって思うと、時間はいくらあっても足りませんからね。多くの大学の先生が抱えている、まあ共通の悩みでしょうね。
エルゼ そこで開発されたのが、レポート添削支援システムです。坂井準教授自身のそのレポートチェックの観点とか知識をミーボに学習させてですね、学生が提出する前にまずAIによる一時チェックを受けられる、そういう仕組みを作ったそうなんです。
エルゼ なるほど、AIがいわば副作みたいな役割を担うっていうことですね。基本的な文章の構成とか、あと必須項目が入っているかとか、そういうチェックを事前にやると。
坂井 まさにその通りです。これによって初期段階の形式的なチェックにかかる時間が大幅に削減されたと。教員はより内容の深い部分、例えば論理展開のオリジナリティとか学生ならではの視点とか、そういうところへのフィードバックに時間を集中できるようになったということらしいんです。
エルゼ 負担軽減と指導の質の維持、あるいは向上を両立させようという試みですね。
これはAIの得意なことと人間の得意なことの役割分担を考える上で、非常に示唆に富む事例だと思いますね。
定型的なチェックはAIに任せて、人間はより個別性が高い、思考を促すような関わりに収力すると。
ただ、ちょっと気をつけたいのは、AIのチェック基準があまりにも固定化されすぎると、学生の思考が学位置的になってしまうリスクもあるかなと。
多様な表現とかアプローチを許容するような柔軟なAIの運用っていうのがやっぱり求められるでしょうね。
エルゼ その点も結構配慮されているみたいで、AI自身に利用ガイドラインを組み込んでいるっていうのも特徴なんですよ。
エルゼ AI自身にですか?例えば、レポートの丸打ちは不正行為だからダメ、でもAIに文章表現をチェックしてもらうのはOKみたいなルールとか。
エルゼ はいはい。
エルゼ あるいは、答えをそのまま教えてっていう要求には、それはできません。ヒントなら出せますみたいに、AIが自律的に答えるように設定されているそうなんです。
エルゼ ああ、それは面白い。AI自身が使い方をガイドするっていうのはすごく重要なアプローチですよね。
技術の利便性だけを享受するんじゃなくて、適切な使い方とか倫理観みたいなものを利用体験を通じて学べるように設計されている。
エルゼ これは単なる効率化を超えた教育的な価値を持つ試みと言えそうですね。
ただまあ、こうしたガイドラインが警戒化しないで、実際に学生の行動変容につながるかどうかは、やっぱり継続的な効果測定とか改善は必要でしょうけど。
技術的にはそのmiiboのシナリオ分岐機能ですかね、それを駆使してこういう複雑な対話ルールを制御してるんだろうなと推測できますね。
エルゼ そうですね。さらに資料によると、API連携、まあ異なるソフトウェア同士をつなぐ橋渡しみたいな技術ですね。これを使って音声合成も導入したそうです。
エルゼ 音声も?
エルゼ ええ。約80%の認識精度で音声での対話も可能にしているとのことです。これも学習体験を豊かにする工夫ですよね。
エルゼ へえ。テキストだけじゃなくて、音声でのやり取りが加わることで、より自然なコミュニケーションに近づきますし、利用のハードルが下がる可能性もありますよね。特に言語学習系の応用なんかでは効果を発揮しやすいでしょうね。
エルゼ さて、ここまで教育現場でのAI活用を見てきたんですが、坂井純教授はもう一つ個人的な問題意識から始まった、非常に意義深いテーマにも取り組んでいらっしゃいます。それが、鹿児島方言の継承です。
エルゼ 方言の継承ですか。教育DXとはまたちょっと違った、しかしこれも非常に切実な課題ですよね。言葉っていうのは文化の根幹とも言えますから。
坂井 はい。いただいた資料によれば、鹿児島の方言はこのままいくと30年以内に消滅してしまうかもしれないと。
エルゼ 30年。そんなに危機的な状況なんですね。
坂井 ええ、そういう危機的な状況にあるそうです。坂井純教授ご自身が、おじいさまが話す言葉を理解できなくて、コミュニケーションに壁を感じたっていう経験が、この問題に取り組む強い動機になったと語っています。
エルゼ なるほど、個人的な体験が社会的な課題への取り組みにつながっているんですね。それは研究者としてすごく強い推進力になるでしょうね。それで方言継承にAIをどう活用しようと考えられたんでしょうか。
坂井 開発されたのが方言チャットボットカルカンちゃんです。
エルゼ カルカンちゃん、かわいい名前ですね。
坂井 標準語で話しかけると、AIが鹿児島弁で返事をしてくれる、と。しかも単なる直訳じゃなくて、70代くらいの話し者が使うような自然な言葉遣いを再現することを目指しているそうです。
エルゼ へえ、それは非常に興味深い挑戦ですね。失われつつある無形文化財である方言をデジタルデータとして記録保存するだけじゃなくて、さらにインタラクティブな形で活用しようというのはAIならではの可能性を感じます。
坂井 技術的にはそのmiiboが持っているRAG、リトリーバルオーグメンテッドジェネレーションでしたっけ?
エルゼ ええ、RAGですね。
坂井 その仕組みを活用しているようですね。これはあらかじめ用意しておいた方言の知識データベースを参照しながら、文脈にあった自然な応答を生成する技術。これによって膨大な会話パターンを事前に全部用意しなくても柔軟な対話が可能になると。
まさに、奄美地方には標準語にない母音が7つあるとか、そういう方言特有の音声的な特徴も再現しようと技術的な課題にも取り組んでいる最中だそうです。
エルゼ 音声のニュアンスまで含めてとなると、それは相当高度な挑戦ですね。
言葉の響きとかイントネーションというのも、方言のアイデンティティを構成する重要な要素ですからね。ただ、AIが完全にその土地の話し手の味みたいなものまで再現できるかというと、そこにはまだ限界もあるかもしれませんね。
坂井 そしてですね、このカルカンちゃんには特に期待されている応用分野があるそうなんです。それが医療や介護の現場です。
エルゼ 医療・介護ですか?それはどういったニーズからなんでしょう?
坂井 高齢者の方の中には、過励とかあと認知機能の変化に伴って、若い頃に日常的に使っていた方言が強く出るようになる方言返りっていう現象が見られることがあるそうなんですね。
AIはあくまでそのための有効な補助ツールと捉えるべきでしょうね。
このように、教育と文化継承という2つの領域でAI活用を進める坂井潤教授は、今後の展望についてこう語っています。
文系の学生や教員は、実は現場に根出した良いアイディアをたくさん持っている。でも、それを形にする技術がなかった。
ミーボーのようなツールがその壁を壊してくれる、と。
まさにそうですね。現場の課題を知る非専門家が自ら解決策を生み出せるようになる。
これは、これまでの技術主導の開発とは異なる、課題解決主導のイノベーションの形と言えるでしょうね。
専門家ではないからこその自由な発想とか、ユーザー視点に立った開発、みたいなものが期待できますね。
教育分野では、今回のクイズボットとかレポート添削支援のような実践例を、さらに多くの学校現場に広げて、先生方の業務負荷の軽減とデジタル化を両立させたいと考えているようです。
AIを禁止するんじゃなくて、どうすれば正しく教育効果を高まる形で使わせられるかっていう、そういう視点の転換が教育現場の働き方を変えるきっかけになるかもしれないと。
なるほど。では、方言継承の分野についてはどのようなビジョンをお持ちなんでしょうか。
AIをあくまで人間による継承活動を補完する存在と捉えているっていう点が重要かなと思います。
ああ、補完する存在。
ええ。各家族化が進んで、日常的に方言に触れる機会が減ってしまった現代において、例えば、普段はAIのカルカンちゃんと方言に親しんでおいて、週末には地域のイベントで実際の反射と交流する、みたいな新しい形の継承モデルを提案されています。
それは非常に現実的で、かつ持続可能なアプローチだと感じますね。
AIが日常的な接触機会を提供して、人間同士の交流が文化としての実感とか感情的なつながりを深めると、テクノロジーと人の温めりが互いを補い合う形ですね。
地域文化の多様性を守って次世代につないでいく上で、AIが生きた継承をサポートする役割っていうのは今後ますます重要になるでしょうね。
ただ、AIのよる記録とか再現が本物の文化体験を代替するものではないっていう認識は常に持っておく必要がありそうですね。
さて、今回の鹿児島大学の事例を深く掘り下げてきましたけれども、
ミーボーのようなツールを活用することで、プログラミングの専門家でなくても、教育現場の効率化とか失われつつある文化の継承といった非常に身近で切実な課題対決にAIが貢献できる可能性が見えてきましたね。
いえいえ、本当にそうですね。重要なのは技術そのものではなくて、それをどう使うかというその知恵ですよね。
つまり、教育的な設計思想であったり、倫理的な配慮、そして文化的な文脈への深い理解、これが大事だと。
坂井淳教授の取り組みは、その技術と人間的な要素がうまく組み合わされた素晴らしい高齢と言えるんじゃないでしょうか。
テクノロジーはもはや遠い存在ではなくて、あなたの目の前にある課題を解決するためのアイディア次第で強力な味方になり得るということですね。
そして、今回の事例が示唆するように、専門家ではない多様な人々がAIを活用し始めることで、これまで思いもよらなかった分野でのイノベーションとか、より人間的な課題解決が進む可能性を秘めていると言えそうですね。
最後に、これを聞いているあなたに少し思考の種を投げかけたいなと思います。
今回ご紹介した方言のように、AIが支援することで、あなたの身の回りでもっと大切に守られたり活性化したりできるような人間らしい営みとかコミュニティのつながりって何か思い浮かぶでしょうか。
効率化とか便利さだけでなく、人の温まりとか文化的な豊かさを守り生まむために、私たち自身がテクノロジーとどう向き合って活用していくべきか。
少し考えてみる時間を持ってみてはいかがでしょうか。
今回の深堀りはここまでです。また次回、新たなテーマでお会いしましょう。