もし、私がですね、進化の過程で、素数という数学の概念を武器にして生き残り、さらには、本来なら自分たちを殺して操るはずの恐ろしいゾンビキノコを体内で飼いならして、毎日のサプリメントにしている昆虫がいると言ったら、どう思いますか?
えっと、設定だけ聞くと、完全にどこかのSF映画に登場するエイリアンの話ですよね。
そうなんです。きっとエイリアンだと思いますよね。
でも実はそれ、あなたが夏場に自宅の庭で、「あーうるさいなー」と感じているあの身近な昆虫、セミの実際の生態なんですよね。
いやー、身近すぎるからこそ私たちは彼らの本当のヤバさに気づいていないんだと思います。
キュリオシティノーツ、リプライへようこそ。
ここではですね、膨大な資料や最新の研究論文を深掘りして、あなたが最高に、「へえ?」と思える知識のエッセンスをお届けしています。
はい、今回も非常に興味深いデータが揃っていますね。
よし、これを紐解いていきましょう。今回のテーマは、日本のセミとアメリカのセミの脅威の生存戦略と気候変動がもたらす影響です。
今回の資料はですね、京都大学の最新の研究論文やCBCテレビの報道、そして産総研などの自然科学レポートといった多岐にわたるものです。
これらを読み解いていくと、セミが単なる夏の風物詩ではなくて、驚くほど緻密な生物学的メカニズムを持った存在であることがよくわかります。
まずはですね、誰もが信じているあの有名な誤解からクリアにしていきましょう。
あの、セミは地上に出てから1週間しか生きられないという定説のことですね。
はい、そうです。あなたも一度は聞いたことがあるはずです。でもこれ、間違いなんですよね。
ええ、全くの誤解ですね。野外調査のトラップを使った追跡調査などの結果からですね、鳥などの天敵に食べられさえしなければ、セミの生虫は実際にはもっと長く生きることがわかっています。
実際はどれくらい生きるんですか?
はい、だいたい2週間から4週間、長れば1ヶ月近くも生きる個体がいるんですよね。
1週間じゃなかったんですね。でもですね、仮に1ヶ月だとしても、土の中にいる期間と比べると極端に短いことに変わりはありません。
確かにそうですね。日本のアブラゼミなんかは、土の中で3年から7年も過ごすわけですから。
これ人間で言えばですよ。80歳までずっと暗い地下室で過ごして、人生の最後の数ヶ月だけ外に出て遊ぶようなものですよね。
すごい例えですが、まさにその通りです。
なんでそんな極端なライフスタイルになったんでしょうか?
ここで非常に興味深いのはですね、その個体が彼らの食事にあるということなんです。
食事ですか?土の中で何を食べているんですか?
セミの幼虫は、土の中で木の根っこにストローのような口を刺して、導管液というものを吸って生きています。
ちょっと待ってください。導管液って植物が根から吸い上げるあの水分のことですよね?
ええ、そうです。
生物学的に考えてそれはおかしくないですか?
導管液なんて99%がただの水ですよね?
はい、おっしゃる通りです。
そんな極薄の水分だけで、あの硬い外角角を持った立派な体を作れるわけがないと思うんです。
もしかして、周りの土でも食べているんですか?
いや、土は食べません。鋭い指摘ですね。そこがまさに最大のパラドックスなんです。
と言いますと?
導管液にはですね、アミノ酸などの成長に必要な栄養素が絶望的なまでに足りていないんです。
だからこそ、成長するのに遠もない時間がかかるわけです。
なるほど。でもそれだけでは体は作れないですよね?
はい、そこで彼らは信じられないハッキングを行いました。
お腹の中に特別な強制器官を持ちまして、そこで特定の微生物を飼育しているんです。
微生物をですか?
ええ、その微生物に足りない必須アミノ酸を作らせているんですよ。
つまり微生物に体内で向上を作らせているということですか?
そういうことになります。そしてさらに驚くべきなのはここからです。
まだあるんですか?
産総研の研究データによるとですね、油ゼミなど一部のセミの体内にいるその強制器官、
実は本来なら昆虫の脳や体を乗っ取って殺してしまう天敵の仲間なんです。
えっとそれって?
はい、あのトウチュウカソウの仲間であることが判明したんですよ。
嘘でしょ!トウチュウカソウって虫からニョキッとキノコが入るあのホラー映画みたいな菌ですよね?
ええ、その恐ろしい天敵を体内で飼いならしているということなんです。
信じられないです。
ある時期の進化の過程で天敵であるはずの病原菌を自らの細胞内に取り込んで、
栄養構成工場として家畜化してしまったんですね。
すさなじい適応力ですね。この究極の強制関係があるからこそ、
彼らは栄養ゼロに等しい水だけを飲んで何年も生き延びることができるわけですね。
その通りです。
日本のセミが栄養不足を生物学的なハッキングで乗り切ったのだとしたらですよ。
舞台をアメリカに移すと、彼らは今度は時間と数学をハッキングしているんですよね。
はい、アメリカ東部に生息するいわゆる素数ゼミのことですね。
彼らは13年に1度あるいは17年に1度だけ、数億匹から数兆匹という天文学的な規模で一斉に地上に現れるんですよね。
ええ、これをさらに大きな視点と結びつけてみると、氷河期という過酷な環境からの究極の生存戦略が見えてくるんです。
13年と17年、これどちらも1とその数自身でしか割れない素数ですよね。
なぜわざわざそんな中途半端な年数を選んだのかずっと不思議だったんです。
氷河期の寒さで成長が極端に遅くなったセミたちはですね、まばらに地上に出ても交尾相手を見つける前に天敵に食べられてしまうリスクがありました。
なるほど、だから確実に出会うために全員でタイミングを合わせる戦略を取ったわけですか。
はい、同時に数兆匹という圧倒的な数で一斉に出現することで、鳥や小動物などの捕食者がいくら食べても全体のほんのわずかな割合にしかならない状況を作り出したんです。
それって物理的に天敵の胃袋の限界を超えさせる捕食者飽和効果というやつですよね。
まさにそれです。食べられても食べられてもまだ無限にいるから種としては生き残れるわけです。
でもそれなら別に10年でも12年でもいいはずですよね。なぜ素数でなければならなかったんでしょうか。
それはですね、別の集計を持つグループと発生のタイミングが重なって交雑してしまうのを防ぐためなんです。
ああ、ここで最小公倍数の概念が登場するわけですね。リスナーのあなたも頭の中で計算してみてください。もしセミの周期が12年と18年だったとしますよね。
はい、そうするとどうなりますか。
最小公倍数である36年に一度、2つのグループが地上で鉢合わせして交雑してしまいます。
ええ、違う周期の遺伝子が混ざると体内時計のリズムが崩れてしまうんです。
リズムが崩れるとまずいんですか。
結果として一斉に迂下するという彼らの最大の防御システムが壊れてしまうんですよ。
なるほど。ところが13と17という素数同士なら13×17でなんと221年に一度しか交雑しません。
そうなんです。素数を選ぶことで他の周期を持つセミと混ざるリスクを極限まで減らしているわけです。
進化の過程でそんな数学的な最適解を引き当てたなんて鳥肌が立ちますね。
本当に自然の神秘ですね。
ただですね、ここで一つ大きな疑問にぶつかるんです。
何でしょうか。
17年ゼミは土の中でカレンダーを見ているわけでもないのに、どうやって17年という長い年月をカウントしているんですか。
確かに数兆匹が寸分の狂いもなく一斉に迂下のタイミングを合わせるなんて不思議ですよね。
はい。ここからが本当に面白いところなんですが、京都大学などの研究チームが発表した4年ゲート仮説というメカニズムがあるんですよね。
ええ。長年の生物学の謎でしたが、最新の研究でそのメカニズムが解明されつつあります。
これ、時計で時間を測っているというよりは生態内の料金所みたいなシステムなんですよね。
倍数の年、つまり4年目、8年目、12年目、16年目に関門を設けているんです。
関門ですか。
はい。そこで臨界体重と呼ばれる一定の重さを超えているかどうかをチェックする生理学的なゲートを通過するんですよ。
えーと、ちょっと待ってください。どうやって自分の体重を測るんですか?体重計なんてないですよね?
もちろんありません。実はですね、木の根に流れる導管液の成分は、春、秋、冬、死で微妙に変化するんです。
季節によって味が違うみたいなことですか?
そんな感じです。その科学的な変化のサイクルを感知して1年を数え、
それが8回巡ってきたタイミングで特定のホルモンバランスが体重、つまり栄養状態と連動してゲートを開くか閉じるかを決定していると考えられています。
まるで4年に1度のテストみたいですね。もし16年目の関門で体重が足りなかったらどうなるんですか?
バーは下りたままです。次のチャンスは4年後の20年目になってしまうんです。
厳しい世界ですね。じゃあ16年目のチェックで、よし、既定体重クリアとゲートが開いた幼虫は翌年の17年目に運化できるわけですね。
そうです。ここからの生理学的な変化がまた見事なんですが、ゲートを通過した16歳の秋の時点で幼虫の白い目が赤眼に変わります。
目の色が変わるんですか?
ええ、そしてまだ真っ暗な地中深くの土の中にいるにも関わらず、地上の光を感知するための視覚タンパク質、オプシン遺伝子のスイッチがすでにオンになっているんです。
秋の時点でもう地上に出る準備が完了しているってことですか?
はい、完璧に準備できています。
じゃあそのまま勢いで外に出ちゃえばいいんじゃないですか?なんで待つんですか?
そこですぐに出ないのが彼らのシステムの完璧なところなんです。彼らはそこで冬季抑制、つまり冬の間の休眠状態に入ります。
ああ、秋のフライングを防ぐためですね。
その通りです。そして翌年の春、土の温度が特定の温度、約18度に達した瞬間に全員のスイッチが同時にオンになるんです。
なるほど。このマテのシステムと温度トリガーがあるからこそ、何兆匹ものセミが一斉に地上に出ることができるんですね。
はい。数学的な周期、4年ごとの体重チェック、そして温度による最終トリガー、何十ものロックを解除してようやく地上に帰還するわけです。