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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
10とteenの関係
今回取り上げる話題は、10とteenというものです。
10、言わずと知れた10を表す数字ですね。10です。
そして、13以上、19までですね。13,14,15というふうにteenというのが続きますね。
これはもちろん10ということなんですが、10に対してteenということで非常に似ている、わかりやすいということになるかと思うんですけれども、
この何でもない問題について、英語史の観点から迫ると、実は謎が隠されているんですね。
何かというとですね、今10とteenというのは十分に似ている、近い。
だから語源が同じ10という意味の単語のはずだし、全く問題ないという言い方をしたんですが、
よく考えると、何で全く同じではないのかってことですね。
つまり似てはいる、確かに10、teenってことですね。
だけれども同じじゃないんですね。
10の方は単母音、えっていうのがありますね。
そしてteenの方は長母音があると。
このぐらいの違いだったらですね、許せるといえば、確かにこういうのはいくらでもありそうですから許せるんですが、
実は長くなったり短くなったりする場合でも、音声的な、音韻詞的な理由がだいたいあるんですね。
ところがこの10の場合、もともと実はteenという長い母音を持っている方がデフォルト、基本だったんですが、
それが何で10を意味する10の場合に短い母音になっちゃったのかっていうことはですね、実はよくわかってないんです。
なので10なんていうのはtenと書いて10。
これ以外読みようがないっていうぐらいストレートで、誰も謎に感じたことなどなかった単語だと思うんですが、
英語詞の観点から見るとこれ十分に謎なんですね。
なぜteen、素直にteenで十を意味する単語にならなかったのかということですね。
こんなことは思ってもみなかった疑問かもしれませんが、この問題に少し入り込んでみたいと思います。
音韻の謎
このtenなりthirteenとかのteenなりですね、これ十を意味するゲルマン祖語のテハンという形、
これに遡ると考えています。
テハンというような形ですね。
このテハンというフの子子音ですね、これが後になくなってしまいまして、
てあんみたいな形になりますね。
結局母音が2つ続くことになります。
てあんみたいな形ですね。
そうするとこの母音が融合して長い母音になるっていうことですね。
間のフっていう子音がなくなることによって母音がくっついて最終的に長い母音になるというのが、
ゲルマン祖語ではだいたいこれなんですね。
例えばドイツ語でも現在tenになってますね。
ですから十はドイツ語では千ですし、十三はですね、三たす十ということでだい千というふうに、
つまりドイツ語では十も十三の一部としての千の部分も同じように長いんですよ、千という。
ところが英語ではtenに対してthirteenという風に発音が違くなっちゃってる。
thirteenの場合は長いんだけれども、ten単体の場合には短い母音になってるっていうことなんですね。
これが実は謎なんです。
小英語でもですね、これtenという形、これで十だったんですね。
長い母音がちゃんとあったんです。
そしてthirteenに相当するものもそれをtenというふうに、
要するに十だろうが十三以上のこの十の部分だろうが両方ともtenというやはり長い母音を持ってたんですね。
ここから順当に現代英語になっていればですね、
これは十はteenであり、そして十三はthirteenであるというふうに揃ってたはずなんです。
ところが十三のところではteenという長い母音が残りましたが、
肝心の十単体の場合にはこれが短くなってですね、tenになってしまったということなんですね。
英語の音韻詞を全体的にですね、眺めてみるとむしろですね、複合語、
例えば十三なんかが複合語ですね、thirteenというふうに2つの要素を組み合わせている。
このように複合語になる場合は全体が当然単体よりも長くなるわけなんで、
その複合をした全体を少しでも短くですね、発音したいということで母音が短くなるってことはあり得るんです。
逆に単体の一語だと十分に余裕があるので長い母音になるっていうことは、
これは一般論として英語の音韻詞ではあるんですが、どうも今回のケースは逆なんですよね。
複合語となるthirteenでは長いままきちっと保たれて、
そして単体である十ですね、これもともとtenというふうに長い発音を持っていたのに、
そして一語だから十分余裕があるのになぜか短くしてtenになっていると。
これが実は非常に説明が難しいんですね。
英語学者もこの問題については簡単には説明できない現象だなんて言っているほどなんですね。
私も結論はわからないんですけれども、一つ考えてみたこととしてですね、
隣のelevenっていうのがelevenというnの形ですね、
それからsevenってのもありますね、enという短い母音、弱い母音ですけどね、
短い母音で終わっているものが近辺にあるということ、
これに影響されたんではないかなんていうことを考えてみたりもしますが、
あくまでスペキュレーションにすぎません。
あまり説得力のある説明にはなっていないかなと思っています。
何かが起こったということになりますが、その何かが何なのかよくわからない。
これがもし起こらないで順当に来ていたら、いまだにですね、十はteenだったはずなんですね。
One, two, three, four, five, six, seven, eight, nineteenのように発音していたはずなんですが、
どういうわけか短くなってtenとなったということです。
語源的には大した話題ではないように思われるかもしれませんが、
英語詞であるとか語源学の面白さは、通常使っている文には何にも問題を感じない、
何も謎の部分がないはずのストレートな単語であってもですね、
こういうふうにteenと比較してみたりですね。
teenのteenと比較してみたりすると、おっと、何で違うんだろうと。
場合によっては何で同じなんだろうとかですね。
こういう問題意識といいますか、見方が変わるとですね、全てが問題に見えてくるという面白いことがしばしば起こるんですね。
これが英語詞を学んでいることの魅力、面白さなんではないかと思います。
今日はtenとteenという何気ない単語あるいは単語の要素に注目してみました。
それではまた。