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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる話題は、Your Majesty 「陛下」の確立は17世紀、という話題です。
イギリスの君主を呼ぶときに、「you」というふうに直接名指しをするというのは、あまりに失礼であるということで、
Your Majesty という言い方をするんですね。これで、陛下と呼びかけるような感じです。
このYour Majesty、それぞれYとMを大文字にして、普通の使い方ではないぞと、プライトネスですよね。
敬意を持って表現しているぞということを示すのに、YとMを大文字にして書くわけですね。
発音する場合は、もちろんそういう概念は出ませんが、Your Majesty という言い方をするわけです。
これ単にYouというのと違って、Your Majesty、文字通りに言えば、あなたという僧侶、あなたという豪華さ、あなたという威厳というような、そういう意味になりますけれども、
それによって、つまり君主の持つ、いわば性質と言いますかね、君主の持つ威厳みたいなものを抽象的に表現する。
それによって、実際上は具体的な君主、その人を指すというような、一種のメトニミということですね。
その人の持つ性質を持って、その人そのものを指す、間接的に指すということで、いわば敬意が出るということなんですよね。
なのでYour Majesty、現在のイギリスで言えば女王陛下ですね、エリザベス女王のことを指すということになります。
これ面白くてですね、Your Majestyという、いわば名詞句はですね、これそのものは抽象名詞のマジェスティということですので、
これがもし主語に至ったら三人称、単数ということで受けられるわけなんですが、実質的にはYouを指すわけですよね。
あなた様という陛下を指すわけですので、この辺がですね、受けと動詞の行というのが一致しないことがあるんですね。
代名詞で受けるときはYouでいいんですけれども、このYour Majestyが主語になったときには三人称単数として受けるというような、ちょっと破格な、普通とは違う使い方をしたりしますね。
例えば、陛下、夕食は何時にいたしましょうか?なんていう文はですね、When would Your Majesty like your dinner?というふうになります。
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Your dinnerと受けていることからして明らかにYouを指しているということはわかるんですが、Your Majestyそのものは実は三人称単数受けなんですね。
今の例文では特に三単元のSとかはっきりした形が出ないんですが、これは三人称単数として受けていると、二人称単数というよりはですね。
こういうような破格な、ちょっと特別扱いにされるような表現になっているというのが、この種の表現の面白いところだと思うんですね。
もちろんこれ、面と向かって陛下に呼びかける時がYour Majestyであって、そうではなく、第三者的にですね、女王ですから彼女はと言いたい時にはHer Majestyという言い方をするわけです。
もし王、男性の王だったらもちろんこれはHis Majestyになりますし、あるいは君主とその配偶者を含めた、いわゆる君主夫婦ですね、を指す時にはTheir Majestiesという言い方になります。
この言い方は日本の天皇の場合にもそうですね、現在であればHis Majestyになりますし、あるいは両陛下という言い方の場合にはTheir Majestiesということになります。
ちなみに日本語の陛下という表現もですね、これはメトニミです。陛というのは、いわゆる宮殿に昇る階段のことなんですね。
下ですから、その階段の下です。つまり上に天皇がいるわけですよね。その下に取次のものがいるわけです。金身がいて、その金身を経由して伝達事項がその上にいる天皇にですね、伝わるということなので、
つまり天皇の取次である金身のものが階段の下にいるという、こういう関係を利用してその下のものを呼ぶ表現、陛下として間接的に上にいる天皇のことを指し示すということですね。
直接指し示すというのはあまりに失礼、下品なので、間接の間接という言い方をしているわけです。しかも人を指す表現ではなく、あくまで階段の下という場所を指示することで、結果的にそこにいる取次の人を指すということで、ある意味二重のメトニミっていうんですかね。
非常に間接的に指すということで、マジェスティの英語の発想にも負けていないというか、さらにそれを輪をかけたようなですね、間接的な言い方で日本語で陛下と言っているわけですが、これも英訳すると大体マジェスティですね。つまりyour majestyとかhis majesty、their majestyみたいな訳語になるわけですね。
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さて、あなたという名のマジェスティ、威厳みたいな表現で、間接的に王、女王、君子ですね、イギリス君子を指すというのが英語の用法なんですけれども、これはいつぐらいにできた表現かというとですね、実は定着したのですね、17世紀に入ってからのようなんですね。
もちろんイギリス君子というのはそれ以前からずっといるわけですけれども、それ以前はですね、your graceという言い方、graceも威厳とか送礼という意味がありますね、優美とかそういう意味ですね。
こういう表現もありましたし、your highnessという表現もありました。つまりあなたという名の高いもの、高い地位にいるものということで、これも一種の性質をもってその人を表すというメトニー、一種の経緯ですよね。
こういう表現があったんですけれども、じゃあなぜもともとyour grace、your highnessだったものがyour majestyということになったのか。これもなかなか面白い経緯があります。
your ほにゃららという形式は、そもそもラテン語の対応表現に習って、中英語期から用いられた表現なんですね。いわゆる訳語です。ラテン語のものをなぞって英語に持ってきたということなんですが、当初はですね、your graceというのが一番多かったということなんですね。
それがですね、your highnessというのもだんだん現れてくるんですが、最終的にチューダーチョー王ですね。これ大体16世紀です。ヘンリー7世から始まって100年余続く王朝だったわけですが、このチューダーチョーの階層ヘンリー7世がですね、王家の式たりをいくつか変えたんですが、その一つとしてこの王を示す言葉、尊称ですね。
これを今までyour graceだったものをyour majestyというものに改めたということなんですね。それ以降、your majestyと呼ぶ習慣が確立したということなんですね。なぜ今your graceという一種の慣習的な呼び方が確立していたところに、あえてですね、majestyみたいなことを持ち出さなきゃいけなかったかというと、このチューダーチョーというのはそもそもヘンリー7世が階層なわけですが、
基盤の危うい政権だったんですね。王朝だったんですね。なので少しでも威厳を持たせる、いろんな手段を考えました。そして言葉上も変えてですね、graceよりも重々しい、しかもより威厳のある表現ですね。
両方ともgraceにせよ、majestyにせよ、最終的にはラテン語にさかのぼるわけですが、一音節多いわけですよ。majesty。しかもmajestyというのはmy your、これメジャーと同じ語源です。つまり大きいということで、より偉大な感じがしますよね。
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こうした言葉によって、より大きな威厳嫌意を伏そうというある種政治的混沌があったということです。ただ簡単にですね、呼びかえが変更するわけでもなくて、やはり少し時間かかったようです。
ヘンリー7世が16世紀前半にですね、この変更を言い始めたんですけれども、その後もですね、その息子のヘンリー8世であるとか、その娘のエリザベス女王ですね、1世ですね。なんかはやはりそれまで通りのyour graceとかyour highnessとも結構呼ばれていたので、最終的に定着したのは次の世紀ということになります。