英国ドラマタイムへようこそ。この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、ドラマや映画のおすすめ、
時事の秘密、当時の暮らしまで深掘りしてご紹介しています。物語の背景を知ると作品がもっと楽しくなります。
今日はイギリスの作品を語る上で、欠かせないジャンル、ミステリー、 そしてその中でも特に魅力的なおやつきミステリーについてお話ししてみたいなと思っています。
実はこの番組の中でも、これまでいくつかお屋敷ミステリーをご紹介してきました。 もしご興味があれば、ぜひ過去回も遡って聞いてみてください。
今日は、なぜイギリスのカントリーハウスはこれほどまでにミステリーの舞台として愛されるのかという視点から、その秘密を紐解きつつ、
私のおすすめ作品もいくつかご紹介したいと思っています。
私がイギリスのドラマを意識して見るようになったきっかけも、実はミステリードラマだったのではないかなと思うんですよね。
昔、私の母はイギリスドラマが大好きなんですけれども、 母が見ていたNHKで放送される海外ドラマを、私も影響を受けて一緒に見ていました。
そこで見ていたのは、シャーロック・ホームズとか、名探偵ポアロでした。 舞台は霧が立ち込めるロンドンの街、
石畳の道を歩く足音、郊外にある屋敷の中に集まった人の中で起こる事件。
本当にイギリスらしいですよね。 事件が起こって、手がかりを集めて少しずつ真相に近づいていく。
その中から犯人を見つけ出していく名探偵の推理にも、いつもワクワクしていました。
実はこうした名探偵の多くが、イギリスの作品から生まれているそうです。
では、なぜイギリスではミステリーがこれほど発展したと思いますか? その背景には、19世紀のイギリス社会の変化があったようです。
19世紀になると、ロンドンには近代的な警察制度が整って、犯罪の捜査というものが社会の中で注目されるようになります。
当時の新聞では、犯罪事件の記事がとても人気で、人々は犯人は誰なのか、どうやって事件が解かれるのかといった話に強く惹かれていたんですね。
こうした社会の中で、探偵小説やミステリーというジャンルが大きく発展していきました。
そして、この英国ミステリーを見ているともう一つ気づくことがあります。
それがカントリーハウスのような大きな邸宅画舞台になることはとても多いことです。
では、なぜイギリスの大きなお屋敷は、これほどミステリーの舞台として優秀なんでしょうか?
そこには単に広いからだけではなくて、3つの理由があるのではないのかなと考えてみました。
まず、お屋敷そのものが一つの閉ざされた世界であるということです。
カントリーハウスは一座と離れた広大な敷地に建っていて、そこが一度嵐や雪で道が閉ざされたりすると、物理的に外部の人間は入れません。
つまり犯人は、必然的に今このお屋敷の中にいる人物だけに絞り込まれます。
この逃げ場のない緊張感が濃密な心理線を生み出します。
そして2つ目は、イギリスのお屋敷には主人が通る華やかなメインの廊下や階段があり、その裏側には使用人だけの隠された通路や階段があります。
ちょっとイメージしていただきたいのですが、主人が豪華な寝室で誰かと密談しているとき、壁一枚隔てた裏側では、使用人たちがお湯を運んだり、掃除をしたりしながら、その会話をすべて耳にしています。
でも主人たちにとっては、使用人はまるで空気や廃墟のようにしか思っていないので、目の前で秘密を話しても平気なんですよね。
主人は見ているようで何も見ていない。けれど、透明人間のような使用人たちはすべてを知っている。
こういった情報のずりがあるから、誰も見ていなかったはずの犯行に、実は目撃者がいた、みたいな巧妙な伏線も生まれるんですね。
そしてもう一つは、お屋敷の中にあんなにドロドロした愛憎が生まれるのか。
それは、お屋敷自体が家族全員の人生を縛りつけるような運命共同体だったからです。
当時の上流階級にとって、誰かがスキャンダルを起こすと、それはただの恥ではなくて、世間にばれてしまうと家が潰れるという命がけの死活問題でした。
だからみんなで必死に隠し事をするんです。
お屋敷には隠す場所がいくらでもあります。
深夜誰にも見られず一人になれる図書館、重いカーテンの影、鍵のかかる分厚い扉の書斎など、
絶対に外に漏らせない重大な秘密を抱えた人々が一見優雅にディナーを共にしながら、誰にも見られない視覚で恐ろしい計画を立てる。
こういったギャップが、お屋敷ミステリーをたまらなくスリリングにしているんですね。
例えば、この有名な小説のタイトル、聞いたことありませんか?
アガサ・クリスティーの、そして誰もいなくなった。
あの物語の登場人物は、孤島の屋敷に間抜かれた人々でした。
そこにいるのは限られた人たちだけ、そして一人、また一人と命を落としていきます。
つまり犯人はこの中にいるはずなんです。
これはまさに、逃げ場のない直伝状態を究極まで突き詰めた傑作といえますよね。
このように、英国ミステリーには、お屋敷を舞台にした物語が本当にたくさんあります。
さてここからは、過去にご紹介した以外の作品で、私がぜひ見ていただきたいなと思っているミステリーを4つご紹介してみたいと思います。
まずは重厚な刑事ドラマからです。
刑事・ダルグリッシュシリーズです。
ミステリーの女王、P.T.チェームスの原作を、現代の技術で映像化した作品なんですが、これが本当にオシャレな作品なんです。
主人公のアダム・ダルグリッシュ、彼は名刑事であると同時に、実は詩人としての顔も持っています。
詩集を出版しているほどの有名で、その知性とどこか影のある雰囲気がたまらなく渋いんですよね。
物語はじっくり丁寧な前後編の2話構成になっています。
このドラマは、舞台となるお屋敷の使い方が本当に贅沢で、歴史ある寄宿学校になっていたり、
人里離れた修道院や、重厚なカントリーハウス、
ダルグリッシュがその静かな佇まいで、古い建物に隠された仮名や伝統に縛られた謎を解き剥がしていきます。
彼の知的なキャラクターが、お屋敷の持つ重々しい空気感に、本当にマッチしていますね。
そして、彼と一緒に働く部下の女性刑事との関係も絶妙でした。
ある事件で出会った彼女の才能を見抜いて引き抜くんですね。
彼女は密かにダルグリッシュに思いを寄せている。
ダルグリッシュは、愛する妻と子供を亡くした悲しみを背負っていて、
そんな彼だからこそ似合う、少し切なくて素敵な距離感が素敵でした。
そして何より注目してもらいたいのは、彼のスタイルです。
乗っている車、服装、持ち物、そして美しい部屋、その全てに彼の美学が宿っていて、
見ているだけでちょっとうっとりしてしまいましたね。
特に私が大好きで、ぜひ見ていただきたいのは、見ていただきたいところがいっぱいなんですけども、
オープニングの映像です。
ドラマのタイトルが出てくるところなんですけども、
あそこがちょっと独特な世界観で、これから始まる物語をイメージする、ちょっと画像が出てきて、とても素敵でした。
ぜひこのタイトルが出るところから、その世界観にどっぷり浸っていただきたいなと思います。
次にご紹介するのは、ベラ新年の女警部シリーズです。
こちらの舞台はイングランド北部の高齢とした自然。
ここは先ほどのダルグリッシュとは打って変わって、オシャレな雰囲気は正直全くありません。
主人公のベラは、お世辞にもエレガントとは言えない、ちょっと型破りのおばさん警部です。
いつもクタクタになったコートと帽子を身につけて、現場を駆け回る、そんなスタイルです。
彼女は優秀正しいお屋敷に、泥だらけの靴でズカズカと入り込んで、
隠された家族の秘密を容赦なく暴いていく様子は見ていて本当に爽快です。
中には、彼女自身の亡くなったお父さんにゆかりのあるお屋敷が舞台になるエピソードもありましたね。
ベラの武器は凄まじい洞察力です。
そして自分にも部下にもとにかく厳しくて、指示の飛ばし方が理不尽だなぁと思ったり、
部下たちは本当に大変だなぁと思って見てしまうんですが、
彼女はそれだけ仕事に真剣で、そしてベタベタした付き合いが苦手な人なんですね。
でも本当はものすごく優しい人なんです。
部下に対しても、そして被害者や、時には加害者の家族に対してもです。
事件が全て解決した後、彼女がふと見せる静かな優しさや寂しげな背中、
あのクタクタのコートの下にあるちょっと不器用で温かい彼女の素顔に触れると、
いつの間にかベラが大好きになってしまう。
そんな人間臭い魅力にあふれたミステリーです。