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先生への手紙、背景。
山々もしっかり色づき、いつ雪が舞い降り始めても不思議ではない季節になりましたが、
先生はいかがお過ごしでしょうか。
私の方は何とか元気でやっております。長男がやがて2歳になります。
生まれてすぐの頃、少しアトピーが出て心配しましたが、大事にはいたらず、今は元気に家の中を歩き回っています。
と言っても、狭い家なのですけれど、都会の生活なので、子供が生まれると思いもかけない不自由が色々と出てきます。
家が狭いこともそうですし、マンションの階段の上り降りもそうです。
田舎では階段といえば、家の中にあるものだけでしたよね。
学校のギシギシいう木の階段も懐かしいです。
でも、学校はもう新しい鉄筋コンクリートのものに立て替えられてしまったんですよね。
あの階段を想像しく駆け下りて、先生に叱られたことを思い出します。
今となっては、先生のお優しさがわかりますが、あの頃は厳しさばかりが身に染みたものです。
子供を抱いて、冷たいコンクリートの階段を上り降りしていると、ふとそんなことを思い出したりしてしまいます。
先生にこんなことを書くのはご迷惑かもしれませんが、書きます。
子供が生まれてから、私たち夫婦はあまりうまくいってません。
彼は仕事が忙しく、あまり子供のことを構ってくれません。
そして私の方も、子供中心になってしまって、ついつい彼のことをおろそかにしてしまうことが多いのです。
些細なすれ違いでも、それが重なっていくと、夫婦の気持ちなんて離れていってしまうものなんですね。
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とても綺麗だった先生の奥様は、今も元気でいらっしゃいますか?
私たち女子学生ばかりが何人か、先生のお宅にお邪魔したとき、柔らかい笑顔をお迎えくださいました。
そしておいしい和菓子をご馳走になりました。
先生はお好きだった夏目漱石の小説の話をしてくださいました。
覚えていらっしゃいますか?
あの頃のことが、私にはひどく懐かしいです。
あの頃に戻りたいと思うことがよくあります。
でも、戻ることはできないんですよね。
この子も大きくなっていきますし、私たち夫婦も歳をとっていきます。
先生にお会いしたいです。
でも、先生はいらっしゃいません。
きっと、温かな笑顔を浮かべて、天国から私たちを見守ってくださっているのでしょうか?