00:08
帰り道。夜の帰り道。
線路脇で星空を見上げるのが癖になった。
東京の空は明るくて、星はいくらも数えられない。
遠いふるさとの空には、数え切れない星がある。
電車が通過する音を聞きながら、そんなことを思う。
地の光は絶え、気づけし者も流れた。
多くの魂が去り、幾万の涙が流れた。
月のない夜、春が去っていく夜。
かすかな星明かりを探して、失われたものを思う。
それでも風は吹き、波は打ち寄せ。
木々は芽吹いて、青々と茂る。
それでも星は輝き、夜明けはやってくる。
それでも人々は生き、涙は笑顔に変わる。
朝になれば線路脇では、ひばりがさえずるし、
花水が咲きかけている。
紫陽花さえ、もうじき咲きそうだ。