マリオンは2人の知った顔、
サイト19管理官と西欧方面の主任リクルーターを認めた。
彼らは彼女に一別もくれなかった。
彼らが行ってすぐ、O5Aとの穂さやくがドアの向こうから頭を覗かせた。
彼は20代とは思えないほど若々しく、
お父さんのビジネスシャツを押し着せられたティーンエイジャーのようだった。
髪型はコロージュで整えられていた。
片手には彼のボスの1日の予定が表示されたタブレットを抱えており、
予定はびっしり詰まっていた。
その男はどうやら寝ていないようだった。
マリオン、どうぞ入ってください。
それ自体がオフィスの壁に組み込まれた機械の一部であるかのように、
扉はガチャンという異様に重い機械的な音を立て、
彼らの背後で閉じた。
マリオンが指定された椅子に腰掛け、バッグを床に下ろす間、
おさやくはドアに向き直って何がしかの紛らわしい追加操作を行っており、
それが元でさっき以上の奇妙な騒音が様々発生していた。
O5たちは重大なプライバシー及びセキュリティ要件を有しているのだ。
オフィスは広々としていたが、部屋の二隅には大きな窓が配置され、
外が白昼であるにも関わらず、どういうわけか部屋は暗くされているようだった。
壁は全面が本棚で、ダークウッドのパネル張りが施されていた。
申し分なく洗練されてはいるが、若干使い古された90年代のスタイルであり、
まだ再流行するほどの年月は経っていない。
机の前に座る男はどうかといえば、さて、
O5は決して人々が想像するような外見ではない。
マリオンは深く息を吸った。
それで話とは?
私が受けたのは面会の招待だけで、競技事項や議題は一切伝えられていません。
つまり、O5は飛んでこいと指示した。
急いで飛んでこい、出なければ。
彼女は右へ振り向き、穂沢役が一切喋らず、
いかなる物音も立てずにタブレットをテーブルの上に置き、
取り出した銃で彼女の頭部を狙っていることに気づいた。
マリオンは話すのをやめた。
彼女はしばらくの間、椅子に座ったまま気持ちを整理することに没頭し、
ハチドリ並みに心拍数が上昇した後に再び落ち着き始めた。
いいかしら?
マリオンは思い切って言ってみた。
彼女が唇を舐め、肘掛けに置いた腕を掴む一方で、
自体は依然として全く動かず、誰かの発言を待っていた。
穂沢役の表情は、これが会議進行の手段に過ぎないという風に全くの無表情であった。
あるいは、この場にいる彼らにとっては日常茶飯事ということか。
君は誰だ?
O5-8は彼女に尋ねた。
マリオンは目を白黒させた。
何ですって?一体何を?
聞き方を変えよう。
O5-8は言った。
マリオンホイーラー 49歳
愛する夫と虹の息子を持つ
趣味はキャンプ、ハイキング、小類学。
我々が調べられる限りでは、背後関係や財務情報に全く隙のない、うんざりするほど完璧な母親だ。
そして、君は完全な財団職員資格証明を有していた。
これまでに発行された記録のないものを、な。
そのクリアランスは一連の施設や部屋へのアクセス権限にまで及んでおり、
そのうちのいくつかは存在しないか、数十年前に取り壊されている。
少なくとも一つはまだ建造されていない。
にもかかわらず、君はそこの正面入り口のキーを持っていたわけだ。
君のSCPアクセス管理リストを目の当たりにした時は、
これはひどい、という言葉しか出てこなかったよ。
よって、君は我々とは目的をことにするスパイであり、
クレイは君にクシー3を消しかけようとしたが、
私は彼の意向を変えさせることができた。
面と向かって説得したのだ。
君を防弾仕様の部屋に監禁して、
馬鹿丁寧に尋ねるようなやり方には期待できないと思った。
君にも余命を惜しむだけの分別はあるだろうからね。
マリオンはずっと黙って話を聞いていた。
このそこつ者。
彼女はようやく口を開くことができた。
私はあなたの部下、ハンミーム部門のオサよ。
私たちはハンミーム部門などという部門は有していない。
クレイは言った。
その通りだ。我々はそのような部門を持たない。
O5-8は続けて言った。
我々が持つのはミーム部門、
超能収容部門、
消防部、
OPS軍事作戦部AB、
一般職員、Dクラス職員、
そしてツーダースほどの部署だ。
我々はハンミームを司る部門を有していない。
ハン語部門はあったかしら?
マリオンは尋ねた。
彼女は期待して返答を待った。
ない?結構。では、こう考えてみて。
どうして自分はハンミーム部門がリスト上で公開されていると思ったのだろう、と。
こんなものは作り話に過ぎません。
マリオンを目で捉えたまま、クレイはO5-8に言った。
もっともらしく聞こえますが、彼女は前もってへりくつをこねていたんでしょう。
クレイ、銃を下ろすんだ。
O5が言った。
クレイは渋々、指示に従った。
マリオンは緊張をいくらか緩めていった。
危険なミーム特性を持つSCP、物理的な脅威と同様に収容を要する伝染性の概念というものが存在します。
それらはあなたの頭の中に入り、他者の精神へ広がるためにあなたの精神を支配する。
よろしいかしら?
ああ。
O5-8は言った。
この説明に合致するSCPは数多いが、それらを挙げることなど彼には造作もなかった。
反ミームという特性を持つSCPが存在します。
マリオンは続けた。
これらの観念は拡散することができません。
それは情報、特に事故についての情報を収穫、消費する実態、あるいは現象です。
あなたがそれのポラロイド写真を撮っても、現像されることはありません。
あなたがペンで紙上にその説明を記録し、誰かに手渡したとしても、
あなたの書いたものは小型文字に変わり、あなたを含めて誰にも解読できない。
あなたはそれを直接見ることができるし、まして不可視というわけでもないけれど、やはりあなたはそれを知覚できない。
保ち続けることのできない夢、分かち合うことのできない秘密、虚構、いける陰謀。
それは概念的なサブカルチャー、観念であり他の観念を喰らうもの。
時にその対象は現実の断片、そして人々にまで及びます。
その事実は反ミームを脅威たらしめる。話はごく単純です、本当に。
反ミームは危険であり、私たちはそれらを理解していない。
したがって、それらは問題の一環です。そのために我が部門があります。
私たちはあなた方の戦闘訓練を文字通り食べてしまえる何かと戦うために必要な水平思考を行うことが可能です。
O5-8はしばらくの間、彼女を見つめ返した。
マリオンも彼に続いた。
それで、SCP-055とは何なんだ。
058は尋ねた。
SCP-055は取るに足らないものです。
今やすっかり緊張を解いて、マリオンは答えた。
ファイルで説明されていたように、SCP-055は強力な情報自動隠蔽子です。
実験で明らかになった範囲において、それは否定的な表現でのみ定義することが可能です。
私たちはそれを〇〇でないという形でしか記録できません。
私たちはそれがセーフやユークリットではないことを知っています。
私たちはそれが円形や四角形、緑色や銀色ではないことを知っています。
私たちはそれが愚かではないこと、そして単一ではないことを知っています。
ですが、私たちが真に知っていることは、それが弱いということです。
なぜ弱いと言えるのか。
それは私たちの専用科にあるハンミム因子の中で、SCP-055だけが物的な記録を残せるからです。
私たちはSCP-055に関する紙の記録や収容手順を有しています。
セーフではないということは危険を意味します。
それでも、SCP-055は収容されています。
収容手順があるのか。
一体どこに。
マリオンは自らの頭を指し示した。
それで、ハンミムは他にどれくらい存在しているんだ。
それらはどれほどの危険性を有している。
私が知っているのは10個ほどです。
マリオンは言った。
統計的には、私の把握していないハンミムは少なくとも5つ以上存在していると思われます。
この資産には収容下にないもの、つまり自由に放浪しているハンミム実体は含まれません。
少なくともそのうちの2体は今、この部屋にいます。
探さないように。
探すなと言ったはずよ。そんなことに意味はないわ。
SCP-058は事故の心を立するという難業をやってのけ、マリオンに意識を向け続けている。
クレイにはとても真似できなかったようで、すぐさま部屋全体を見回し、さらに自分の背後をチェックした。
どうしようもなく馬鹿げた振る舞いだった。
結局彼は何も見つけられないまま、倒脇しているようだった。
私の後をついて回り、私の記憶を好んで捕食する不可思の怪物が存在します。
マリオンは丹念に説明した。
SCP-4987です。
探そうとしないで、実体はありませんから。
私はそれを魚するための手段を学んできました。
飼うのが難しいペットみたいなものです。
私がわざと美味しそうな記憶を作り出せば、パスワードやコーヒーの入れ方といった大事な記憶には口をつけません。
それで、もう一体の方は…。
クレイが尋ねた。
O5-8のうなずきを受けて、マリオンは再びバッグに手を伸ばした。
彼女が今度取り出したのは拳銃で、そのままクレイの心臓を二度打った。
痛みよりも驚きの方が大きかったか、クレイは背後の初夏に向かって急に倒れ込んだ。
マリオンの方を向くために頭を上げると、彼は何とか言い放った。
なぜ…わか…
マリオンは立ち上がり、慎重に彼の頭部を狙って三発目の銃弾を打ち込んだ。
O5-8は再び心の動揺を抑えつけた。
それはクレイの銃だ。
彼は無表情に言った。
彼からそれを盗んだんだな。
誰からも気づかれずにこの重い銃を盗むのは骨が折れるでしょうね。
マリオンは銃から弾丸を抜き取り、慎重に下ろしながら説明した。
だけど銃を盗んだ後にあなたたちから盗んだという記憶を盗むことはそんなに難しいことではないんです。
言ったでしょ?ペットだと。
そのうちのいくつかは飼いならすことができる程度にはおバカさん。
そうか。
O5-8は冷静に返した。
そこまでは予想がつく。だが、なぜ?
それはあなたがWクラス記憶補強剤を副用することになっていたから。
マリオンは言った。