1. SCP話
  2. #412 Tale - オーハイ【リクエ..
2025-07-25 31:02

#412 Tale - オーハイ【リクエスト】

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紹介SCP/Tale


タイトル: オーハイ

原語版タイトル: Ojai

訳者: (user deleted)

原語版作者: qntm

ソース: http://scp-jp.wikidot.com/ojai

原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/ojai

ライセンス: CC BY-SA 3.0

作成年: 2018

原語版作成年: 2018


タイトル: 反ミーム部門ハブ

原語版タイトル: Antimemetics Division Hub

訳者: C-Dives

原語版作者: qntm

ソース: http://scp-jp.wikidot.com/antimemetics-division-hub

原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/antimemetics-division-hub

ライセンス: CC BY-SA 3.0

作成年: 2017

原語版作成年: 2017


SCP財団とは: https://ja.wikipedia.org/wiki/SCP%E8%B2%A1%E5%9B%A3


©️SCP財団 http://ja.scp-wiki.net/


BGMタイトル: Farewell

作者: H.Lang

作者ページ: https://dova-s.jp/_mobile/_contents/author/profile459.html

DOVA - SYNDROME楽曲リンク: https://dova-s.jp/_mobile/bgm/play19024.html


1・5・9・13・

17・21・25・29日更新予定


#SCP #SCP財団 #podcast


【活動まとめ】 https://lit.link/azekura

サマリー

ジョージ・バーシンは、特殊なカルトに関する任務でオーハイを訪れ、一連の異常な出来事に巻き込まれます。彼はカルトの中心的人物である若い男、レッドと対峙し、精神的な苦痛と戦う様子が描かれています。このポッドキャストエピソードでは、バーシンが若者に対して行う催眠や治療の過程が示されます。その中で「グリーン現象」や「ミーム異常」に関連する問題が取り上げられ、複雑な人間関係や心理的な影響が探求されます。このエピソードを通じて、バーシンとレッドの対峙を通じて、彼らの間に存在する緊張した関係が描かれています。また、財団や攻撃に関する暗示も含まれ、物語には深い謎と緊迫感があります。

ジョージ・バーシンの訪問
Tale オーハイ
財団エージェントのジョージ・バーシンは、一枚岩のごとき男だ。身長は2メートル近くで、角張った肩を持ち、ブルース・ティムのキャラクターにも似ていた。
頭髪は反られ、髭はさっぱりと整えられていた。スーツは特注品だ。なぜなら、店頭に並ぶ者が彼の体育に合うことは滅多にないからだ。彼がグリーンの中心地に到着したのは、夜明け後、間もない6時のことだった。
住居は隔絶されていた。それは、オーハイから北方に伸びる高速道路の枝道の枝道を走り、ろくに整備されていない1、2エーカーの堤防地帯を抜けたところにあった。
バーシンは財団の異常宗教表現部門に所属している。カルトが担当だ。
グリーンとは、バーシンがこれから対面することになるカルトの名前ではなく、コードネームだ。その本当の名前をバーシンは知らない。
昨夜のブリーフィングによれば、セキュリティ上の合理的な理由により本当の名前が用いられないとのことだったが、理由までは説明されなかった。
バーシンも決して愚かではなく、真の名前に関わる認識災害が何かしらあるのだろう、あるいは記憶妨害現象によって記録に残せないのだろうと解釈した。
あるいは、長年にわたって財団研究職員とやり取りしてきた経験から来る想像だが、誰かが本当の名前を記録することを忘れて、それをごまかそうとしているのかもしれない。
仮にSCP番号が決まっていたとして、彼はそれを知らされていない。家は醜い白の窓柄に覆われていた。
平屋の木造で、二つと同じ様式の窓はなく、腐敗の最中にあった。
ゴミや材木、錆びた車両部品が積み上げられ、緑色の汚水の溜まったドラム缶が複数あった。
二面半の方向から柳とプラタナスが枝を伸ばし、葉や種子をはじめとした諸々の有機物を屋根いっぱいに落として、あまどいを積まらせていた。
窓の向こうに見えるのは閉じられたカーテンとブラインドだけで、正面のドアは半開きだ。
バーシンは慎重に中へ侵入する。
入口はそのまま広々としたLDKに繋がっていた。
部屋は暗く、ほとんどの光は入口から注ぎ込んでいるものだ。
バーシンはドアを開いたままにして、窓の遮蔽物の縁を手で探った。
部屋は汚れていてカビ臭い。
淀んだ空気はオーブンの中のようで、極端な静けさに支配されていた。
唯一かすかに聞こえるのは興奮気味の話し声だ。
それは廊下を進んだ場所から来ているようで、言葉を聞き取ることまではできない。
八だ。
ああ、中は鋭いもんだ。君が行動を起こしたら、それでつろいクールードスから血を流して。
バーシンは廊下を進み、壁に吊るされた、かつて鏡だった物体の脇を通り過ぎる。
鏡面は黒色の塗料で塗りつぶされていた。
彼は各部屋を一通り探索し、声の源を覗いて建物が無人であることを確認した。
最後の部屋にたどり着く。
ドアは閉じられ、熱心な雑言が中から漏れ出ている。
けなら、超簡単だ。一つ君にやるよ。
簡単な2パートのプロジェクトだ。持っていけ。
あと、下のアルサムヌスを忘れるなよ。
パート1 自分より弱い人間を見つける
バーシンは強く、2階、ドアをノックした。
早口が止む。音は無い。
バーシンはドアを開く。
部屋は暗く、窓は熱いカーテンによって遮られている。
ドアの反対側の隅にパソコンデスクがある。
デスクはこれ以上に物を置くことが現実的に不可能と思われるほどに雑然としていて、
一部分解されたハードウェア、USBキーボード、チョコレート菓子の包み紙、くず紙、ボールペンが散らされていた。
ゲーミングマウスはガラクタに動きを阻まれている。
良質なビデオカメラがセットしてあり、モニターとそれに映るビデオ映像、そして埃がある。
およそ20歳と思われる若い男が、モニターの前の安っぽい細身の回転椅子に居心地悪そうにもたれかかっていた。
痩せていて、肌は血色が悪い。
バーシンの目には栄養失調患者として映る。
かつては洒落た髪型だったものは放置されていた。
男が振り返ると、目の周りに輪のように生じたクマが見て取れる。
一年は眠っていないかのようだ。
匂いが鼻をつく。
部屋を満たす悪臭は肉眼で見えかねない濃さだ。
異常な拡散、宗教現象、すなわちこの若者を中心として金床蜘蛛のように存在するカルトがグリーンと名付けられたように、この若者はレッドの名を与えられていた。
おはよう。バーシンは言う。
配信を見させてもらったよ。
若者はヘッドホンを外した。
一体誰だお前は。
誰だお前は。
精神的な苦痛と救済の可能性
ジョージバーシンというものだ。
私の勤めている組織は、あ、
檻から解き放たれた狂犬のようにレッドは椅子から飛び上がる。
ヘッドホンを放り、拳を突き出してくる。
バーシンは自身の重心を僅かに左へ傾け、拳を避ける。
彼はレッドの腕を掴み、激しく前へ引っ張り、向けられた運動エネルギーをいなして若者の両顎をドア枠に叩きつける。
レッドは後ろによろめき、うずくまる。
彼は速やかに体勢を立て直す。
広角からは血まじりの泡が吹きこぼれる。
彼は床に散らばったガラクタをあさり、ハンダゴテを手に取る。
レッドは再び前進し、バーシンは貴重なコンマ何秒かを費やして、
ハンダゴテのケーブルがつながっているか、電源がついていて熱を帯びているかを確認する。
電源はついていなかったが、その不注意はレッドを懐に入れるには十分なもので、
若者は両手を使ってバーシンの腹に金属棒を突き込む。
電気的なうなりとオレンジ色の火花が生じる。
金属棒はバーシンの着衣をかすめたものの、
腹部からは反れ、布に長い切断口を残すことしかできなかった。
皮膚はあらわになっている。
透明な防壁は神話的な原理を一部に用いて、
彼の一見すると無防備な頭と前身の他の部位を守っていた。
バーシンはレッドをヘッドロックで捉える。
周到さを欠いた、当てのない蹴りが続く。
レッドの内には悪魔のようなエネルギーがあったが、
バーシンは身も蓋もない言い方をすれば準備ができていた。
続く何てかの動きでレッドは武器を奪われ、
意識を失い仰向けに寝かされ、
己を助ける一切の動きを封じられた。
バーシンは戦闘を吟味した。
本物の命を懸けた戦いを経験した回数はまだ二桁にも届かない。
今回の奥州はその中ほどの順位だ。
15秒の交戦、互いに判断を誤った。
良い学習経験だ。
イントロの説明は省こうか。
彼はレッドへ語りかける。
生放送型のベクターは新規性があった。
今まで見たことのないものだ。
従来の自己啓発本と収容書の組み合わせよりは遥かに効果的だ。
オリジナリティを評価して10点中1点をやろう。
しかしそれは10年前には予想されていて収容プロトコルの準備は万端だった。
放送サービスに人を置いているのだよ。
今こうして話している間にもあんたのアカウントがロックされているはずだ。
そのチャンネルを通じて接種コードをルーフする。
バーシンは着ていたシャツを整えようとする。
うまくいかない。
まあいい。
しかしあんたはそのソースだ。
彼は言う。
単なる接種コードは通じない。
物理的な鑑賞が必要だ。
彼はジャケットの中に手を入れる。
そこにはよく手入れされ、使用可能な状態の銃があったが、
今回の対面では取り出さないことを選択していた。
彼は代わりに視力検査用のスコープにも似た装置を取り出した。
彼は膝をつき、レッドの右まぶたを開き、スコープを向ける。
装置はまばゆい発光を眼球全体に照射し、目を開いた状態で固定する。
レッドのほとんど全ての筋肉が硬直し、確実に彼を床に張り付ける。
彼は歯を食いしばる。
バーシンはレッドに語る。
この男は無実だ。
あんたがそいつに与えた仕打ちを与えていい人間など存在しない。
彼を解放してこの現実を去れ。
歯を食いしばりながらレッドは言う。
お前は一体誰だ。
いいだろう。
バーシンは別のボタンを押し、照射される光のパターンは純粋な白の円盤から赤と青の複雑な渦巻く星型に変わる。
肋骨がこじ開けられるかのような滑舌音。
若者は悲鳴をあげる。
その声はレッドのそれとは違う。
全身を使って奏でられる悲鳴で苦悩と絶望が込められ、物理的に可能な最大の音量に達していた。
それは腹からこみ上がり、平坦に継続し、そして息が途切れると同時に吸気を挟んで再び始まる。
彼は背筋を折り曲げ、床に爪を立てる。
二回の深呼吸を経て、声はむせびなきに落ち着く。
ちくしょう。俺をあそこに送り返さないでくれ。お願いだ。
わかってる。大丈夫だ。
送り返さないでくれ。目が見えない。そこにいるのは誰だ。
大丈夫だ。視力は元に戻る。私の名前はジョージだ。君は?
穴があるんだ。若者は喉を詰まらせながら言う。
それでどんどん悪くなる。止まらないんだ。そこがない。
彼はしばし無秩序に喚き、そして声を静かに途切れさせた。
彼の視線は盲目的に周囲をさまよう。
今の君は相当まずい状態にある。
バーシンは言う。若者は激しく同意を示した。
何かがおかしくなった。
バーシンは語る。
そいつは、間違いの幻境のそいつは、君をさらって君になりすましていた。
今もここにいて君の皮を指人形のように扱い、歩かせ、喋らせてる。
本物と同じように。
君が経験している悪夢を十万人もの人間が今経験している。
それが悪いニュースだ。
いいニュースは君を捕まえられたことだ。
まだ君がそこにいるのが見えるよ。
いい確率でそこから助け出せるはずだ。
いい確率?
催眠療法の過程
若者は二度呼吸した。
失敗したら…
彼は目に見えて焦り出す。
赤と青の渦巻きに集中するんだ。
バーシンは言う。
彼はスコープを若者の眼球に向け続ける。
何に?何も見えない。
それは君が自分の指神経ともはや繋がっていないからだ。
しかし君を閉じ込めている何者かは確かに繋がっている。
渦が見えないとしてもそれがどんな形をしているかを何故か知ることができるはずだ。
形が頭の裏の熱の広がりのように認識できるだろう。
バーシンは声の速度を緩めながら
催眠誘導のリズムを取り始める。
渦の観念が流れ込んでくる。
広がり、花開く。
より広いスペースを占有する。
渦のことを考えるほど君は渦以外のことを考えられなくなる。
若者は返す言葉を持たないようだった。
彼の呼吸は安定する。
思考が遅くなる。
バーシンは続ける。
渦が君を満たし雪の結晶のように同じ形を何度も作り動けなくさせる。
君の脳は毒されたことを知っている。
たとえ目が見えないとしても君は反射的に目を反らさなければ
視界を遮らなければと考える。
長時間の暴露は命を奪うだろう。
長く重苦しい沈黙がやってくる。
その間バーシンはひたすら有毒な光を若者の目に当て続け
それが眩く煌めく様を観察し眼球の反応を追い続け
終わりがやってくるのを待つ。
治療の難しさ
明確なサインがあるわけではなくいくらかの推測が必要だ。
彼は確信が得られるまで待った。
ようやく彼はスコープのボタンから指を離し電源を切った。
男はピクリとも動かない。
バーシンは立ち上がり膝を鳴らす。
彼はリラックスしため息をつく。
肩に入っていた力がいくらか抜ける。
彼はスコープを懐にしまった。
ミーム的な科学療法とでも考えればいい。
彼は言う。もっぱら沈黙を絶やすための自分に対する独り言だ。
若者が聞こえるのはピンク色の弱々しいノイズだけだ。
渦巻き模様は初歩的な認識毒物だ。長期の暴露は死に至る。
しかしほんの少しの暴露なら回復可能だ。
君は毒から回復しレッドは回復できない。
君は生存しレッドは死ぬ。
なぜなら君は知性と想像力を備えた一人の人間でレッドは
彼はブリーフィングの内容を思い出し
グリーン現象について教えられた事柄や
その最中でもだい苦しんでいる10万人の人々について考えた。
被害者の分布は地球全体に広がっている。
レッドの凶悪なメッセージを送りつけられた家で何が起こるのか
写真を何枚か見せられた。
多くを検閲された録音のごく一部を聞かされた。
感情を差し挟まないものは現場でより良い判断ができるものだと
彼は何度も教えられてきた。
しかし時として感情を無視できない日はやってくるものだ。
バーシンはしばらく部屋をとぼとぼと歩き回り
ハードウェアのいくつかをつぶさに観察した。
さきのハンダゴテの台座を除いて注意を引くものはなかった。
部屋の中央の細身のキャンプベッドにはみすぼらしい寝袋が載っていた。
彼は寝袋をどかして若者をベッドの上に乗せ回復体位を取らせた。
彼はカーテンを開く。
鬱陶しいほどに日差しの強い日でちょうど窓の方向から太陽光が照りつけた。
最終的にバーシンは回転椅子を部屋の反対側の隅に引っ張ってそこに座り
患者の様子を見守ることにした。
彼は財団支給の携帯電話をポケットから取り出し
ひどく絡まった安物のイヤホンを解き始める。
彼はリラックスしモノローグを再開する。
誰も聞いていないかのように。
実を言えば私がここに来る必要もなかった。
グリーンのような白物に物理的に干渉する方法は一つじゃない。
最初の計画を教えてやろうか。
衛星からレーザーを発射して能天を一撃だ。
できるんだな、これが。
実績も一度や二度じゃない。
家だったものは材木の燃えかすに、そしてあんたはその真ん中の焦げたマシュマロだ。
レン先生の単独責任のミーム異常に対応するための最新の方法だ。
一切の灼熱を与えず、最も離れた距離から。
瞬きや恐怖の営みも与えず、詳細は構わずに。
暴力的だ。冷酷だ。
衛星を維持するのには大金が必要だ。
我々はそれが最善だと自分に言い聞かせている。
実際にそうなのかもしれない。
知っているのは上層部だけだ。
私は統計を見ることができないのでね。
しかし、私は改善の余地があることを知っている。
ファイルを読んで、あんたを見て、大穴にかけた。
全体の規模からすれば私はちっぽけな人間だが、なかなかに過酷なミーティングに出席して、
普段なら指図する権利もないような人に向かって行ってやったんだ。
ようやくにはなるが、事態の中心にいるのは全くの無実の一人の少年だ。
絶望的な結末
こんな目にあっていいはずがない。
少なくとも形だけでも動かなければ、と。
一つの影が部屋を横切る。
バーシンは辺りを見回すが、存在はすでにいなくなっていた。
彼は気に留めない。
そして私は言ったわけだ。
うまくいけば山ほどの予算を節約できるはずだ、と。
一番注意を引いたのはきっとそこだろう。
ともあれ許可は下りた。
こうして私はここにやってきた。
あんたを原子分解させずに、面倒な方法で君の命を救おうとしている。
一日中かかることだろうよ。
6時間か10時間か。
心配しなくていい。
私にはポッドキャストがある。
彼はイヤホンを解き終わり、片方を左耳に突っ込んだ。
組織の人間はお前を大層嫌っていることだろう。
とレッドが言う。
クソ。
バーシンは銃を取り出す。
しかし遅い。
当然この状況で喋り出す人間がいるはずもない。
出遅れた本当の理由はその一言にうろたえたからだ。
聞き流すべきものでありながら鋭く不快な真実を射た側面があった。
事実、誰もそのアイデアを称賛しなかった。
バーシンは長い間、徐々に語気を強めながら、
年を重ねていく財団の監督者らに対して、
先頭よりも対話が重要だと唱えてきた。
彼は何度も無視された。
昨日、彼はようやく試みるチャンスを与えられたが、
それも渋々のことだ。
それゆえに、おぞましい疑念が脳裏をよぎる。
彼らは知ってたのか?
彼らは私を見殺しにしたのか?
そうではない。そんなはずはない。当然だ。
しかし、もう遅い。
彼が銃を取り出した頃には、レッドは状態を起こし、
複和術の人形のような笑みを浮かべ、
バーシンの方へ頭を向けていた。
彼らは目を合わせる。
レッドの目は完全に見開かれ、
バーシンはその向こう側をそのまま見て取ることができた。
グリーンの認識が血液から飛び出し、
バーシンの頭蓋に埋め込まれる。
彼は本能的に後ずさりし、
接続を断つために目を覆った。
彼は足を踏み外し、
背中から椅子へ、
部屋の隅に倒れ込む。
彼のオレンジ色で結晶室のシールドは波打ち、
通り過ぎた存在に対する独特の混乱を示した。
シールドは断続的に不透過化し、
バーシンの激しい呼吸を遮る。
そして一瞬のうちに消失する。
バーシンは自分が今暴露したアイデア複合体を
完全に理解するための訓練を受けていなかった。
彼の実践ミーム訓練は基礎レベルだ。
渦巻治療や類似のいくつかの治療を実行することや、
普通の人間をドミノのように打ち倒すような
特定の攻撃から身を守ることができた。
しかし彼は入門レベルの実践者で、
専門家でも科学者でもない。
グリーンの外観ですら彼の理解を超えていた。
デーモンコアを目撃し、
ルイス・スローティンによって殺された
一人の男のような感覚、死への確信、
唯一の疑問はそれがどれだけ先のことか、だ。
レッドは足を振り上げ、ベッドから降り立つ。
バーシンに向けられた笑みを崩さずに。
回転する赤と青の光だと?
どれだけ遅れているんだ?
若者は大きく成長するかのように見え、
その場に人型の穴を作り出しながら
背後の空間へ沈み込んでいく。
バーシンは隅から抜け出すことができない。
落ち着けられたかのように。
じわじわと静電気的な痺れが両手を犯す。
彼は自身の間違いを理解した。
彼のやったことは海を毒で染め上げようとするようなものだ。
全てが見える。
レッドが世界を見渡すときのグロテスクな視界。
そして彼、あるいはそれがもたらす壮大で残酷な約束を。
腐敗はそこかしこにある。
犯された十万人は味見に過ぎない。
法師は現実の隅々まで行き渡っている。
人々の肺に、
意識に、
言葉に、
土地に、
空に。
ウジとガンと星のシグナル。
どうして人がそんな考えを持とうか。
誰がそれを望もう。
あんたは。
バーシンが声を向ける先は一人だ。
レッドとそこにかつていた誰かに違いはない。
救うべき男はいなかった。
計画は花から破綻していた。
望んだことだったのだ。
あんたがこれを望んだのか。
彼は声を絞り出す。
あんたをさらったわけじゃない。
招いたんだ。
自分の魂を半分に割って、
バーシンとレッドの対峙
何の意味もなくそれを差し出したのか。
あんたは想像もできない存在の正面に抱きついたんだ。
結末がどれだけ悲惨なものかを理解していない。
あんたは自分を殺したんだ。
レッドは彼に向かって前進する。
10
バーシンの意識は消失しかけている。
しかし一つの言葉が浮かぶ。
10
それは二人の間の床に転がっていて、
窓を通じて注ぎ込むオレンジ色の光によって照らされていた。
バーシンは己に打ち勝ち、
その在り処に向かって飛び込むが、
そこで彼は麻痺の信仰が手だけを犯しているのではなく、
それを認識する力をも奪っていることに気づく。
それが軽度のハンミーム隠蔽効果であることを彼は知らない。
唯一わかるのは両腕の先に切断跡があることだ。
10は使えない。
床の上で転がすことしかできない。
彼は惨めさと無力感から悲鳴を上げる。
レッドは彼を嘲笑い、それを蹴り飛ばすことすらしない。
財団はあんたを止めるだろう。
緊迫した展開
バーシンは声を絞り出す。
マントラのように。
財団という言葉をどこかで聞いたことがあるかのように、
レッドは頭を傾ける。
そいつらはお前のように弱いのか?
彼は意識を研ぎ澄ます。
理解は双方向だ。
バーシンはおぼろげにレッドが表す存在を理解し、
同時にレッドはバーシンが表す存在を理解する。
レッドはバーシンをこの場所に送り込んだ組織の権力機構を認識する。
レッドは放送サービスに置いている人の影を認識する。
そしてバーシンの知らない敷地の周囲をうろつく機動部隊が
届くことのない指令を待っていることを認識する。
レッドは四五人の暴力的な、冷酷なスーツ姿の人間が
上層で作戦を組み上げ、主導していることを認識する。
一人は手持ちぶさたを紛らわそうとレーザー攻撃用のキースティックをいじくり回し、
親指の背を軸に回転させようと試み、何度も落としていた。
レッドが探ることのできたヘッドスペースはそこまでだ。
レッドの存在を知る人間はそれだけしかいない。
それがリストの全員だ。
影は再び太陽を遮る。前と同じく、しかしもう少し長く。
レッドは窓を通じてそれを一別する。彼が小さくうなずくと影は去る。
バーシンは肩まで殺され横向きに転がる。
どの言葉が最後の言葉になるとも知らず彼は言う。
あんたは自分に主導権があると思い込んでいる。
でも殺されるのはあんたも同じだ。あんたをそこから出してやれる。
収容の手助けをしてくれてもいい。
レッドは同じ笑みを張り付けながらしゃがむ。
俺を見ろ。見ろ。
バーシンは見る。選択肢はない。痛む。
レッドは確実に聞こえるような音量と明瞭度で答える。
断る。
ザ・ザイン・スリー・フォー・シックス・サメク・シン
バーシンは小声で唱える。レッドは瞬きする。
何?何かの電子音が鳴る。
アエ・スター
バーシンは唱える。アエ・スター
クソ。
レッドは警戒をあらわに周囲を見回す。
携帯だ。バーシンの携帯電話の居所を見ていなかった。
彼はそれがベッドの下にあるのを発見する。
携帯をつかみ取る。音声認証インターフェースが起動していて認証は完了しかけている。
停止。キャンセル。戻れ。
何も起こらない。声が違う。
彼は携帯を落とし慌てて拳銃を手に取る。
ザ・エロチ・アナ・エオラ
発射。
バーシンは言う。
レッドは携帯電話に弾丸を打ち込む。
二発目はバーシンの頭蓋に。
彼は警戒しつつ天井を見上げ。
待ち。警戒する。
彼は待つ。
しかし何も起こらない。
31:02

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