彼女の座り込んでいたエレベーターカゴの床の傍らを、
一握りの量の小さな白うじが張っている。
ケンオからホイーラーは、
後ずさりし、一つ二つを髪の毛から振り落とした。
うじは、世界で最も広範な生息域を持つ反ミーム生物だった。
それはあらゆる場所に、あらゆる気候帯に、すべての部屋に存在した。
長く不穏な重低音が絶えず響きながら音量を増していく環境音のようなノイズが聞こえた。
それは生まれた時からそこにあったが、彼女は今初めてそれを聞いた。
情報が多すぎた。
音が、光が多すぎた。
目を開くのは、そこに無数の針をねじ込むに等しいことだ。
彼女は手を耳に押し当て、目を固く閉じた。
この状態でも、彼女の耳の中には、
壊れた空調がもたらす熱気。
肌に擦れる着衣の動きが感じられ、視界は幻覚らしき映像に支配されていた。
人間の感覚機関は日常的に膨大な量の情報を取り込み、脳はそのほとんどすべてを瞬時に廃棄するように適応している。
たとえ短い時間であっても、情報が多すぎた。
エレベーターの壁を殴りつけるだけの時間、ホイーラーは耳を押さえつけていた手の片方を離した。
指関節の二つが出血する。
痛覚は集中点を形成し、他の記憶よりもいくらか怖だかに悲鳴を上げた。
ホイーラーは耳を押さえつけていた。
指関節の二つが出血する。
痛覚は集中点を形成し、他の記憶よりもいくらか怖だかに悲鳴を上げた。
そして彼女は計画を見つけた。彼女は思い出したのではない。
かつて何百回も行ったように、物の数分の間に基礎から導き出したものだ。
私はあなたの倒し方を知っている。
彼女は言う。
いいや。
SCP-3125は彼女に言う。
お前は知らない。
エレベーターは地下30階で停止し、扉はうなりを上げて開いた。
扉は開いたまま、長くその場に留まった。
エレベーターの遥か上では、サイト41が一部分ずつ瓦礫と化していく音がかすかに聞こえた。
隅にしゃがんだままホイーラーはつぶやいた。
SCP-3125に声はない。
当然あるさ。
SCP-3125は5次元の異常な転移性の悪いミームと悪い反ミームとその中間の集合体で物理的現実を侵食している。
それはコヒーレントでも知性的でもない。
コミュニケーションは不可能。
これは幻聴に過ぎない。
SCP-3125は霊傷した。
お前の何が最も気に入らないかを教えてやろうか、マリオン。
お前は常に、永久に間違っているんだよ。
それにもかかわらず未だに生きている。
敗北に終わった戦の数々、
敗戦によって失われたいくたの年月、
それでもお前はまぐれの幸運を手繰り寄せて無傷のまま歩いている。
永遠に唯一の生存者だ。
お前はその幸運に足る人間ではない。
その幸運に足る人間など存在しない。
それが話し続ける間、ホイーラーは立ち上がろうと光線銃に体重をかけた。
目をなお閉じたまま、
彼女は肩の片方をエレベーターの壁にぶつけた。
覚悟を決めて目を開いた。
前方の廊下には何もなかった。
遠く反対側にあったエアロックはトラックを通せるほどの大きさで、
バートヒューズの特徴的な重強化白色合金から作られていた。
横にはパネルがあった。
彼女は再び目を閉じ、光線銃を杖として、
片手を前方に伸ばしながら、おぼつかない足取りで歩き出した。
誰かが最後にならないといけない。
歯を食いしばり、彼女は言う。
誰かが最高をやらないといけない。
お前のチームは死んだ。
SCP-3125は言う。
彼らの意識は眼球のように引き抜かれた。
脳のあった場所に穴が広がる。
空っぽの人間だ。
戦争は終わった。
ようやく。
もはやお前しかいない、マリオン。
たった一人の部門だ。
記憶補強のオーバードーズによって瀕死。
地下200メートルにいて身を安ずる者はいない。
存在を知る者もいない。
そして不死の殺されざるアイデアに立ち向かっているのだ。
ホイーラーはエアロックにたどり着き、
手探りの末にキーカードスロットを見つけた。
数秒余りの沈黙を経て黄色の光が点滅した。
巨大な施錠機構が作動し、
つぼみが花開くほどの音を立てながら扉は回転した。
騒音は不完全な設計の産物だとヒューズは常に唱えていた。
彼女の後ろで貨物エレベーターが閉じて地上に向かうのが聞こえた。
彼女の追手が地上に呼び寄せたものであると分かった。
アイデアは殺せる。
エアロックに踏み込み彼女は言う。
どうやって?
より良いアイデアで。
エアロックは回転を伴って閉鎖し、封鎖が形成された。
SCP-3125は締め出された。
何かが物理的実在を伴って概念空間から現実へ渡ることができるなら、
反対方向へ同じことが実行できるはずだ。
物理的な実態からそれが具現化するアイデアを機械的に抽出し、増幅し、
概念空間に向けて放送することが可能なはずだ。
より大きいアイデアを。
SCP-3125と戦うことに特化したより良いアイデアを。
それは理想像だ。運動だ。ヒーローだ。
他の作用は残存する。
50年か10年か5年も経てば、あるいは1年後か明日か、
SCP-3125は再び現れ、MKクラス世界終焉シナリオをもたらすだろう。
人の文明は抽象概念として消し去られ、想像し得ない悪に書き換えられる。
そうなれば誰も戦う者はいない。
ホイーラーは長い間光線銃に寄りかかった。
彼女の意識を圧する情報はなお増加して、もはや耐えられない息に達し、彼女を壊し始めていた。
クラスZは彼女の生理系を犯し、脳が不可逆的な損傷を負ったことを彼女は知っていた。
下毒剤は存在しない。
彼女はあと1時間ほど意識を保ち、残りの2、3時間を植物状態で過ごすことになる。
そうだ、彼女は思った。
暗度にすら近しい感覚だった。
これでいい、これで正しい。
長く生きすぎた。世界の仕組みを忘れていた。
一瞬、私はもしかしたらこの世界で勝てることもあるかもしれないと思ったのだ。
頭部の苦痛は恐怖を思わせるほどに増していた。
光線銃を床に落とし、膝をついて、彼女は横たわった状態で死か、より良いアイデアのどちらかを待った。
表面的にポール・キムを想起させる存在がエアロックの外側にたどり着いた。
それはしばらく途方に暮れたようにエアロックを眺めた後、キーカードスロットを発見した。
それは機械的にキムのポケットを探り、首にかかったキーカードの存在を思い出した。
エアロックは再び回転し、キム・デナシは通り抜けた。
後ろでは残りを運ぶために貨物エレベーターが3度目の移動を始めた。
次の部屋で、キム・デナシはホイーラーを無意識の状態で落ちた光線銃の横で発見した。
その場には軍用トラックもあったが、それは無視された。
キム・デナシはキーカードを落とし、光線銃を手に取った。
それはしばらく意識のないホイーラーを観察し、銃を分析し、その仕組みを思い出した。
それはエアロックに向き直って銃を発射し、いくつかの太い円柱状の穴を白色金の打ち扉に加えた。
打ち扉を消し去ると、次は外扉に移り、密封を解いた。
SCP-3125の慣れた親しいシグナルがバンカーを満たすとともに、キム・デナシの顔にはうっすらと笑みが戻った。
かつてのハンミーム部門職員は数十人の人出なしの形で貨物エレベーターから現れた。
彼女を見つけた。
キム・デナシは彼らに向かって声を上げた。
それは光線銃をその場で落とし、何かを手にしていたことも忘れ、再びナイフを引き出した。
それは二本の指の間で、平然と無雑さに、鉛筆かドライバーであるかのようにナイフを持った。
感染した人出なしはキム・デナシとともにホイーラーを囲み、異質な嫌悪や憐憫、あるいは悪意を込めて彼女を見下ろした。
どうして彼女は正しく開かない?
誰かが聞いた。
彼女がシグナルを求めない限り、会うことはできない。
目から始めよう、誰かが言う。
残りを正すのに都合がいい。
キム・デナシはしゃがみ込んで作業を始めたが、ナイフがホイーラーの目から数センチに届いたところで躊躇した。
彼女は何かを囁いていて、それだけが言葉を聞き取ることができた。
何も起きなかったのよ、ポール。
彼女は言う。
あなたも、私も、存在しなかった。
ハンミム部門は存在しない。
カチリと爆弾は起動シーケンスの終了を知らせた。
ホイーラー以外の誰もそれを聞き取ることはできなかった。
ホイーラー以外の誰も爆弾の存在を認識することはできなかった。
そこにあるのは空のトラックだけだ。
世界は暗転する。