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2020-07-29 10:27

【第19夜】窪美澄作品に描かれる“欲求”に、心の奥のやわらかいところを掴まれる

今日は、窪美澄さんの新しい小説「私は女になりたい」の連載掲載がミモレでスタートしたことを記念して、窪美澄さんスペシャルを勝手にお届けしたいと思います。『さよなら、ニルヴァーナ』『晴天の迷いクジラ』『水やりはいつも深夜だけど』などを読んで感じる、自分の心の奥のやらかい部分とは……。

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みもれ真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本やマンガ、紙フレーズをご紹介します。
さて第19夜となりました。連休はいかがお過ごしでしたか?
なかなか梅雨は明けないし、感染者もね、減らないというか増えている一方ですし、で、ちょっとはしゃぎにくい連休でしたね。
そうか本当ならオリンピックが始まってたんだよなぁって、今ちょっとなんかアイミョンの歌詞みたいに言いちゃいましたけど、
なんかそんなセンチメンタルになる連休でした。
さて今日は久保美澄さんの新しい小説、私は女になりたいの連載掲載が見漏れでスタートしたことを記念して、久保美澄さんスペシャルを勝手にお届けしたいと思います。
1年に何冊ぐらい読むかってよく聞かれるんですけど、あまりちゃんと数えたことはないですし、何割が当たりで何割がハズレとか、そういうこともあまり思ったことはないんですけれども、
1年に1冊ぐらいのペースで、読み終わった後にしばらく立ち上がれないみたいな本に出会うんですね。
ほんと1年に1冊くらいかな、夕食を作る気力も、お風呂に入る気力もないぐらいガツンとやられちゃう本がね、あって、
ボクシングで言うとお腹にガンってやられて膝から崩れ落ちるみたいな感じですかね。
今日ご紹介する久保美澄さんのサヨナラニルバーナはそんな膝落ち本の1冊です。
2015年の作品で、神戸連続児童殺傷事件を題材に、少年Aと彼を取り巻く3人の女性を描いたフィクションなんですね。
3人の女性は殺された女の子の母親と、少年Aを崇拝する少女、それから作家死亡の女という3人出てくるんですが、
そのサヨナラニルバーナについて語る前に、ちょっと話がそれるんですけど、今武田佐徹さんの新刊、わかりやすさの罪っていう本を読んでるんですね。
そこで斉藤匠さんが映画史に寄せた辛辣なコメントが引用されているんですけど、どの映画とは言わないけど、4回泣けるっていうポスターのキャッチコピーがひどいっていう話なんですよ。
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見る人の感情も回数も決められていることがひどいし、なぜ4回かっていうと過去に戻れる話なんですけど、その原理が4回だからなんですね。
サヨナラニルバーナも4人出てくるから4回泣けますとか、もし帯に書いてあったら読まなかっただろうなっていうことをちょっと考えたりして、泣けるような本ではないし、いや泣く人もいるかもなんですけど、
だとしたら4回どころか同国しっぱなしみたいな感じかもしれないですし、その出てくる4人が4人とも全く共感できないというか、感情移入を拒絶するような人たちなんですよね。
感動して泣くとか恋人とか大切な人との別れが切なくて泣くって感情移入の涙じゃないですか。
加害者の少年Aはもちろん彼を崇拝する女の子にも共感できないし、被害者のお母さんもちょっと異常な感じもするし、一番自分に近そうなというかまともそうな小説家を目指しているアラフォー女性も、なんかちょっとあまり好きになれる感じじゃないんですよ。
そう言いながら久保さんの小説を読んでて思うのは、小説って共感できるとか感情移入できるかどうかっていうことは必ずしも大切じゃないんじゃないかなっていうことなんですよね。
そもそも登場人物に共感したり理解できたりすることが重要なのかなっていうことを考えたりしますね。
後半もこのサヨナラニルバーナーについてお話ししたいと思います。
武田佐徹さんのわかりやすさの罪という本にも簡単にこう理解するなっていう、理解できたと簡単に言ってくれるなって怒りみたいなの書かれてるんですけど、このサヨナラニルバーナーという小説は理解に苦しむの連続みたいな感じなんですよ。
少年の性的欲求というか何に興奮するかみたいなこととか、女の子がなぜアイドルのように彼を崇拝するのかとか、小説家のものを書かざるを得ない欲求みたいなことはちょっと理解しがたいんですけれども、本人たちも自分の欲求が理解できてないんじゃないかなっていうことにちょっとほっとする感覚もあるんですね。
うまく言えないんですけど、私だってなんでこういう辛い小説を読みたいっていう欲求がどこから出てくるのかわからない部分もあって、この小説本当にあまり言わないでおきますけど、バッドエンドっていう感じなんですけど、そういうとことん残酷な救いのないものを欲する気持ちが自分にあるってことにゾッとするわけですよ。
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小綺麗な毎日を生きていて、人を殺したいとか死にたいとかもちろん思ってないけど、救いのない物語を読んで逆に癒されるみたいな感覚はあるわけですよね。自分でも理解できない柔らかい部分があるんじゃないかなと思ったりします。
お気に入りで言うと、もう一冊、青天の迷いクジラも大好きな作品なんですけど、こちらは自殺する前にクジラでも見てみようって3人が集まるっていう、またちょっと暗そうな話です。
いやこれは結構明るい気がしますが、これを読んでた時の私自身が、新しいアプリかサイトのローンチの担当していて、確かこの小説に出てくる過労死しちゃいそうなデザイナーほどではない方ですけど、
努力は必ず報われるとか誰かに言われたらプツンと切れてしまいそうな、そんな感じの中で読んだから余計に染みたのかもしれませんね。
美しい海の写真の表紙も含めてすごく好きな一冊です。
アミニバーサリーとか水槍はいつも深夜だけどみたいな、久保美澄さんの母親像がいろいろと出てくる話も、ちょっとギュッと胸をつかまれるような感覚があります。
こちらもぜひおすすめなので読んでいただけたらと思います。
さて今日は、さよならニルバーナから神フレーズをご紹介したいと思います。
35歳から45歳まではあっという間だった。35になった時は30の時にあった体力や気力を思い、
40になった時は30半ばまでの自分の体に満ちていた集中力というものが日々すり減っていくことを知らされた。
これは小説家志望の女性の一人語りの部分なんですけど、
45歳から55歳もさらにいろんなものがすり減っていくのかなぁと、
集中力とか欲求とかね、そんなことを考えながら読みました。
さて今日から見漏れに連載が始まった新作、私は女になりたいは、アラフィフの女医さんと14歳年下の男性との恋愛ものなんですね。
そう言うとちょっと軽く聞こえちゃいますが、いつまでも若くいたいとは思わないけれども、
いつまでもどういう状態だったら女の人って幸せなんだろう、みたいなことを考えさせられる作品です。
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もちろん男性も年を取れば受けていくわけで、久保美澄さんの不甲斐ない僕は空を見たあの時、高校生だった男の子も30代になるとこの公平みたいな感じになっているのかなぁということを考えたりしました。
ぜひ見漏れのサイトで読んでいただけたらと思います。
この番組への皆さんからのリクエストご感想も見漏れのサイトから募集しております。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりなと出出はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話ししたり本を紹介したりしています。
見漏れのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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