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2022-05-11 13:04

善意と好奇は紙一重。優しいふりをした好奇心に気をつけて【第107夜】

今日の勝手に貸し出しカードは、ペク・オニュさん著、吉原育子さん訳の『ユ・ウォン』です。これは、今年のベストブック入り確定です。

マンションの大火災から奇跡的に生き残った少女ユ・ウォン。部屋に火の手がまわる中、彼女を布団で包んでベランダから放り投げた姉は亡くなり、下で受け止めたおじさんは足の骨を砕く大怪我を負って障害が残ります。「布団の子」を救ったおじさんは、一躍ヒーローになるのですが、彼は決して聖人ではなくて・・・。
重荷を背負った少女のただただ悲しいお話ではなくて、サスペンスな要素とシスターフッド的な冒険譚でもあり、爽快さが残ります。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、ナビゲーターの広断者ウェブマガジン、みもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第107夜をお届けします。今夜は、私が今、激推しの小説を勝手にプレゼンするコーナーです。
今日の勝手に貸し出しカードは、ペク・オニュさん著、吉原一子さん役の「ゆ・ウォン」という小説にしました。
大好きな経文学ですね。これはね、今年のベストブック入り確定と思っています。
前回ご紹介した井上アレノさんの「生川」をベストブックだって言ってましたかね、私もしかして。
でも、この「ゆ・ウォン」は翻訳部門のベスト確定ということにしておきましょうか。
もう一冊ね、すごいすごいのがあって、それ来週ご紹介したいと思ってるんで、それもベストブック間違いなしと思っていますね。
まだ5月の半ばなのに、ベストブックが大渋滞、大丈夫かしら、2022年選べるかなというわけで、そんなベストブック確定のペク・オニュさんの「ゆ・ウォン」がどんな小説かご紹介していきたいと思います。
表題になっている「ゆ・ウォン」は主人公の女の子の名前なんですね。
ある時、マンションの大火災が起こって、その大惨事から奇跡的に生き残った少女がゆ・ウォンちゃんなんですね。
部屋に火の手が回る中で、彼女のお姉さんが、お姉ちゃんがいるんですけど、水をかぶって布団でそのゆ・ウォンちゃんをくるんで11階のベランダから投げ落とすんですね。
そしてその下でおじさんがなんと布団ごと受け止めてくれて、奇跡的にゆ・ウォンちゃんを助かるんですよ。
ただそのベランダから投げた姉はその火の手が回って亡くなってしまい、下で受け止めたおじさんも足を骨折して、その後障害が残る大けがを負うんですね。
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でもこの布団の子を救ったおじさんは一躍ヒーローになるわけなんですが、彼はすごい善人っていうタイプでは実はなくて、この後この家族の家にお金を背びりに行くようになったりしていくわけなんです。
この布団を受け止めたおじさんの描写がね、またじっとりとやな感じで、ここはちょっと読ませるポイントではあります。
韓国ドラマを好きな方はお好きなちょっと意地悪なおじさん役の俳優さんをイメージしていただけるとより生々しいかと思いますが。
そんなわけで、火災から奇跡的に生き残った少女、奇跡の子、布団の子として女の子も世間の注目を集めて、その後もあの子はどうなったっていうわけで、学校とか近所の小さい町なのでみんな知ってる子になっちゃうわけですよ。
だからすごい楽しそうにしてても不幸そうでも何かと注目を集めてしまうっていうか、そんな楽しそうにするなって言われたりとか、亡くなったお姉ちゃんの分まで幸せになれよって関係ない人に言われたりとか、いろいろ好奇の目で見られちゃうわけですね。
クラスの女の子たちもいじめたりはしないんですけど、かえってちょっと気を使うっていうか、優しく接するみたいな感じも彼女は自覚していて、それであんまり人と関わりを深く持たないような感じで、人を避けて孤独を選んで生きているっていうお姉ちゃんなんですよ。
ただ彼女に初めてできた友達らしきものっていう女の子ができて、彼女はあんまりこの過去の事故のことを気にせず、割とガシガシ話をしてくれて、その率直さが気に入って、彼女とだんだん仲良くなって心を開いていくっていうお話なんですけれども、
この小説三つ軸があって、まず一つは最初に言ったおじさんですよね。おじさんがまた家に来てるな、嫌だなって言うおんちゃんは思ってるんだけど、おじさん家に来て、お母さんたちも無限に返すわけにもいかないし、何か食べていきますかとか言ってご飯に用意したりとかするんですねっていうこのおじさんと友達になった女の子との二人の関係があって、
どうなっていくかという話と、そして言うおんちゃんにとっては、救ってくれたお姉ちゃんとの関係性っていうのが一つの軸になっています。お姉ちゃんはすごく完璧な人だったっていうか、あんなにいい子が、そして賢くて、いろいろ勉強とかスポーツとかもできて、もったいなかったみたいなことを近所の人とかいろんな人が言うわけですよね。
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言うおんちゃんもお姉ちゃんのことが好きだったには違いないんだけど、ちょっと苦しくなってしまうというか、完璧だったお姉ちゃんと比べられることだったり、それをなぜか背負わなきゃいけないっていう一面があって、
一人でお姉ちゃんをどう受け止めたらいいかっていうことと戦っているという三つの軸があるんですけど、この三つがですね、後半が一個になるんですね、あんまり喋るとネタバレになっちゃうんですけど、そこがすごくドラマチックで、そこからちょっとスピーディーなサスペンス的な要素もありつつも、
この小説をすごくお勧めしたかったのは、すごい暗い話っていうわけじゃなくて、重荷を思いがけず背負ってしまった女の子の成長の物語でもありますし、シスター・フット的な友達になった女の子と二人で冒険をするようなところもあって、ラストは割と爽快さの残る青春小説となっています。
この小説を読み終わった後から、実際の事故として、シレトコ遊覧船の事故があって、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれないんですけど、プロポーズをするつもりだった男性が亡くなっているんですよね。
そのお手紙をニュースで読み上げてて、こんなの見ちゃっていいのかなっていう気持ちになりましたし、ご家族の方の無念さとかはもう計り知れないので、後悔すること自体を否定するわけじゃないんですけど、
友達さえ読むことが多分なかった、彼女しか読むことなかったであろう手紙を、こんな国民中が見れちゃうってすごいことだなと思って、小説と現実の事件を一緒くたにするのはちょっと不謹慎かもしれないですけど、このユウ・ウォンの小説をまた思い出して、一躍国民の少女みたいにユウ・ウォンちゃんはなっちゃったわけなんですよね、生き残ったせいで。
そんなふうに何から何までプライベートが国民中に知れ渡る、感動の物語として消費されてしまうから、その後が楽しそうでも楽しそうじゃなくても責められるみたいになってしまうっていう怖さを考えさせられましたね。
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ついついやっぱりその、生きてたらどうだったっていう舞台裏とか、知りたい気持ちはもちろん私もありますけれども、そうやって感動の物語みたいにして消費しちゃうのはどうなんだろうって思ったりとか、芸能人の方の悲しいニュースもあったりしましたけど、その理由とかプライベートってどうだったとかをこの後掘り下げる必要はないかなと。
私たちが知る必要はないんじゃないかなみたいなことをちょっと考えたりしました。
さて今日はこの小説ユウ・ウォンから紙フレーズをご紹介したいと思います。
お姉ちゃんの分まで幸せになりなさいって言われるんでしょう?
人の倍頑張って生きなさいってそう言われない?
言われる。
普通に幸せになるのだって難しいのに、どうやって人の倍も幸せに生きろって言うのよね。
苛立ちをぶつけてみたらほんの少しだけ気持ちが楽になったような気がしたことがあります。
これはユウ・ウォンちゃんの友達になったスヒョンちゃんが言ってくれた言葉なんですけど、
普通に幸せになるのだって難しいのに、どうやって人の倍も幸せに生きろって言うのよねって、
いいなと思って結構泣きそうになってグッと来ちゃいました。
ユウ・ウォンちゃんはこうやってストレートな言い方をしてくれるんだけど、
そのおかげでユウ・ウォンちゃんは救われる場面が結構あるっていうところがね、
なかなかいい2人の関係性なんですよ。
でも確かに幸せになってねとか、なんとかさんの分まで幸せにならないとねとかって言ってしまいがちそうだし、
良かれと思ってね、応援しているという意味で言っちゃうけど、本人にとってはそれを苦しめられるっていうことって、
大なり小なり、こんな大火災から生き残ったみたいなことはほとんどの人には起こらないけど、あるような気がして、
そういう意味でこの小説が描いているものってとっても普遍的なお話だなというふうに思いました。
そのお姉ちゃんへの気持ち、お姉ちゃんのことは別に嫌いなわけじゃないんだけど、
そうやって比べられたり、完璧だったお姉ちゃんは亡くなってしまって、私は生き残ってしまったっていう罪悪感みたいなものはどうしても拭えなくて、
そういうのってどうでしょうね、どの兄弟にも多少はあったりするんじゃないかなと思ったりしました。
気になった方はぜひ読んでみてください。
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このおじさん、布団を受け止めたおじさんがその後どうなるかっていうところもすごく面白いので注目して読んでみてください。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
来週はもう一つのベストブック候補と呼び声の高い、私の中で呼び声の高い長編小説を紹介したいと思っています。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに色々なテーマでお話したり、本を紹介したりしております。
みもれのサイトからお便り募集していますのでぜひご投稿ください。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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