レベル32Nの概要
レベル32N 危険度① 空間信頼性不安定、実体信頼性不明。
レベル32Nは、バックルームにおける32N番目の階層である。
概要 レベル32Nは、薄暗く温暖で多湿な廊下がどこまでも続く屋内空間である。
壁面や天井は白色であるようだが、極端に色温度の低い照明に照らされているため、暖色に色づいて見える。
レベル32Nは、頻繁に折れ曲がる廊下であり、長い傾斜や階段、ごく小さなホールなどを挟んで立体的に伸びる。
その無機動な構造にもかかわらず、分岐構造や部屋の出現は稀であり、ほとんど一本の通路が延々と迷走するのみである。
レベル32Nの空間全体には、湿った熱さの雰囲気に沼の淀んだ臭気が混ざり合うようだと証言される、ムラのある熱気が漂っている。
階層への滞在がある程度の長時間になりやすく、階段など高低差のある構造が度々出現することもあり、発汗による脱水症状が懸念される。
読めない漢字が出てきましたね。壁の、かまどかなこれ。壁眼。
西洋建築で彫像などを置くため、壁面に設けられた窪み。はいはいはい。壁眼、日地とも言うらしいです。
壁眼。
壁面にはアーチ窓の形状をした窪みがよく見られる。
このような壁眼には木製の棚が作り付けられていることがあり、不明な花が生けられた瓶や、売れすぎた未知の果実が満載にされた籠など、有用な物品が設置されていることもある。
これらの植物はいずれも一見して異常な特徴を感じさせない外見であるが、いまだかつてその品種が特定されたことがない。
花瓶の水には埃が浮いているものの、無臭であり陰陽に支障はないようである。
籠の果実は過剰なほど売れて崩れかけているが、こちらも摂取した後で体調を壊したという報告はなされていない。
その他、人間を含む生物を傾っていたり、それらが溶けたような形状であったりする小さなブロンズ像もよく見られる。
ただし、レベル3.2.Nにおいて、壁眼とその内側は不安定な唯一の空間要素である。
壁眼は認識されていない間に消失、あるいは移動することがあり、物資が壁の中へ埋没してしまったというような事例が複数報告されている。
壁眼の位置や数や大きさは、瞬きをする一瞬の間に変動することすらあるが、これを見たり触れたりしている間に動きを見せることはないようである。
分岐
壁眼の内側には低い頻度で扉が出現し、通路が分岐することがある。
この扉は存在が不安定であり、唐突に出現したと思えばすぐに消失したり、壁と一体化して開かなくなってしまったりする。
扉の先に存在する分岐通路はそれまでと同じような景色であるが、分岐先へと入るたびに照明の明るさが変化し、多くの場合で薄暗くなっていくようである。
より暗い分岐先の通路では、比較的安全な階層へ確実に移動する手段である水盆がよく発見される。
この水盆の底には複数の葉が沈んでおり、その多くは乳歯である。
しかしながら、十分に焦度が低い通路においては、突発的に危険な階層への移動が発生する場合があることに注意しなければならない。
この危険な階層移動が発生する確率はそれほど高くないと思われるが、分岐通路への深入りは可能な限り避けた方が良い。
乳児の腕と音響現象
乳児の腕
レベル3にNに滞在していると、視野の端で自らの左肩から伸びている乳児の腕をたびたび見ることになる。
腕は放浪者本人の顔を触ろうとしているかのような動きを見せるが、これを直視しようと左肩に目線を向けると、幻覚であったかのように視認できなくなってしまう。
また、これに触れようとしてもそれらしい感触を得ることができず、あくまでも周辺視野における視覚現象であるかに思われる。
実際に顔を触られた感覚があるという報告は多いものの、いずれも錯覚だとしておかしくない程度に微弱であったといい、乳児の腕によって何かしらの危害を加えられたという証言は皆無である。
ただし、出口の口で述べるように、明確に乳児の腕へ触れたという事例が一件のみ報告されている。
音響現象
時折、水中のようにくぐもった大きな物音や、長い周期で揺れ動く波に似た音、重い物体が着水する音などが聞こえることがある。
これらの音は壁や天井の向こう側で発生しているようであり、未確認の領域が存在する可能性が考えられる。
レベル3、2、Nでは再現性が低く報告数の少ない雑多な現象が多く見られる。危険性が高い現象は知られていないが、念のため十分な注意が必要である。
この記事の末尾にその一部を例示する。
入り口と出口
階層への入り方
レベル2、1、3、Nなどの階層において、壁のくぼみに設置されている扉がレベル3、2、Nへ接続していることがある。
薄暗い階層であるほど、このような扉との遭遇率が高いという未確認情報が存在する。
レベル2、1、6、Nで自らの血液を口にすると、レベル3、2、Nで意識を取り戻すことがある。
この時、放浪者は壁眼の内側で壁に向かい合い、立ったまま涙を流している。
その他、再現性が確認されていない方法によるレベル3、2、Nへの侵入例が複数存在する。
階層からの出方
壁眼に出現する扉から分岐通路へと入るたびに照明の明るさが変化するが、全体的な傾向として照明は次第に暗くなっていく。
手元が視認しづらい程度に暗くなると、レベル5、4、9、Nへ。
ほとんど消灯するまでに暗くなると、レベル9、Nへ突発的に移動することがある。
ごく稀に、壁眼内の棚に水分が配置されていることがある。
水分で顔を洗うと、顔を上げた時にはすでにレベル5、7、4、Nへ移動している。
この水分は、焼土がかなり落ちた分岐通路での発見例が多い。
自身の左肩を直視せずに乳児の腕が見える位置を掴んだところ、
茹ですぎた餅のようにぐったりとした感触がして、直後にレベル6、3、Nの砂浜に立っていたとする報告が一見存在する。
知られている限り、この現象は二度と再現されていない。
未検証の情報
レベル3、2、Nに滞在した放浪者が寄せた報告より、
未だ検証が行われていない情報群の一部を最後に付記します。
これらは最初に報告された後に数件の類似的な報告がなされている現象の記録です。
あなたがレベル3、2、Nにて不明な現象に遭遇した際には、
イレギュラー報告データベースまで情報をお寄せください。
未検証情報の一覧を開く。
水玉模様
壁、天井、床のすべてに直径30cmから2m程度の円形が無数に描かれている区画に遭遇した。
円の表面に触れると指へ若干色が移り、
例えばクレヨンで描いたかのようであった。
マリ
曲がり角の先からマリが転がり出て、少し先で止まった。
マリは中空で何かの物体が入っているようだった。
引き裂いてみると、内側の面はタールのような黒い油で覆われており、
この油によって固まった人間の歯の塊が入っていた。
ノック音
壁を向こう側からノックする音が発生した。
最初のノック音は散発的に2、3程度音が鳴るだけだったが、
数分であらゆる方向から大量になり続けるようになった。
これは少なくとも十数分は続いたが、
発見した扉から胃を消して分岐通路へ入るとピタリと止んだ。
サービス
壁紙の棚にサービスさせていただきますと記された紙片と古い伝電太鼓が置かれていた。
固定電話
部屋内でコール音を聞いて音源を探すと壁紙の棚に固定電話が設置されていた。
受話器を取ると数秒の無言が続いた。
やがて女性の低い声が、「どう?」と言いかけたが、
壁龕の観察と解釈
その瞬間に接続が切れてノイズすら聞こえなくなってしまった。
電話線は壁紙の壁面に空いた小さく深い穴の奥へと引き込まれていた。
ハンカチ
床に白いハンカチが落ちていた。
ハンカチには真っ青なシミができており、
白い糸で大文字のDドット墓向けと刺繍されていた。
深い壁眼
壁眼のくぼみが異常に深く、異様に深く、奥が見えないトンネルのようになっていた。
壁眼の内部に照明が存在しないため非常に暗く、
天井の照明から影がぼんやりと斜めに差し込み、
その数メートル奥はもはや暗闇であった。
入口に立って恐る恐る中を覗き込もうとしたところ、足元で水音がした。
見ると黒っぽい半透明な液体の水たまりがじわりと暗闇の奥から広がるところであった。
画像が1枚。レベル3にNで見られる典型的な構造。
見た感じはホテルな感じですね。
薄暗いオレンジっぽい。
でも白色の照明なんですよねって書いてたけど。
薄オレンジっぽい感じで天井にトントントントンとあって、
壁、床をぼんやりと暖かい感じで照らしています。
左右にすごい、本来であればホテルのドアがあるような位置がすごい窪んでいる感じですね。
ここにはないんだっけ、基本的に扉はない。
売れた果物とか花瓶、あとは彫像とかが置いてあることがままあると。
触れたり見ているときは移動しない、瞬きすると移動するみたいなことが書いてたんですが。
ファイブナイツアットフレディーズとか、
あとはハリーポッターのあったりなかったり部屋をちょっと彷彿とさせますね。
乳児の腕とか、あとは水のような音っていうところから
少し容水の中なのかなとか、
あとはマリとか、水玉模様ノック音とかがあるので、
水庫とか、水難事故とかの雰囲気を漂わせている感はありましたね、個人的に。
サービスさせていただきますって何なんだろうな。
古い伝電太鼓。
私のさっきの解釈でいくなら、生まれて間もないこのために伝電太鼓を操すために買っていたとかでしょうかね。
ノック音とかは出産時の手術音とか、固定電話はエコーとか、
いろいろこじつけようと思えばこじつけられそうだなっていう印象ですが、
バックルームにそこまでの整合性を求めてはいけないという気持ちもあるので、
というかまあいろんな要素が混ざっててもいいよなっていう気持ちもあるんですよね。
なので今私が話した容水の中説とか、水庫説とか、赤子の水難事故になった赤子の動向とか、
その他なんか思いつく方がいたら、それらも全部混ざっているのかもしれない。
バックルームそのものっていうのがどういう要素で形成されているのかをちょっと自分の中で確定づけたい気持ちはありますね。
いろんな人の残留思念とかが混ざり合っているのかなっていう今までの見てきたものの中から考えると。
それこそ寝る時に見る夢の世界みたいな記憶の整理じゃないですけど、記憶とか想像とかがもうごちゃ混ぜに入り込んでいて、
その中で強い気持ち、ベースとなる気持ちが通路だったり扉の構造だったりになっているとかだったらちょっと熱いですね、個人的に。
ということで、危険度は1ですね。
その被害を加えるような実態は現状確認されていないということでした。
ではまた次回お疲れ様です。