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2024-09-25 10:39

名無しの探索者の幕間

タイトル: 名無しの探索者の幕間作者: solvexソース: http://japan-backrooms-wiki.wikidot.com/solvex-s-foundlog作成年: 2023ライセンス: CC BY-SA 3.0©️The Backrooms JP Wiki: http://japan-backrooms-wiki.wikidot.com4・8・13・16・1922・25・28・31日更新予定#Backrooms #バックルーム #podcast

BGMタイトル: Felt Lining 作者: Blue Dot Sessions 楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/The_Cabinetmaker/Felt_Lining ライセンス: CC BY-SA 4.0

00:06
名無しの探索者の幕間。相も変わらず見慣れた光景だなと思いながらも、私はもう何度見たかわからない階段に入った。
長年の経験から、この階段を下りればさらに下に進めるということは理解している。 まあ階層ごとが物理的に上下があるとは思っていないが、
よくこの階段を下りるという行為をしているから便宜的なものになる。 無機質なコンクリートの階段室だが、ここは危険な何かに襲われることも、どこに行けばいいかわからずにさまようこともない。
決して過ごしやすい環境ではないが、私はここを見ると安心する。 私はもともと本当に普通の生活をしていた。
しかし突然よくわからない部屋に迷い込んでしまったことで、私の普通は未来永劫を取り戻せなくなってしまった。
わけもわからず無限に広がる黄色い壁をたどり続ける。 途中で何度かおたけびのようなものが遠くから聞こえるたびに、私は隠れられるところを探して、その中で一人ガクガク震えていた。
稀に運悪く、そのおたけびをやたら近くで聞いてしまうこともある。 いつものように隠れていると、どそっ、どそっと、重い足音が次第に近づいてくる。
私は叫びたがっている口を必死に抑え込み、その足音の主が通り過ぎるのを、過ぎ去るのを待ち続けた。 私の願いは何とか叶い、足音はまた遠くへと去っていった。
ひと安心して立ち上がろうとしたとき、緊張が突然ほぐれたせいか、私は思わずよろめいた。 抵抗むなしくそのまま倒れ、床にぶつかろうとしたそのとき、なぜか床をそのまますり抜けた。
戸惑う私をさっきまでとは打って変わって、白い壁が囲んでいた。 全くもって意味がわからない。私が最初に黄色い壁の部屋に来たのと似たようなことが起きたのか。
だが考えても仕方ないし、そもそも考えられるほどまだ落ち着いていない。 心臓はバクバクしている。
03:07
だからまたとりあえず行ける範囲を進み始めた。 長い通路のようなところを歩いていると窓があったから外を見てみた。
そこからの景色は中庭とそれを囲む集合団地のような光景だった。 そしてちょうど反対側にも窓がいくつもあり、光がついている部屋も少なからずある。
私はそこでちょっとした好奇心が湧いた。 まだ緊張は収まっていないが、それでもあっちには何かあるかもしれない。
あのおたけびの主は怖いが、ここにはいなさそうだから反対側の部屋に行ってみることにした。 道中は特に困ることはなかった。
たまに椅子が置いてある程度の何もないところを進むだけ。 方向感覚を失わないよう気をつけるぐらいだ。
たどり着いた部屋はまるでチェックインする前のホテルのような整理整頓された寝室だった。 テレビには何も映らなかったが、幸いにも冷蔵庫の中に飲み物らしきものがある。
パックにはアーモンドウォーターと書いてある。 少し怖いが喉が渇いていたので思い切って飲んでみた。
味としてはなんとも薄味。 無味の方がマシかもしれない。
それでもないよりはマシだった。 しかしこの変な世界、思っていたよりもいろいろ何かありそうな気がする。
恐怖の感情は未だにあるものの、私の中で確かな好奇心が芽生えつつあるのを感じた。 ただ、それもほんのわずかではある。
ほんのわずかではあるが、のたれじぬよりマシという低レベルな天民の結果で、 いやでも私は足を動かし始めた。
幾度の探索をこなし、私はまあまあこの世界での身のこなし方を得得しつつあった。 水分と栄養補給のためのアーモンドウォーターはそれなりのラインナップを揃えている。
簡易的に寝泊まりできる装備もそこらでかき集めたものでなんとかなった。 こうして準備万端の私はその場にいるだけでは仕方ないから、
06:03
新天地を求めて当てのない旅を続けていた。 そんなある日のことだ。なんと私はスマートフォンを拾ったのだ。
幸いなことにまだエネルギーは残っている。 ひとまず位置情報を確認したが、差し示す場所はしっちゃかめっちゃかだった。
まあこれはなんとなく予想はしていたが、 しかしその後に驚くべきことに気がつく。
なんとこのスマホ、Wi-Fiが繋がっている。 愛にく発信源の特定をする技術は持ち合わせてなかったが、私はとかくネットが使えるということが嬉しかった。
早速何か見られないか調べてみるが、残念ながら元の世界との接点は何も見つけられなかった。
しかし奇妙なものを見つけた。何かしらの一覧のようだ。 いくつか見ていくと、どこか不思議な空間を説明しているもののようであることが分かった。
そしてさらに特筆すべき点として、私がかつて踏破した場所とおおむね同じ説明をしているものもあった。
私はここでふと思った。もしかしたらこれを書いている人がいるのかと。 そう思うと何か元気が湧いてきた。
自分はたった一人でここをさまよっているわけではないと。 無論その人を見たことはなく、この一覧ももしかしたらこの世界そのものを作った誰かが気まぐれで書いているだけかもしれない。
しかしその時の私は、むしろ今もだが、 そんな考えても仕方のないことは頭になかった。
そして書いている人がいれば、かつての私のようにただ理不尽に苛まれるだけの人もいるだろう。 だから私はそういう人たちのために、私も自分の知識を提供することを決めた。
幸いこの世界のいろんな場所はちょっとやそっとで忘れられるようなものではてんでない。
もし幸運にもスマホを拾った人がいれば、私や先人が書いたこの一覧を見てほしい。 一緒にこの理不尽な世界を解き明かしてやろうじゃないか。
そう決意してまた先に進もうと近くの扉を開けた。 そこにはコンクリート製のさむざむとした階段があった。
09:03
私は迷わず下り始めた。 かつての探索の日々を思い出しながら階段を下りる。
思えばなかなかの深みにまで進んだかもしれない。 もはやちょっとやそっとのことではどうじないし、たとえ何もないところにほっぽり出されても1ヶ月は生きていける自信がある。
私はすっかりこの世界の魅力にはまってしまったようだ。 しかし、今日は何か違った。
階段をあともう少しで下りきるところで私は何かゾワッと感じるものがあった。 確かにこの階段ではよくあることだが、今日のそれはひと味違う。
より強い恐怖と不安が私を襲った。 この先に何があるというのだ。
いや、そんな小難しいことを考えるのは言ってからでも遅くはない。 今の私には恐怖を上回る好奇心がある。
何より今さら上に戻るのも面倒くさい。 600段もあるんだ。
だから私は最下層の扉を開け、次の階層へとまた一歩足を踏み入れた。 どんなところか楽しみだ。
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