あなたは今、あの画面を前にして、完全に思考が停止しているはずです。
いやー、そうでしょうね。
佐々木とピーちゃんの2期を見ようって、意気揚々と第1話を開いたものの、あれそもそも1期ってどういう話で終わったんだっけって。
えー、なんでこんな状況になってるのって、あの記憶がごちゃ混ぜになっているんですよね。
そうなんです。もうどうしてこうなった状態ですよね。
いやー、でもそれは無理もありませんよ。
今回、我々の手元には公式サイトのストーリーあらすじですとか、非常に一密な第1期構造分析と第2期鑑賞のための整理レポートといった膨大な資料が積み上げられているんですが、これらを読み解けばもう一目瞭然
なんです。
この作品は単なる1つの物語ではなくて、異常な密度で複数の事件が、なんていうか、玉付き事故を起こしているような、そういう多重構造の異常事態ですから。
いや、本当にそうなんですよ。
だからこそ、今回のアニメノーツリプライのミッションは、単なるあらすじの羅列ではありません。
もっと深いところですね。
この作品の狂気的ともいえる密度の高さを論理的に紐解いて、あなたが2期の続きを今すぐ見たくなる状態にすることです。よし、これを紐解いていきましょう。
そうですね。まずは、この全てのカオスの発端となるある壮大な勘違いから整理する必要がありますよね。
ああ、そうでした。主人公の佐々木は、ブラック企業で連日疲弊しながら働く、冴えない中年の会社員ですよね。
彼が日々の生活に癒しを求めて、ペットショップで1羽のかわいいブンチョを購入するんです。
でも、このピーちゃんの正体が、実は異世界であるヘルツ王国から転生してきた、孔明な星の賢者、ピエル・カルロだったと。
佐々木は、ピーちゃんと魔力の契約を結んだことで、強大な魔法の力と、現代日本と異世界を自由に行き来する能力を手に入れますよね。
はい、そこから物語が動き出します。
ここから彼は、現代の高級食材とか便利な文房具を異世界に持ち込んで荒稼ぎして、夢のスローライフを目指すわけですが、あの、ちょっと待ってくださいよ。
どう言いますと?
ここが私にはどうしても腑に落ちないんですよ。これだけ聞くと、よくある異世界スローライフものとか、現代知識で無双するビジネスものですよね。
ええ、一見するとそう見えますね。
なんでこれがそんなに特別なんですか?彼がリスクを避けて平穏なリタイア生活を送りたいって願っているのはわかります。
でもその割には、異世界の権力者である三浦四尺、後に白尺に昇進しますけど、彼とか、ゴーショーマルクみたいなトップ層とゴリゴリにコネクションを作っていきますよね。
そうなんですよ。
リスク管理が目的なら、目立つ権力者に自ら近づいていくのって、完全に逆効果じゃないですか。
ここで非常に興味深いのは、佐々木の徹底した社畜的リアリズムと実利主義なんですよ。
社畜的リアリズムですか?
彼は強大な魔法の力を手に入れても、勇者になって世界を救おうみたいなヒロイズムには一切興味を示さないんです。
確かにそういう厚い展開は避けてますよね。
界にとって魔法とは特別なスキルではなくて、安全に商売をするためのインフラなんですよ。
インフラ、なるほど。
権力者と繋がるのは、彼自身が表舞台に立たず、彼らを一種の防波堤とか、確実な流通ルートとして利用するためなんです。
つまり、企業間取引のような強固な経済基盤を築くための、極めて計算された行動なんですよ。
なるほど。魔法で無双して目立つより、大企業をスポンサーにつけて、下請けとして安定した利益を得る方が、彼にとってはローリスクだと考えているわけだ。
まさにその通りです。地に足のついたビジネスマンの思考なんですよ。
でも、その完璧に思えたビジネスプランが、現代日本でうっかりピーちゃんの魔法を使ってしまったことで、完全に破綻していくんですよね。
そうです。彼が会社帰りに、現代日本で異能力者同士の戦闘に巻き込まれて、魔法で切り抜けた結果、とんでもないことになります。
国の機関である内閣府情状現象対策局にスカウトされちゃうんですよね。
はい。異能力者だと勘違いされて、国家公務員として働くことになってしまう。ここからがこの作品の真骨頂なんです。
構造分析レポートを読んでいて、一番ゾッとしたのがここなんですが、この作品って単に異世界と現代を行き来するだけの話じゃないんですよね。
ええ、全く違います。
4つの独立したジャンルの世界観が、同一のタイムラインで同時に進行しているっていう。
その通りです。
普通のアニメなら、それぞれが単独で一つの作品になるくらい濃密なジャンルなんですよ。
一つでもお腹いっぱいですよね。
はい。まず一つ目は、先ほど話した異世界ファンタジーですね。ここでは貴族の陰謀とか、隣国の黄泉帝国との戦争、あとは小取引なんかが展開されます。
王道ですね。
そして二つ目が、現代異能バトルです。佐々木は対策局の職員として働くことになるんですが。
あの、頼れる先輩の星崎さんとか。
はい。あとは霊端で実力主義の上司であるアクツですね。彼らの下で佐々木は命がけの業務に奔走させられるわけです。
そして三つ目が魔法少女です。でもこれリスナーの皆さん、キラキラしたものを想像しないでくださいね。
全然違いますからね。
ここに登場するマジカルピンクっていう少女は、異能力者絶対に殺すマンとして現れるんですよね。
はい。容赦ないですよね。
はい。容赦ないですね。家族を異能力者に殺された復讐として魔法少女になったんですけど。
彼女、自分を魔法少女にした妖精の毛皮を舐めして首に巻いてるんですよ。
あれはもうジャンルに対する強烈なアンチテーゼですね。魔法少女という無垢で正義の存在を形作るシステムそのものを憎悪して、妖精を勝ってその力を利用している。
容赦のない凶器を払ったシステムのエラーみたいな存在です。
妖精の毛皮を首にまくって、もうルールの全否定ですよ。
本当にそうですね。そして最後の4つ目がデスゲームです。
ああ、佐々木の住むマンションのお隣さんですね。
ええ。彼女は母親の彼氏に襲われそうになったところを悪魔アバドンに助けられて、天使の使徒たちと殺し合う代理戦争に巻き込まれていくんです。
これがまた恐ろしいですよね。
ここでのポイントは心理的ホラーの要素なんですよ。
異世界とか大作曲みたいな壮大な舞台がある一方で、天使と悪魔の血みどろの殺し合いが起きている。
それが佐々木が毎晩寝ているベッドの文字通り薄い壁一枚隔てたお隣で進行しているという事実です。
いやーつまりこれってポーカーとモノポリーとフルコンタクトのラグビーを全く同じテーブルの上で同時にプレイさせられているような状態ですよね。
素晴らしい例えですね。まさにそんな感じです。
しかも佐々木は上司のアクツの前ではただの事務作業ですって顔をしながら裏でそれをさばいているんですよ。
そうなんですよね。佐々木本人は相変わらず早くお金を貯めてリタイヤしたいとしか思っていないのに、彼という凡人を媒介にしてこの4つの世界が互いに干渉し始めてしまうんです。
この同時プレイが恐ろしいのは一つの盤面での成功が他の盤面を完全に狂わせてしまうというドミノタゴロシにありますよね。
まさにそこが重要です。
その連鎖反応の行き着く先があなたがこれから見る幹につながる一気の結末なわけです。ただ漫然と状況を追うのではなくてこの因果関係を解き明かしてみましょう。
はい、やっていきましょう。
まずは異世界側での成功がどう彼の首を絞めたのか。異世界での佐々木は高度な政治交渉によって経済大国ルンゲ共和国へ赴いて処刑の危機に遭ったゴーショウマルクを救い出しましたよね。
ありましたね。あの熱い展開。
この多大な功績によってアドニス王子たちから断釈の借位とレクタンヘーゲンという広大な領地を与えられます。
さらにミュラー家の娘であるエルザが兄たちの死を経て党史の座を継ぐことになった。
これ一見すると異世界サクセスストーリーの大断円に見えますけど佐々木のリスク回避という目標からすると最悪の展開ですよね。
そうなんですよ。
借位をもらってしまったせいで大い継承争いっていう泥沼の政治闘争から逃げられなくなった。
おまけに未開拓の領地経営なんて莫大な資金と現代の物資が必要になるじゃないですか。
その通りです。
異世界での立場が上がれば上がるほど現代日本からの供給を増やさなければならない。
つまり対策局という国家機関に身を置きながら裏で大規模な資金調達とか物資の調達をしなければならなくなるわけです。
そこで機能するのが現代医農側での変化ですね。
元敵組織の幹部だった二里静香が対策局に移籍してきた。
これによって何が変わったんですか。
彼女の存在は佐々木のオペレーション能力を根底から変えたんですよ。
二里静香は老練な交渉術と裏社会の知識を持っていますからね。
はい、頼りになりますよね。
彼女がパートナーとして完全に定着したことで、佐々木は現代で得た異世界の資金をより大規模かつ安全にマネーロンダリングできるようになったんです。
裏社会のプロが国家機関に潜り込んで公務員の資金洗浄を手伝っているっていう構図がもうやばいんですが。
いや本当にそうですね。
でもこれで佐々木は異世界と現代を回すための強固なシステムを手に入れたわけだ。
ただ、佐々木がそうやって対策局の任務とか異世界の領地経営で外を飛び回れば飛び回るほど、家に帰らなくなりますよね。
そこに論理的な亀裂が生じるんです。それがデスゲーム側の爆弾を刺激してしまう。
そう、お隣さんです。
彼女の行動原理の根底には佐々木への強烈なヤンデレ的な愛憎がありますよね。
ありますね。佐々木が自分を構ってくれない、家にいないという孤独と執着が彼女を悪魔の力に傾倒させてしまう。
そしてデスゲームの首都としての活動を本格化させてしまうんです。ここで全体像と結びつけて考えると非常に面白いことがわかります。
と言いますと?
第1期は、これら4つの世界観が佐々木の社畜的な調整能力によってギリギリのところで交わらずに進んでいた準備期間だったんですよ。
なるほど、綱渡り状態だったわけですね。
はい。でも資金が必要になる、任務が増える、家に帰れない、お隣さんが暴走するという因果関係の連鎖がついに限界を迎えます。
そしてそのすべてのシステムが物理的に正面衝突するのが1期の終盤であり、あなたが今見ている2期冒頭の隔離空間ですね。
その通りです。魔法少女であるマジカルピンクたちが対策局を襲撃して強力なバリアを展開した。
音や人が消えたあの不気味な空間ですね。
はい。
そこに佐々木と二人静香が紛れ込んで、さらに天使や使徒たちも姿を表すわけです。
ファンタジー世界の魔法使いと裏社会の異能力者と狂気の魔法少女と神魔のデスゲームの参加者がもう一つの閉鎖空間に放り込まれてしまった。
異なるルールのゲームがついに一つの盤面で交差した瞬間ですよ。
佐々木は生き残るためにマジカルピンクに一時休戦協定を提案しますけど、この多重複合バトルはまだ幕を開けたばかりです。
いやー、これでなぜあなたが1話を見てちょっと待ってと戸惑ったのか、完全に繋がったはずです。
そうですね。状況が整理できたと思います。
佐々木の徹底した実利主義がこの論理的な必然性を持ったカオスをどう乗り切るのか。2期の主張に戻る準備は万端ですね。
すべてのコマが盤面に揃いましたからね、ここからはそれぞれのルールの違いがどう作用してどう干渉し合うのかが見逃せませんよ。
ええ。でも最後に一つだけ考えてみてください。
何でしょうか。
もし妖精のシステムを逆手に取った魔法少女のルールとか、天使と悪魔という上位存在のデスゲームのルールが、佐々木の使うヘルツ王国の魔法と正面衝突したら一体どうなるんでしょうか。
ああ、それは非常に興味深い問いですね。つまり異なる宇宙の物理法則とか根源的なシステム同士が一つの空間でぶつかり合うようなものですからね。