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信頼を得る距離感
小学校の支援員として働く私、佐藤優子には、印象に残っている一人の女の子がいます。
名前を葵さんと言います。
明るくて人懐っこく、でもちょっぴり気が強い小学校中学年の女の子。
嫌なことがあると床に寝そべって、やだーとアピールすることもありますが、気持ちの切り替えは早い素直な子です。
葵さんは私が教室に行くのをいつも楽しみにしてくれていました。
けれど、仲良くなるにつれて、少しずつ試し行動とも思われる振る舞いが目立つようになったのです。
加減はしているものの、ふざけて私を蹴ってきたり、ばばーなんていう言葉を投げかけてきたり、蹴られても暴言を吐かれても、
私は声を荒げることはなく、ただ目を見て静かに、それはダメだよと伝えていました。
けれどある日、その行動は少しエスカレートしたのです。
掃除の時間、水道で一緒に雑巾を洗っていたときのことでした。
冷たい雑巾を絞り終えた葵さんは、
遊び半分のような、けれどどこか恐る恐るといった表情で、私の肩に雑巾の絞り汁をたらたらと垂らしてきたのです。
ここまでしても佐藤先生は怒らない?私を見捨てない?
冷たい雫の向こうに、そんな問いかけが見えた気がしました。
私は内心ギョッとしながらも、静かに低い声で真剣に言いました。
葵さん、それはダメだよ。分かってるよね?
葵さんは口元こそ薄笑いを浮かべてはいましたが、気まずそうに黙り込みました。
掃除が終わり、教室へ戻ろうとしたその時です。
葵さんは急に私を振り返り叫びました。
佐藤先生は来ないで、別のクラスへ行って、ピシャッと教室の扉が閉まります。
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一瞬、追いかけようか迷いました。
けれど、ここで追いかけたら、どんなに嫌がらせをしても、この先生は自分についてきてくれる、と学習させてしまうかもしれない。
私は足を止め、黙って校内を散歩することにしました。
およそ3分後、教室の前に戻ると、廊下に葵さんがポツンと立っていました。
私を見つけるなり、どこか不安そうな顔で言います。
どこ行ってたの?見回りに行ってたよ。
私が淡々と答えると、数秒の間を挟んで葵さんは、
うーん、そんでどうすんの?と聞きました。
さあ、どうしようかな?
そう答えると、葵さんは、
来て、行くよ!と言って、私の手をぐっと引っ張り、一緒に教室へ入って行きました。
それ以降、葵さんから蹴られることも、雑巾の汁をかけられることもなくなりました。
まあ、ちょっとした暴言だけは、今もたまに飛び出しますが、お聞きいただきありがとうございました。
さあ、今回のショートストーリーは、実体験をベースに、またジェミニに作ってもらったものです。
葵さんが雑巾の汁を垂らしたり、「あっち行って!」と言った行動、
これは、支援員からの注目を得るためのアピールとして機能していたのではないかと思います。
ここで佐藤先生が、教室に入ってこないでと言われた後に追いかけてしまうと、
嫌がらせで先生が反応してくれたということになり、望ましくない行動が強化されてしまうかもしれない。
そのため、あえて追いかけずに距離を置くことを行いました。
その結果、葵さんは、このやり方では先生の気を引くことはできないんだと学習した。
そういう風にも取れますし、それかですね、
もしくは、雑巾の水を垂らした時に、先生は激怒して怒鳴ってくるだろうと、葵さんが予想していたのだとしたら、
結果的に予想は外れ、葵さんが思っていた通りの反応は、佐藤先生からは得られなかったわけなので、
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反応が得られなかった嫌がらせの行動は強化されず、消去されて過度な試し行動は消えていったと考えられます。
いわゆる試し行動って、本当は嫌われたいわけではないんですよね。
この人はどこまでなら自分を受け入れてくれるのか、どこで怒るのかという境界線が見えない状態が、
子供にとって強い不安を呼んでいる時、試し行動で予想通り相手が激怒したとします。
すると、それってある意味、2人の関係性の境界が明らかになったとも取れますよね。
そうしたら、先にあったどこまで受け入れてくれるのか、境界線が見えないという不安は消えることになります。
もし、あおいさんが、この人もどうせ感情的になるはずだという予測を持っていた場合、
相手が感情的になった瞬間に、ほらね、予想通りだというフィードバックが得られます。
境界線が見えないという不安感が取り除かれて、予想通りの結果が得られたことによって、
あおいさんの試し行動はこれまで強化されてきたという面があったのかもしれません。
だとしたら、佐藤先生の反応、激怒もしないし、嫌がらせに乗って追いかけても来ない、
でも見捨てられたわけでもないという結果が、試し行動の消去につながったと言えそうです。
ただ、物語の最後、警備、警備なって言っていいか分からないですけど、警備な暴言だけは少し残っています。
これは彼女にとって、手軽に佐藤先生と関わるための言葉の中に暴言も入ってしまっているからかもしれませんね。
今後も適切な言葉で話しかけてくれた時に、しっかり注目を返す関わり、大体行動の強化というものを気長に続けていくのがいいのではないでしょうか。
最後までお聞きくださりありがとうございました。
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ABAで広がれ、シンプルで楽しい生き方。
今日も大事なものを大事にできる一日を。
あきねでした。