化学プラントの自動運転の概要
どうも、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、
化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
皆さんは、自動運転という言葉を聞くと、何を思い浮かべますか?
きっと、自動車をハンドル操作なしでスイスへ走れるような姿って思い浮かべるんじゃないでしょうかね。
じゃあ、工場が自動運転する未来ってどんな感じなんでしょうか?
ロボットが分かりやすいですけど、それだけじゃないんです。
実は今、化学プラントで自律制御AIを使った自動運転の波が起きつつあります。
今回は、化学プラント版の自動運転、そんな話をしたいと思います。
まず、化学プラントのイメージを一緒にしてみましょう。
化学の現場では、配管、つまりは鉄とかステンレスのパイプがいっぱいくねくねと張り巡らされて、
液体や気体がその中を流れて、
同じような金属製の反応装置で反応させたり、
何十メートルもあるような高い塔で上流したり、
こういう操作を経て、ガソリンやプラスチックみたいな材料を作っているんです。
基本的には、温度とか圧力とか流量、流れる速度、これを一定に保つコントローラーがたくさんついていて、
人間がいちいちバルブを開け閉めしなくて済むようになっています。
自動制御って感じですね。
それでもやっぱり一定に保てなかったり、必要な条件というのが変わってきたりします。
例えば季節とか天候です。
自律制御AIの実装と効果
扱う温度が変わると、プラントの運転条件が変わります。
現場の年齢構成はもちろん様々で、
ベテランの運転員さんが長年のカント経験で微妙な調節をして品質を保つ、そんなこともあります。
さすがに現代では、こうしたカント経験だけでは調節が効かなくなってきたり、
そもそもそういう技能を持った人が年齢とともにいなくなっていくという状態が起きています。
多くのプラントでは自動制御だけでは追いつかなくて、結局人が手動調整して最適運転に近づけているというのが現状です。
職人技でカバーしているとも言えます。
この状況を何とかしようと考えられたのが、AIを使うということです。
自動車の世界で運転アシストとか自動運転とか注目されていますけど、
プラントも一緒です。
人が管理するのが大変な部分をAIに代替してもらいます。
化学プラントっていうのは24時間、もっと言うと365日動いているようなところもあります。
AIが入ってくれるっていう時の効果っていうのは測り知れません。
じゃあ冒頭で話をした自立制御AIってどういうものなのかということについて紹介していきます。
自立制御AIっていうのは私のイメージだと、プラントを自動で運転してくれる頭脳だと考えています。
そして今回は自立制御という言葉を使いました。
従来のプラントも自動制御というのは行われていました。
人間があらかじめ作ったルールで、例えばこの温度を超えたら加熱を止めてくださいみたいな決まり事と思ったらいいと思います。
ですけれど、自立制御AIってなると、自分で試行錯誤しながら最適な運転条件を学習します。
どうやってやるのって難しいですよね。
何も条件を教えていないのに頑張って学習してくれるんです。
具体的にどんな技術が使われているのかというと、中心となるのは強化学習というAIの手法です。
囲碁の世界でトップ騎士を破ったアルファーゴというAIも強化学習という手法が使われています。
細かいプログラムはもちろん違いますけど、ざっくりとした分類は一緒です。
強化学習をすごく簡単に言うと、報酬を与えながらAIをしつけていくような感じです。
例えばプラントの場合だと、製品の品質が高くてエネルギーの消費が低いほど報酬が高いと設定してあります。
AIはその後何をしたらいいかわからないので、いろいろ試します。
シミュレーション上で何度も試行錯誤をして、一番効率が良い製品を作れる操作を学びます。
人がいろいろやってみて、ベテランさんの勘どころを自分がつかんでいくような感じですかね。
そんなプラントへのAI活用、どんな会社が進めているのかっていうのは、昔ブログにまとめました。
概要欄にリンクを載せておきますので、ぜひ見てみてください。
一部を紹介します。
一番代表的なのが横川電機ですね。
プラントに携わっている方なら、誰もが知っている会社さんです。
センサーとか測定機器とか、そういうプラントに関わるような機器をたくさん取り扱っています。
あとは、DCSっていうプラントの運転を管理するようなシステムも販売しています。
その横川電機が、化学メーカーと一緒にプラントの自立運転を進めています。
すでに実用段階まで完了してまして、1年間AIにプラントを管理させたという実績もあります。
基本的にAIっていうのは、学習した条件と異なると、途端に使い物にならなくなっちゃいます。
この横川電機のAIっていうのはすごくて、原料の成分がばらついていたりとか、装置が汚れてきたりとか、
修理して物が変わったりとか、はたまた雪が降ったり、猛暑になったり、
いろんな条件がある中で、1年間安定して運転できたってことなんです。
もっとすごいのが、1年間ただ安定して運転しただけじゃなくて、
加熱に使用している蒸気を40%削減したらしいです。
加熱に使う蒸気っていうのは、例えば重油とか天然ガスとか化石資源を使って燃やして水を温めます。
蒸気を削減するっていうのは、直接的にCO2排出量を削減することにつながります。
普通だったら、この作業をベテランさんが行っていたんですけど、
AIが自動的に、なおかつ最適な条件で運転させることができました。
その他にAIを提供している会社さんといえば、NTTコミュニケーションズとか、
あとはAIでとても有名なプリファードネットワークスもあります。
AI導入の課題と将来
だいたいこの3社がよく聞きますね。
技術制御AIを使うと、生産性も上がって省エネ効果もあって、品質も高まって、素晴らしいことがいっぱいなんですけど、
やっぱり一個、課題としては安全性の問題があります。
今までだったら、みんなの知識を使ってこうしていきましょうっていうルールを決めて行っていました。
これからは、AIが自動で操作する時代に入っていきます。
化学プラントっていうのはやっぱり、爆発みたいな事故も起こるので、ちょっと怖いですよね。
そういう事故を防ぐために、AIを導入する企業は、シミュレーションを使って事前に学習させたり、検証させたりします。
現実のプラントでいきなりAIが失敗したら、さすがに取り返しがつかないですからね。
デジタルの場で何度もシミュレーションをして、どういう条件だったらどんな処理をするのかっていうのを詳細に確認して、やっと使えるようになります。
実はもう一つメリットがありまして、普段やらない操作を実際にAIに覚えさせられるってことです。
実物だったら、ここまで温度を上げたり圧力を上げたりしたら危ないだろうなっていうところを、実際にシミュレーターでやってAIに覚えさせることができます。
仮にAIが暴走したらどうするのかって言われると、そこは自動停止の仕組みを設けます。
専門的にはインターロックっていう言葉を使います。
まずい操作を受け付けないような仕掛けとか、何かおかしいことが起きたときに緊急停止するような仕組みを設けることを指します。
AIがもし許容できない範囲で操作をしようとしたら、人が介入して止めたり、もしくは自動ブレーキみたいな感じで安全側に処理を働かせるようにするっていう、そういうプログラムが必要になります。
そうとは言っても、こういうAIを使うときって、人から置き換わるから何か心配に感じるかもしれないんですけど、
私個人としては人もなかなか信用できないんですよね。
私の周りでもヒューマンエラーっていうのはやっぱり起こっています。
24時間体制で頻繁に手動制御する必要がなくなるっていうのは、作業の負荷だけじゃなくて精神的な負担も減るっていうようなメリットがあります。
やっぱり同じ操作をずっとするとか、これをやったら爆発しちゃうから頑張らないとってなると、人に余裕はなくなっちゃいますよね。
そういう余裕のなさとか忙しさとかすべて重なって、労働災害とか爆発の事故とか起きちゃいます。
なるべく負担の高い仕事っていうのはAIに代替してもらいたいですね。負担を減らしたいです。
さて今回はTechVoiceアドベントカレンダー2025という企画に沿ってテクノロジーの話をさせてもらいました。
せっかくのアドベントカレンダーですので、この配信の前後の内容を見てみます。
12月20日はJ.近藤の朝の散歩。
リッスンの近藤さんの番組ですね。
2025年の技術的挑戦を振り返るということで、私もリッスンさんにはいろいろお世話になってて、
何か企画があるとそれに合わせた技術的な実装がすぐされているってところをびっくりしますね。
アドベントカレンダーの表示もそうですよね。
これからもリッスンのイベントや新しい機能を楽しみにしています。
そしてこの番組の翌日、12月22日はOSSの歴史ラジオさん。
ちょっと収録段階では何かについてしゃべりますかっこ見てと書いてますね。
OSSっていうとオープンソースソフトウェアの話ですね。
ざっくり言うと、プログラムを自由に使えて修正できて再配布できるようなソフトウェアを指します。
VSコードとかDockerとかそういうものの歴史を扱ってるっていうのはちょっと面白いですね。
アドベントカレンダーなので12月1日から25日まで25番組が放送してくれます。
テクノロジーに興味がある方はぜひ聞いてみてください。
今回はここまでです。
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。
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それではお聞きいただきありがとうございました。