第百十九話『自分の人生に決着をつける』-【鹿児島篇】歴史小説家 海音寺潮五郎-
2017-12-09 13:28

第百十九話『自分の人生に決着をつける』-【鹿児島篇】歴史小説家 海音寺潮五郎-

今年、没後40年を迎えた、鹿児島県出身の直木賞作家がいます。
海音寺潮五郎(かいおんじ・ちょうごろう)。
上杉謙信の魅力を世に知らしめた傑作『天と地と』は、1969年、NHK大河ドラマの初めてのカラー作品の原作になりました。
石坂浩二演じる謙信は、圧倒的な存在感を放ち、最高視聴率32.4%。
海音寺の歴史小説家としての地位も、不動のものと思われました。
ところがそんな絶頂期、「私は今後一切、仕事は受けません」と、突然の引退宣言をしたのです。
理由は、実にシンプルでした。
「自分の後半生は全て、郷里の偉人、西郷隆盛に捧げたい。彼の長編史伝の執筆に、全精力を使いたいんです」。
海音寺は、自分の作品のジャンルに、歴史の史に伝記の伝と書く、『史伝』という言葉を使いました。
史伝文学とは、歴史上の人物や出来事を作品にするとき、なるべくフィクションを捨て去り、厖大な資料と向き合いながら、真実に近づこうとする形態を指します。
自らの歴史小説が人気を博したとき、一度、西郷隆盛の生涯を書こうとしますが、1年あまりで新聞の連載を休止してしまいました。
小説形式の限界を見たのです。
どんなに売れても、どんなに周りから「先生!」とちやほやされても、彼の心は満たされなかったのでしょう。
だからこそ、筆力も経済力もついた晩年、あらゆるものを捨て去り、再び西郷隆盛に向き合うことを決めました。
まるで西郷に己を見るように、彼は、真実の追及を始めたのです。
残念ながら、76歳で突然この世を去り、『長編史伝 西郷隆盛』は未完となりましたが、彼の思いは、のちのひとに受け継がれています。
小説家・海音寺潮五郎が、西郷隆盛の中に見つけた明日へのyes!とは?

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