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足利尊氏 夜明けのばさら 第3話 天皇御謀反
なんと申した! 桃銀の帝に御謀反の企てだと?
至賢森時、その知らせは確かなのだな?
最王でござる高時様、帝の近親より密告があったとのよし、六原丹代からの急使がございました。
かの帝の御謀反騒ぎは、この度が初めてではない。私が覚えているだけで二度前にあったはずだ。
いかにも。
一度目は、七年前、焼酎農園と申さか、無礼講を隠れ見のに、盗墓の防御を繰り返したとの密告があった。
二度目には、初次から僧侶を集め、関東呪詛の鬼闘を四年の歳月に渡って行わせておるという噂が鎌倉まで流れてきた。
御反意の証拠はなし。冤罪ということで、どちらの騒ぎも決着がついております。
一度目はおそらく、口頭を伺う寿命院等による残言。
二度目は無責任な風雪の類で、質のところは忠公様御戒仁祈願の鬼闘だったという話。
さーて、怪しいものだ。一度ならずも二度まで。いいや、この度を加えて三度までも御謀反の疑いが持ち上がる。
後ろぐらいところがあるから、次から次にそうした話が出てくるのだ。
二度までは見逃しても、三度目はない。
かような騒ぎが続くようなら、鎌倉は弱気、弱愚氏、既に威勢を失ったと侮られよう。
疑いだけで、恐れ多くも、闘鬼院の味方を罰することは、叶いません。
さてな、今は吟味を慎重にも慎重に重ねて…
待てぬ、待てぬ、待てぬ。さような手ぬるい大将では、清帳がこれを何と見る。
証拠がいるなら、まずは帝に禁じする坊主どもをひっとらえ。
関東朝北の事実はあったか。攻めにかけて口を笑せるがよい。
味方をたぶらかす生草坊主、容赦はいらんぞ。
恩下辞の通りに。
失見。坊主どもは吐きおったか。
はい。直上によって、張牧の行を行ったと認めました。
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倒幕の暴戯に参加した、クゲたちの名前もことごとく明らかに。
殺せ、殺せ、殺してしまえ。
寺廟院等からも、桃銀の味方のご模倣は明らか。
九名の里はまだかと訴えが出されていたな。
短大に命じて、鎌倉にあだなす者どもを都から一掃してやるのだ。
開言?
失見。それは誠か。
開言の見事のりを、味方が発せられたとはどうした次第だ。
短大の報告により今すると、玄徳の言語を廃止、
8月9日をもって、原稿元年に改めるように宣言なされたよしに。
寛容な場合に悠長に開言とは、一体味方は何をお考えなのだ。
開言を認める必要はない。見事のりを突き返せ。
恩下辞のとおりに。
かの味方が御罪の間は、天賀の性質はないようだ。
直ちに討死を都へ使わせて、上級の乱の洗礼に従い、
味方は御廃、恩国へ追うつしまえらせる。
三千も兵をつけてやったら、幕府の部位に触れあがって、
まさかのお手迎えはなさらぬだろう。
では、高時様、味方の御後はどのように?
桃銀の味方は大革地等の秩序へ、寿命院等の皇族からお選びしたらよい。
味方の代わりになる者くらい、いくらでもおる。
都からの急報が、丹代の官司を駆いくぐり、味方が御所を密かに出たと伝えてきました。
味方を取り逃したのか?
丹代は?桃司は?
いったい何をしておったん?三千の兵を連れて行ったのは何のためだ?
もっか、北方南方の両丹代では、手を尽くして味方の御行方を探索しておりまする。
味方は王上には悪い。草の芽を分けても御行方を突き止めよ。
鎌倉の一心にかけて、何としても逃せないぞ!
高時様、高時様。
笠木山に味方が立てこもったとの知らせが、
機内近国に号令を発して、御家人、自社、悪党、相手を選ばず、新軍の参集を呼びかけているよしにございます。
直ちに打手を差し上らせよ。鎌倉武士の総力を上げ、御武法を討伐するのだ!
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天朝と武家は並び立たぬとの御侵略だ!
用意を!こちらを武家らしく武力によって叩き潰してくれるまで!
早速、出陣の用意を進めさせまする。
これはどうやら、かの猛虎襲来、原稿依頼の大戦になるようだ。
よいよい、戦働きは武士の本懐。
帝にはこれから先の御生涯をかけて、
御範囲などと申す思い上がりのお考えを悔やんでいただこうではないか。
ああ、ああ、ああ。
時に、玄徳三年八月、
それとも、戒厳の見事の理に従い、
原稿元年の出来事とお話する方がよいでしょうか。
時の帝、奥利那を御醍醐と申し上げる帝は、
三種の神儀を携えて御所を出ると、
南の笠木山へ隣行になり、
鎌倉幕府討伐を天下に号令なされたのです。
後の世に、原稿の乱と呼び習わされる戦乱のこれが始まりでございました。
西国討伐に使わされる武将は、
北条一門、御家人を合わせて六十三人。
万土五家国から兵を動員して、
これらを従える大将軍に任命されたお方は、
まずは、おさらぎ六の神殿、金沢馬之助殿、
唐闘美左魂の大夫殿、そして、足利狸乳道殿。
御執権、お待ちください。
我が父、佐田氏は、この秋から病みつき、伏せっております。
屋敷から外へ出ることさえ、ままならぬありさま。
出陣を辞退する、ということはできますぬか?
できぬ、高内殿。
これは徳相家の強い御意向なのだ。
徳相家?
高時様が…
高時様を一人に限らず、今の幕府では万事が先例、
形の如く、司祭なく、で良しとする評定がまかり通っておる。
先例に従い、形式通りにやっておれば大化を行う。
先例に従い、形式通りにやっておれば大化は無い、という考え方だな。
先例…
森時様、先例とは何のことです?
上級の乱だ。
かの言葉上皇の御無本能に、東海道大将軍として十万騎を従えて成長し、
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討伐にあたって、対抗があったのは他でもない、足利家の御当主だった。
だから、足利一族から大将を出すことは吉礼なのだと。
人中で見分かるようなことになったら、吉礼どころでは済みませんぞ。
あの御用体ではおそらく、父上の命はもう長くない。
となると、一門の中から明大を立てるしかあるまい。
父上の代わりに軍勢を指揮して戦えと。
しかし誰が…
御着村は原服の儀をまだ迎えておらぬ。
足利家の事情はあるだろうが、私は高氏殿に引き受けていただきたい。
左様の大事、私の一存では答えようがございません。
ひとまず父上の判断を仰がぬことには。
それが良い。良い返事を待っておるぞ。
ふんふんふん。
左様か、この佐田氏が、三国征伐の大将を任されたか。
王家になるのですか、父上。
万余の軍勢を従える大将軍の大役、名誉、忠責。
鎌倉武士として御家人として生まれてきた上は、
まさに一世の御宝庫となる。
この重大事をどうして拒めるものか。
足利家を守るため、
足利家を守るためですか。
他にどんな理由がある。
御家人の本分は一所懸命、
家と所領を何としても守り抜くことだ。
しかし、この体が動かない。
父上、お体に触れまする。どうかお気を沈めな。
一年早く、一年早く、孫を幻復させておけば、
わしの手から御家を譲ってやることができたはず。
せがれの子を、高吉の子を、大将にしてやることができたはず。
もう一年早かったら、なぜだ。
高吉よ、どうしてお前しか、今、この大事の時に、
わしの代わりが務まるものがおらんのだ。
御家を守ってくれるものがおらんのだ。
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父上、どうして、どうして私ではいけないとおっしゃるのですか。
この高吉には御家を任せられぬと。どうして。
似ているからだ。
似ている。誰に。
父上だ。お前たちのお爺様だ。
お爺様。家時様に。そんな。
わしは怖かった。大きくなるにつれて、
ますます父上に似てくるお前が怖かった。
わしが十二の年、父上は自ら腹を切って死んだ。
お前の顔を見るたびに、わしは父上を思い出す。
似ているのは当たり前だ。
足利の男を父に持ち、植杉の女を母に持ってお前は生まれてきた子。
わしの父上も、やはり同じ落ち筋だったのだからな。
母上から何度も教えられました。小さい頃から、ずっと。
そうか。では、父上の今はのお言葉は聞いておるな。
三代の孫のうちから武家の通りを出してみせると。
足利の家に父上がかけた呪いなのだ。
お前と弟は父上の呪いを受け継ぐように生まれてきた。
足利家の呪いを、私たちが。
お前たちは足利の家をいつか危うくする。それがわしは怖かった。
わしの父上は、自陣することでお家を守ったが、
お前たちが同じことをやったところで、やはりお家が助かるかはわからぬ。
父上がお命と引き換えに守ったお家を、誰にも潰させてはならない。
高渕、お前のせがれ、千住王と申したか。
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はい。
お前の血筋が父上と同じなら、あれの血筋はわしと同じだ。
しかし、わしと同じ思いをさせてやるな。
幼くして手手なしとなり、どれほど心細かったことか。
父上。
ご家人の本分は一生懸命だ。忘れるな。
何としても足利を守れ。
お前の子や孫たちのために、お家を絶やすな。
お言葉、しかと受けたまわってござる。
西国追悼の御出陣を前にした9月5日、
下助賢治足利本家の御当主、佐渚の神佐田氏様は亡くなったのでございます。
あきはいがせんえにんなのさかや。
神賢、それは誠か?
西国出陣の事態を足利家が申し出てきただと?
はい、高時様。
足利家当主病没につき、一問を門に伏したばかり。
貴中の出陣は羽ばかりがあり、
この度ばかりは何卒御容赦願いたく、とこのように。
ならぬならぬ。
戦を前にそんなくだらん理屈が通用するか。
大事の前の生辞だ。どうでもいいことだ。
同志が死んだと申すなら、代わりの主を直ちに立てよ。
御家人は御家人としてただ宝庫に尽くせばよい。
と、足利に申し聞かせておけ。
やはり出陣の事態はかなえませんでした。
方の如く、司祭無く、ということだ。
御一族の気持ちはわかるが、時期が悪い。
上級の編依頼となる天皇家のご無本なのだからだ。
先例、一例の類に皆が強くこだわっている。
今の足利家は当主が不在。
父上の弔いどころか新しい主すら定まっていない。
大将軍の親父が務まるとは到底。
そのことなどだが、ここは高内殿にお預けしたい。
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やはり私が明大として出陣するしかございませんか。
明大ではない。他ならぬ高内殿が御当主として、大将軍そのものとして出陣するのだ。
高内殿が足利家の主に立つのだ。
私が大将軍に…足利の主に…
滅相もない。森徳様、いきなり何ということをおっしゃるのですか。
私の妹婿だから、卑怯で申したのではない。
今の足利家を任せるに足る者は高内殿を置いてはない。
なるほど、筋から申したら御着村を厳復させて、直ちに家族を継がせるのが正しいだろう。
しかし、今は気急の時。間違いが起きては困る。
にわかに厳復したばかりの子供を一手の大将に据えることはできない。
本来なら、私は御家を継ぐ立場ではない厄介者ですよ。
そんな者が主になろう者なら、納得のできない者、面白く思わない者は多いはず。
高時様は、それに法上の一文を私から何としても解き伏せる。
今は足利の力を皆が頼りにしているのだ。
この戦が終わるまで、平穏が世に戻るまでは足利家を高内殿に預かっていただきたい。
この通りだ。力になってくれ。
私が足利の御家を継ぐ。
いざ、出陣!
足利の一文が、佐田氏様の模に復する最中。
最極追悼の御出陣は滞りなく決行されて、
七万を超える当国勢がこうして鎌倉を出発。
正常の都に着いたのでございます。
この時、佐田氏様と私の間の子、高内殿は、
足利家の新しい御当主として立ち上がる。
この時、大将軍のうちの一人に加えられて、
堂々と大軍を従えて出陣いたしました。
高内殿、時に二十七歳の晴れがましい武者姿でございました。
六代様、いえ時兄様、ご覧いただけましたか?
私の御子は、あなた様の三代の御孫は、
立派な武者として御育ちになり、
大軍の将を任されて、今、こうして出陣を飾ることが叶いました。
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私はあの子を、いえ時兄様の御孫として、
恥ずかしくない武士に育てることができたでしょうか。
私は、いえ時兄様の思いを、受け継ぐ武士に育てることができたでしょうか。
こら千住王、おとなしくしなさい。
御殿様がお留守の間、御家の主はあなたなのですからね。
高内様、どうか御無事にお帰りください。
お留守の間、御子は御殿様の御文を信じて、千住王と共にこの家をお守りします。
帝が立てこもる笠木山が、鎌倉方の大軍の総攻撃によって、
ひとたまりもなく攻め落とされたのは、同じ月の28日の出来事でございました。
こうして帝は、都へ連れ戻されたのでございます。
御母にこうして、倒幕の兵を挙げた都の勢力も、
鎌倉方の前に相次いで討ち取られ、
最後に河内の下赤坂城が落ちたことで、
現行元年の御無法にはひとまず鎮定されたのでございました。
兄上、六原短大に鎌倉から討死がございました。
選定への御沙汰が決まったようです。
先の帝か。天子のすげ替えとは思い切ったことをやる。
それで忠義を。御沙汰とはどのような?
春の終わりを待ち、沖の国に仰移し参らせると。
形の上では御先行の戦事を新しい帝から賜る、という話でしたね。
御先行と申したところで、つまりは島流しだろう。
上級のへんの戦例に習ったようです。
何事も戦例のままに、面白くない。
戦が終わってからというもの、どうして兄上はそのように不機嫌なのです。
他の大将方は毎日毎晩のように宴の招待に出かけていくのに、兄上はほとんど断っているではありませんか。
選定の御無法がずっと気にかかっていてな。
おかわりな帝だったようですね。
県帝として名高い醍醐天皇に御自らをなぞらえて、御醍醐と称していらしたと聞きます。
醍醐帝が戦を起こしたという史実はないはずですが。
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私には何となく、選定が誠に我慢ならなかったのは何なのか。
そのことを察せられるような気がするのだ。
本当ですか。それは一体どのような。
一代の主だったというお話だ。
選定は兄君の王子の成長を待つ間、一代限りの条件で皇位に就くことになったのだ。
そのこともあってか、御在位の間はあちらこちらから御大位を求める声が絶えなかったらしい。
選定はおそらく鳥籠の中に押し込められたような善とのない窮屈な生き方がもうおいやで、
そんなものは蹴破って外へ飛び出したいと御望みだったのではあるまいか。
果てどこぞで覚えがある話のような。
私とて仮初めの闘志なのは同じだ。
巡り合わせで御家を継いだが、一年先か十年先になるか、そのうちに御位に御家を返すことになる。
足掛けを継ぐのは我が子、千住王ではない。
そんなお考えはおやめください。兄上、思い過ごしです。
何がだ。
兄上は選定の御無本を気にかけていたのではない。
御無本にかこつけて、選定の御姿に御自身を重ねていらっしゃるのです。
そんなふうにお前の目には見えたか。
見えました。大方、バサラの血が騒いだのでしょう。
そうか、バサラの血が騒いだように見えたか。
西国の鎮邸から間もなく、高宇寺殿は早々に兵をまとめて鎌倉へ帰還いたしました。
この時、朝廷にはいとまごいの挨拶をせず、鎌倉方の他の大将軍にも無断で引き上げてしまい、
高宇寺殿の人もなげな振る舞いにはみな呆れ返って、しばらくは京雀の評判になったと申します。
作 高石信
演出 岡田康
出演
足利高宇寺 平塚 蓮
足利忠義 三尾
赤橋森時 忠津雄貴
足利貞宇寺 田岳豊氏 菊川秀樹
西木康二殿 貸谷松子
北条貴時 小磯勝也
スタジオ協力 スタッフアネックス
選曲 甲賀 根優太
音楽協力 HMIXギャラリー
27:01
アマチャ プロデューサー 富山正明
制作 株式会社 フィトパ