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2023-11-15 20:48

#7 私の授業の具体例(前半) | TanaRadio黎明期

TanaRadio黎明期では,TanaRadioの公開配信が始まった2024年2月以前に,ある大学教員のコミュニティ(MOSTコミュニティ)内限定で配信していた時期のTanaRadioのエピソードを(一部)編集して公開します。日付は,実際に限定公開した日付をつけています。

内容:
・(冒頭部分省略)
・「科学と技術の社会史」の授業紹介(前半)

#TanaRadio黎明期

サマリー

このエピソードでは、東京電機大学で開講されている「科学と技術の社会史」の授業について紹介し、特に第6週のテーマである「近代科学の誕生」に焦点を当てています。ガリレオやニュートンの時代を扱い、科学技術の発展に関連する歴史的背景や学生のディスカッションの進行方法が語られています。また、イタリア・ルネサンス期における学問の発展と大学外での学びの重要性についても議論されており、レオナルド やアグリコラなどの具体例を通じて、実地での経験から得られる知識の価値が強調されています。

授業の概要
TanaRadio 第7回始めたいと思います。
これからですね、紹介していく私の授業は
「科学と技術の社会史」という科目名で、いわゆる科学技術史の授業なんですね。
1年生から取れる教養科目の一つです。
科学と技術の社会史ということで、科学と技術をどちらも扱う。
それからその歴史は社会史、つまり社会との関わりというものに注目しながら歴史を考察すると。
こういう趣旨の科目になっています。
私はこの科目を、私が、私の今勤務している東京電機大学に赴任してからずっと担当しています。
途中で名前が変わったりしましたけれども、基本的に私の専門分野に一番近いところですので、
赴任直後からずっと担当させていただいています。
この科目ですね、前にお話ししましたけれども、講義とそれからディスカッションと2対1の割合で
授業を組んでいますので、3回が一つのサイクルになっています。
講義2回やって、その後ディスカッション、また講義2回でディスカッションということを4回繰り返すことになります。
私のこの科目は、科学技術史の通史の形をとっていまして、
古代から現代までずっとそれぞれ、その時代一つの時代で特徴的なところを中心にしながら講義を行っています。
この授業は、私の前任者である古川安先生という、電機大から日大に移り、そして日大も退職されていますけれども、
その古川先生がお書きになった、電機大での授業を元にしてお書きになった有名な教科書である『科学の社会史』という本をベースにして、ずっと私は講義をやっているんですけれども、
今回紹介したいのは、その第6週の授業で、講義の内容としては4回目ということになりますが、
「近代科学の誕生」というテーマの講義になります。
これは時代的には16から17世紀、ガリレオやニュートンが活躍した時代、近代科学が生まれてきたということを取り扱っているので、
科学史としては一つの山場になるような、そういう回なんですけれども、この回の進め方を、具体的に私、すべての授業を録画していますので、その録画の音声をお聞きいただきながら、紹介していきたいというふうに思っています。
学生のディスカッション
ではまず、この授業、始まりのところからお聞きいただきたいんですけれども、こんなふうに始まります。
——それでは時間になりましたので、「科学と技術の社会史」第6週の授業を始めたいと思います。
今週のテーマは、近代科学の誕生というものです。
今日のミーティングですが、いつも通りまず前週コメントシートの共有を行います。
その後、今週の学習のテーマ内容、進め方の導入を行い、最後は質疑応答という流れでいきます。——
ここで今日のミーティングの内容というふうな言い方をしていますが、このミーティングというのは、実際に私が教室で学生に話したり、学生にはこうやってもらう、そういう時間のことです。
そして、ミーティングが終わった後は個人学習の時間ということで、学生によっては教室から退室することもか、というふうにしているんですね。
では、実際そのミーティングの最初の内容、前週コメントシートの紹介に入ります。
——では早速、前週、第5週のコメントシートを共有していきます。
設問1は、いつも通り教材、先週は「イタリア・ルネサンス期の科学と技術」について学んでもらいました。
それを学んで感じたことなどを書いてもらうというものでした。
では、例によりまして、LearnWiz Oneの投稿欄と他者の投稿のページを開けてみました。
TanaClassのクラスブログからリンクをたどっていってみてください。
ではタイマーは、いつも通り4分でセットしてスタートさせました。
では時間が来るまでお互いに読み合ってください。——
ここの部分ですけれども、前週コメントシートの共有ということで、
先週出した課題をですね、学生はクラスブログというブログに投稿しているんですね。
その投稿した文章を、LearnWiz Oneというネットサービスがあるんですが、
それを使って共有するという作業をしてもらっています。
このLearnWiz Oneというのはですね、使うためのページがあらかじめ作成されていまして、
そこに飛んでいく必要があるんですが、そのリンクがですね、
授業サイトのクラスブログというところの上の方に貼ってありまして、
そこから毎回その授業のLearnWiz Oneの所定のページに飛んでもらっています。
入力欄はですね、授業の日に開けまして、
あらかじめ学生が投稿しておかないように、みんな同時に投稿するように最初は閉じてあるんですが、
授業内でそこで入力欄を使えるようにして、一斉に投稿をしてもらうことになります。
それはクラスブログに投稿したものをコピー&ペーストで貼り付けてただ投稿するだけなので、
慣れれば30秒もかからずに投稿できると思います。
そして投稿されたものはLearnWiz Oneの機能を使って、
各時に5人分ずつが表示されるようになりまして、
それを順々に時間が来るまで読んで、4分の時間をタイマーでセットしているんですが、
4分間で読めるところ、10人分ぐらいでしょうかね、多分。
読んで、いいなと思ったものにはいいねボタン、ハートのマークがついているんですが、
いいねボタンというのを押すことができまして、
いいねがたくさんついたものが人気順というページにまた表示されるようになっています。
これは後から私がその上位のものを読み上げてコメントするという形になるんですね。
ではその共有の時間が終わって、私がコメントするところですね。
そこの部分を聞いてもらいたいと思います。
——では人気順の上の方のものを見ていきたいと思います。
まず一つ目です。
「イタリア・ルネサンス期の科学と技術の関係」というタイトルですね。
「第5週の教材を学んで、イタリア・ルネサンス期の科学と技術の接近について理解することができた。
古代・中世において学問を担う学者と技術を担う職人は交わることがほとんどなく、
科学と技術はそういうような関係にあったが、
イタリア・ルネサンス期では学者が職人的技術に関心を持ち、学ぶことで職人へ接近したり、
逆に職人が学問に関心を持ち、学ぶことで学者に接近したりすることで、
科学と技術が融合発展し、今現在に続く第二の技術革命を起こしたことは、
科学と技術の歴史においてとても重要なことであると感じた。
また、イタリア・ルネサンス期は科学と技術の歴史において一つの重要な分岐点であることを理解することができた」ということで。
まとめのような文章ですね。
私が教材で皆さんに伝えようとしたことをうまくまとめてくれていますが、
ちょっと物足りない感じがします。
皆さんはこういったことを学んで何を感じたのかですね。
そこのところをもうちょっと書いてもらうと良かったかなというふうに思うんですが。——
この一番トップに来たものですね。
学生が一番いいねをたくさんつけたということなんですけれども。
私にとっては不満なものだったので、そっけないコメントになってしまいました。
学生はですね、講義内容をうまくまとめているものに高い評価を与えることが多いんですね。
ですので、私の評価基準と違うんです。
私は講義の内容なんてまとめなくていいから、
自分が何を感じたかということを書いて欲しいというふうに言っているんですけれども、
なかなかその辺が伝わらなくてですね。
講義の私が言いたいことをうまくまとめているものを選んでしまって、
まあそれは良いんですけどね。
ちゃんと勉強しているということはよくわかるんですが。
しかし、物足りないというコメントで次に行っています。
——「学問と技術の融合」ということで。
「今回の講義を受けて、イタリア・ルネサンス期の思想の変化や科学技術の発展について知ることができた。
特にレオナルド・ダ・ヴィンチに関して再現した動画から、
レオナルド・ダ・ヴィンチはただの画家の職人ではなく、
鳥が羽ばたく様子から飛行技術を想像することや、
実際に人体を解剖することで内臓の仕組みを解き明かそうとしていたことを知った。
その技術が実用化されるのはしばらくしてからのことだが、
そのことをゼロから研究していたことが素晴らしいことであると思った。
このように、この時代から学者と職人の接点が多くなっていき、
学問と技術の融合が可能となることで、
現代の技術発展が実現できたのではないかと思う」ということで。
この方はですね、レオナルドにやはり注目し、
レオナルドの当時の活動について素晴らしいものだと思ったということで、
これは多くの人がそういうふうに思うだろうと思いますね。
レオナルドはもともと職人としての教育を受けて、
普通だったらば、画家とか彫刻家とか、あるいは建築の方に行ったかもしれません。
そういうものづくり関係の専門家になっていくような、
そういう教育を受けたわけですよね、ベロッキオの工房で。
レオナルドの観察とものづくり
だけども、レオナルドはそういう単なる職人にとどまらなかった。
非常に旺盛な好奇心でもって、自然、その自然の中には人間も入りますが、
そういったものを非常に鋭い目で観察し、
絵を描くのも上手ですからね、それをスケッチし、
そこからいろんなものを学んで何かを作ろうとした。
ものづくりのお手本は自然だったんですね。
ですから空を飛ぶというのも、まずは鳥の観察から始まった。
鳥のように羽を持って羽ばたけば人間も飛べるのではないかと思ったわけですよね。
そういうことも最初は考えましたが、それではうまくいかない。
さらにいろんな、今日で言うヘリコプターみたいなものも考えていた。
実際それで空を飛べたわけではないわけですけども、
そういういろんなことを考えてスケッチに残したということが、
とても素晴らしいことだと思います。
これは今日の私たちも学ぶべきところがたくさんあると思いますね。
観察の対象は何か。レオナルドの場合はまさに自然だったわけですけど、
私たちは自然ももちろんですが、それ以外の様々なことについても興味を持ち、
そこから何か新しいものを生み出していく。
そういう姿勢を持っていきたいですよね。——
大学の外で学ぶ重要性
こんな感じでですね、学生が選んだ上位3つについて、
私が読み上げ、コメントしていくということをします。
コメントするときは、私が講義で言いたかったことを込めていた思いのようなものを、
そこで入れると補足しながらお話しするという形をとっています。
では次に、設問2の方、こちらの共有のところに入っていきたいと思います。
——はい、では次いきます。
設問2はこういう問いかけでした。
「イタリア・ルネサンス期の科学と技術に関する講義ビデオを視聴した受講者の間で、
大学での学びと大学の外での学びについて議論したところ、次のような意見が出されたとします。
その意見は、「イタリア・ルネサンス期においては、最先端の学問は大学の外で発展した。
それは現在でも同じだと思う。
今日の大学生も大学の授業を受けて満足することなく、
積極的に大学の外に出て、大学では学べないような最先端の学問を学べきだと思う』。
イタリア・ルネサンス期の学問状況を参考にして、今日でも同じようなことがあるんじゃないかと。
大学で学んでいるだけで安心してはいけないとパラケルススが言っていたように、
大学で学べないことが大学の外にたくさんあるんだと。
だから学者は大学の外にいる人たち、あるいはもの、そういったものから学ばなければいけない。
そういう考えをここでは提示しました。
それに対して皆さんは同意するかどうかお聞きしましたらば、このような分布になりました。
一見して偏っています。
同意するというのが一番多くて、同意する100%が一番多くて37%、3分の1以上の人が全くその通りだと言っています。
75%同意を含めますと半分以上。
それに対し同意しない、あるいは少しは同意するけどほとんど同意しないという人たちは4分の1ぐらいしかいませんでした。
これはどうしてなんでしょうか。
教材で学んだことの影響を受けた結果なのか、あるいは日頃からそういうふうに思っているのか、その辺を知りたいところですが。
ともかくいつも通りまたLearnWiz Oneで共有していきたいと思います。——
ということで、また先ほどと同じようにLearn With Oneに学生に自分の説問にの内容を投稿させ、そしてお互いの投稿を読み合う、そしていいねを付け合うということをさせます。
その後、また人気状の上位に来たものを紹介しながら私がコメントをします。
ではその部分を聞いていただきます。
——はい、ではいくつか紹介していきます。
まず一人目です。
「大学の外に出る」というタイトルですね。
「私は大学では学べないような最先端の学問を学ぶべきだと思うという意見に一部同意する。
大学の学問は専門的なものではあるが、実際に外に出てみて、現地のことを知り、そこの人たちと話した方で得る知識が役に立つと考えたからだ。
ビデオにもあるようにアグリコラという学者は金属を専門としていた。
そして実際に鉱山に行き、地下で水が出てくることを自分で確かめた。
その水を吐き出すために水車を建てている。
ダビンチも人体を解剖してより細かい人体を描くことに成功している。
今までは猿などを代用していたらしいが、実際に行うことでより細かいことまで知ることができている。
これらは大学で授業を受けているだけでは得ることができないことだと考えている。
以上のことから大学では学べないような最先端な学問を外で学ぶという意見に同意する」ということで。
同意の意見ですね。
実際に外に出て現地で実地の知識を得たほうがいいだろうと。
それは大学では学べないことだろうということです。
ただ一部同意すると書いてあるので、
同意しない部分もあるのではないかと思うのですが、そこが書いていないので残念ですね。——
はい、こんな感じで前週コメントシートの共有というのを行うわけです。
これが授業が始まってから大体26分ぐらいかかっています。
この後今週の学習の導入を行うわけですが、
もうずいぶん時間が経ちましたので、これについては次回の配信でご紹介したいと思います。
それでは今回はここまでとしたいと思います。ではまた。
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