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2024-10-16 21:18

実験考古学【第200号音声版】

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サマリー

今回のエピソードでは、実験考古学に関するニュースレター第200号を基に、エジプトのピラミッド建設や石器の加工を通じた歴史的な実験が取り上げられています。また、トール・ヘイエルダールの探検記を交えて、実験考古学の可能性と重要性について語られています。ヘイエルダールによる実験考古学の事例を通じて、南米からポリネシアへの人類の移動の可能性が深く探求されます。この研究は、ポリネシア人の起源に関する新たな理論や、可能性の証明の重要性についても言及されています。

実験考古学の概要
いちです。おはようございます。今回のエピソードは、実験考古学についてです。
このポッドキャストは、僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、STEAMニュースの音声版です。
STEAMニュースでは、科学、技術、考学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
STEAMニュースは、STEAMボートの取り組み員のご協力でお送りしています。
今回の実験考古学のエピソード、STEAMニュース第200号からお送りします。
このポッドキャストをまとめて聴いてくださっている方は、タイムラグというものを感じないかなと思うんですが、
リアルタイムで聴いてくださっている方、実は1月半ほどお休みを頂戴していました。
なぜかというと、僕がエジプト、タイ、韓国、イギリスにも訪問する予定の旅を挟んでいまして、
残念ながらイギリスには行けなかったのですが、そんな予定でブランクが開いてしまいました。
お待たせいたしました。
改めまして、STEAMニュース、メールでお送りしているSTEAMニュースの方、200号を迎えることができました。
こちらはメールでお送りしているので、どんな環境でも書けるはずと思って、毎週休まずお届けを続けました。
実は途中、船に乗って韓国に渡っていたりもしたのですが、
揺れる船内で書いて、韓国からお送りをしたりとか、
実はイギリス、そして2度目のエジプトも、この1月の間行く予定だったのが行けなくなったのですが、
その理由は、おそらくタイでコロナに感染しまして、約2週間、声がほぼ出せなかったのです。
そんな中でも、キーボードは叩けるということで、その中で書かせていただいたのが、実験考古学第200号だったのです。
ピラミッド建設の実験
このエピソードでは、その第200号の実験考古学の話題についてお届けしていこうかなと思います。
この実験考古学のニュースレターをお送りしたのは、長崎大学の練習船長崎丸の船室で書いた原稿です。
これね、すごく揺れる船内だったのですが、その中で本を読んでいました。
まあ電波も入らないので、洋上電波も入らないので、本を読むぐらいしかできなかったのですが、
そこで選んだのが、トール・ヘイエルダールのコンティキ号探検記。
ひょっとしたら、このコンティキ号漂流記という本の方で名前を知っている方もいらっしゃるかもしれません。
オリジナルはコンティキ号探検記という、ヘイエルダールという冒険家で動物学者なんですが、
南太平洋の島々であるポリネシアへ向かって、イカダですね。船じゃなくてイカダでペルーから、南米ペルーから漕ぎ出したというね、その冒険記。
ご本人が書かれているんですが、すごい面白い本です。お勧めしたいなと思うんですが、それも含めてこういった取り組みを実験考古学というふうに呼びますので、
実験考古学について3つ、このヘイエルダールの取り組みも含めて3つご紹介したいなと思います。
一つ目がですね、これは僕たちの専門でもあるエジプトのピラミッドに関する実験考古学の話題です。
ピラミッド、今からおよそ5000から4000年前のエジプト公王国という時代ですね。いくつものピラミッドが建てられました。
ピラミッドの建て方については諸説あるのですが、現代の誰も建設現場を見たわけではないので、こんなふうに建てたんじゃないかというのは全て仮説のままなんですね。
このエピソードをお届けしている2024年の10月15日。僕はポッドキャストいつも冒頭で、このエピソードは何年何月何日に収録していますというふうにお話をしているんですが、ごめんなさい。
久しぶりすぎて言うのを忘れていました。このエピソードを収録しているのが2024年の10月15日ですね。
最近のニュース、ここ1,2週間のニュースなんですが、これもエジプト公王国時代のおそらく見つかっている中では一番古いピラミッドになる、
さっからのジョセル王のピラミッド、あるいは階段ピラミッドと呼ばれるピラミッドなんですが、これの建設方法に関して新説が発表されています。
水力を使ったんじゃないか、水圧を使って石を持ち上げたんじゃないか、ピラミッドの中央に縦穴、シャフトがあるのでそこを使って持ち上げたんじゃないかという説が唱えられているんですが、
その時代にどのくらい水が豊富に使えて、なおかつ水圧をかけるという技術があったのかというと、僕はまだちょっと疑問はあるかなと思っているのですが、
そういった新説が出てくるぐらいに、現代の誰もが建設現場を見ていないので全て仮説なんですね。
1978年、当時35歳になった若き吉村作次、世界不思議発見で有名になった吉村作次先生が、ミニピラミッドを作る実験をされています。
この実験で、ピラミッドを構成する巨大な石を砂の上で引っ張るということをされたんですが、
これが実際には砂の上を木を、枕木を引いて引っ張ってみたところ動かなかったんですね。
この枕木が砂に沈んでしまったそうです。
吉村先生たちはその場でいろいろ工夫して、なつめやシアブラを砂の上に巻くことで巨石が運べたということがわかったそうで、
古代エジプト人が手に入るもので工夫して運べた可能性というのは示せたんですが、
実際にそのなつめやシアブラを使ったかどうかということはそこまではわかりません。
可能性を一つ示したということが言えるという実験の例になっています。
他の例としては、石器ですね。石器の加工。
よく旧石器時代、およそ200万年前に始まっています。
この旧石器時代というのは人類が石をたたいて石器を作っていたんですが、
この時代、文字が発明されていないので、石器の作り方、石器作り、マニュアルなんてものは残っていないんですね。
ただ石器は残っているので、じゃあその石器どうやって作ったんだろうというのが可能性はいっぱいあったわけです。
その中でアメリカの考古学者、ごめんなさい、言えてなかったかもしれません。
アメリカの考古学者、ルイス・ビンフォードは、この1960年前後なんですが、石器がどのように作られ、どのように使われたかを明らかにすることが考古学上重要だと。
従来、当時の考古学者たちというのは、どうしても石器を集めて分類してというところに力点を置いていたんですが、
それはそれで重要なんですけれども、その石器がどのように作られ、どのように使われたかというのは、想像でしか言われていなかった。
このルイス・ビンフォードはそうじゃなくて、作ってみなさいよと、それから使ってみなさいよということを実践してみたんですね。
石器時代に手に入ったものだけで石器を作らないと意味がないので、例えば鉄製のハンマーを使って石器を作るとか、というとこれは当時の再現にならないので、石器時代に手に入ったものだけで石器を作る実験を行いました。
実際に石器を作ってみた研究者、これは当時と同じものを作ることができているのですが、よく指摘するのは、石器を作ると結構失敗するんだそうです。
どんなふうに削っていくか、そうですよね。削っていくわけですから、失敗したら元に戻せない。PCでいうとアンデューですね。コントロールZとかコマンドZができないわけですよね。
なので、計画性というものがかなり必要だったんじゃないかということを実験考古学者は指摘をしています。
これ、僕の大好きなテッドトークであるデニス・ダットンの美の進化論的起源というトークの中でも、実は旧石器時代の石器に神秘性、美しさを追求したものが見られるという話だったんですが、これは事前に計画をする、その意味で事前に計画をすることをデザインと呼びますから、
デザイン性、そして神秘性というものが200万年前から生まれていたのではないか。200万年前というとホモサピエンスよりもさらに前です。
ホモ族、人族の誕生とほぼ同一のタイミングになるので、その段階から神秘性、デザイン性、計画性というものが生まれていたということが想像される、これは実験考古学の副次的なご利益としてそういったことも分かってきたということが言えるんじゃないかなと思います。
トール・ヘイエルダールの探検
そして3つ目の話題に行きましょう。トール・ヘイエルダールに戻ります。
ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールは、南太平洋のポリネシアにあるマルキーズ諸島南部のファトゥヒバ島に滞在し、波がいつも海の東側から来ることに気づきました。
ポリネシアの東側なので、南米方向から波がやってくるということですね。
マルキーズ諸島をはじめとするポリネシアの島々には、もともとポリネシア人あるいはラピュタ人が住んでいるのですが、
発見された時から彼ら彼女らが2000年以上も前からこの島々に到達していたことが分かっています。
この島々、2000年以上前から住んでたって普通じゃないのって思われるかもしれないんですが、この島々、絶海の孤島なんですね。
最初にやってきた人たち、現ポリネシア人またはラピュタ人と呼びますが、一体どこからやってきたのか。
ヘイエルダールは海を見ていて、海流が東からやってくることから、現ポリネシア人、ラピュタ人も東からやってきたんじゃないか。
つまり南米からやってきたんじゃないかと考えました。
この時代、東アジアから西からやってきたという説と、東南米からやってきたという説と両方あったんですね。
どちらも本当に船で渡ったのかどうかというのは疑問視されていました。
ただ、人間がいた以上どうにかして渡ったはずなんだけれども、本当にそんなことが可能だったのかという疑問はあったわけですね。
特に海流が東から流れている、南米から流れているために、ヘイエルダールの説、南米からラピュタ人がやってきたという説も有力な仮説ではあったんですね。
しかもヘイエルダールが現地で聞き取り調査を行いました。
マルキーズ諸島で聞き取り調査をしたのと、南米ペルーで聞き取り調査をしたところ、ポリネシアでは東から来た白い人が先祖だと言っていて、
一方、南米ペルーでは白い人が西の海へ向かって漕ぎ出したという伝説があったことから、
これは本当なんじゃないかということで、彼は2000年以上も昔にこの当時の技術で南太平洋を渡った人がいるというふうに確信をして、
当時の技術、これは南米にいくらかの記録が残っていたために再現をしました。
何をしたかというと、南米に生えているバルサという木で、巨大な木なんですね。非常に軽い木です。
これを使ってイカダを作りました。当時船の技術がなかったと考えられるので、イカダを作って、それにコンピ記号と名前を付けました。
これはティキという神様ですね。
今のペルーからですね、今のマルキーズ諸島を含むポリネシアへ向かってやってきた、当時の神様なのか皇帝なのか、
この翻訳によっては天皇というふうな翻訳も割り当てられているのですが、このコンピ記号ティキを祀ったイカダで横断をします。
これ詳しくはですね、コンピ記号探検記を読んでいただきたいのですが、もうめちゃくちゃ面白いです。
そして1947年4月28日、コンピ記号はペルーを出航して、これね建設からめちゃくちゃ面白いんですが、仲間集めとかめちゃくちゃ面白いんですが、
ともかくですね、1947年4月28日ペルーを出航して、102日間8000キロメートルの航海に出ます。
もうこれ宇宙戦艦ヤマトかよっていうぐらいね、無謀な旅に出るんですが、途中でね、島を見つけるんですけども流されて行っちゃったりとかね、もう本当面白いです。
その結果ヘイエルダールは南米からポリネシアへ移動できるという可能性を証明しました。
実験考古学の意義
こういった実験考古学というのは可能性を証明するんですが、気をつけないといけないのは、証明されたのは可能性だけということですね。
ヘイエルダールが示したのは、南米からポリネシアへ人類が移動した可能性なんです。
現在の研究では、ポリネシア人のDNAと南米の人々、そして東アジアの人々のDNAを比較することで、
どうやら元のポリネシア人、ラピュタ人は東アジアから来たんじゃないかという説がかなり有力になっています。
ただそれだけでは説明がつかないこともいくつかあって、例えばポリネシア人が食べているサツマイモの原産国が南米であったりとか、
なのでまだまだポリネシアの文化の起源に関しては謎に包まれています。
この実験考古学を通してどうしてもお話ししたいのは、通常この番組25分でお届けしているんですが、今回は延長してお届けをしています。
実験考古学が証明できるのは可能性だけということなんですね。
可能性というのはどういうことかというと、技術的にAということが可能だからといって、必ずしもAが実際にあったとは限らないということなんです。
ナツメヤシ油で巨石を運べたからといって、ピラミッド建設にナツメヤシ油が使われたとは限りません。
南米からポリネシアへ航海できたからといって、あるいは漂流できたからといって、ポリネシア人が南米出身とは限らないんです。
実験考古学が証明できるのは可能性だけです。
これは何度も何度も繰り返して伝えておきたいことです。
だからといって実験考古学が無駄だと言っているわけではなくて、実験考古学で実証できなかったこと、
例えば南米から、もしもポリネシアに到達できなかったとしたら、少なくともポリネシア人が南米から到達したという可能性は極めて低いということが言えるわけで、
実験考古学というのはやってみる価値というのはものすごくあるんですが、それは可能性を証明するだけだということですね。
そしてもう一つ、旧石器で言える通り、当時の人類の気持ちを知ることができるという副作用もあるんだということも、このエピソードの中でお届けできればよかったなと思った内容です。
今回も最後まで聞いてくださってありがとうございました。
SteamFM1でした。
ではまた次のエピソードで。
ご視聴ありがとうございました。
ご視聴ありがとうございました。
21:18

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