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2023-09-07 20:34

セントローレンス川のシロイルカ(ベルーガ)

世界で最も汚染された水域の一つであるセントローレンス川で、今も生きるシロイルカ(ベルーガ)の群れについてお話しました!


#科学系ポッドキャストの日 という企画の9月のテーマである「環境」を、シロイルカを通して掘り下げています。


・産業廃棄物として扱われるシロイルカ

・水源は北米屈指の大工業地帯

・爆撃機で駆除されたシロイルカ

・そして今



シロイルカ/ベルーガ(wiki)

https://tinyurl.com/43fhytdj


シロイルカのバブルリング(YouTube)

https://www.youtube.com/watch?v=dfma-V5i39c


セントローレンス川のシロイルカの悲劇(日経サイエンス)

https://www.nikkei-science.com/page/magazine/9607/beluga.html


さらばベルーガ セント・ローレンスのシロイルカ(amazon/本) https://amzn.asia/d/6Y9r2dY


イルカと泳ぎ、イルカを食べる(amazon/本)

https://amzn.asia/d/5cTKAkg




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みなさん、こんにちは。
自然を愛するウェブエンジニア、セミヤマです。
今日は、カナダセントローレンス川に住むシロイルカと環境についてお話ししたいと思います。
前回の配信でもお伝えしていたんですが、今回、科学系ポッドキャストの日という企画に参加させていただいてまして、
科学系ポッドキャストの日、9月のテーマである環境についてお話しできればと思います。
広く環境や環境問題について話そうとすると、ちょっとまとめるのが自分的には大変かなと思ったので、
以前から関心のあったセントローレンス川のシロイルカについて話すことで、環境というテーマを掘り下げられればと思っています。
ということで、今回はセントローレンス川という川に住むシロイルカについてお話ししていきたいんですけども、
シロイルカというのは日本の水族館でも見ることができる全身真っ白なイルカの一種ですね。
シロイルカは別名ベルーガとも呼ばれています。
顔がいつもちょっと笑っているように見える、なんとも愛嬌たっぷりの生き物で、他のイルカと同じくとても頭が良くて、
飼育している水族館ではシロイルカショーなんかも開催されてるんですが、
シロイルカは他のイルカにはないある技を持ってまして、
それはバブルリングという泡で作った輪っかを水中で吐き出すというものなんですね。
タバコを吸われる方の中にはタバコの煙で輪っかを作るという特技をお持ちの方がいらっしゃいますけども、
そういった技のシロイルカバージョンということですね。
大きなバブルリングを吐き出して、そのリングを水からくぐるという技を披露するシロイルカもいまして、
youtubeの動画なんかで見てその芸達者ぶりに驚かされました。
シロイルカのバブルリング、概要欄に動画のリンクを貼っておきますので、ぜひチェックしてみてください。
シロイルカの唇は他のイルカと違ってとても柔軟なので、こういう技ができるんですね。
そんな可愛くて芸達者、人気者のシロイルカなんですけども、
本来の生息地は北極海やベーリング海、北海道の北東にあるオホーツク海など、北の海になります。
日本近海で見られることは基本的にはないんですが、
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過去には北海道のノトロ湖という湖に単独で住みついたシロイルカもいました。
このノトロ湖のシロイルカは群れからはぐれて迷い込んだと考えられています。
で、カナダのセントローレンス川という大きな川にも野生のシロイルカの個体群が生息しているわけです。
セントローレンス川は北アメリカ大陸の東側にあり、やがてその水はセントローレンス湾から大西洋に注ぎ込む大きな川です。
アメリカのゴダイコがその水源になっています。
このセントローレンス川のシロイルカの個体群は、シロイルカの中でも最も南に住む個体群です。
氷河期に北の海からやってきて、そのまま住みついたシロイルカの子孫だと言われています。
なので、かつてこの地域にはイッカクやホッキョククジラ、セイウチなど、シロイルカ以外のホッキョク圏に住む生き物もたくさん生息していたそうです。
氷河期が終わり、セントローレンス川からイッカクやホッキョククジラやセイウチは姿を消したんですが、
シロイルカだけはそのままセントローレンス川に住みついて、今に至っています。
周辺の12,000年ほど前の地層からシロイルカの化石が出ていて、これは最後の氷河期の時期と一致するんですね。
セントローレンス川のシロイルカの歴史は、だいたいその頃から始まるわけです。
このセントローレンス川のシロイルカは、他の個体群との交流がほぼない、孤立した個体群になっています。
そして今回のテーマである環境とここで繋がるんですが、セントローレンス川というのは世界で最も汚染された流域の一つで、
セントローレンスのシロイルカは体の中に最も高濃度の汚染物質を取り込んだ生き物の個体群の一つなんですね。
セントローレンスのシロイルカは体に高濃度の鉛や水銀、PCB、ポリエンカビフェニール、DDTやマイレックスなどの殺虫剤の成分を含んでいるため、
浜辺に打ち上げられたシロイルカの死体は普通に捨てることができない産業廃棄物として扱われるんですね。
僕はこのセントローレンスのシロイルカについて、作家の川端博人さんという方が書いた
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僕はイルカと僕らの微妙な関係という本で知りました。
この本、今はイルカと泳ぎイルカを食べるというタイトルに改題されて、ちくま文庫から出版されています。
この本自体とても興味深い内容なので、ご興味があればぜひチェックしてみてください。
で、その本の中でセントローレンスのシロイルカについて知ったわけなんですけども、
野生の生き物が産業廃棄物として扱われるという一業だけでも結構破壊的なインパクトを受けたんですよね。
初めて本を読んでセントローレンスのシロイルカのことを知ったときは、まだセミラジオもやってなかったので、
ただただ、いやー辛い話だなぁという思いが強くて、深く掘り下げることはありませんでした。
だったんですけども、今回、生物をざっくり紹介するラジオ仏作のトヨさんから科学系ポッドキャストの日にお誘いいただきまして、
環境というテーマを聞いたときに思い出したのが、このセントローレンスのシロイルカたちのことだったんですよね。
セントローレンスのシロイルカなんですが、計測方法によってばらつきはあるんですが、現在500頭から2000頭が生息していると推定されています。
そこに住んでいるシロイルカたちは例外なくさっき言ったような汚染物質を体にため込んでいるんですね。
その結果どういうことが起きているのか、ご説明していきたいと思います。
今回資料として、シロイルカ研究者のピエール・ベランさんという方が書いたサラ・バベルーガ・セントローレンスのシロイルカという本を読んだんですが、
こちらは1997年に発行された本なので、古い内容も含まれてはいるんですが、シロイルカをめぐる状況というのはその頃と今でそんなに変わっていないので、今回参考にさせていただいています。
ベランさんの書いたサラ・バベルーガという本によるとですね、ベランさんは浜辺に打ち上げられたセントローレンスのシロイルカの解剖を行って、その死因を調べてきた方なんですが、
セントローレンスのシロイルカの特徴として、腫瘍や癌に侵された個体が異常に多いということがあります。
この本が発売された時点での話になるんですが、世界中で報告されたクジライルカ類、つまりゲイ類の腫瘍の例の合計がこの時点で全部で75例ということだったんですが、
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そのうちの28例がセントローレンスのシロイルカによるものだというんですね。
世界の総数の3分の1以上になります。
その腫瘍を持った28例のうち11例のシロイルカは癌になっていました。
このベランさんの研究チームが調べたシロイルカの個体数が68頭であることを考えると異常に高い数値なんですね。
調べた68頭のシロイルカのうち28頭が腫瘍を抱えて11頭が癌になっていたということなんです。
この割合を超える唯一の例はニュージーランドで大量の除草剤がまかれた牧草地で報告された羊だけなんだそうです。
どうしてこういうことになってしまったかなんですけども、実はセントローレンス川の上流というのは巨大な工業地帯になっているんですね。
1930年にはセントローレンス川に流れ込むサゲネー川の沿岸に最初のアルミニウム工場が建設され、炭化水素化合物による強度の汚染が始まりました。
そして1947年からは同じ地域にある化学プラントが大量の水銀を川に流すようになりました。
さらに同じ時期にはセントローレンス川と五大湖水系全域で行われた工業と農業の試験によって化学物質の使用が増加していきました。
セントローレンス川の水源である五大湖の一帯はシカゴやデトロイトなどの工業都市が発達し、そのあたりにある工場もいろんなものを湖に流していたわけです。
こういう上流にある工業地帯の工業排水がすべてセントローレンス川に流れ込むようになったわけです。
また、毒性が強い殺虫剤のDDTが1946年から北米で使われるようになりました。
1951年から1965年の間に最高500トンがセントローレンス川のあるケベック州一帯で、トーヒという植物の芽を食い荒らす害虫対策のために散布されました。
その結果、すでにお話ししたように、白イルカに対しては腫瘍や癌の異常な発生率の上昇、不妊率の上昇、免疫力の低下、子供の生存率の低下などにつながっていると考えられています。
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PCBやDDTなどすでに使用を禁止されている毒物が白イルカの体から今も検出されているんですが、これは生物濃縮という仕組みによるものだと考えられています。
汚染された地域に生息する魚介類は、生きていく中でそれぞれ自分の体の中に汚染物質を取り込みます。
それは一匹単位で見ればものすごい量ではないかもしれないんですが、魚介類を主食にしている白イルカは、それらの汚染された魚介類を餌として体にどんどん取り込んでいくわけです。
結果的に生態系のピラミッドの上位にいる生き物ほど、高濃度の汚染物質を体に溜め込んでしまうんですね。
そうやって生き物の体に保存されることで、かなり昔に製造が中止された汚染物質も環境の中に残ってしまうんですね。
一度環境に解き放たれた化学物質はなかなか消えることがないんですね。
さらに悪いことに哺乳類である白イルカのお母さんは、生まれた子供に自分の母乳を与えるわけなんですが、白イルカの母乳というのは脂肪分がとても多くて、その脂肪分に多くの汚染物質が含まれているそうなんです。
白イルカの赤ちゃんは生まれてすぐに汚染された母乳を飲んで育つことになるわけです。
こうやって代々、白イルカの体の中に汚染物質が残り続けるという悪循環が生まれてしまっています。
この地域の白イルカは、かつて乱獲されていた歴史があるんですが、1979年以降、カナダ政府によって保護の対象となり、現在は白イルカ漁というのは行われていません。
にもかかわらず彼らの個体数はなかなか回復していません。
それはそういう汚染物質の影響が大きいと考えられています。
ここで少し時計の針を戻して、セントローレンスの白イルカの歴史にスポットライトを当ててみようかと思います。
約1万年前、氷河期の頃にセントローレンス側にやってきた白イルカたちだったんですが、その後はやってきたネイティブアメリカンの集団に駆られることになりました。
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ただそれは個体数を大きく減らすような大規模な漁ではなかったと考えられています。
雲行きが変わったのは17世紀以降、フランス人が入食するようになってからでした。
白イルカの油を取るために大規模な漁が行われるようになったんですね。
さらに1920年代の後半からは漁業関係者の要請によって白イルカの駆除が始まりました。
この時期地元の漁師さんが主な収入源にしていた鮭やタラが不良になっていまして、彼らはそれを白イルカが食い荒らしてしまったためだと考えたんですね。
白イルカの駆除は銃や当時の最新技術だった爆撃機を使って行われました。
白イルカの群れに爆弾を落としてまで駆除を行っていたんですね。
白イルカのオビレ1万円に対して15ドルの報酬金が出るに至って、セントローレンスの白イルカの駆除は再現なく加熱していきました。
当事者たちはそれが正しいことだと信じて本気でセントローレンスの白イルカを消し去ろうとしていたんですね。
この時期何千頭もの白イルカが駆除されたと考えられているんですが、その白イルカの駆除の結果鮭やタラの漁獲量が戻ることはなかったんですね。
そこでカナダ政府は白イルカの生誕について初めて科学的な分析を行うことにしました。
最初からやればよかったと思うんですけども。
結果、白イルカの胃の内容物を占めていたのはほとんどが小型の淡水魚、五海、小さなアサリ、イカタコ、甲殻類など地元では史上価値がほぼないものだったんですよ。
鮭やタラも見つかったんですが、それは割合的には想像されていたよりはるかに少ない量でした。
関係者が考えていたような白イルカによって鮭やタラの群れが壊滅したということはなかったわけです。
その調査結果によって白イルカの駆除に出されていた報酬金は打ち切られ、白イルカ量は下火になっていきました。
20世紀の初めには1万頭近くいたと考えられる白イルカは駆除によって、そして今も続く水質汚染によって数を減らし、いまだにその個体数を回復するには至っていません。
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白イルカ研究者のピエール・ベランさんは、セントローレンスの白イルカの研究や保護に携わる中で、セントローレンスの白イルカのおかえれている状況に絶望し、
最終的には著書であるサラバ・ベルーガー・セントローレンスの白イルカという本の中で、白イルカとゲイ類全体の未来について非常に悲観的な予測をして本を締めくくっています。
誰よりも白イルカのことを考えてきた人が心が折れてしまったという感じが読んでいてしました。
サラバ・ベルーガーという署名にも彼の心情が表現されていると思います。
セントローレンスの白イルカは記録に残っている限り、今現在に至るまで本当にあらゆる困難に見舞われてきたんだなと思います。
油を取るために殺されたり、爆弾や銃で駆除されたり、汚染物質に苦しめられたり、保護されたり、諦められたり。
でも、人間が勝手に殺したり守ったり諦めたりしても、セントローレンスの白イルカたちはまだ生きてるんですよね。
彼らの存在を知ったとしても、今すぐ彼らのために何かができるということではないですが、
彼らの歴史や置かれている現状、そして彼らが今も生きているということにすごく心を揺さぶられるんです。
今回は、科学系ポッドキャストの日の環境というテーマを通して、セントローレンスの白イルカについて話せてよかったです。
セミラジオではお便りを募集しています。概要欄のフォームやXのハッシュタグセミラジオでご感想いただけると嬉しいです。
今日は、カナダセントローレンス側に住む白イルカと環境についてお話しさせていただきました。
ご視聴ありがとうございました。
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