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スピーカー 2
時間のスケールが、僕が普段考えないスケールですね。100年もたせようみたいな。そうですね。そういうものづくりって。100年でも少ないですよ。
こんにちは、レンです。サイエンマニアはあらゆる分野のゲストと、ディープでマニアの話を届けるポッドキャストです。今回のゲストは、仏師の坂上俊晴さんです。よろしくお願いします。
はい、最初に僕が仏師って言ったんですけど、僕もあんまり意味がわかってないので、ちょっと自己紹介と、その仏師とは何なのかみたいなお話聞いてもいいですか?
スピーカー 1
はい、ありがとうございます。石川県金沢市で仏師という仕事をしている坂上俊晴です。
今言っていただいたように、仏師という職業は仏像を主に専門で掘る職人さんのことです。僕の場合は主に木を専門で仏像を掘り上げる仕事です。
なるほど、じゃあ仏師っていう方にもいろんな素材から作っている方がいるって感じなんですかね?
そうですね、石の場合は石、仏師かな?ちょっと言い方変わる場合もあると思うんですけど、
寒室で漆とかで作る人もいますけど、木の方がやっぱり日本は多いんじゃないですかね。
拝む対象を木で作るのは多いです。
スピーカー 2
多分聞いている人はそもそも、なぜ仏師の方をお呼びできたのかというか、どういうことだみたいな思ってるかもしれないですけど、
きっかけはインスタグラムで、僕が元々ポッドキャストのアカウントでずっと発信とかしてたんですけど、そこに多分コメントくださったのが最初ですかね?
スピーカー 1
そうですね、僕も結構発信してる内容とか好きなので、ちょいちょいよく聞いてて、面白いなっていうので、ちょっとたまらずコメントしてしまったってところですね。
スピーカー 2
ありがとうございます。
僕自身もそのコメントをいただいて、ありがとうございますって言った後に、ちょっとアカウント拝見させていただいて、本当に仏様を木から掘るみたいな映像をすごい投稿されてて、
僕初めて見たので、こうやって作ってるんだと思って。
スピーカー 1
そうなんです。
スピーカー 2
それがすごい面白いなっていうのと、なんかマニアックな話も聞けそうだし、と思ってちょっと今回オファーさせていただきました。
スピーカー 1
ありがとうございます。
スピーカー 2
まずこのお仕事する相手っていうのは、仏様を掘ってほしいっていうお寺とか、そういうところから依頼が来て制作するみたいな感じなんですか?
スピーカー 1
そうですね。結構いろいろお仕事の取り方って人それぞれでして、僕は結構、実は仲介する会社が入ってたりとかするんですよ、仏師さんって。
仏壇屋さんが間に入ったりとか、それで間に仲介する業者が入って、仏師に依頼が入って、っていう感じで仏像が納品されるので、
だからあんまり仏師っていうのが世に出るような職業ではなかったんですよ。
僕独立した時は、なんかインターネットもそんな盛んじゃなくて、まだ本とかが売れるような時代だったんですけど、
その段階でちょっとインターネットを使って一人で仲介とかもやるなしで、ちょっと仕事を取ってみようっていう話で、自分で仕事を取ってるっていうのが状況です。
で、ちょっと年が上の人たちは仕事を取ってくる会社がいたりもしますね。
僕の場合は何も関係なしにお寺さんからも注文きますし、個人の仏壇に仏像を入れたいっていう方も来ますし、インスタとかyoutubeとか見て海外からも注文来たりもします。
スピーカー 2
海外からも来るんですね、注文。
スピーカー 1
そうですね。海外も僕もそれすらも仲介入れないので、海外の場合はやっぱり自分で大使館に連絡してとか、
あとこの国はこの木材そのまま送れるかっていうのとか、あと税関も自分で通したりとかもしなきゃいけないので、大変ですね。
ほとんどこの国は無理だろっていう国もあったりするので、そういうのも全部やってます一人で。
スピーカー 2
ちなみに日本にどのぐらいいらっしゃるんですか?
スピーカー 1
多分京都が多いんじゃないですかね。京都お寺さんいっぱいあるので。
分かんないです。都道府県に指で数えられるぐらいじゃないですか。
京都にいっぱい、いっぱいって言っても本当に1000はいないだろうなっていう、分かんないです。
スピーカー 2
あんまり、そっか。基本結構皆さん個人で工房みたいなのを持たれて活動されてるんですかね。
スピーカー 1
そうですね。武士っていう方は大体みんな個人で工房を持ってますね。
スピーカー 2
分からないことだけですけど、そもそも芸術って言っていいのか分からないですけど、
もともと彫刻みたいなものを作るみたいなのが関心はあったっていう感じなんですか。
どういう経緯で武士さんになられるのかなっていうのも気になるんですけど。
スピーカー 1
僕も普通に小さい頃からものづくりとかは好きで、ずっとそれに熱中してぼっとするタイプだったんですけど、
やっぱり周りが大企業の子供たちみたいなところで育ったので、
とりあえず勉強しとけみたいな感じの空気がずっと流れて、
高校も行って、とりあえずいい大学入れみたいな空気が流れてる中、
ちょっとなんか僕はちょっとよく分かんないですけど、ちょっとこれはまずいんじゃないかなって思い始めて。
スピーカー 2
まずいんじゃない、ちょっと人生考えてみようみたいな感じですか。
スピーカー 1
僕はそこんなに勉強できるタイプでもないのに、そんな無理したところでみたいな、
もう僕の限界はこれ以上ないぞみたいな目に見えてるだろうっていうのを感じ始めまして、
なんかちょっと僕のもうちょっと活かせる分野はないかなっていうのを色々探して、
東京とか行くとやっぱりそういうなんか色々見る機会ってあるんですよ、美術館もあるし、
池袋とかあの物産店とか百貨店行ったらそういうのも見れますし、
で色んな伝統工芸も見たりとか、現代アーティストさんの作品とかも見たりとか、
して伝統工芸も全国の伝統工芸店とかもやってるので、
美術館とか話聞いて体験とかもやらせてもらって、
大体全部楽しいしうまくできそうだなっていうのがありまして、
大体みんなこの世界は厳しいぞって言うんですけどね。
スピーカー 2
じゃあ一通り色んなものづくりみたいなものをやってみたって感じなんですね。
スピーカー 1
一応見てものづくりをして、で一番難しそうなのがいいなっていうのが、
スピーカー 2
すごいな。
スピーカー 1
ちょっと僕飽き性なんで、
スピーカー 2
難しいよ。
スピーカー 1
それがやっぱり南彫刻つって富山県の伝統工芸でして、
そこでまず弟子入りをしに行くんですよ。
そこ彫刻の町なんで、彫刻家が300人くらいいまして、
今はそんなにいるかわかんないですけど、
そこの職人さんたちを組合に行って、
なんかちょっと紹介してもらったりとか、
あと仕事場を見に行ったりとかして、
スピーカー 2
直接もう自分で行くって感じなんですね。
スピーカー 1
そうなんですよ。紹介してもらったりとかして見学して、
その中でやっぱり人として尊敬できる人に弟子入りしたいっていうのがありまして、
スピーカー 2
確かに。
スピーカー 1
住み込みなんですよ。そこって5年間。
スピーカー 2
5年住み込み。
スピーカー 1
技術運営よりも人として尊敬できる人じゃないと続かないので、
スピーカー 2
確かにな。でも厳しい人多そうだなって勝手なイメージがありますけど。
スピーカー 1
だいたい辞めますよ。毎年毎年。
本当に5年続く人って本当に少ないので、
僕は本当に人として尊敬できる師匠が仏師だったっていうのがあって、
それまでは仏像とか興味なかったっていうところですね。
そこで師匠のとこ行って、話聞いてこの人に決めようって1回行って、
その時は返事もらえなかったのでもう1回行って2回目でお願いして、
じゃあやってみなさいっていうことで5年間弟子入りしました。
スピーカー 2
すごいな。そこでしっかり5年間修行して。
スピーカー 1
そうですね。5年間、僕体すごい強かったんで、
5年間毎日5時起きして1日も休まなかったです。
スピーカー 2
すごいな。
スピーカー 1
今はもうこんな風邪簡単に引いちゃう体になってますけど。
スピーカー 2
でもひたすら仏像を掘るみたいな生活ですか?
スピーカー 1
始めの1年目は仕事にならないので飲み研ぎとか雑用とか。
スピーカー 2
雑用みたいなのして。
スピーカー 1
オークリックは雪が降るので雪かきとか。
あと薪割りとか薪ストーブの薪を割ったりとか。
1年目は僕らの時代は雑用をやらされる方はたくさんいました。
雑用してる間に師匠の技術を盗むっていう昔ながらのスタイルだったので。
仕事してるだけじゃダメなんです。
ちょっと師匠の背中を見ながら動き方を真似したりとか。
そこから技術を盗んでいくっていうような時代。
まだそういう時代でしたね。
今は何か手取り足取り教えてくれるみたいですけど。
スピーカー 2
そこから独立されて今何年くらいやられてるんですか?
スピーカー 2
日本人だからかもしれないですけど、いろんなお寺行ってもやっぱり綺麗だなあって思うのって、そういう洗練された形だから僕らに最適化されているというか。
スピーカー 1
基本的に拝む対象なので、変に目が行っちゃいけないっていうのがありまして、例えば指とかも力が入ってるなって思わせちゃいけなくて。
指に力が入っているように見えると、金剛力士像とかまた天母は別なんですけど、真ん中にくるような阿弥陀様とか観音様とか、柔らかくちょっと握ってるぐらいの感じで拝まなきゃいけなくて、
そこに力が入っていると手に目が行ってしまうので、自然と手を拝みたくなるようなものを心がけなきゃいけないっていうふうに僕は師匠に言われました。
スピーカー 2
すごいなあ。そう言われても難しそうだなと思いますけど。
スピーカー 1
全体を自然と拝みたくなるようなものとして、だから僕はあまり細々としたものはやらない方がいいんじゃないですかってお客さんに言ってるんですよね。
スピーカー 2
顔が一番大事ですからって本体に目が行くようにっていう話で、結構台座とか後輩を細々と作りたいって方もいますけど、それを踏まえた上でやりたいって言うんだったら作りますけどっていう僕はそういうスタンスですね。
そういうでも一応依頼主の方とこういう感じみたいなイメージ共有みたいなのがするってことですよね。
スピーカー 1
そうですね。
伝える側も難しそうだなって思いましたけど、こういう仏像みたいな。
僕のお客さんはわりかしみんなYouTubeもインスタも結構くまなく見てくれるので、だいたい話は通じます。
スピーカー 2
結構具体的に言ってくれるって感じですか。
スピーカー 1
僕が入りようとしている言葉もだいたい伝わったりはしますね。
そういうところですかね。
たまにちょっとっていうこともありますけど、年に1、2回は頭を悩ますことはあります。
スピーカー 2
年間どれくらい掘られてるんですか?数的には。
スピーカー 1
大きさにもよってくるんですけど、だいたい20体とかなんですけど。
最近大きい仕事が増えてきてしまっているので、大きい仕事は2年かかりとか。
2年かかり。
そういうことは多いですね。
スピーカー 2
結構大きいものとかですか。
スピーカー 1
そうですね。結構大きいですね。
ここら辺の見えるかな。
これは東京のお寺さんに収めるんですけど。
スピーカー 2
本当に人間サイズって感じですね。
スピーカー 1
そうですね。だいたい等身大で。
それを作ったりとかするとやっぱり結構2年とかかかったりしますね。
スピーカー 2
2年で1つの物なんてすごいな。
スピーカー 1
これ2体なんで。
でもその合間に小さいのも作ったりするんで。
スピーカー 2
かなり作業、小さいものだとめちゃくちゃ細かいですよね。
織り出すみたいな。
スピーカー 1
そうなんです。細かいのはちょっと疲れますね。
スピーカー 2
だいたいは1本の木というか1つの素材から1つ作るっていうのが基本ですか。
スピーカー 1
仏像の場合はさっき話で言ったんですけど、
だいたい1000年前からあったりとかするので、
僕は100年以上は持たせるコンセプトなので。
木がいなくなった後、次の世代が修理できるような作りをしてまして、
破損しやすい部分、仏像の手とか台座とか後輩もすべてバラバラに分解できるように作ってあります。
だから1つの木ではないです。
この部分だけ壊れたっていう時はこの部分だけパーツを外して、
これを次の世代が修理できるようにっていうような作りをしてます。
スピーカー 2
なるほど。
スピーカー 1
それはずっと一緒です、作り方は。
何百年も前から。
スピーカー 2
組み立てるというか設計図みたいな。
スピーカー 1
そうですね。設計図というか、
基本的に僕も今の元の仏像を修理しに行ってるんですけど、
それで修理して、やっぱり修理することによって技術も上がりますし、
こういうような考え方でこういうふうに物が生まれてるんだっていうのも勉強になるんですよね。
やっぱり多分大体その時代の歴史的背景もその仏像を修理することによって分かりますし、
こういう作り方したらこんな劣化にするんだっていうのも分かるので、
それをまた勉強した上で、
次の世代が修理した時に何か思うようなものにしておかないと、
ちょっと技術の継承も繋がっていかないなっていうのはありますね。
スピーカー 2
すごいね。時間のスケールが僕が普段考えないスケールですね。
スピーカー 2
100年もたせようみたいな。
スピーカー 1
そうですね。
スピーカー 2
そういうもの作りって。
スピーカー 1
100年でも少ないですよ。
お寺さんって何百年ももつので。
お寺さんだったら100年なんてレベルじゃないので、やっぱり500年はもたせる気持ちでやらないと。
すごい。
そういうことはありますけど。
すごいな。
スピーカー 2
でも昔の素材というか、それこそ何か使ってる木の種類とか、
ちゃんと合わせなきゃいけないとかもありそうですけど。
スピーカー 1
まあありますね。そういう調べる方法はあるんですけど。
スピーカー 2
どうやって調べるんですか?
スピーカー 1
機械通せば調べられます。
スピーカー 2
機械で分かるんだ。
スピーカー 1
現代科学ですぐ分かります。
スピーカー 2
ちなみに何を見てるんですか?その機械は。
スピーカー 1
結局まず僕も見た感じで分かるのは、
まず針葉樹と紅葉樹で木の構造が違いますし、
で、銅管とか、
そういう成分とかも見たりとかすれば、木だと、
日の木だと日の木なんとかっていう成分が入ってたりもするんで、
多分断面見ればすぐ分かりますよ。
スピーカー 2
断面で見れば分かるのか。
スピーカー 1
大体一緒ですから、
大体針葉樹、紅葉樹かっていうのと、
あと大体仏像に使える木なんて限られてるので、
あと僕もちょっと削れば匂いで大体分かっちゃうんで。
スピーカー 2
そっか匂いで分かるか。
スピーカー 1
別に機械通さなくても、
これだったら針葉樹だし、
で、削ってみてこの匂いだったら日の木か紅葉か、
日葉かとか、そんなすぐ分かっちゃいます。匂いで。
スピーカー 2
で、同じ木持ってきて修理してっていう感じなんですね。
スピーカー 1
って感じになるんですけど、100年経った色って違うので、
その近くにあったススをに皮で溶かして、
同じような塗りにしたりとか、
あとちょっと微調整して同じように色合わせたりとかはしなきゃいけないです。
だからそこにあるススとかもゴミじゃなくて塗料として使うんで、
そこは掃除しないでくださいってよく言ってますね。
スピーカー 2
あえて新しすぎると、
それこそさっき言ってたこう、
違和感を与えちゃうみたいな感じになりそうですもんね。
スピーカー 1
そうですね。古い方がいいと思うので、
仏像修理してくれって言われても基本的に新品にはしないんですよ。
ピカッとしたらもう新品と一緒なんで、
それはあんまり好きじゃなくて、
そのまま時代を残しつつ、
その修理したのが分からないような、
馴染むようなやり方をするっていうのがうちのやり方ですね。
スピーカー 2
ほんと研究ですね。完全に。
スピーカー 1
そうですね。色合わせなんてもうほんとに研究ですし、
いろんな塗料を使ったりしますよ。
いろんな自然塗料を試行錯誤しますし、
くるみ使ってみたりとかヤシャブシ使ってみたりとか、
そんな古色って何がいいんだろうとかも、
いろいろ煮て確かめたりとか調合してみたりとかも。
スピーカー 2
天然の着色料探しみたいな感じのをやってると。
スピーカー 1
あと回せる色相の24色相の勉強をして、
こことここで色合わせて補色をうまく打ち消せばこの色になるとか、
っていうのもちゃんと勉強した上で研究して、
実実回していかないといけないので、
色合わせは多分どちらかというとそこの24色相をちゃんと理解して、
補色もちゃんとわかっていれば、
いつかは同じ色にたどり着きます。
スピーカー 2
すごい、でもそのレベルで同じ色探しに行ってるんですね。
あと形とかもちょっとどういうパターンが、
ポーズとかなんかちょっと装飾とか、
多分物によって全然違ったりすると思うんですけど、
ある程度パターンは決まってるんですかね?
スピーカー 1
そうですね。
仏像は大体一番頂点に君臨するのが如来っていうものでして、
阿弥陀様とかお釈迦様とか大日如来とか、
そういう風に言われているものが大体一番頂点の仏様。
それは宗派によって違うんですよ。
浄土神宗とか浄土宗とか神言宗とかによって、
この拝む仏像は阿弥陀様だったり、
お釈迦様だったり、大日如来様だったり、
宗派によって違うんですよ。
スピーカー 2
持っているものとかが違ったりとかそういうのもあるんですかね?
スピーカー 1
持っているものは手のポーズが違います。
スピーカー 2
手のポーズが違うのか。
スピーカー 1
手のポーズが違ったりとか、浄土系は立ちが多いですね。
足をちょっと気持ち一歩踏み出して、
助けに行きますよっていうようなポーズを取っている場合が多くて、
禅宗とかは座っている仏様ですね。
それが如来ですね。
その仰和記事につく二体が菩薩といって、
一般的によく馴染みがあるのがお地蔵様ですね。
道端とかにいる小さい可愛らしいやつ。
あれが菩薩で、正式名称は地蔵菩薩って言うんですよ。
菩薩ってのは、今言った頂点に君臨する人が自ら行くことはほとんどないので、
代わりに菩薩がみんなを救済しに行くっていう立ち回り。
大役みたいな感じですね。
菩薩はたくさんの種類があります。