今日ちょっとお話しするフライデイ・ブラックはですね、なんていうか、ユーモアというか、
いろんな設定を使ってうまく表現してますよね。
そうですよね。
問題を。
現実の問題と、あとゲームの世界というか、そんなのが混ざったような感覚があったりして、確かにユーモアたっぷりです。
でも、言いたいことは言ってるみたいな感じがあって、クサクサくる感じですね。
その辺りがすごくうまいなと思いました。
じゃあちょっと具体的にいきましょうか。
今回ですけど、短編集で12本入ってるんですけど、そのうち大きく扱うのは3本で、補足的に3本扱ってご紹介していこうかなと思ってます。
まず全体的なこの12作品というか、このフライデイ・ブラックどんな感じなのっていうところをお伝えしようと思うんですけど、
やはりこれ黒人社会のことを描いてるというか、現代のアメリカにおける差別問題というか、
すごい言葉を選ばなきゃいけないからなんですけど、ざっくりと差別問題を扱ってます。
それをやっぱり黒人の視点の方からが強かったりするんですけども、
でもちゃんとこれ白人がどう思ってるんだろうなみたいなのもすごく描かれてるんで、
その辺がすごく魅力的な作品になってるなと思います。
前提として短編集なんですけど、
設定がSFとかファンタジーとかとちょっと近いのかもしれないですけど、
ちょっと非現実的な感じですね。
この現実世界の設定じゃない感じはしますね。
ちょっと飛躍したところをしてます。
でも、だからより想像力をこっちに使わせてくるし、
その想像力を持った結果、今の問題が迫ってくるような感じにはなってるなっていう感じですかね。
ちょっと補足あれば付け加えてもらえればと思うんですけど。
そうですね。
やっぱり短編集で扱っている題材がすごいセンシティブなものが多くて、
正面から取り上げてるっていうのがすごいなと。
なんか新鮮でしたね。
なかなか小説読んでて、実際にあった事件とかをモチーフにしてるんですけど、
それを持ち出してくるっていうところが本当になかなかない特集体験ではありましたね。
面白かったけど、なかなか一応断っておきたいなと思う。
これ私たち日本に住んでいる一般的な男性なので、
これからちょっとこの話はこう感じましたみたいな話に出てくると思うんですけど、
なんか変な誤解がなければいいなとか思ったりもしますね。
反省内容がないようなだけにっていうのはちょっと置いておいたほうがいいかなと思います。
でも気にしなくてもいいってことはあるかもしれない。
そうですね。
あとは全体的な傾向としてなんですけど、
やっぱり作者がまだ若い男性というのもあって、
主人公がアフリカ系アメリカ人の青年が多い作品が結構あって、
結構共通しているのは根は真面目というか優しいというか、
人としての心をしっかり持っていて、
でもやっぱり環境的に本当は真っ当に生きたいって願ってるけど、
現実がなかなかそれをさせてくれなかったりして、
それによって様々な問題が起きたりして、
心の葛藤とか、心の歪みとかっていうのが描かれている作品がいくつかあるかなという。
あと作者が小売業界出身で働いていた経験があって、
兄弟のフライデーブラックっていう作品とかもそうですけど、
小売業界ならではの話っていうのもいくつかありましたね。
ちょっと小売業界の話ちょっと面白かったですね。
結構バラエティー要素があるというか、
皮肉が結構いっぱいあって面白かったですね。
じゃあですね、ちょっと最初にまずとりあえず3つ読むけど、
1つがこれ一番最初に入っている短編ですね。
フィンケルスティーファイブという主作品と、もう1個がジマーランド。
あと最後に兄弟作のフライデーブラックを中心にまず話して、
じゃあまず最初にフィンケルスティーファイブの話をしたいんですけれども、
これは短編集、一番最初の頭に入っている短編で、
この本を読むにあたっての入り口になっているんで、
これが大丈夫なら読んでねっていう至近席みたいな感じですかね。
そうですね、そんな感じですね。
ちょっとストーリーざっくり言いますね。
このフィンケルスティーファイブなんですけれども、
これ解説なんていうか、我らが藤井ヒカリさんって言ったらいいのか、
翻訳家であり、大学教授でもいらっしゃる英米文学者の藤井ヒカリさんが解説を書いてくださっていて、
そちらにストーリーみたいなのがあるので、そちらを読ませてもらいたいと思います。
フィンケルスティーファイブでは、家族を守るために図書館の前で、
5人のアフリカ系少年少女の首をチェーンソーで切り落として殺害したという
精算な事件を起こした白人男性が正当防衛とされて無罪を言い渡される。
その報道に接したアフリカ系の若者、エマニュエルは、
自分や仲間たちの間で沸き上がる報復への欲求をどうすればいいのか。
主人公につけられたその問いは、アメリカの警察による1992年のロサンゼルス暴動を生んだロドニーキング暴行事件、
2014年にミズレー州ファーガソンで発生したマイケルブラウン射殺事件など、
アフリカ系アメリカ人たちが繰り返し直面してきた問題であるというちょっと内容があります。
まあ、要はこれあれですね。白人の方が黒人の少年少女なんですよ。何歳ぐらいだったっけ?結構若い。
14とかぐらいの子で、若い子は7歳とかですよね。
少年少女たちが自分たちを襲ってきたと思ったって言って、チェンソーで首を刈り切っちゃう。
刈り取っちゃって殺しちゃったけれども、正当防衛が認められて無罪になったと。
それに対して怒りを感じたアフリカ系アメリカ人たちが暴動を起こしている世界の話ですね。
一応、実際の事件を下地にはしてますけど、架空の世界ではある。
結構衝撃的な内容でしたね。
チェンソーで首を切るってやばいですよね。
そうですね。
この小説開いて一番最初の一行目が、頭のない少女がヤマニエールに向かって歩いてきたっていう書き出しから始まるんですけど、
最初はどういうことかなと思いきや、まさかこういう事件の話だったと。
怖いよね。流れとして結構この裁判の内容とかも触れていくんですけど、
白人の殺してしまった側の人の主張がね、娘が近くにいたから、私は守るためにっていうこと。
そう、自分の子供を守るためにと。
犯人と弁護士と検察官と3方のやり取りっていうのが合間合間に書かれてるんですけど、
その様子がめちゃくちゃなんですよね。
明らかにその白人側の言い分だけが認められて進んでいくような流れになっていて。
だってこれ少年少女、そんなちっちゃい少年少女、最後7歳の女の子が殺害されてるんですけど、
その7歳の女の子は、他の4人が殺された現場から遠く離れたところに殺されてて、追いかけただとしか思えないような状況なのに、
その7歳の女の子が私を襲ってきたんですって、そんなわけあるか。
他の13、14歳ぐらいの友達が殺されちゃった後に、もう7歳の女の子は逃げるしかないのに、
その白人側は、いや私を襲ってかかってきたんですっていう話をしてて、なかなか主張だなと思って。
でもそれが通っちゃうんですよね。
そうですね。犯人からするとそれは7歳の女の子じゃなくて、13歳ぐらいに見えたし、
やっぱり逃げようとしたんじゃなくて、私を襲おうとしてたんですよっていう言い分なんですよね。
で、弁護士が、本当に少女がそんな行動をとるんですかって聞いても、
最近何があっても不思議ではないですよって犯人が言って、結局そこで話が終わってしまった。
なかなか、それでそういう状況を見せられたアフリカ系アメリカ人たちが、
本当その白人たちを襲ってるんですよね。
5人の少年少女のことなので、必ずもう暴行はたれたら捕まっちゃうので、かもしかもその場で殺されちゃうので、
その前に5って数字を自分の体に掘って往復をしてるんですけれども。
結末としては、最後主人公のエモニュエルもいろいろ揺らぎながら、最終的には暴行に手を加えていくっていうところですけれども。
あとこれ面白いのが、このエモニュエルが気にしてるのが、自分のブラックネスっていう数値を気にしてて、
この作りは面白いですね。黒人らしさを10段階で表現してて、
これ電話出るときは1.5に落とすとか、多分口調をちょっと変えたりするんだと思うんですけど、
黒人の間だけで話すときとちょっと違うんだろうなとか。
あと自分の服装を気をつけて、黒人らしさっていうのを消していくっていう、ファッションで消していくとかあったり。
このブラックネスが高まった状態、黒人らしさが強い状態で外で歩くと、白人にめっちゃ警戒されるっていう、そういう世界ですね。
結構、エモニュエル、お父さんからそういうのを教えて育てられてきてて、やっぱり社会で生きやすくというか、問題を起こさずに生きていくには、
いかだれですけど、黒人らしく思われないように振る舞わないといけないとか。
結構最初のお父さんが、一番最初に幼いときに言われたのが、黒人がとるべき行動として、腹が立ったら微笑むとか、
叫びたいときには囁く。これがブラックネスの基本だというふうに教えられていて。
これが実際、本当、現実ではそうみたいなことがネットとか調べてると。
そうなんだ。でもそうですよね。だいぶ気を使って生きてますよね。何なんすかね。
なかなか日本で生活してると感じにくいかもしれないんですけど、やっぱりまだちょっと差別意識ってすごい残っているのか。
買い物するときも商品を12秒以上は見つめないとか書いてあって、万引きに疑われる可能性があるから。
ひどい、ひどい世界ですね。
そういう世界だから、このブラックネスっていうのを主人公のエマニエルが気にして、
普段から世間の目を気にしながら生きてきた、結構でも心優しい青年なんですけどね。
こういうときはブラックネスが3.5とか4.2とか、そんなことが、そういう描写がね、所々にあったりして。
この最後の場面の描写がすごいと思っていて、このエマニエルっていう、小説の最初の方を見てると結構普通の良い人というか、
心優しい青年かなと思って読んでいったんですけど、結構最後の方にも、何ですかね、爆発するというか、
エマニエルが本当に頂点に達するような描写があるんですけど、主人公の変化の度合いっていうのがすごい大きいなと思って、
あれだけ優しかった人がここまで爆発するのかっていうような展開になっていて、最後絶叫しながらクライマックスに突入していく感覚があって、
感覚ですかね、読んだときの、なんかね、それはすごいインパクトがありましたね。
扱ってる題材もすごいし、最後の、本当に最後の描写に持っていく展開もすごいし、
なんかいろんな格差のこととか、ブラック差別とかもあるのかな。
ちょっと日本に居ながら、
自分もその辺のことがあまりキャッチできてないなと思いつつ、
生きて生活してますけれども、
なんかこういう立場の違いとか、
状況の違いで、
やっぱり人間って感情がすごく動く生き物なんだなと、
ちょっと読んで改めて思いました。
これはもしかしたら会社とかでもあるかもしれないですね。
上司と部下とか、部署とか、
まあ協力会社、クライアント。
その立場、立場によって守らなきゃいけないものがあって、
その中の自分とか組織の中の何かを一貫性を持たせようとすると、
変な正義が生まれてとか。
ちょっと上手く言えないですけど、
でもまあそういうのをちょっと感じたりもしました。
本当にそういう意味では、
ストレートに楽しいでいける小説ではないなと思ったので、
ちょっとこういうラジオで取り上げるの難しいなと、
改めて思いましたが、
でも読んでみるとやっぱりいろいろ思うことが多いと思うので、
おすすめな一冊でございます。
あ、なんか悪かったって言いたいんじゃなくて、
すごい良かったんですけど、
ちょっと面白かったけど、やっぱりいろいろあるなと思ったというところです。
僕はこれだけセンシティブな題材を扱った小説を読んだのは初めてのような気もして、
なんかすごい強烈なインパクトを感じました。
アメリカで現実に起きている問題が、
なんかこういう小説を書かせているのかなと思えてきたので、
現実に起きている問題というのも一歩踏み込んで知りたくなるような、
なんかそういうすごい力のある小説かなと思いました。
そうですね、あとやっぱりAmazonのブラックフライデー、
楽しみにしているところもあるんですけど、
ちょっとそういう見方も変わったなと思いますし、
すごい社会に目を向けさせてくれる一発かなと思いました。
話の内容的には面白いのが多いんですけど、
第一サービスって単純にじゃあ楽しめるかというとそうではないんですけど、
でもやっぱりそういう社会に目を向けさせてくれるという点では、
広くおすすめかなと思っています。
なんかあれですね、今回は私たちの紹介は一つのレーダーみたいなぐらいの感覚で
取られてもらえたらありがたいかもしれないですね。
ここから受け取ったメッセージが。
そうですね、説明するのは難しいですよね。
難しいですね。
でも確かに日本翻訳大賞候補になっていなかったのが、
今回紹介しなかったかと思ったので、結構私たちに挑戦だったかもしれないですね。
確かに。
こういう経験値も上げていきましょう。
次はやっぱり地下鉄道を読んで。
またちょっと変わっていくでしょうかね。
そうでしょうね。
よし、じゃあ最後次回予告して終わりますか。
次回ですが、また日本翻訳大賞最終選考対象作品を取り上げたいと思っています。
ユディット・シャランスキーの失われたいくつかのものの目録でございます。
これ私も実は去年のうちに読んでいる一冊なので、
ちょっと皆さんとどんな話ができるか楽しみにしています。