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どうもみなさんこんにちは。文学ラジオ空飛び猫たちです。この番組は、いろんな人に読んでもらいたい、いろんな人と語りたい文学作品を紹介しようコンセプトに、文学と猫が好きな2人がゆるーくトークするポッドキャストです。
パーソナリティは、私ダイチとミエの2人でお送りします。文学のプロではない2人ですが、お互いに好きな作品を時には熱く、時には愉快に、それぞれの視点で紹介していく番組です。
本日は番外編となっておりまして、作品紹介のない回になっております。そしてゲストをお呼びしております。本日のゲストは藤ふくろうさんという方に来ていただいております。
藤ふくろうです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
藤ふくろうさん来ていただいてですね、僕ちょっと緊張していません。
いやいや。
ゲスト会の時は多少の緊張はあるもののですね、藤ふくろうさんのことは10年以上前、おそらく2008年9年頃からですね、ウェブサイト上では存じていまして、海外文学の紹介するブログを運営されていて、
ボヘミアの海岸線というですね、サイトで気になる海外文学の本があった時、大体このふくろうさんがブログに記事を書かれていて、それを読んでちょっと参考にさせてもらっていたっていうのはもう10年以上前と見ていたサイトで、実はそのふくろうさんとですね、今年5月の文学フリマ東京にラジオで出展した時にブースに来ていただいてですね、ちょっとお話しした時に海外ブログを紹介する。
ブログをやっていますと言われてですね、ブログは何なのかなと思って名刺をいただいたらですね、藤ふくろうと書かれてきてですね、本当にそれでもうめちゃめちゃびっくりしまして、僕の頭の中ではですね、ずっとおっちゃんがやってたんじゃないかなって思っていたんですよ、もう完全にもうボヘミアの海岸線書いてる人はもう海外文学に狂ったおっちゃんがお腹の人だと思っていたら、いやまさか女性だったとはっていう、
そこでもうちょっとかなりびっくりしてしまってですね、ちょっとそこからお話しさせていただいて、良ければラジオでもしゃべりませんかというので、今回ちょっと一緒に話をさせていただけることになったというですね、ちょっとそんなような経緯がありまして、いや僕はすごいもう本当嬉しいです。
いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。おっちゃんだと思ってたというのはですね、正直いろいろな方から言われまして、多分、はい、全然、おそらくそうですね、今まで50人ぐらいには言われたようで。
そうですよね、それともどっかの出版社のもうベテラン編集者の方が、なんかの人なんじゃないかってずっと思ってたんですけども。
そうですね、まあそれでいくとですね、実はあれを始めた当初、まさに2008年から始めてるんですけれど、それこそペルソナ、書いてるペルソナをなんか文学に狂った、あの20代後半から30代の男性っていう設定で書き始めたので、あってはいるんですよね。
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でもなんでそれを始めたのかが、自分でもちょっとよく覚えてないんですよね。なんかなんでそんなことしたんだろうって、今になっては思うんですけど、なんかその設定をしたまま書いてたら、みんなからそのように言われるので、ある意味設定通りといえば設定通りかもしれないです。
海外文学好きな方って、福郎さんのブログ読まれている方結構いらっしゃるかなと思うんですけども、ちょっと今回このポッドキャストを聞かれて、女性だったんだっていうので、びっくりしている人が結構いらっしゃるんじゃないかなとちょっと思ってます。
確かに。で、私はですね、その東京文学フリーマンのブースの時、福郎さんが来ていた時、たまたま交代でブース回ろうって言った時間で、不在にした時で、お会いするのがこの今収録初めてなんですけれども、あのよく覚えているのが、三重さんが非常に興奮していて、
フジフクロウさんが来た。え、嘘でしょって。そんなことあるとか思いながら、三重さんが名刺見せてくれた。もう覚えています。ちょっとあの時本当、なぜそのタイミングで不在にしてしまったのか、あの後悔したんですけども、その後に三重さんがいろいろ連絡を取っていただいて、ちょっと今日が実現しているので、私も今日非常に楽しみにしてきました。よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
じゃあちょっとここで簡単に、もういろいろ話を出てますが、フジフクロウさんご自身から自己紹介いただいてもよろしいでしょうか。
はい、わかりました。フジフクロウと申します。えっと、フジフクロウという名前にしたのは、ここ最近の本の雑誌の書評活動を始めている時に、ちょっと苗字つけようかなと思ってつけたので、それまでは長らく10年以上、ただのフクロウという名前で活動しています。
ご紹介に預かりました、ボヘミアの海岸線という海外文学のことしか書かないブログを2008年から続けていまして、今年で15年目ぐらいになっております。
昔はキリキリソテイにうってつけの日という名前で書いてました。で、本の雑誌に新刊メタクターガイドというあれですね、新刊の書評を書くという連載がありまして、こちらを2020年から2022年までの2年間書いていました。
ありがとうございます。もう知る人と知る海外文学レビュアーですよね。
そもそも数が少ないですからね、なんかブログずーっと書いてる人。
もちろんいますよ、結構私も他の方々のブログとかもすごく読んでいるので、でも他のSFとかに比べると海外文学そもそもブログ数が少ないと、あと漫画とか日本文学に比べると。
あとブログ界隈も多分だいぶ2008年から見ると状況が変わってそうですよね。
そうですね、今はどちらかというとそれこそラジオだったり、あとYouTubeだったりとかで活動される方増えてきていますので、なんかそこら辺はブログ以外のメディアがすごい増えたなと私的には思ってます。
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で、それはすごい良いことだなと思ってますね。
でもやっぱテキストで見れるっていうのは結構強いので、やっぱり気になった時は検索して、あ!っていう時がやっぱりありますね。
僕もボラーニョとかコーマ・クマッカーシーとか好きな作家の名前を検索した時に、フクロウさんの記事があったりするともうね、やっぱすごい嬉しくてちょっと読んで、それを期間が空いた時もまた忘れた頃にまた読み直したりとか。
ありがとうございます。
本当にすごい海外文学的にはものすごいありがたいブログだなと思うんですけども。
間違いないですね。そんなフクロウさんとですね、今回ゲスト前後編に分けてお届けしたいと思っております。
前半の今回はですね、今年2023年上半期海外文学ベストについてお話ししていきたいと思います。
次週の後編では書評家の本の読み方をテーマに、それだけじゃないと思うんですけども、ちょっとフリーな感じでフクロウさんにいろいろお話を聞いていきたいと思っておりますのでよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ではまず、今年の海外文学上半期ベストをいきましょうか。
これはまずですね、本の雑誌8月号。この本の雑誌の8月号自体が2023年度上半期ベスト1というテーマで作られていて、いろんな上半期のベスト1の話が繰り広げられていたんですけれども、
その中でフクロウさんが上半期海外文学ベスト5というのをですね、上げていただいている記事がありまして、そちらの紹介されている本を中心にちょっと今日は話しつつ、ここに漏れてしまった作品もちょっとお話しいただけるということなので、そちらもちょっと楽しみにいろいろ話していきたいと思います。
フクロウさんがですね、この記事で書かれているのは5作品なんですけども、ちょっとまずそこを一つずつですね、お伺いできたらなと思いまして、最初がですね、ペスワさんという韓国の作家さんの作品で、
陶器にありて売るは遅れるだろう、という斉藤麻里子さん役で白水社から出版されている本ですね。これがまず選ばれていたので、書面は聞いたことあったんですけども、内容は全然人知らないままの本だったので、これはちなみにどのような本なんでしょうか。
はい、ありがとうございます。ペスワの陶器にありて売るは遅れるだろうなんですけれど、これはですね、売ると呼ばれる女性の話になっています。
で、その売るという方は完全にこう記憶をなくしているんですね。で、それで完全に記憶をなくして目覚めた時に、過去の記憶自分が一切わからない状態で、
その中で同行者もいるんですけど、同行者も記憶を失っていて、それで自分って何なのかみたいなところを手探りで探しに行くみたいな話になっています。
で、なんかこれだけ聞くとミステリー系なのかなというイメージがあるんですけれども、どちらかというとそういう感じでもなくて、この同じような売るの話がまず3本出てくるんですね。
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すごい不思議な話で、やはり設定は似てるんですけど、どことなくそれぞれ3編話が違うと。
で、その過去の記憶の断片だったり、例えばその海で話をするみたいなそういうイメージだったりっていうところを工作していくというところで、なんかこうすごく実は一番紹介文に迷った作品ですね。
そう、なんか筋らしい筋というよりかは、なんか読むことの体験そのものが何かすごく不思議な形で、真っ白な記憶の私がないところから私の断片を探していって、でもそれがまた違う話になって、違う私の話でも似ている私の話になるという形で、なんかそれが重層的に。
でも別にそれが重なったからって何か解決するというよりかは、なんかそれの入れ違いだったりみたいなところを読んでいくうちに、なんか文章に流されていくというかっていう形で、どちらかというと筋というよりかは、その読書体験そのものがすごく特別というか、あんまりないなという体験だったので、
どちらかというとその読んだ時の経験がすごいなというところでベストに入れました。
なるほど。
喋りづらいというか、ある意味喋りづらいんですけど、なんかこう読んでいるうちにすごいなと思うので、これは結構読書会でみんなで読むと面白いんじゃないかなって思った本ですね。
これはちなみに何か現実であった、例えば事件であったりとか、そういう何にも絡んでいたりとかするような、ちょっと現実感のある話の要素っていうのもあったりはするんでしょうか。
どちらかというと非常に現実との付き合いっていうのは限られていて、そうですね、なんか本の名前とかが異様に具体的だったりはするんですよね。
出てくる本の名前だったり、あと時間ですね、この日であるみたいなところも具体的なんですけど、それ以外はどちらかというとイメージと言いますか、非常に抽象的でして、
例えばワンピースだったりとか、あと海とか猫とか、あとは、そうですね、子供が演劇してるとか、あと知らないカップルから結婚式の招待状が届くとか、
そういう印象的なエピソードはあるんですけれども、具体性というよりかは何かしらのイメージに近い、それが重なっていくので、なんか詩を読んでいるのに近いような感覚もありますね。
おそらくめちゃめちゃ私好きなタイプのですね。すごい読みたくなりました。
そうですね、イメージが浮かびやすい、色とかの表現もきれいなので、そこをすごく想像しながらじっくり読んでいくとすごくいいかなと思います。
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おすすめなのは、わりと白がイメージの一つにあって、なので白い部屋でじっくり読むのがおすすめです。
表紙も結構白いじゃないですか。こういうイメージと言います。自分というものが記憶がないとある意味、すっからかんなイメージなんですけど、そこの真っ白の中にそういうイメージが入ってくるみたいな感じなので。
ありがとうございます。すごい本の雑誌の書評文の中でも、最後読み進めるほど意識が半透明になっていく本っていう表現をされていて、これで結構気にはなっていたんですけど、今お話聞いてめちゃめちゃ気になっちゃいました。
よかったです。これは本当読書体験そのものがすごく面白いし、このベストにあげた5冊の中でも一番読書体験としては印象的で、読書体験ベストだったら1位ですね。
なるほど。やっぱりな。
韓国の作家のこういうちょっと詩的な作品って、僕もすごい読むとハマって、今まで結構ハマってきたなと思ったので、ちょっとこれもかなり読みたくなりましたね。
じゃあこのペースは足らないです。次行きましょうか。
じゃあ次ですね、ちょっと2作目選ばれたのが、「詩書」という本ですね。これは中国の作家の園蓮花が書いた本で、桑島美超さん役で岩波書店から出版されたもので、園蓮花というとすごい大御所作家というイメージです。これもすごい鈍器本になるんですかね結構。
私の中では半鈍器なんですけど。
なんかすごいボリュームあるなというイメージがあったんですけど、それが選ばれているのでちょっと気になりまして、これはどんな本だったんでしょうか。
園蓮花による詩書ですね。こちらは毛沢東がやった製作の中でも最も失策の一つであると言われている大躍進運動というものをテーマにした本です。
大躍進運動は何かというと、農作物と鉄鋼作品をめちゃめちゃ増産させるというよく社会主義にある目標の一つの経済政策でした。
これ最初はうまくいってたんですけれども、結果として大飢饉を引き起こしまして、それ故にたくさんの人が死んで経済も壊滅的になったので最も失策と言われています。
テーマとしては大躍進運動なんですけれども、一つが基金ですね。大躍進運動という人々が熱狂した経済政策とそれの結果としての基金というものを書いた本になります。
四章というのは、タイトルが四つの本という意味で四章となっていますが、中身もそのような形になっておりまして、四つの本をそれぞれ入れ子にして、違う形で書かれた四つの本がそれぞれ入れ重なって進んでいくというストーリーになっています。
それぞれ語り手の中身、書いている中身だったり、視点だったりが違うんですけれども、それが一つこの熱狂を巻き起こした大躍進運動について書いていると。
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その書いている形式も面白いんですけれども、こちらはそうですね、出てくる人たちっていうのもなかなか不思議な感じでして、明らかに大躍進運動について書いているんですけれども、
大躍進運動とか中国っていうことはそこまで書いていなくて、結構無名化したというか、知識人を収録させる人が、政治家の部分が実は子供っていうすごい無邪気で可愛いキャラクターが謎に出てきたりだったりとか、
知識人たちの名前も基本的には名前ではなくて、役職ですね。役職で書かれたりというところで、匿名化されていて、抽象化されているというところがあります。
で、やっていることはそうですね、政府から無茶振りな生産目標が規定で、それ達成するために頑張るけど、全然達成できないので、もう虚偽申告ですね。虚偽申告をみんなするんだけど、その虚偽申告の仕方が小学生の戦いみたいな感じで、
じゃあ1000って言ったら1000じゃ足りない、2000だ。じゃあ僕5000。何を?俺は2万だとか言って、どんどんインフレしていくんですね。それをそのまま政府に申告するみたいな感じで、結構笑えるところもあります。
それってすごい延連化の過去の作品もそんな感じなんですけれど、それがさらにクリアになっているというか、一方でやっぱりテーマとして基金なので、後ろの方になってくると基金の話とか、これは非常に大変と言いますか、もうすごい今までのユーモラスさと基金の悲惨さみたいなところが、もうそれぞれハイブリッドになって、すごい読書体験になっています。
で、それだけだったら多分、いわゆる延連化っぽいなっていう感じだったんですけれども、なんか最後のパート、四章の最後の一つの本が最後のところに出てくるんですけど、それがなんかすごい印象的で、何でしょうね、これまでの3章、3つの本部分だけだったら多分すごい面白い本だったなって感じなんですけど、最後の一つの、もう一つの最後の本がとにかく印象的で、
それがなんかすごいなというふうに思ったので、最後の最後でこれかっていうところで、こうやられたなと思ったので入れました。
延連化というだけで、やっぱりその中国という土地とか歴史とか社会とか、そういうところをだいぶもう風刺的に書いている要素もありつつ、今のお話で、なんか最後の第4部の、もう本当多分こっちのなんか想像を絶対できないような話を持ってくるという作家の凄さみたいな、ここが掛け合わさっているすごい作品なんだろうなっていうのはですね、ちょっと思っているんで、ちょっとこれはあれで時間があるときすごいなんか読みたくなりましたね。
はい、ただやっぱテーマがテーマで激重なので、こう元気があるときに読むことをお勧めします。
えげつないことを書いているのかなと思うんですけども。
そうですね、でもなんか延連化ってすごいえげつないテーマでも、こうどこか笑えるみたいな書き方をするので、そこら辺はすごい延連化らしい作品でしたね。
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この記事でもこの司書のレビューを読んで、子供というのが出てきて一体何だろうと思ってたら、政治家だったんですね。
そうですね、政府と連絡を取っている役人なんですけど子供なんですよ。
記事ではすごい無邪気で守ってあげたくなる謎キャラクターって書かれていてですね、なんかすごい可愛らしく表現されていたんですけども。
そうなんですよ、役職は全然可愛くないんですけど、本人がなんか微妙に可愛くってこれは何?みたいな感じになるのもすごい面白いですね。
ちょっと不気味な感じするかもしれないですけど、こういうところもすごい面白そうだなって思いましたね。
私はでも多分この最後の4冊目の書物で、多分すごい方向転換なのか、すごく躍進するようなことが記事でも書かれてましたけども、多分そのカタルシスがすごい良いんだろうなと思うので、すごく気になりますね。
なんでしょうね、カタルシスというよりかは、そっちに飛ぶの?みたいな感じですね。
これって全体的に神話っぽい枠組みの書き足りを使っているんですけれども、最後が一番神話的ですね。
ある意味、中国の大躍進運動というすごい災厄を神話にするときにどうやるかみたいなところの文学的な挑戦の一つかなと私は勝手に思っています。
そうなので、想像外の方向に行って、おお!ってなりました。
今、私のイメージだとこの1,2,3があって、それを読んだからこそ聞いてくるすごいまとめ方があって、ガッて方向性が違うところに飛んでいくのかなっていう印象だったので、ちょっと違う感じですね、きっと。
いや、でもその感じであってますね。別に完全に違うんじゃないんですよ。完全に違うんじゃないんですけれども、現実の物事を神話に飛躍させるためには何があるかみたいなところと、
あと、なるほど神話だよなっていうのと、過去の神話をある意味、重なり直しみたいな形にもなっていまして、そういう意味でもすごい面白いですね。
なので、もし読むんだったら関連する神話、というかモチーフにしている神話がそれぞれあるので、それと合わせて読んでみるとまた面白いかなと思います。
分かりました。ちょっとすごい作品そうな印象がどんどん強くなってきますね。
ちょっとそろそろ行きましょう。
次ですね、ちょっとお聞きしたいと思う本がですね、3番目の本が、オレンジ色の世界ですね。これはカレン・ラッセルという人が書いたので、役者が松田青子さん。川出処方針社から出版されている本で。
オレンジ色の世界というのは、この記事を読むまでちょっと知らなくてですね、全くノーチェックだったんですけども、これがもうベストに入っていて、親ってちょっとなった本で、これはどんな本だったんでしょうか。
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カレン・ラッセルのオレンジ色の世界は短編集になっています。カレン・ラッセルはフロリダ州に生まれたアメリカの作家でして、やはりこの本に関しても割とフロリダを思わせる世界観の作品が非常に多いです。
タイトルになっているオレンジ色の世界っていうのが一つのキーワードというか共通のテーマというほどではないんですけれども、何かその象徴的な言葉になっていまして、オレンジ色の世界って不思議な響きを持つと思うんですけれども、当たり前ですけど世の中別にオレンジ色の世界ではないじゃないですか。
で、オレンジっていう色が引き出すイメージとしてはなんかこう夕焼けだったり、あとはどことなくこう宵闇の間に行くみたいな形で、なんか安心というよりか微妙にちょっと不安みたいな形ですね。
で、これを作者自身はオレンジ色の世界という単語を緑色の世界、非常にグリーンな世界といわゆるレッドの世界、危険な世界の間にある世界としてオレンジ色の世界があるというふうに後書きに書いています。
で、そういう意味で、なんかこの作品全体もやはりこのグリーンの世界とオレンジ色の世界の間にあるなんか奇妙な世界みたいなところを書いています。
これ結構全体的にカレンラッセルの話って割と奇想系の話が多いんですよね。
で、どういう感じで奇想かというと、例えば沼地、湿地帯に死んだ遺体にめっちゃ恋する少年だったりとか、
あとは水没都市、もうすごい未来の話で、水没した町でゴンドラの利として稼いでる少女だったり、
あとはすごい砂漠によく生えてる木に寄生された人だったりみたいな形で、割とこう、いわゆる奇想系なんですが、
このテーマ全体が基本的に全部このフロリダっぽい、いわゆる土地のモチーフを使っています。
で、フロリダってすごく沼地と、あとそれから洪水とかもあるし、結構天候的に大変な土地なんですよ。
で、よく竜巻とかも起こって、それでいくと竜巻を売っているおじさんとかも出てきます。
なのですごいフロリダっぽさと奇想が合わさった本で、非常にそのテーマが面白いなと思います。
で、私は結構土地のモチーフを取り入れた作品っていうのは結構好きで、そういう意味で私のすごい好みに合ってるなと思いました。
フロリダはですね、やっぱりこの天候がめちゃめちゃ荒れるという点では、結構日本に近いところもあって、
日本もよく台風だったり地震だったりあると思うんですけれども、そういう意味で、
こうやっぱり自然のいろいろなモチーフというか、災害だったり何だったりみたいなところがあって、
何となくわかるなみたいなところもあって、そういう意味でも結構この水っぽいんですよね。
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アメリカ文学の中でも割と水っぽいので、そういう意味でも結構この湿っぽい感じと、
でもすごい極端に砂漠もあってドライな感じもあって、なんか読んでいてすごいそこら辺が面白いですね。
私全然このカレンラッセル、実はこの5本の中で唯一知っていた作品というか、この作品はちょっと気にはなってた作品で、
フロリダなんですね。なるほど。で、フロリダって私の個人的なイメージ、なぜこのイメージを持ってるかわからないんですけど、
暖かくて過ごしやすいみたいなイメージがすごい植え付けられてて、そんなに災害が多い土地だっていうのは初めて知りましたね。
でもそこはそれである意味あっていて、フロリダってやっぱりアメリカの中でもすごい人気の土地で、老後に家を買うならフロリダみたいなので、
やっぱり人気トップ5には必ず入る土地なんですよね。で、私もそう思ってたんですけれど、そうではない。
実際の住んでいる人たちからすると、いやー大変なんだよみたいな感じで、なんかそれを書いてたのが、ローレン・グロフという、これもアメリカの作家なんですけれど、
こちらの人もやはりフロリダについて書いてるんですが、「丸い地球のどこかの曲がり角で」という作品で、これもフロリダについて書いているんですが、
結構すごいですね。ワニ出てきたり、沼地がすごかったり、台風、あ、竜巻がやばいとか、なんかそういう感じの、地元民ならではの、いやーうちも大変なんだよ感が出てくるすごい面白い短編集を書いていて、
で、その時に、あ、フロリダってそういう土地なのねって私も初めて知りました。で、カレン・ラッセルのオレンジ色の世界もそういう感じなので、
あ、やっぱりフロリダってそういう感じなんだなぁと。で、だからこそそういう土地柄だからこそ、こういうすごい幻想文学として面白くてかつ、なんでしょうね、力のある作品が出てくるのかなというふうに思いました。
これも気になるな。
いいですね。なんか世界観面白そうですね。なんかフロリダを好き勝手にめっちゃだいぶ過剰に表現してるかもしれないですけど、
イメージとしては僕勝手に、ずっと京都にいたんですけども、やっぱり京都はもう外の人からずっと行きたい街ってイメージですけど、実際住んでると夏はほんと死ぬほど暑くてですね。
ちょっとほっとくと京都で、なんかもういろんなところが燃えてしまうとかですね。応仁の乱の幽霊が出てくるとかですね。
なんかそんな感じで、遊んでる小説みたいなですね、ちょっと勝手な解釈ですけども。
でもそういう感じかも。そうなんですよね。いや面白いですよ。ぜひこのローレングロフの作品も面白いので、合わせて読んでいただけるといいかなと思います。
ちょっと次ですね、この作品もですね、なかなかちょっともうヤバい系の本かなと思うんですけども。
ネタバコの危険というですね、これマリアーナ・エンリケスという作家さんの本で、宮崎真紀さんが役されて国書観光会から出版された本ですね。
アルゼンチンの作家さんですけど、これがゴシックホラーになるんですかね。これもかなり危険な本だなというイメージをちょっと読んで思いまして、これはどんな本だったんでしょうか。
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はい、マリアーナ・エンリケス、ネタバコの危険はですね、先ほどご紹介いただいた通り、ジャンルとしてはゴシックホラーになります。
エンリケスに限らず、最近文学系ではスパニッシュホラーと呼ばれているスペイン語圏のホラー文芸というのが非常に現代文学の中で盛んでして、
なのでそういう文脈でいくと、現代の文脈でゴシック的なホラーを書くと。かつスペイン語圏でそういう話が出ていて、アルゼンチンなので南米ですね。
南米なので、どちらかというと南米文学に近いイメージがやっぱりあります。南米文学ってよく死者が出てきたりとかするかなと思うんですけれども、
やはりこのエンリケスのネタバコの危険も、ゴシックホラー的な極めて王道どころのゴシックホラー要素でありながら、南米的なモチーフ、例えば魔女、魔術だったり、あとそれから死者ですね。
死者は割とカジュアルに蘇るんですけれど、あと幽霊ですね。
あともう一つあるのが、やはりアルゼンチンというところがやっぱり独裁政権が長かったので、その独裁政権の被害者としての失踪者だったり、あとは死んだ人っていうところが出てくるっていうのが非常に南米的です。
すごくシンプルなクラシックなゴシック要素もあって、とりあえず死者が蘇って街にあふれるみたいな。どちらかというとイギリスとかのゴシックホラーだともう少し大人しいというか、そんなにいっぱいは出てこないんだろうと思うんですけれど、ネタバコの危険は死者がやたら出てくるんですよ。
あと数も多いですし、現実の生きてる人たち普通に圧倒し出すんですよ。なので死者が生き生きしてるんですよね。パワーのある死者というか弱い感じのヒューって感じの日本的な幽霊とかとはまた違って、パワーがあって普通にそこら辺めっちゃ歩いてるしみたいな。
ゾンビとかではなくて意識を持った人間みたいな死者なんですか?
そうですね。ゾンビもいます。ゾンビもいるんですけれど、普通にいなくなった失踪者の子が戻ってくるので、完全に昔のその子なんだけど、なんか全然もう死んでいるみたいなのがある。人間味があるんだけど、全然人間味のないっていうような人も出てきたりします。
あとやっぱりここら辺はすごい南米といいますか、アルゼンチンならではなのかなと思うんですけれども、やっぱり独裁政権に長くあったというところで、やっぱり死と不安が多分我々が想像する以上に近いと思うんですよね。ちょっと間違えたら死ぬとか、ちょっと間違えたら失踪するみたいな。
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なんかそういったところの不安みたいなところが、日常の中でもこれだけ不安があるみたいなところがリアルに迫ってくるので、読んでいるとすごい死者とか不安が、距離が近いんですよね。距離が近くて、わりと日常の中にもガッツリ入り込んでいる。それをゴシック形式で語っているというので、すごく面白かったです。
だいぶぶっ飛んだ小説じゃないかなって思ってますね。
我々も去年読んだ、スモモの木の刑事家っていうイランから訪問された方が書いた本ですけど、土地がちょっと離れてるかもしれないですけど、なんとなくあれも死者が元気だった昭和の作品だったので、
やっぱりこの日本人の感覚にはない、あとアメリカとかイギリスとかにはないですよね、この死んだ後もなんかなんて言ったらいいんですかね、おそらく死んだままじゃないみたいな意識が強いのかなっていう、死者としての権利っていうのがなんていうのかわからないですけど。
そうですね、やっぱり南米文学全体的にこう死者元気だなと私は思っていて、なんかそこら辺はすごくありますね。
100年の孤独でもそうですよね、死者なのにやたら存在感がある人とかいましたし。
そういう意味で言うと南米文学らしさはあると思う。
我々日本人だと死んでしまったらそこまでみたいな感覚が多分強いのかもしれないんですけど、そういうのではなさそうな意識を感じる本を私も何冊か読んだことがあるんですけど、それに近そうな感じでちょっと面白そうです。
面白いです。なんかすごいいろんな方面に尖ってますね。
いいですね。
異常心音フェチみたいな人が出てきたりとか出てくるんですよね。異常心音を聞くの大好きで、そのロック音を集めまくるみたいなだいぶ尖ってる人たちが出てきます。
死者が出てくる話とかですね、ちょっと現実離れしたものって、やっぱりなぜそれが存在するのかっていう目的みたいなところで、やっぱりちょっと感情の部分ですね、恨みがあったとか愛があったとか。
ただこの南米系はですね、めちゃめちゃいろんな欲望が何でもありで生き返っていいよみたいなですね、その辺の大らかさというかですね、はちゃめちゃ感をすごい感じていて、
確かになかなかちょっと向こうのすごいノリのいい小説なのかなってちょっと勝手に思ったりしています。
じゃあちょっと次は最後の本ですね。これはですね、彼女はマリウポリからやってきたという本で、ナタシャ・ボーディンさんの本で、読者が川東まさきさんで白水社から出版された本になります。
このナタシャ・ボーディンさんはロシアとウクライナにルーツを持つ作家さんなんですけども、小説であり辞伝でもあるという本ですね。これも本当すごい本でしたけども、どのような本と言いますか、印象だったんでしょうか。
ナタシャ・ボーディンの彼女はマリウポリからやってきたは、ご紹介に預かりました通り、彼女の作者の母のルーツをたどる辞伝になっています。
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彼女はマリウポリからやってきた彼女は作者の母なんですけれども、マリウポリという土地はウクライナの都市ですと。
そうなんですけれども、実際にこの作者はですね、自分のルーツというところをほとんど知らないんですね。
なぜかというと、母親はそちらのロシアとウクライナにルーツを持っているんですけれども、そのルーツをほとんど語らないままに死んでしまったと。自殺してしまったんですね。
残されたものっていうのが本当にわずかなエピソードと、あとそれから写真が何枚かあると。
このお母さんが生きていた時代というのは、20世紀のいわゆる第二次世界大戦のど真ん中を生きてきまして、彼女はやはりその第二次世界大戦の中で非常に迫害されてきて、かつ強制労働の収容所にも関係していたりというところで、いわゆる20世紀のあそこらへんの東欧の暗黒を一心に生きてきた方ですと。
そういう方々の中でも、やはりルーツがわからないまま死んでしまったみたいな人たちっていうのは非常に多くて、やはりそういう過去のルーツを知りたいっていう人たちのために、そういう過去を知ろうとする人たちのためのサイトがありますと。
彼女自身は、もうお母さんも死んでだいぶ長いですし、ほとんど手がかりもないからといって諦めてたんですが、試しにと思って、そこで自分の母親の名前を検索して調べてみると、たまたまそれの情報を知っていた人というのに当たりまして、そこからどんどんいもづるしきに過去を掘り返していくというような形になっています。
それが、ほとんど手がかりのない状態からどんどん過去を探っていくっていうテーマというか、その流れ自体も結構スリリングで面白いんですけれども、それ以上に出てくるエピソードがやっぱり20世紀の暗黒と言いますか、ヨーロッパの戦争の闇だったり、どういう大変なことがあったのか。
彼女の一族がどうやって巻き込まれていったのか、みたいなことがどんどん明らかになっていくという点で、ルーツ探しって個人の歴史を探すという非常にプライベートな行動だと思うんですけれども、それがもう20世紀の歴史というところに直結していく。
それがもうダイレクトに歴史と個人というのが実際にあっていくっていうところのその流れがすごい迫力でして、もうこれは読んだときにすごいなと思ったので、ベストに入れました。
僕と大地さんも今、実はこの本ちょうど読んでいるところで、僕はまだ第一部、本当に最初の100ページぐらいを読んでいるところなんですけども、それでも本当にそうなんです。
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いもずる式に情報が出てくるっていうのが本当にすごくて、最初そのお母さんであったり、親戚の人の本当ちょっとした噂みたいな情報しか事前情報では知らないので、ちょっとその精神病で危ない人だったんじゃないかとかです。
おじいちゃんですかね。オペラ歌手の人がいたんですけど、いやでも大した歌手じゃなかったんじゃないかとか思ったら調べていくと、実は本当にびっくりするような歌手としての道のりがあったとかですね。すごい生き方をしていたとかですね。
というのがあって、100ページぐらいなんですけど泣きそうになったところが本当にいっぱいあって、これは本当にすごいと思っている本ですね。
ちなみにこの福岡さんゲスト回の後に紹介するのはこの本ですので、ぜひお楽しみに。
私はまだ30ページぐらいなんですけど、文章がすごく綺麗で、出勤途中の電車の中で読んでたんですけど、この主人公が湖の前にある場所でちょっとバカンスじゃないんですけど過ごしてる時があって、一晩中湖を見てたっていう描写があってそこにすごい引き込まれましたね。
本当に短い文章だったんですけど、移り変わりみたいなのに心を奪われたみたいな。この光景を他の人は見ていないみたいな文章があって、すごく引き込まれて、出勤途中で心が違う世界に行ってしまったことが一昨日ぐらいだったんですけど。
けっこう文章の密度濃いめかなと思うんですけど、本当に違う世界に飛ばされてしまう、ちょっと恐れのある本ですけども。
そうですね。密度は濃いですし、どんどん読めば読むほど濃くなっていきますね。すごい濃密、現役化っていう感じの、すごいですね。
やっぱり私がこの本すごいいいなと思うのは、人間の生きているうちで物語ってすごい身近にいろいろあると思うんですけれども、その中で自分自身の生きてきた人生だったり、あとは家族ですよね。
一族の物語って、最も自分に密接に結びついていて、楔を打ち込まれている一番身近な物語だと思うんですよね。なので非常に自伝だったり、過去のルーツを探す作品って、いわゆる世界文学でも日本文学でも非常に多いかなと思うんですけれども、
なので私も結構そこら辺のルーツ探し系とか一族物って、私個人が非常に好きな物語になった。いろいろ読んできた中でも、やはりこれは、何でしょうね、彼女自身の自伝っていうところもあるんですけど、その探し方が、彼女自身がインターネットから探すっていう、わりと私たちと同じ土俵に立っていて、それでこういう方向に進んでいくっていうところがすごく驚きでした。
で、やはりこう歴史と自分の人生みたいな、あと一族の人生っていうところが本当に開口するというか、交わる瞬間みたいなところを書いていて、これは見事だなと思いました。
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インターネット上にちゃんと協力者になってくれる人がいるんですよね。ちょっと得体の知れないサイトですけど、中で運営している人は実はすごい本気で人探しを手伝ってくれる人がいたりとか、だからその辺はすごい読んでて面白いところでしたね。
なんか日本人ってね、あんまりルーツ探しって、島国っていうところもあってあまりないですけれども、やっぱりヨーロッパだったり、あとアメリカですよね。で、やっぱりルーツ探しする人って現代でも非常に多くて、で、例えば私一時期イギリス住んでたんですけど、なんか旅行してる人とかに会って、まあなんで来たんですかみたいなのを聞いてみると、母方のルーツがここら辺にあるので、
ちょっとずっと自分自身はアメリカに住んでいるんだけれども、ルーツ探しに来ましたっていう人、まあまあ会うんですよ。なのでやっぱりこう、ルーツ探しっていうのは私たちが思っている以上に、こう自分自身の物語を探すという点ではすごくこう、民族のその異民族だったりルーツがこう混じり合いやすい、ヨーロッパだったりアメリカだったり、アフリカも多分そうなんでしょうけど、
なんかすごくそういう話っていうのは、もっとルーツ探しっていうのは私たちが思っている以上に身近なんだなというふうに思っています。
自伝ですけど、物語として、自族の物語として、とんでもない展開を見せていってるんで、もう本当に100ページの段階で、ちょっと2部3部と読んでいくの、この先どうなるんだろうって、全く展開読めないんですけども、いやーすごい。
読むの楽しみですね、これがね。
そうですね、なんかご作品お聞きしましたけど、いやなんか誰も本当に濃いなっていうのがちょっと聞いてて、思いました。
そうですね、私が割と濃いめの味付けの作品を好むので、そういうベストになったかなと思います。
そうですね、なんかあっさり読める作品が一つもないなっていうのは思いました。
ほぼフルコースが。
いやでも、ペスアは割とこうサラッと飲めるので。
そうか、まだこの中では。
はい。
そうか。
水、水みたいな感じでちょっと飲んでいかないと。
なるほど。
じゃあご作品、これは本の雑誌の方でもご紹介されてますが、その本の雑誌の載せる候補がちょっといくつかあったということで、実はリスト見せてもらっちゃったんですけど、その中からですね、我々も気になっている本があるので、ちょっとお聞きしたいなと思っているのが、まず2冊あります。
マリーケルカス・ライネフェルトの深いな夕闇、これはオランダですね、オランダの作品と、ナギーフ・マフフーズのミダックヨコチョウ、これはエジプトですね。
この2作品、実は我々もちょっと紹介しようと思っている作品のリストを作って更新してるんですけど、この2冊入ってるんで感想とか聞きたいなと思うので、ちょっとご紹介いただいてもよろしいでしょうか。
はい。マリーケルカス・ライネフェルトの深いな夕闇からまずお話ししようと思います。
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はい。
こちらはですね、オランダが舞台でして、カタリテが10歳の子供なんですけれども、この子はオランダの落農一家に育ってます。
なので、非常に舞台がオランダの田舎の牧場みたいな。
で、すごく動物とか家畜がいっぱいいる中で一緒に暮らしているというようなのが舞台です。
で、タイトルがもうすごく不穏じゃないですか。不快でかつ夕闇って、なんかもう明るい要素ないんですけども、
中身もそういう感じで、なんかすごいタイトル通りだなと。
あと、表紙もすごくなんか不穏なんですよね。
すごい目が怖い少女が真っ赤なパーカーを着て、こっちをじっと見ているという不穏要素満載なんですけれども、
この小説自体も非常にそういうイメージがすごく出ています。
で、どういうものかというと、先ほど申し上げた通り、10歳の少女が主人公なんですけれども、
クリスマスの時に自分のウサギ、飼っていたウサギが晩餐に出されると。
で、それが嫌で抵抗するんですけれども、なんか親とか祖父母とかは全然そういうのは無理だからみたいな感じで、クリスマス大事みたいな感じで。
で、それなので、子供らしい残酷さといいますか、自分のウサギが殺される代わりに兄が代わりに死んじゃえばいいのにみたいなことをふわっと考えるんです。
そうすると実際にお兄ちゃん死んじゃうんですよ。
で、これ完全に事故なんですけれど、別に彼女自身は関係ないんですけれども、やはり子供って自分が祈ったからなのかみたいな感じで考えてしまう。
で、非常にこの時にその主人公の語り手自身が非常に罪悪感を覚えると。
なんかその罪悪感から彼女は非常にこう奇妙な行動を取るようになるんですけれども。
なのでそれがこの表紙にある通りのこの赤い服、赤いパーカーを着るっていうことになります。
で、この秘密っていうのも徐々に明らかになっていくんですけれども。
その行動と、あとそれからあれですね、家族のいびつな構造みたいなのが、その兄の死をもとにどんどんじわじわと明らかになっていくと。
なのでこの不穏がこう段階的にレベルアップしながら徐々に明らかになっていく系の小説です。
で、特にこの小説のすごいところはですね、やっぱりこのオランダの楽能一家でかつ厳格なクリスチャンの家っていうところが非常に効いてまして。
なんか一つがまず匂いがすごいんですね。
牧場行ったことある方々はわかると思うんですけど、やっぱ家畜独特の匂いってあるじゃないですか、この牧場ならでは。
で、そういう牧場ならではの匂いだったりとか、で、それって必ずしも心地いい匂いではないですよね。
すごい生の匂いはしますけれども、そういう不快なのか、なんか不穏な匂いというか、そういう匂いとか、あとそれからバターがちょっとべったりしてるとか、
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なんかそういう感じの、なんか視覚だったり触覚だったり、あと嗅覚だったりっていうので、私たちがこう普段の生活をしている中でもちょっとん?って思うようなものを丹念に上塗りしてくるみたいな感じでして、
なんかその、なんでしょうね、すごく誤感に訴えかけるというか、誤感の描写が非常にすごいです。
なので、どちらかというとそうですね、辻も不穏なんですけれども、それを語る、語り口がですね、すごい誤感のこの微妙に嫌なところを絶妙に突き続けてくるという点でもすごい読書体験でした。
で、最後もね、なんか不快な夕闇、なんかこういうのって大体救いがあるか救いがないかであると思うんですけど、なんか最後そっちか、それか、なんか。
いや、まあでもなんかどちらかというとなんかすごいあれですね、このギリギリのテンションでずっと行くっていう、そうですね、それで行くとなんかこの不快で不穏なギリギリのテンションをギリギリまで突き詰めていくっていうところのテンションの上がり方がすごいです。
おー、やっぱ読みたいな。
これは語り口がすごいですね。
いいですね。
いやー、この語りの仕方がすごいなと思いました。
もうどうせだったらなんか多分どっかの牧場行って読むとすごいいいんじゃないかなって。
環境が。
そうですね。
いいですね。
なんかその場に読めばちょっと怖くなりそうですね。
あー、思い出しちゃうよ。
でもそういう意味では語感をやっぱ早期させるという点では結構記憶に残る小説だと思います。
なるほど。
やはりちょっと我々も目をつけていた作品ですが、これはヤバそうですね。
そうですね。
ちょっと年内どっかで紹介できたら。
もう下半期始まっちゃってるけど。
ですね。
じゃあちょっと続いて、マフフーズの方はどうでしょうか。
ナギーヴ・マフフーズのミダック・ヨコチョウですね。
こちらは一点してすごくクラシックな小説です。
ミダック・ヨコチョウといいますか、まずナギーヴ・マフフーズからのご紹介なんですが、
ナギーヴ・マフフーズというのはエジプトの作家でして、もうエジプトの国民的な作家といえばナギーヴ・マフフーズみたいなところがあります。
エジプト人ではおそらく最初にノーベル文学賞を受賞した作家かなと思います。
ノーベル文学賞を受賞しているので、やはりナギーヴ・マフフーズの作品はそこでそこそこ訳されていまして、一番有名なところがカイロ三部作と呼ばれる作品になっていて、ここら辺は結構もう翻訳がされています。
その中でもこのミダック・ヨコチョウというのは一番結構みんなからの人気があると、エジプトの国民の中では一番人気がある作品と言われていまして、でも翻訳が今までなかったんですよね。
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なので私もナギーヴ・マフフーズの作品いくつか読んでて、ミダック・ヨコチョウないのかってずっと思っていて、その時にようやく翻訳が出たので、これは出たと思ってそれで読みました。
ミダック・ヨコチョウというのはどういう作品かというと、実際にこのミダック・ヨコチョウというのがエジプトのカイロにあります。そこのミダック・ヨコチョウに住んでいる人たちのことを書く群蔵劇の小説になっています。
ミダック・ヨコチョウにはいろんな人たちが住んでいて、カフェの店主だったりとか、あとは詩人だったり、あと物恋みたいな人たち、必ずしも裕福でない人たちがいっぱい住んでいます。
ちなみにミダック・ヨコチョウってカイロの中では下町の方に位置するので、必ずしもすごい狭い通りなんですよ。
写真があったので私も見てみたんですが、いわゆるヨコチョウの狭い下町のヨコチョウで、みんな顔見知りみたいな感じなんですよ。
その中に住んでいる人たちがすごいおじいさんもいるし、若者もいるんですが、若者はここでずっと暮らして死ぬの嫌だみたいな形で、外に出てもっと名を上げるんだみたいな人たちがいます。
そういう人たちと老人たちの群蔵劇です。ひとつずつ、かつ章の名前が登場人物たちの名前なんですね。
それぞれのエピソードになっていて、それがお互いに関わりあって、この人はこういう考えで、こういうバックグラウンドを持っていて、この人とこういう関わりがあるっていうのが、どんどんちっちゃいエピソードを連ねていくという、まさに群蔵劇。
本当にクラシックな群蔵劇なんですが、さすがノーベル小作家というか、ナーギブ・マフフーゼ、語りがすごくうまくてですね、かつ人物描写が非常に面白いんですよ。
みんな個性的で、エジプトはイスラム教なので、やっぱりすごく神様だったり、そんなことをしてはいけないみたいな宗教的な発言あるんですけど、
一方で、もうすごい浮気浄土みたいなのだったりとか、金儲けやりたいみたいな感じで、結構すごい現実の欲望まみれみたいなところもあって、すごいそれが人間っぽいんですよね。
現実的で人間っぽい、宗教を信じてもそれ以外全然何もやりませんみたいな感じではなくて、やっぱり宗教と共に生きながらも超現実的な欲望もあって、その相反するところでも普通にみんな生きてて、でも善良に生きようとしているみたいな感じのところがすごく良いです。
一方で、そういう横丁をすごい愛している人もいれば、全然そんなの嫌だみたいな人もいて、ここから出たいっていう人もいて、そういう人たちの会話だったり衝突だったりっていうところがあって、非常にオーソドックスな群像劇ですけど、すごく面白くて、クラシックな小説って久しぶりに読んだなと思うんですけど、いやー面白いなと思いました。
いいですね。
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そういうの聞くと本当に読みたくなりますね。
なりましたね。群像劇は私もともと好きだし。
それだったらめっちゃオススメです。
これはちょっと熱そうな。
生き生き度がすごいですよ。
個性、みんなそれぞれ個性があって考え方も違って、でも同じ土地に住んでいるっていうところで、まさに群像劇と。
あれですね、日本で言うとこれもう舞台としては20世紀かな、なので結構昔の話なんですよね。
なので日本版で行くと多分昭和の江戸の東京の下町で暮らす人たちの群像劇みたいな感じになるのかなと。
だからすごいノスタルジアも感じるし、いろんな個性ある人たちが関わるみたいなところで、もうすごい面白かったです。
これはもう必ず行きたいですね。
もうずっと気にはなっている。
この2冊はちょっとみえさん、近いうちに。
そうですね。
行きましょう。
読みたいですね。
ふくろさんありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
いろんな本の話が出て、予想以上に膨らんでしまったので、ちょっと予定した内容を後編に回しつつ、次週もですね、一緒にちょっとお話できたらなと思うので、何卒よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。ありがとうございます。
ではちょっとこの流れで次回予告させていただきます。
次回はですね、ふくろさんゲスト回後編になります。
本当はですね、今日話そうと思っていた、私大地とみえが選ぶ上半期ベスト版をちょっとお話ししつつ、あとふくろさんに初評価についてちょっといろいろ聞いていきたいなと思っていますので、よろしくお願いします。
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ありがとうございました。
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