ちなみにこのボラーニョでいうとちょっとその共通するキーワードみたいなのがあってですね。
ボラーニョ自身がチリの作家なんですけども、そういったところでやっぱりチリとかアルゼンチンとかそういう南米というのがよく出てくるんですね。
南米出身のキャラクターであったり、誰々が南米に行くとかそういうのがよく起きたり。
あとメキシコですね。ボラーニョも若い時メキシコにいたっていうのもあって。
あとヨーロッパでスペインとかフランスとかイタリアとかそういったところが結構舞台になりがちだというのがあって。
あと登場してくるのがだいたい詩人とか作家とかなんですね。
そうですよね。
だいたいその三流詩人とかが主人公で。
売れない作家が売れてる作家に嫉妬する話とか、売れない詩人が行方不明になるとかですね。
そういう話が結構多いというですね。これ結構読んでるとなんか面白いところなんですけど。
分かります。すごい感情がリアルでその辺の。
そうなんですね。
すごいなんか自分の中に引っかかってきて面白かった。
他にもボラーニョといえば結構共通する話題っていろいろあるんですけども、それだけ引き出しが本当にたくさんあって。
結構ボラーニョの書いてるものって誰もボラーニョらしいし、なんか他の作家とはちょっと違うなっていう感じが。
分かる。
短編でも長編でもするという、なんかすごいある意味みんな個性的な作家であると。
では最初に紹介するのはこの通話の一番最初の作品、先死にという短編小説になります。
これはスペインが舞台の小説になるんですけども。
小説家志望の主人公、一人称で僕と言うんですけども、主人公は地方の文学省スペインのアルコイシのスペイン文学省に応募をして、
そこでサインになって賞金をもらうことができたんですね。
そこのアルコイシっていう本当に小さな地方の文学省でとはいえ賞金をもらえたというので、
協力している中で同じ文学省に応募していて2位だったアルゼンチンの作家の先死にという人がいるんですけど、
その人の名前を2位のところで見つけて、知っている作家の先死にがこの省に応募してたんだって気づいて、そこからちょっと話が始まっていくという小説で。
この主人公の僕はスペインの作家の先死にを結構尊敬していたというか、作品としてはすごい評価をしていた作家で、
そこで興味を持って手紙を送って、そこから先死にからも返事が返ってきて交流が始まってくると。
面白いのが、そこから先死にと僕で2人で地方の文学省を賞金稼ぎを始めるんですよね。
この流れ面白いですよね。
先死に結婚して子供いて生活費稼がないといけないというので文学省にたくさん応募してたんですけど、
先死にからコツを教えてもらうんですよね。文学省の攻略の仕方、こういうふうに書けとかで。
僕が一番面白いなと思ったのが、同じ短編集のタイトルだけ変えてフクツーの省に応募しろっていう。
ここが結構笑えるところ。
日本の文学省でやったらやばいことになりますね。
でもここもちゃんと解説があって、そもそも審査員みたいな人は読んでないからバレないとか、読んでても一部しか読まないからバレないとか、
全部読んでたとしても気づくだけのことは起きないから大丈夫だとか、それで先死にはたくさん応募していって、
主人公の僕は新聞とかで全国の地方の文学省を見つけては先死ににそれを教えてあげるっていう、そういう役割でやっていて。
やっぱり主人公の僕ってまだまだ駆け出しの20代なんで落選続くんですけど、
でも先死には地方の文学省でいくつかの賞金を稼いでいって、生活費の足しにしていくという、そういうのが続いてたんですけど。
ただあるとき、先死にの息子さんがアルゼンチンで新聞記者をしていたんですけども、行方不明になっていたんですね。
それが行方不明ではなくて、いやもう亡くなったという情報が入ったみたいで、
それによってちょっと先死にが落ち込んで母国のアルゼンチンに帰っていったんですね。
そのまま先死にがアルゼンチンで、その後比較的すぐ亡くなって、先死にが亡くなったという情報を僕が知って、
そこに先死にの娘さんが訪ねてきて家族で過ごしていたとき、
お手紙をやり取りしていた主人公の僕を先死にがどのように語っていたかとか、
そういう話とかをしてくれていて、それで終わるというそういう短編なんですけども、
結構これすごい好きな小説で、途中主人公と先死に二人で一緒にハンターのように文学賞を応募していくというくだりとかすごい面白かったんですけど、
やっぱ最後ちょっと切ないというかね、悲しい終わり方をしていて。
ラストすごい絵に、絵がイメージできるカットで終わりますよね。
そこがなんか自分はすごく良かったというか、結構この、まず初めて、一番最初に通話がこの本の一番最初だし、
この先死にが一番最初の話じゃないですか。ボラニオを初めて私はこれを読んだわけですけど、
この最後の感じっていうか、その先死にの娘のミランダと二人で、ベランダでしたっけ?
そうですね、ベランダで。
街の明かりを見ながら、二人でちょっとお酒飲んで、ちょっと話してみたいな、すごく穏やかな気持ちになっていることに気づくとかあって、
それでなんかその絵で終わる感じがすごく印象に残ったし、これで結構私はボラニオ好きだなって思いましたね。
確かに、そうですね、すごい映像的に描くのが上手くてですね。
それもボラニオの特徴の一つですね。
あと、結構ユーモはあるじゃないですか、結構。
そうですね、めっちゃありますね。
私この先死にでいうと一番面白いなと思ったのは、写真を送り合うとこあるじゃないですか、先死にと。
ありますね、はいはい。
で、あっちから写真送ってきた後に、こっちも写真送んなきゃとか言って、毎日スピード写真に行って。
そうそうそう、通うんですよね、スピード写真のとこに。
でも全然いい感じに撮れないから、毎日一枚撮って、でもどんどんお金を無駄にしていくっていう。
そうそうそう、ただですね、貧乏なのに。
ここで金使っちゃうんだみたいな。
そう、自分の写真撮って、自分で落ち込むんですよ。
全然パッとしてないなって。
でも最終的には適当に一枚選んでみたいな感じでしたけどね。
そう、もう時間がないから、とりあえず送ったっていう。
このくだり結構好きでした、私。
そうですね、あそこがね、めっちゃ面白いですね。
だからそのユーモアがありつつ、結構息子さんの死の話とか、戦死に時代の死の話とか、ちょっと重めに傾いてて。
そうですね、ボラーニオの長編とかになってくると、人が消息を急に絶って、それを追いかけるように、行方不明になった地に踏み込んでいくっていうのが、一つのテーマとしてあって。
そういう意味では、この戦死にという短編も、それをちょっと匂わせる要素があるなと。
あと、主人公の僕って20代の売れない作家なんですけど、これってボラーニオのことなんですね。
僕がよかったなと思うのが、やっぱり売れないボラーニオに声をかけ、孤独な存在だったと思うんですけど、
そこに声をかけて面倒を見てくれる先輩作家の戦死にっていうのが、すごい温かい存在として思えて、
そこはすごいよかったなと。なんかボラーニオがちょっと思い出を書いてるような気がして。
なんかね、解説読むと名前がすぐ出てこないんですけどね。
モデルの作家がいて、実際その作家と手紙でやり取りをしていたっていう、そういうエピソードもあって。
けっこう自分の体験を描くのが上手い人なんてことですよね。
色んなところリアルだ。他の作家もそうなんですけど、すごくリアルなとこあるなと思って。
経験はすごく反映はされてるんだろうなとは思いました。
そうですね。
すごく上手くできた小説だなと思います。
そうですね。それがいきなり一つ目に来ていて。
ちょっとじゃあ、次の紹介しようと思います。
じゃあ次に紹介するのは、エンリケ・マルティンという短編になります。
これもまた主人公は詩人の、売れない詩人になるんですけども。
その主人公の友達ですね。
紙の束も結局暗号でもなんでもなくただの詩だったじゃないですか、渡された。
そう、最後はそうなんですよね。
エンリケ・マルティンっていうのも文学の一種の病気みたいなのに取り憑かれたようなキャラクターで。
最初読んでいくとまだ文学の世界で何とかしてやっているのかなと思いきや、
だんだんシリメツレツになっていくとかですね。
現実世界からフィクションというか文学の世界の方に飲み込まれていくような感覚があってですね。
このエンリケというキャラクターが、これもなかなかちょっと悲しい話ではあるなと思っていて。
ちょっと例えるならあれですけど、すごく村上春樹的な小説の匂いを感じましたね。
村上春樹の短編っぽいなと思います。
自分がちょっと関わった人間がどこか飲み込まれていってしまってくって。
それを多少なると何か残してくれているものが自分の中に少し、
これで言うとあれですけどね、紙の束が手元に残っていて、
それは彼が書いた詩だったという印象に残る作品だなと思いましたね。
そうですね。
このエンリケ・マルティンで言うと、
エンリケの元同棲相手と主人公のメキシコ人の彼女とかもいい味出してて。
そうですね。ボラーニョの小説ってそういうちょい役の人もめっちゃ面白いっていうのがあったりするんで。
ちなみに僕はこのエンリケ・マルティンの書き出しがすごい好きで面白くてですね。
詩人たるもの何事にも耐えられる。
それは人間は何事にも耐えられるというのに等しい。
だがそれは真実ではない。人間はほとんどのことに耐えられないのだ。
真の意味で耐えるということが一方、詩人はあらゆることに耐えられる。
その信念のもとに僕たちは大人になった。
冒頭の表明は正しいが、その先には破滅と凶器と死が待ち構えている。
なるほど。そうか。これ面白いですね。ここいいですね。
そうですね。
私もでも印象に残りました。
結構ね、やっぱり登場人物が詩人が多いんです。
詩人とは何故やみたいなことが書いてあるんですけども、めちゃくちゃわなこと書いてたりするんで。
これとかも人間は耐えれないのに詩人なら耐えれるとかですね。
なんかそんなこと書いてあってね、そういう面白い描写も多いっていうのがありますね。
これ最後、今度は僕が逃げる番だったって終わってるじゃないですか。
うん。
最初とちょっといろいろ繋がってるのかなとか今思いましたね。
その先には破滅と凶器と死が待ち構えている。
それから逃げなきゃいけないわけだ。
そうですね。
っていうことなのかな。ちょっと分かんないけど。
もしかしたらそういう運命ということなのか。
確かに、エンリケ・マルティはそれに飲み込まれてしまったのかもしれないですね。
というエンリケがあって、ちょっと3つ目、最後に紹介する作品が、文学の冒険という作品で。
実はこれもですね、登場人物、アルファベットでAとBというのが2人いるんですけど、これ2人ともまた作家なんですよね。
じゃあ3作品、三重さん中心にお話していただいて、すごい面白かったです。
全体的な感想とどういう人に読んでほしいか言いながら、最後もうちょっと締めていきましょうか。
私はもう、とりあえず今回この通話はロベルト・ボラーニョの初めて読んだ作品なんですけど、
自分の感覚としてはめちゃくちゃ読みやすくて、個人的な感情がすごく深く描かれてるなと思ってるんですけど、
でも何て言うかしつこくなくて、読みやすくて、かつユーモアを忘れてないというか、挟み込まれてて、すごく面白かったです。
その深く描かれてる感情とかが、例えば文学の冒険とかで言うと、絵を嫉妬してしまう心とか気持ちとかが自分の中にもあるものだなと思って、
自分の中に落ちていくので、すごく面白いなと思って、個人的には好きなタイプの作家なんだろうなと思いました。
長編読んでないんですけど、短編はかなり読みやすかったので、文章も読みやすかったです。
なので興味を持った人は、これ本当にみえさんもさっき言ったんですけど、一個一個結構短いんですよ。
だから本屋とかで立ち読みしてもそんなに時間かからないと思うので、それ読んでみて、あれ面白いなと思ったら買ってみてもいいんじゃないかなと思います。
個人的にはまだ一冊目ですけど、おすすめです。
そうですね。ここはやっぱり最初の方に言っていたように、ボラーニョの入り口としてこの通話っていうのはいいかなと思っています。
ボラーニョ作品、全般的に言えることなんですけども、だいたい登場人物が詩人とか作家とか批評家であったり、
あとはちょっと人生に没落しているような人が出てきたりする傾向はあるんですけど、すごく引き込まれる小説ばかりで、
そういう意味ではすごい小説が巧みで、描き方がいいという短編集かなと思っています。
あとはボラーニョの口調としてすごい笑えるような描写がたくさんあるので、そういったところでは軽めに読めるボラーニョ作品として通話はやっぱりおすすめかなと思っています。
その先にはちょっと重ための小説ではあるんですけど、長編小説とかボラーニョコレクションの他の作品とかがあって、
そっちもずっしり重たいんですけど、やっぱり読み応えとかすごくあるので、この通話きっかけにボラーニョの他の作品、もっとすごい作品がたくさんあるので、
そこへの入り口として読んでみてもらえたらなと思います。
なるほど、読みたいな。確かに。面白いですね、ボラーニョ。ずっと私名前は知ってたけど手に取ってなかった作家なんで、今回読めてすごい良かったです。
本当好きな人は何だろう、ボラーニョの文学の沼にハマってしまったりとかね。結構危険だと思いますね、この作家は。
半歩ぐらいちょっと踏み入れ込みつつ、気をつけながら読みたいと思います。