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みなさん、おはようございます。
こんのゆるラジチアプップへようこそ。
この放送は、子どもも大人もゆったり過ごせるよう、
絵本とともに朝のひと時をお届けします。
はい、今日も子どものための世界のお話より、お届けいたします。
今日のお話は、日本昔話の、
『てんぐのかくれみの』というお話です。
それでは、お聞きください。
とんと昔のお話です。
日後の国の彦一は、それは面白いとんちな人でした。
その頃、町のはずれの高い山に羽を生やした天狗ドンがいて、
昼間から、えい、えい、えい、と剣術の稽古をしていました。
この天狗ドンは、かくれみのというたいそう珍しいものを着ています。
毎日毎日かけ声は聞こえますが、ちっとも姿が見えません。
ある日のこと、彦一は仕事もしないで家にいましたが、
ひょいと何を思いついたものか。
ほら、天狗ドンのかくれみのほしいが、
よし、いっちょいい考えがある、と庭へ飛び出しました。
ばあさんが干しておいた洗濯物をみなおろし、
物干し竿の端っこを切ってとって、
小さな竹筒をこしらえ、
それをもってえっさかほいさか山へのぼっていきました。
山の上は木がこんもり茂って、たいそうさびしいところです。
しばらくすると、ばさばさーっと羽の音、
何にも見えないのにあっちこっちの枝から、
えい、えい、えい、とかけ声が聞こえるではありませんか。
ははーん、来たな、天狗ドン、いまに見ておれ。
ひこいちは東のほうを向いて竹筒をのぞくと、
うんとおもしろそうに大声で、
ああ、見える見える、きょうの都も、お江戸の町も、
と何べんもいいながらとんだりはねたりしました。
するとふっと剣術のかけ声がとまり、
ばさばさ、ふわーっと天狗ドンがおりてきました。
こりゃひこいち、それはいったいなんじゃ、ちょっとおれにかせ。
天狗ドンはえらくものづきで、おまけにせっかち。
ひこいちはくびをふり、うんとおもしろそうに、
だめだい、こら、たからのとう、めがねじゃ。
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かくれみのきて、かくれているものにはみせられん。
ああ、見える見える、といいました。
そんならひこいち、おれ、かくれみのぬぐから、ちょいとかせ。
天狗ドンはとうめがねをのぞきたくて、いそいでかくれみのをぬぎました。
にゅっとはなのつきでたあかいかおのおっかない天狗ドンです。
ひこいちはけいきなかおでくびをふり、うんとおもしろそうに、
だめだい、おまえのもっているたからものととりかえこしなけりゃ。
ああ、見える見える、きょうでおどりをおどっている。
おえどじゃ、すもうがはじまった。
ああ、のこったのこった、といいました。
天狗ドンはみたくてみたくてがまんできず、
それならひこいち、おれのこのかくれみのととりかえこしよう。
はやくみせろみせろ、といいました。
ひこいちはすばやくてをだして天狗ドンのかくれみのをつかんで、
たけずつをもったいなそうにわたしました。
ちょいとかりたぞ、はいよ。
ひこいちはとりかえるとすぐにさっとかくれみのをきて、
すがたをかくしてしまいました。
天狗ドンはたからのとうめがねをかりたのでおおよろこび。
ところでひがしのほうをのぞくとまっくら。
きょうのみやこもおえどもみえずまっくら。
へんにおもってくるくるまわしてのぞいてもまっくら。
やいひこいち、このとうめがねはみえないぞ。
ひこいち、どこにいるかくれみのをかいせ、
とあかいかおをまっかにしておこり、
そこらじゅうをさがしたけれどひこいちはみつかりません。
かくれみのをきてしまったものをみつけるわけにはいきません。
とうとうべそをかいてやまのおくへとんでいってしまいました。
ひこいちはほいきたほいきたやまをくだると、
はは、こりゃいいぐわい、どこからみてもみえないや、
とまちへもどっていきました。
はい、きょうはここまでで、
あしたですね、後編をおはなししたいと思います。
さあどうなるんでしょうか。
これはね、おもしろい手口で交換したものと思います。
それではきょうもおききくださりありがとうございました。
こんでした。ではまた。