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2020-09-21 08:27

008. 美しさとデジタルアーカイブ

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我々は数千年前の遺跡のデジタルアーカイブを作っています.でも我々のデジタルアーカイブはこの先数千年の間失われずに生き残るのでしょうか.そんな疑問を孔子廟で考えてみました.

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いちです、こんにちは。今日は長崎の孔子廟に来ています。 ここ孔子廟から録画録音していきたいと思います。
孔子廟というのはご案内の通り、孔子をお祭りした中国でいう神社にあたる建物になります。
孔子というのは、実在の学者さん、思想家さんでいらっしゃいまして、
紀元前6世紀頃のお生まれだそうです。ということは、日本だと弥生時代にあたるわけですね。
ギリシャの有名な哲学者ソクラテスよりも、さらに100年ぐらい早くお生まれになった方だそうで、
ということは学問の創始者、創始者というのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、
非常に初期の学問の歴史の中でも初期の位置を占めていらっしゃる大学者でいらっしゃって、
それゆえ学問の神様というふうに祀られているところもあるんだと思います。
僕はですね、この孔子廟には何回かお参りをしているんですが、
おこがましいんですけど、同業者としてお参りしているという面もあるにはあるんですが、
実はもう一つ結構深い理由があってお参りをしています。
というのは、我々はエジプトのピラミッドやスフィンクスといった世界遺産、それから長崎の明治時代に建てられたものではあるんですけれども、
教会を含む世界遺産などのデジタルアーカイブという研究に取り組んでいるわけなんですね。
デジタルアーカイブとは何かというと、こういった世界遺産というのが自然災害であるとか、あるいは紛争とかで失われていく。
失われると遺産というのは二度と取り戻すことができないわけですから、
なんとかそれをデジタルデータとして、コンピュータ技術を用いて将来に残せないかという研究に取り組んでいるわけなんですけれども、
それがよく聞かれるのが、ピラミッドが例えば4000年もったと、
それをデジタル化してデジタルデータが4000年もつんですかというと、それはちょっと自信がないわけなんですよ。
コンピュータ技術、デジタルデータというのが歴史が100年に満たなくて、あと100年もちますかというと多分もつでしょうとは言えるんですけれども、
1000年もちますかとか2000年もちますかというと、なかなか自信がない。
それでこの孔子病の話に戻るわけなんですけれども、孔子の語った言葉、
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孔子のお弟子さんたちがまとめたものが論語という本になっています。
論語という本は未だに現代語訳が日本の書店で買えるぐらい普及している。
2500年前の言葉ですよ。もちろん孔子が言ったことすべてが残っているわけではないですし、
構成途中で改変されてしまった部分もあるかと思うのですが、それでも2500年前に語られたことの骨子が現在でも読める。
これはアーカイブとしては非常に稀有なことでして、ここから学ぶことというのは非常にたくさんあるというふうに僕は考えているわけですね。
一つはYouTubeでご覧になっている方、僕の背中にある石板を見ていただきたいのですが、
論語というのが石に刻まれているんですね。石というのは非常にご存知の通り火災にも強いし水害にも強いし、そこに刻まれた文字ですからなかなか消えることがない。
エジプトなんかでも石に刻まれた小型文字というのは4,000年5,000年の時を超えて残っている。
石で刻んでおけば残るかというと、僕はそれだけじゃないと思うんですね。
論語がここまで現代まで残っているというのは、まして書典で手に入って誰でも読めるというのはそれだけではない。
一つは内容が普遍的な内容が書かれていたということもあると思うんですが、
他にもですね、これはもうちょっと後の時代になるとは思うんですが、石に刻まれた文字というのは
表面に墨を塗って紙を貼って、それがコピーされていったわけですね。それをまた石に刻み直すがあるとか、あるいは書道の
お手本として使われたりとか、つまり
この石に刻まれた文字を見て複製を作りたい、コピーを作りたいという欲求に人々が駆られたという側面があると思うんですよ。
それは何かというと、言葉の美しさもさることながら文字の美しさというのもあったと思うんですね。
実際、石に刻むにはまず紙に毛筆で書いて、それを削っていく、石に刻んでいくということが後の時代には行われていて、
孔子の時代にそれがされたかどうかというのは定かではないんですけれども、それがコピーとして伝播していった、複製がどんどん広まっていった。
複製がたくさんあるということがアーカイブにとっては決定的に重要な要素だと僕は考えるわけですね。
なぜコピーされていったかというと、やはり美しさがあったから、内容的な美しさも当然あったと思うんですけれども、文字の美しさもあったからじゃないか。
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そう考えると、我々デジタルアーカイブを作っていく上で、もちろん内容というのは改変できないんですけれども、それを美しく見せていく技術というのも必要なんじゃないか。
つまり、数値化する技術、保存する技術、デジタルデータ保存する技術だけじゃなくて、人々がそれを自分のものにしたい、あるいは世に伝えていきたいと思わせるような、
それも何千年にわたって思わせるような美しさというものが決め手だったんじゃないかというふうに考えるわけですね。
そんなことを僕は甲子病に来ると考えるようにしていますというか、気づかされるわけです。
ぜひ長崎に住んでいらっしゃる学生さんとか、長崎に旅行される方とかは、一度この甲子病にも訪れていただいて、
これはグラファー園のすぐそばなので、訪れていただいて、この甲先生、甲子の言葉を見ていただければなと思います。
とてもいい場所です。
今日は長崎の甲子病からお送りしました。
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