00:00
私が、うすうすと、目を覚ました時、こうした蜜蜂のうなるような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中に、はっきりと引き残していた。
それを、じっと聞いているうちに、今は真夜中だな、と直覚した。
そして、どこか近くで、ボンボン、時計が鳴っているんだな、と思い思い、
またもうとうとうとしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、もなく、次々に消え薄れていって、そこいらじゅうがひっそりと静まり、かえってしまった。
私は、ふっと目を開いた。
かなり高い白いペンキ塗りの天井裏から、薄白い埃に覆われた裸の電球が、ひとつぶら下がっている。
その赤黄色く光るガラス玉の横腹に、大きな蝿が一匹止まっていて死んだように、じっとしている。
その真下の固い、冷たい珍像石の床の上に、私は台の字なりに長くなって寝ているようである。
私は台の字型にじっとしたまま、まぶたをいっぱいに見開いた。
03:13
そうして、目の玉だけをぐるりぐるりと、上下左右に回転させてみた。
青黒いコンクリートの壁で囲まれた、二軒四方ばかりの部屋である。
その寒風の壁に黒い鉄格子と、金網で二重に張り詰めた、大きな縦長いすりガラスの窓が一つずつ、
都合を三つ取り付けられている、とても用心健康に構えた部屋の感じである。
窓のない側の壁の付け根には、やはり頑丈な鉄の寝台が一個、入口の方向を枕にして横たえてあるが、
その上の真っ白な寝具がきちんと敷き並べたままになっているところを見ると、寝たことがないらしい。
私は少し頭を持ち上げて、自分の体を見回してみた。