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ビルディング、夢の旧作、巨大な四角いビルディングである。窓という窓が残らずぴったりと締め切ってあって、部屋という部屋が全然暗黒を封じている。
その黒い巨大な四角い暗黒の一角に、黄色い細い幻月が引っかかって、じりじりと沈みかかっている時刻である。
私は、その暗黒の中心にある宿直室のベッドの上に長くなって、隣室と境目の壁に頭を向けたまま、たった一人ですやすやと眠りかけている。
私は疲れている。考える力もないくらい眠たがっている。私の意識はぐんぐんとゼロの方向に近づきつつある。
無限の時空の中に無休の宝物線を描いて落下しつつある。その時に、壁ひとえ向こうの部屋からすやすやという寝息が聞こえてきた。
私の寝息にぴったりと調子を合わせた、私そっくりの寝息の音が、静かに、静かに、壁ひとえ向こうの部屋にもう一人の私が寝ているのだ。
私の頭の方に頭を向けて、私の寝姿を鏡に映したように正反対の方向に足を伸ばしつつ、すやすやと眠りかけているのだ。
その壁の向こうの私も疲れている。考える力もないくらい眠たがっている。
そしてその意識がぐんぐんとゼロの方向に近づきつつある。無限の時空の中に無休の宝物線を描いてぐんぐんと。
私はがばっと跳ね起きた。目がぱっちりと覚めた。隣の部屋が覗いてみたくなった。しかし私は暗闇の中で半身を起こしたまま躊躇した。
もし隣の部屋を覗いた時に私と同じ私がすやすやと寝ていたとしたら、それはどんなに恐ろしいことだろう。
とはいえまた、万に一つ隣の部屋に誰もいなかったとしたら、その恐ろしさが何層倍するだろうと、
私はそう思い思い何秒か、もしくは何分間か目の前の暗闇の確信をじっと凝視していた。
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とそのうちにある突然な決心が私に襲いかかった。その決心に蹴飛ばされたように私は素裸足のまま寝台を飛び降りた。
宿直室を飛び出して隣の部屋に通ずる暗黒の廊下を突進した。するとその途中で何かしら黒い人間のようなものと真正面から衝突したように思うと、
二つの体がドタンと人造石の床の上に倒れた。そのまま、うううむと気絶してしまった。
巨大な深夜のビルディング全体が、と笑う声をはっきりと耳にしながら、