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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回の話題は、比較級の-er ならぬ-ther ということです。
形容詞・副詞の比較級といえばですね、er あるいはmoreをつけるという方法ですね。
単語の後ろにつけるバージョンとして、er ということで皆さん覚えていると思うんですね。
これはolder, longer, younger, shorter ということですし、
さらにですね、例えば better なんていうとき、good の比較級ですけれども、er は一応ありますよね。
これは実はbetという、小英語にあった良いを表す、つまりgoodの意味を表す形容詞の比較級なんですね。
これがなぜかgoodの比較級の位置、すっぽりはまり込んでしまったということですね。
こういうのをサプリーション、補充法なんて言いますけれども、この補充法に行ってもですね、er がつくには間違いないわけですね。
ところがですね、一般的にはこのer が比較級の語尾だというふうに思われていますが、
引用速語のレベルでですね、考えると、実はer だけではなく、これも一つだったんですが、もう一つですね、
ther、現代語でいうところのtherに相当するものもあったということなんですね。
これはどういうことでしょうか。
引用速語の段階では、この2つの比較級を表す設備字としてですね、
元の形はiosというのが、これがerに相当するやつですね。iosだったんですね。
そして2つ目、therに相当するものがtero、teroといったものがあったんですね。
これ一つ一つ説明したいと思いますが、まず最初のiosの部分ですね。
これが比較級語尾なんですが、このsuの部分、最後のiosのsuがですね、濁ってしまう。
主にゲルマン語では濁ります。
iosとなるわけですね。
こうなるとですね、suになると、その次にですね、これがerの音に近くなるというのがゲルマン語ではよく起こっています。
erのことをギリシャ語でrotaって言いますよね、文字のこと。
なのでrotasismなんて呼んでるんですが、このsuの音がerの音に近くなるということです。
実際、発音的にも近い音でして、例えばwasに対してwerですよね、b動詞の過去形。
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語尾だけ見るとsuなのに、なぜ複数形ではwerっていうふうにwe、re、rの音色が出るのかっていうのは、実はこれなんですね。
suとrは近い音で、もともと一つの音だったんです。
それが複数形の場合にはですね、ある音声条件のもとでこのsuがrotasismを起こしてrに近くなる。
で、werとなったっていうことなんですが、このイヨウソ語の比較級語尾、iosは結局ですね、iosとかis、isrっていう形になります。
rが出てきます。
これが現代のerの起源ということなんですね。
これは英語とかゲルマン語だけではなくてですね、実はラテン語なんかにもr化した状態であって、それがiorと綴られるものですね。
これはラテン語とかフランス語から借りたもので、よくよく考えると確かに比較級の意味を持っているなっていう単語ですね、形容詞いっぱいあります。
例えば、similarとかですね、superior, inferior, senior, junior, prior, anterior, posterior, interior, exterior、ととんですね。
iorで終わるものっていうのは、よく意味を確認してみますと、何かしら比較級が関わっているわけですよね。
superior、inferiorなんてのはわかりやすいですが、superにiorをつけて、より上の、より高いってことですね。
inferiorのinferっていうのは元々下、underの意味ですから、より下のっていうことになりますね。
senior、juniorってのもそうです。
結局older、youngerと同じということで、iorがですね、英語のそのままerに大切相当すると考えればいいわけです。
このように、erはその引用詞語のiosから来たんだということがわかるわけですね。
さて、問題はもう一つの方なんですけれども、引用詞語ではterの形でterと発音したと思いますが、この系列の比較級っていうのがあったんですね。
ただ、これはですね、いわゆるerの比較級と全く同じ使い方というよりはですね、どうも二つで対応なすもののうち一方、いたして他方っていうような表現ね。
つまり、一個指定しておいてそうじゃないやつの方と、それとはまた別の方という意味での対比比較とでも言うんですかね。
そんなことに使われることが多いってことです。
ですので、反対語、二つペアでですね、反対語をなすようなものによく現れて、例えばラテン語なんかではよく残っているんですが、右のことをdexterって言いますね、ラテン語では。
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ここから英語に入ってdexterousという、右なので器用なと、右利きが多いのでね、器用なって意味でdexterousって入ってますが、これはラテン語のdexterから来てんですね。
このterの部分が、左じゃないよ、右だよって意味になります。
一方、左はというと、今度はsinisterって言いますね。sinister、これは英語に入ってそのままsinister、不吉なと。
右が正しいものに対して、左は邪悪っていう発想があったんでsinister、左という、ラテン語では純粋に左の意味なんですが、英語に入って邪悪なっていうね、そんな意味になってますが、
このsinisterっていうのも、右じゃないよ、左だよって意味でのこのterなわけです。
だからdexter対sinisterというような関係ですね。
英語ではですね、実はこのteroというね、引用詞語のこの部分がですね、tの部分がthになります。
結局、theっていう風にtherの形になっていくんですが、これ探すと結構あるんですね。
やはりですね、これも2つあるものの一方というようなニュアンスが非常に強いんです。
上げてみますと、まずすぐ思い浮かぶのがotherですよね。
これはthe oneと言った後に、そうじゃない方、2つある方の、そうじゃない、残りの方って意味でthe otherって言いますよね。
あのotherのterです。
実際、otherのaの部分、oで続きますが、これをoneに他ならないんですね。
つまりoneと言った後で、oneじゃない方の別の方ねという意味でotherというわけなんですね。
他にもeither、either a or bという風に2つのものが絡みますよね。
だからeitherと出るわけです。
そして2つのものを否定するときは、このeitherの否定場でneitherというのもterです。
さらにaかbどっちかという場合にwhetherですね。
whether a or bという風にterはどうも2つあるっていうことを前提にした一方という原理ですね。
引用速報からの原理がちゃんと残っているってことになりますね。
このように2つのものを対比して比較するっていうのは、ある意味絶対比較級という言い方してもいいんでしょうかね。
これは英語でもですね、ERを使ったバージョンでも見られて、
例えばthe upper classというと上流階級ですよね。
それに対してそうじゃないクラスがあるっていう二分法で考えているわけです。
だからthe younger generationというと、これはthe older generationという二分法の中で若い方というような使い方ですよね。
このように比較級による絶対比較級といいますか、2つのものを前提としてそのうちの一方というような使い方がある。
これにどうも特化していたのがこの引用速報のteroに由来する、そして英語のther系の比較級語尾なんではないかと。
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他にもですね、いろんなところに潜んでいまして、
実はafterというのは単に何の後でというふうに覚えていると思いますが、
実はこれafterのofのことです。
何から離れてっていうことなんで、つまりもっと離れてというぐらいの比較級ですし、
他に例えばオランダのことをnetherlandsといいますが、
netherのこのtherですね、これもより低いという意味です。
これオランダというのは低地ですよね。
というように、いろんなところに実はこのtherっていうのは残っている、あるいは潜んでいるということです。
それではまた。